小説『いつか、眠りにつく日』見所ネタバレ2:未練解消4つのルール!なぜ蛍だけ3人?
この世にとどまる霊体、つまり地縛霊にならないためには、亡くなってから49日以内に未練の解消をおこなわなければなりません。
そこで案内人は、以下のルールを蛍に伝えるのです。
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案内人は、被案内人が未練を持つ相手の名前のみ教えることが可能
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未練は、被案内人自らの力で解消しなければならない
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被案内人は未練を解消する時のみ、相手の前に姿を現すことが出来る。また、すべての未練が解消された時、相手の記憶から被案内人の記憶は消えてなくなる
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未練解消の期間は49日。その期間に解消出来なければ、被案内人は地縛霊となる
蛍はバス事故にあってから1ヶ月眠っていたため、未練を解消するために残された時間は19日だけだとクロに告げられます。
そして案内人が言う未練とは、死ぬ直前に考えたことだと説明します。すると、蛍は死ぬ直前に3人のことを同時に考えたということになるのです。未練を解消していない他の人々を見てみると、たいてい未練は1人、もしくは1つだけなのに彼女には3人もいるのでした。
実はこの1ヶ月眠っていたこと、未練を残した人物が3人いることが、最後の結末へと続く伏線となっているのです。本作はミステリーというわけではありませんが、こういった隠された伏線が散りばめられているのも、いぬじゅん作品の魅力の1つとなっています。
小説『いつか、眠りにつく日』見所ネタバレ3:誰かのために蛍が奔走!お節介なところも魅力!
蛍は限られた時間のなかで、なんとか未練を解消しようとします。彼女の場合は、本来あるはずの49日の期間が、19日しかありません。
しかし、もともと自分のことは後回しにして、人のことにばかり一生懸命になってしまう性格の蛍。つい、他の人のために動いてしまうのです。
彼女が出会った5歳くらいの涼太は、自分が死んだことを理解出来ずにいます。そのため、新人の案内人・カクガリは、彼の未練を解消するのに一苦労。そんななか出会ったのが、蛍なのでした。
事情を知った彼女は、なんとか涼太の未練を解消しようと、彼らと一緒に幼稚園へと向かうのでした。そこで、自分の姿が他の子供達に見えないこと、さらに涼太の母親が仲山先生を訪ねた際の会話で、涼太は自分が死んだことを理解したのです。
そこでやっと、彼が死ぬ直前何を考えていたのかがわかり、涼太は無事未練を解消することが出来たのでした。
残された時間が迫ってきていたにもかかわらず、蓮のことについては前に進めずにいた蛍。しかし涼太が未練を解消するのを見て、自分も前に進む勇気をもらったのでした。
そして彼女は3つ目の未練解消として、蓮と話すことを決めて……。気持ちを打ち明けるこの場面は、ぜひ活字で味わってみてください。実際のセリフと蛍の心の声の部分がなんとも言えない掛け合いになっていて、より感動を引きたせる表現となっています。
小説『いつか、眠りにつく日』見所ネタバレ4:予想外の結末が泣ける!タイトルの意味とは?
無事に3つの未練を解消することができた蛍。いよいよ成仏する時がやってきました。多少の寂しさと充実感を覚える彼女ですが、その時、クロから意外な事実を突きつけられるのです。それは、彼女が完全には死んでいないということでした。
クロは彼女にこの事実を話し、生死の選択を迫ります。そして、その選択は変更がきかないと念を押すのです。
そんな彼に、未練解消に奔走するなかで気づいたことがあると、蛍は伝えます。
「私ね、未練解消していくなかで、
自分にこんなにも未練がたくさんあることに気づいたの。
それは、今まで毎日をただなんとなく生きていたからだと思う」
(『いつか、眠りにつく日』より引用)
どのように生きていくべきか、という答えを見出した蛍。 生死の選択を迫られた彼女が出した答えとは……。そして、その先に待つ、予想もしなかった真実とは……。
- 著者
- いぬじゅん
- 出版日
- 2016-04-28
蛍のその言葉を聞いた時、『いつか、眠りにつく日』という本作のタイトルに込められた思いに気付かされた方も多いのではないでしょうか。眠りとは、すなわち死を意味しています。いつか死が訪れるまで、どのように生きていくべきか。そのことを、作者・いぬじゅんは伝えようとしたのかもしれません。
最後の蛍の決断は、そのことに気づけたからこそ出せた答えでしょう。彼女の成長、強さに注目してみてください。そして、予想だにしなかった結末は、まさに必見です。彼女の願いが複数あったことが、最後の伏線となっています。
涙なくしては読めない結末は、ぜひご自身でご一読ください。