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5分で分かる『たけくらべ』!登場人物、あらすじ、結末など解説!論争とは? | ホンシェルジュ

5ふんかる『たけくらべ』!登場とうじょう人物じんぶつ、あらすじ、結末けつまつなど解説かいせつ論争ろんそうとは?

更新こうしん:2021.11.14

樋口ひぐち一葉かずははおさつにもなるほどの日本にっぽん代表だいひょうする作家さっか。そんな彼女かのじょ代表だいひょうさくが「たけくらべ」。しかし、その知名度ちめいどとは裏腹うらはらに、作者さくしゃ自身じしんがどんなじんか、「たけくらべ」がどんなはなしなのからないひとすくなくないかもしれません。 言葉ことば使づかいもふるめかしく、ストーリーもむずかしいのでは?とおもいがちですが、じつほんさくは10代の子供こどもたちのはなしなのです。この記事きじでは、そんな意外いがい実際じっさいにはられていないかもしれない名作めいさく「たけくらべ」をひもといていきます。

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小説しょうせつ『たけくらべ』のあらすじ、美登利みどりなど登場とうじょう人物じんぶつ紹介しょうかい

 

たけくらべは吉原よしわららす少年しょうねん少女しょうじょたちのはなしです。たくさんの子供こどもたちがてきますが、そのなか中心ちゅうしん人物じんぶつになるのは「美登利みどり(みどり)」「しん如(しんにょ)」「正太郎しょうたろう」の3にん。 

主人公しゅじんこう美登利みどりとしは14さいです。近所きんじょ子供こどもたちのなかではあねのような存在そんざいです。吉原よしわられっ遊女ゆうじょあねっていることから、気前きまえもいいし性格せいかく勝気かちき

しん如は僧侶そうりょちちつ15さい少年しょうねん真面目まじめ内向ないこうてきです。生臭坊主なまぐさぼうずちちうとましくおもっています。

正太郎しょうたろう金貸かねかしの息子むすこ喧嘩けんかっぱやくて大人おとなびた言動げんどうの13さい少年しょうねんです。美登利みどりしたっています。

この3にん中心ちゅうしんに、いろいろなひと出来事できごとんでストーリーが展開てんかいしていきます。子供こどもたちによる町内ちょうないぐみ対立たいりつ喧嘩けんか。まわりの大人おとなたちとのかかわりや反抗はんこう。そして全体ぜんたいじくをなしているのが、美登利みどりしん如の関係かんけいです。

以前いぜんつまらないことからまわりにひやかされ、しん如はそれをきっかけに美登利みどりけるようになります。美登利みどりはそんなかれ態度たいど戸惑とまどいをかんじ、勝気かちき性格せいかくあいまってしんじ如を毛嫌けぎらいしているむね言動げんどうひょうすようになってしまいます。しかしそれは本心ほんしんではなく、彼女かのじょ悶々もんもんとしつづけており……。

この物語ものがたりは、しん如が美登利みどりいえまえとおりかかったさいに、かれ下駄げた鼻緒はなおれてしまうという場面ばめん。わけって2人ふたりしん距離きょりとおはなれており、そんなおりおもわぬ再会さいかいでした。言葉ことばのやりりはほとんどなく、2人ふたりしんうごきだけでせる場面ばめん描写びょうしゃ絶妙ぜつみょうです。

美登利みどり遊女ゆうじょに、しん如はそうとしてきていくことがめられている運命うんめい大人おとなになっていく子供こどもたちの背中せなかうつ年月としつきのはかなさとせつなさが、この「たけくらべ」の最大さいだい魅力みりょくです。

 

著者ちょしゃ
樋口ひぐち 一葉かずは
出版しゅっぱん

作者さくしゃ樋口ひぐち一葉かずははどんなひと結婚けっこんしていた?

 

さて、樋口ひぐち一葉かずはとはどういったひとなのかてみましょう。樋口ひぐち一葉かずは明治めいじ小説しょうせつです。 裕福ゆうふく家庭かていまれ教養きょうようちた少女しょうじょでした。しかし一家いっか中心ちゅうしんであり文学ぶんがくきのいちよう理解りかいしゃでもあったちちくなると、すべてが一変いっぺんします。17さいにしてのこされたははいもうとやしなっていく背負せおうことになるのです。婚約こんやくしゃとのなか破談はだんとなり、貧窮ひんきゅう生活せいかつおちいります。 

すこしでも生活せいかつかてになればと、一葉いちよう小説しょうせつくため『半井なからい桃水とうすい』に弟子でしりします。公私こうしともにちからになってくれる桃水とうすいいちようしんせますが、いろいろとあって離別りべつ

しかしそれがきっかけになったように、一葉いちようのヒットさくとなる名作めいさく怒涛どとうのように発表はっぴょうすることになるのです。もり鴎外おうがい幸田こうだ露伴ろはんにもみとめられ、これからととき肺結核はいけっかくにより他界たかい。わずか24さいでした。彼女かのじょ小説しょうせつとして活躍かつやくしたのはわずかなあいだで、「奇跡きせきの14かげつ」とわれています。

 

『たけくらべ』のタイトルの意味いみは?伊勢物語いせものがたり由来ゆらい

著者ちょしゃ
大津おおつ 有一ゆういち
出版しゅっぱん
1964-12-16

ところで、タイトルの「たけくらべ」とはどういう意味いみなのでしょう。通説つうせつとしては「伊勢物語いせものがたり」のじゅうさんだん筒井筒つついづつ」というおはなし由来ゆらいしているとわれています。 むかしあそんでいた幼馴染おさななじみどうしが成長せいちょうし、のち再会さいかい結婚けっこんする恋愛れんあい物語ものがたりです。 

『たけくらべ』では、おたがいを意識いしきしあうような年頃としごろになったときうたわしうのですが、 男性だんせいからは「いっしょにくらべしたわたしも、しばらくわないあいだにずいぶんたかくなってしまいましたよ」。 女性じょせいからは「ながさをくらべあったわたしかみもずいぶんながくなってしまいましたよ。あなた意外いがいだれのためにうことができるでしょうか」。

背丈せたけかみたけ、それをくらべあった子供こどもころおもんだこのうたから「たけくらべ」という題名だいめいがきているとわれているのです。幼馴染おさななじみ子供こども思春期ししゅんきなど設定せっていがとてもよくていますね。

しかし、もう1つのせつとして、「筒井筒つついづつ」を題材だいざいにつくられた「井筒いづつ」というのうほうつよ意識いしきされているのではないかというのもあります。

世阿弥ぜあみつくったというふうかんがえられており、おっとつづけるおんな幽霊ゆうれい幼馴染おさななじみであったおっととのおもばなしかたるというもの。こちらのほうたけくらべたおもくわえ、年老としおいていくことのつらさ、ときながれの無常むじょうなどがまれており、大人おとなになることのさびしさをしている『たけくらべ』によりちかいというのです。また、おんな幽霊ゆうれいはなし人物じんぶつそうということもありますし、なかなか類似るいじせい見出みだせます。

『たけくらべ』は文体ぶんたいむずかしい?朗読ろうどくするとみやすい?

『たけくらべ』をんでみよう、と原文げんぶんったほうなかには、しでいきなりつまづいてしまったほうおおくいたかもしれません。
 

 まわれば大門おおもん見返みかえやなぎいとながけれど、
ぐろみぞ燈火ともしびうつるさんかいさわぎもごと
(『たけくらべ』青空あおぞら文庫ぶんこより引用いんよう

『たけくらべ』の有名ゆうめいしですが、てくる言葉ことば意味いみむずかしく、こんな調子ちょうしぶんつづくとおもうとおとげたくなる気持きもちもよくかります。ちなみに、会話かいわぶんあらわす「」(かぎかっこ)もないです。 

れてしまうと、原文げんぶんもとてもあじがあって素敵すてき文章ぶんしょうなのですが、ストーリーをまず理解りかいしたいというほうには現代げんだいやくがおすすめです。

また朗読ろうどくいてみるというのもおすすめ。女性じょせいらしい流麗りゅうれい文章ぶんしょう特徴とくちょうてきなので、おととしてくと、文字もじうよりも物語ものがたり情景じょうけいかびやすく、セリフのニュアンスなども理解りかいしやすいとおもわれます。

『たけくらべ』論争ろんそうについて解説かいせつ

 

『たけくらべ』をめぐって、「たけくらべ論争ろんそう」というものがあります。美登利みどり大島おおしま神社じんじゃとりいちかみ島田しまだはなかんざしをつけるのですが、この以来いらい活発かっぱつあかるい性格せいかく一変いっぺんし、きゅう元気げんきうしなうのです。正太郎しょうたろう子供こどもたちのこともけるようになります。

その理由りゆう物語ものがたりちゅうにはかれていないのです。当然とうぜんいろいろな推測すいそくがされます。論争ろんそうきるまで通説つうせつとされていたのが、「初潮しょちょう」をむかえたからだというもの。かみ島田しまだうということは、大人おとな女性じょせい象徴しょうちょうでもあるわけです。初潮しょちょうむかえ、島田しまだった自分じぶんわざるをなくなって気持きもちがしずんでいったのではないかとわれてきました。

それにたいしてたもう1つのせつが「はつみせ」というもの。あねおな遊女ゆうじょになることがまっていた美登利みどりはじめておきゃくをとったというものです。理由りゆうとして、源氏物語げんじものがたりなか若紫わかむらさき処女しょじょうしなった直後ちょくご場面ばめんているというのです。しかしこれに反論はんろんするひとて、いろいろな作家さっか評論ひょうろん方々かたがた論争ろんそうとなっています。

 

むずかしいとかんじるひとは、映画えいがばんもおすすめ!主演しゅえん美空みそらひばり!

 

『たけくらべ』は1955ねん美空みそらひばり主演しゅえん映画えいがにもなっています。ひばりさんは映画えいがなかうた作品さくひんおおいのですが、こちらはまったくうたわず、演技えんぎだけで勝気かちき多感たかん少女しょうじょ美登利みどりえんじてこう評価ひょうかました。

ちなみに、1924ねんにも制作せいさくされています。

 

『たけくらべ』の結末けつまつてくる水仙すいせんあらわすものをネタバレ考察こうさつ!どうして造花ぞうか

著者ちょしゃ
樋口ひぐち 一葉かずは
出版しゅっぱん

 

たけくらべのもう1つのなぞとしてラストの場面ばめんがあります。ある美登利みどりいえ格子こうしもん内側うちがわ水仙すいせんかれていたのです。しずんだ毎日まいにちのままの美登利みどりはそれを一輪挿いちりんざしにかざさびしげにつめるというものですが、だれいたものなのかはかれていません。

しかもその水仙すいせん生花せいかではなく造花ぞうかなのです。そのしんじ如のであったことからいたのはかれであるというのは間違まちがいないことだとおもわれていますが、なぜ造花ぞうかだったのかというところが意味深いみしんです。

解釈かいしゃくとしてわれているのは、それが生花せいかでなく造花ぞうかであるということで、「偽物にせもの」「つくりもの」というまけ要素ようそめられ、かれらにハッピーエンドはないということをにおわせているというもの。 2人ふたりみちぎゃくみちであり、それらがけっして1つになることはないことを暗示あんじし、またもう2子供こどもころ純粋じゅんすいときにはもどれないことを意味いみしているというのです。

 

たけくらべは、いまでいうと中学生ちゅうがくせいたるたちの心情しんじょう機微きびえがいています。くら物語ものがたりおおいとわれる樋口ひぐち一葉かずは作品さくひんなかで、あかるいひかりはなっている名作めいさくを、ぜひんでみてはいかがでしょうか。

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