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エセー - Wikipedia

エセー』(ふつ: Les Essais)もしくは『随想ずいそうろく』(ずいそうろく)は、フランスモラリストミシェル・ド・モンテーニュが107の随筆ずいひつあつめて1580ねん刊行かんこうした書物しょもつである。モンテーニュは随筆ずいひつ(エッセイ、エセー)という、特定とくてい話題わだいかんする主観しゅかんてきみじか文章ぶんしょう形式けいしき発明はつめいしたのであり、この書物しょもつはそのエセーをおさめている。人間にんげんのあらゆる営為えいい断続だんぞくてき文章ぶんしょう省察せいさつすることによりモンテーニュは人間にんげんそのものを率直そっちょく記述きじゅつしようとし、モラリスト文学ぶんがく伝統でんとうひらいた。フランス語ふらんすごessaiは「こころみ」や「くわだて」という意味いみである。

エセー(随想ずいそうろく
Les Essais
『随想録』表紙
随想ずいそうろく表紙ひょうし
著者ちょしゃ ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-1592)
発行はっこう 1580ねん初版しょはん
ジャンル 随筆ずいひつ
くに フランスの旗 フランス
言語げんご フランス語ふらんすご
形態けいたい 文学ぶんがく作品さくひん
ウィキポータル 文学ぶんがく
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2023ねん、エセーの著者ちょしゃ加筆かひつ訂正ていせいほんボルドーほんフランス語ふらんすごばん世界せかい記憶きおく登録とうろくされた[1]

文体ぶんたい

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モンテーニュは読者どくしゃ興味きょうみをそそり、むように意図いとされた巧妙こうみょうレトリックもちいていており、あるときには話題わだいから話題わだいへと意識いしきなが沿ってうごくようにえ、またあるときには作品さくひんのより教育きょういくてき性質せいしつ強調きょうちょうする構造こうぞうてき文体ぶんたいもちいてもいる。古代こだいギリシアラテン文学ぶんがくイタリア文学ぶんがくからの引用いんようがしばしば補強ほきょうとしてもちいられる。

内容ないよう

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モンテーニュの目的もくてき人間にんげんとくかれ自身じしんを、完全かんぜん率直そっちょく記述きじゅつすることであると『随想ずいそうろく』のなかべている。モンテーニュは人間にんげんせいおおきな多様たようせいうつわりやすさこそがその最大さいだい特徴とくちょうであると認識にんしきしていた。「わたし自身じしんというものよりもおおきな怪物かいぶつ驚異きょういたことがない。」[2]というのが典型てんけいてき引用いんようである。

モンテーニュは自身じしん貧弱ひんじゃく記憶きおくりょくや、本当ほんとう感情かんじょうてきにはならずに問題もんだい解決かいけつあらそいを仲裁ちゅうさいする能力のうりょくや、後世こうせいにまでのこ名声めいせいしがる人間にんげんへの嫌悪けんおかんや、そな世俗せぞくからはなれようとするこころみのことなどをいている。

当時とうじカトリックプロテスタントあいだ暴力ぼうりょくてきで(モンテーニュの意見いけんによれば)野蛮やばん紛争ふんそうをモンテーニュは嫌悪けんおしており、そのものにはルネサンスらしからぬ悲観ひかん主義しゅぎ懐疑かいぎ主義しゅぎのぞいている。

そうじて、モンテーニュはユマニスム強力きょうりょく支持しじしゃであった。モンテーニュはかみしんじ、カトリック教会きょうかいれていたが、かみ摂理せつりがどのような意味いみ個々ここ歴史れきしじょう出来事できごと影響えいきょうしていたかをべることは拒否きょひしていた。

しん世界せかい征服せいふく反対はんたいしており、それが原住民げんじゅうみんにもたらしたくるしみをなげいていた。

 
ミシェル・ド・モンテーニュ

マルタン・ゲール事件じけんれいきながら、モンテーニュは人間にんげん確実かくじつさを獲得かくとくできないとかんがえている。その懐疑かいぎ主義しゅぎは、セクストスなどから影響えいきょうけ、『レイモン・ズボン英語えいごばん弁護べんご[3]というながいエセーにもっとあらわれており、このあきらはしばしば単独たんどくでも出版しゅっぱんされてきた。我々われわれ自身じしん推論すいろん信用しんようできない、なぜなら思考しこう我々われわれこるものであるから。我々われわれ本当ほんとう意味いみではそれらをコントロールできない。我々われわれ動物どうぶつよりもすぐれているとかんがえる相応そうおう理由りゆうはない。モンテーニュは拷問ごうもんによってられた自白じはくにはきわめて懐疑かいぎてきで、そのような自白じはく拷問ごうもんからのがれるために容疑ようぎしゃがでっちあげたものかもしれないと指摘してきしている[よう出典しゅってん]通常つうじょう知識ちしきひと善良ぜんりょうにはできない」とだいされているふしにおいて、モンテーニュは自身じしんのモットーが「わたしなにっているのか?」 (Que sçay-je?) であるといている。ズボン弁護べんごのエセーは表面ひょうめんてきにはキリスト教きりすときょう弁護べんごしている。しかしながら、モンテーニュはキリスト教徒きりすときょうとではない古代こだいギリシア・ローマの著述ちょじゅつたちに言及げんきゅう引用いんようしており、とく原子げんしろんしゃルクレティウスおお言及げんきゅうしている。

モンテーニュは結婚けっこん子供こどもそだてるためには必要ひつようだとかんがえていたが、恋愛れんあいによるはげしい感情かんじょう自由じゆうにとって有害ゆうがいなものとしてきらった。「結婚けっこんとりかごのようなものである。そのそとにいるとり必死ひっしになってにゅうろうとするが、なかにいるとり必死ひっしになってようとする。」という言葉ことばがある。

教育きょういくかんしては、抽象ちゅうしょうてき知識ちしき批判ひはんれさせることよりも具体ぐたいてきれい経験けいけんほうこのんでいた。「子供こども教育きょういくについて」[4]というエセーはディアヌ・ド・フォワフランス語ふらんすごばんささげられている。

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  随想ずいそうろく』をにしたミッテラン

モンテーニュのエセーに明白めいはくあらわれている思考しこう現代げんだいせいは、今日きょうでも人気にんきたもっており、啓蒙けいもう時代じだいまでのフランス哲学てつがくもっと傑出けっしゅつした作品さくひんとなっている。フランスの教育きょういく文化ぶんかおよぼす影響えいきょう依然いぜんとしておおきい。フランスのもと大統領だいとうりょうフランソワ・ミッテラン公式こうしき肖像しょうぞう写真しゃしんでは『随想ずいそうろく』をってひらいている。

テクストの変遷へんせん

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モンテーニュによる『随想ずいそうろく』への

モンテーニュは1572ねんからエセーの執筆しっぴつはじめ、1580ねん初版しょはん刊行かんこう生涯しょうがいつうじて編集へんしゅうつづけた。1だけ挿入そうにゅうすることもあれば、複数ふくすうふしをまるごと挿入そうにゅうすることもあった。後世こうせいおおくのはんではこれを以下いか記号きごうあらわしている。

  • A: 1571-1580にかれたふし。1580年刊ねんかん
  • B: 1580-1588にかれたふし。1588年刊ねんかん
  • C: 1588-1592にかれたふし。1595年刊ねんかん死後しご刊行かんこう[5][6]

はんあいだ差異さい追加ついかぶん分析ぶんせきすることで、モンテーニュの思考しこう時間じかんともにどう変遷へんせんしていったかがかる。現在げんざいかんがえと矛盾むじゅんしているときでさえも、モンテーニュは以前いぜん記述きじゅつのぞくことはなかったようである。

関根せきねやくぜん6さつ)、荒木あらきやくぜん3さつ[9])、宮下みやしたやくぜん7さつ)は、かく電子でんし書籍しょせき再刊さいかん

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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  1. ^ UNESCO Memory of the World Register”. UNESCO. 2023ねん5がつ27にち閲覧えつらん
  2. ^ だい3かん11しょうウィキソース原文げんぶん
  3. ^ だい2かん12しょうウィキソース原文げんぶん
  4. ^ だい1かん26しょうウィキソース原文げんぶん
  5. ^ Montaigne, Michel de. The Complete Essays. Trans. M. A. Screech. London: Penguin, 2003 (1987), p. 1284
  6. ^ Les Essais (1595 text), Jean Céard, Denis Bjaï, Bénédicte Boudou, Isabelle Pantin, Hachette, Pochothèque, 2001, Livre de Poche, 2002.
  7. ^ はらやくべつばんは、かく筑摩書房ちくましょぼうで『世界せかい古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう37・38 モンテーニュ』、『筑摩ちくま世界せかい文学ぶんがく大系たいけい13・14 モンテーニュ』
  8. ^ 全集ぜんしゅう新版しんぱん)はぜん9かんは「たび日記にっき」「書簡しょかんしゅう
  9. ^ 荒木あらきやくへんやく)はグーテンベルク21で、関根せきねやく国書刊行会こくしょかんこうかいで、かく・2024ねん電子でんし書籍しょせき

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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