塙はなわ凹内名刀めいとう之の巻まき

『塙はなわ凹内名刀めいとう之の巻まき』（はなわへこないめいとうのまき）は、1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）6月30日にち公開こうかいの日本にっぽんの短篇たんぺんアニメーション映画えいがである。2007年ねん（平成へいせい19年ねん）に玩具おもちゃ版ばんが発見はっけんされ、現存げんそんする日本にっぽん最古さいこのアニメーション作品さくひんとして知しられる。『なまくら刀がたな』（-がたな）とも。

塙はなわ凹内名刀めいとう之の巻まき
なまくら刀がたな
監督かんとく	幸内こうない純一じゅんいつ
製作せいさく総そう指揮しき	小林こばやし喜三郎きさぶろう
製作せいさく会社かいしゃ	小林こばやし商会しょうかい
配給はいきゅう	小林こばやし商会しょうかい
公開こうかい	1917年ねん6月30日にち
上映じょうえい時間じかん	2分ふん（玩具おもちゃ版ばん） 4分ふん（最長さいちょう版ばん） 5分ふん（新しん最長さいちょう版ばん）
製作せいさく国こく	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
次つぎ作さく	茶目ちゃめ坊ぼう空気くうき銃じゅうの巻まき（1917年ねん）

概要がいよう

天然色てんねんしょく活動かつどう写真しゃしん株式会社かぶしきがいしゃ（天てん活かつ）が1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）に北澤きたざわ楽天らくてんの弟子でし・下川しもかわ凹天を、日活にっかつ向島むこうじま撮影さつえい所しょが1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）1月がつに洋画ようが家かの北山きたやま清太郎せいたろうを、同年どうねん、小林こばやし商会しょうかいが下川しもかわ凹天とおなじく楽天らくてんの弟子でし・幸内こうない純一じゅんいつを雇やとい入いれ、それぞれアニメーション映画えいがの研究けんきゅうを開始かいし、「日本にっぽん初はつ」を賭かけた競争きょうそうとなった。

1917年ねん1月がつ、天てん活かつが下川しもかわの『凸坊でこぼう新しん畫帖がじょう 芋いも助すけ猪狩いかりの巻まき』を東京とうきょう・浅草あさくさ公園こうえん六ろく区くのキネマ倶楽部くらぶで公開こうかい、これが日本にっぽん初はつのアニメーション映画えいがとなった。同年どうねん5月がつ20日はつか、日活にっかつが北山きたやまの『猿さる蟹かに合戦かっせん』を同おなじく六ろく区くのオペラ館かんで公開こうかい、ついで6月がつ30日にちに小林こばやし商会しょうかいが幸内こうないによる本ほん作さくを同おなじく六ろく区くの帝国ていこく館かんで公開こうかいした。本ほん作さくの弁士べんしは当時とうじ売うれっ子この染井そめい三郎さぶろう（日本にっぽん初はつの活動かつどう写真しゃしん常設じょうせつ館かんである浅草あさくさ電気でんき館かんの活動かつどう弁士べんし）が担当たんとうしている。

劇げき中ちゅうのキャラクターは、漫画まんが調ちょうのデフォルメが為なされた頭あたま身みで描えがかれている。また星ほしマークなど漫符の活用かつようも早はやくから見受みうけられ、侍さむらいの人間にんげん臭くさい一喜一憂いっきいちゆうの悲喜劇ひきげきがアニメ草創そうそう期きからユーモアと皮肉ひにくたっぷりに描写びょうしゃされているのが特徴とくちょう的てきである。『活動かつどう之の世界せかい』1917年ねん9月がつ号ごうには、本ほん作さくの映画えいが評ひょうが「凸坊でこぼう新しん画帖がじょう 試だめし斬き」の題だいで掲載けいさいされ、「出色しゅっしょくの出来でき栄さかえで、天てん活かつ日活にっかつのものに比ひして一いち段だんの手際てぎわである」と評価ひょうかされた。なお、これは文献ぶんけんに残のこる最古さいこのアニメ評ひょうといわれている。

本ほん作さくは下川しもかわ・北山きたやまによる先行せんこうのアニメ作品さくひんと比ひして高こう評価ひょうかを得えたものの、製作せいさく会社かいしゃの小林こばやし商会しょうかいは公開こうかいから翌々月よくよくげつに健闘けんとうむなしく倒産とうさんする。なお、本ほん作さくの玩具おもちゃ映画えいがが『なまくら刀がたな』の題だいで流通りゅうつうしたのは、本ほん作さくの権利けんりが小林こばやし商会しょうかいの倒産とうさん後ごに売却ばいきゃくされたからではないかという説せつもある。

アニメーション研究けんきゅう家かの渡辺わたなべ泰やすしは、国産こくさんアニメ創始そうし者しゃの下川しもかわ凹天、北山きたやま清太郎せいたろう、幸内こうない純一じゅんいつの3人にんについて次つぎのように評ひょうした。

ただ“絵えがかける”ということで手てがけた人ひとたちばかりだ。そして映画えいがそのものの知識ちしきも、漫画まんが映画えいがの製作せいさく法ほうもまったく知しらずに飛とび込こんでいる。創始そうし者しゃとはなにごとにおいても、そういうものかも知しれぬが、その勇気ゆうきにはただ恐おそれ入いる。だが、この人ひとたちの胸むねに共通きょうつうしてあったものといえば、初はじめてのものに挑戦ちょうせんする誇ほこりのようなものではなかったろうか。

「発見はっけん」の経緯けいい

かつてフィルムコレクターの杉本すぎもと五郎ごろうが本ほん作さくの35mmフィルムを所蔵しょぞうしていたことが確認かくにんされているが、不審火ふしんびによって1971年ねんに焼失しょうしつした。その後ご、長ながらくフィルムが現存げんそんしないといわれていたが、2007年ねん（平成へいせい19年ねん）夏なつに映像えいぞう文化ぶんか史家しかの松本まつもと夏樹なつきが大阪おおさかの骨董こっとう市しで北山きたやま清太郎せいたろうの『浦島うらしま太郎たろう』のフィルムと共ともに売うられているのを発見はっけん、玩具おもちゃ用ようの映写機えいしゃきごと買かい取とった。その後ごデジタル復元ふくげんされ、2008年ねん（平成へいせい20年ねん）4月がつ24日にちから東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんフィルムセンターで開催かいさいされた「発掘はっくつされた映画えいがたち2008」で上映じょうえいされた。2011年ねん（平成へいせい23年ねん）2月がつからは、東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんフィルムセンター展示てんじ室しつの常設じょうせつ展てん「日本にっぽん映画えいがの歴史れきし」において、ビデオモニターで映像えいぞうを見みることができる。このバージョンの上映じょうえい時間じかんは2分ふん・16fps・35mm・無声むせい・染色せんしょく。

その後ご、2014年ねん（平成へいせい26年ねん）になって東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんフィルムセンターに2008年ねんに寄贈きぞうされた「南湖みなみこ院いんコレクション」の中なかに、本ほん作さくの前半ぜんはん部分ぶぶんに相当そうとうするフィルムが含ふくまれていたことが分わかり、2008年ねんに発見はっけんされたバージョンは、実じつはダイジェスト版ばんで本ほん作さくの後半こうはん部分ぶぶんのみの収録しゅうろくであったことが判明はんめいする。これを受うけ、東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんフィルムセンターによって、2つのフィルムの欠落けつらく部分ぶぶんを相互そうごに補完ほかんさせる形かたちで改あらためてデジタルリマスタリングが行おこなわれ、2014年ねんに「デジタル復元ふくげん・最長さいちょう版ばん」として、真しんの「完全かんぜん版ばん」が復元ふくげんされた。「デジタル復元ふくげん・最長さいちょう版ばん」の上映じょうえい時間じかんは4分ふん・16fps・35mm・無声むせい・染色せんしょく。

さらに2017年ねん（平成へいせい29年ねん）には映画えいが史し研究けんきゅう家かの本地ほんじ陽ひ彦が新あらたな場面ばめんを含ふくむ35フィート11コマの未み発見はっけんフィルムを発見はっけん。このフィルムには侍さむらいを打うち負まかしたあんま師しがあざけるような表情ひょうじょうを浮うかべたり、侍さむらいが飛脚ひきゃくを切きろうとして木陰こかげに隠かくれたりする場面ばめんなどが収おさめられていた。同どうセンターは「デジタル復元ふくげん・最長さいちょう版ばん」に新あらたな場面ばめんを加くわえた約やく5分ぶんの「新しん最長さいちょう版ばん」を作成さくせいし、同どうセンターの上映じょうえい企画きかく「発掘はっくつされた映画えいがたち2018」で上映じょうえいされた。

作品さくひん内容ないよう

古物商こぶつしょうの店先みせさきで、刀かたなを購入こうにゅうした侍さむらいの凹内は、その斬きれ味あじを試ためすため、辻斬つじぎりをしようと按摩あんまの後うしろから近ちかづくが、返かえり討うちに遭あってしまう。気きを取直とりなおして、今度こんどは走はしって来きた飛脚ひきゃくを襲おそおうとするが、殴なぐられた上うえ、踏ふみ付つけられてしまい、思おもわず侍さむらいは「人殺ひとごろし〜」と叫さけぶ。気きが付つくと買かったばかりの刀かたなは折おれ曲まがっていたので、侍さむらいはがっかりして刀かたなを捨すててしまった。やはり刀かたなは「なまくら」であったのだった。

スタッフ

• 原案げんあん・演出えんしゅつ・作画さくが・監督かんとく ‐ 幸内こうない純一じゅんいつ
• 製作せいさく総そう指揮しき ‐ 小林こばやし喜三郎きさぶろう
• 製作せいさく・配給はいきゅう ‐ 小林こばやし商会しょうかい
• 興行こうぎょう ‐ 帝国ていこく館かん

関連かんれん項目こうもく

• 芋川いもかわ椋むく三さん玄関番げんかんばんの巻まき

参考さんこう文献ぶんけん

• 山口やまぐち且訓・渡辺わたなべ泰やすし 著ちょ、プラネット 編へん『日本にっぽんアニメーション映画えいが史し』有ゆう文ぶん社しゃ、1977年ねん。 
• 渡辺わたなべ泰やすし・原口はらぐち正ただし宏ひろし・小黒おぐろ祐一郎ゆういちろう他た 著ちょ、アニメージュ編集へんしゅう部ぶ 編へん『劇場げきじょうアニメ70年ねん史し』徳間書店とくましょてん、1989年ねん。 
• 活動かつどう之の世界せかい編集へんしゅう部ぶ「映画えいが評ひょう 凸坊でこぼう新しん画帖がじょう『試ためし斬き』（小林こばやし商会しょうかい作さく帝国ていこく館かん上場じょうじょう）」『活動かつどう之の世界せかい』1917年ねん9月がつ、27頁ぺーじ。 

外部がいぶリンク

映像えいぞう外部がいぶリンク
なまくら刀がたな（デジタル復元ふくげん・最長さいちょう版ばん） 東京とうきょう国立こくりつ近代きんだい美術館びじゅつかんによるデジタル復元ふくげん版ばん

• 塙はなわ凹内名刀めいとう之の巻まき - 日本にっぽん映画えいがデータベース
• 塙はなわ凹内名刀めいとう之の巻まき - IMDb（英語えいご）
• なまくら刀がたな（最長さいちょう版ばん） - 日本にっぽんアニメーション映画えいがクラシックス