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カシミール語 - Wikipedia

カシミール (カシミールご、Kashmiri, कॉशुर, کٲشُر) は、おもインドジャンムー・カシミールしゅう西部せいぶはなされている言語げんごである。パキスタンにも少数しょうすう話者わしゃがいる。インド・アーリアダルドぐんぞくし、このかたりぐんなかではもっともよくられた言語げんごである。話者わしゃ人口じんこうやく710まんにん(2011ねん[1]

カシミール
کٲشُر, कॉशुर kạ̄šur
はなされるくに インドの旗 インド
パキスタンの旗 パキスタン
地域ちいき カシミール
話者わしゃすう 710まんにん(2011ねん[1]
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい ペルシア文字もじデーヴァナーガリーラテン文字もじシャーラダー文字もじ
公的こうてき地位ちい
公用こうよう インドの旗 インド ジャンムー・カシミール連邦れんぽう直轄ちょっかつりょう[2]
少数しょうすう言語げんごとして
承認しょうにん
インドの旗 インド連邦れんぽう政府せいふ[3]
言語げんごコード
ISO 639-1 ks
ISO 639-2 kas
ISO 639-3 kas
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インド憲法けんぽうだい8付則ふそくさだめられた22の指定してい言語げんごのひとつである。スリナガル一帯いったいはなされる方言ほうげん標準ひょうじゅんてきかんがえられている[4]。ただし、ジャンムー・カシミールしゅう公用こうようウルドゥーである[5]

インドだい部分ぶぶん言語げんご語順ごじゅんが SOV であるのにたいし、カシミールドイツ同様どうようV2語順ごじゅんる。

カシミール地方ちほうは、14世紀せいき以降いこうイスラム国家こっか支配しはいけ、イスラムすすんだ。1907ねんまではペルシア公用こうようであり、それ以降いこうはペルシア影響えいきょうつよけたウルドゥー公用こうようになった。このため、カシミールはペルシアつよ影響えいきょうけている[6]

音声おんせい

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ほかのインド言語げんごことなり、カシミールには /a i u e o/ それぞれのたん母音ぼいんちょう母音ぼいんくわえて、ちゅうした母音ぼいん /ɨ ɨː ə əː/ およびみじか/ɔ/存在そんざいするため、たん母音ぼいんが8つ、ちょう母音ぼいんが7つ存在そんざいする。さらにはな母音ぼいん発達はったつしている[7]。インドの言語げんごなかでも非常ひじょうおおくの種類しゅるい母音ぼいんのある言語げんごである。ただし、カシミール母音ぼいん分析ぶんせき学者がくしゃによる意見いけんちがいがある[8]

子音しいんでは ts tsh と c ch とを区別くべつする。いわゆるゆう声帯せいたいおん存在そんざいしないのはパンジャーブ同様どうようだが、パンジャーブのように声調せいちょう発達はったつさせてはいない。

カシミール子音しいんのもうひとつの特徴とくちょう口蓋こうがい子音しいんであり、c ch j š 以外いがいのすべての子音しいんについて口蓋こうがい子音しいん音韻おんいんてき区別くべつする[9]語末ごまつでも対立たいりつがある。

意味いみ カシミール ヒンディー
庭師にわし bāgvān bāgvān
幸運こううん bāg'vān bhāgyavān

文法ぶんぽう

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カシミール文法ぶんぽう基本きほんてきにはヒンディーなどとあまりわらない。名詞めいし男女だんじょ2種類しゅるいせいかれ、単数たんすう複数ふくすう変化へんかし、かくおけによってあらわされ、ぞくかくのちおけ形容詞けいようしてき変化へんかする。形容詞けいようし修飾しゅうしょくする名詞めいしせいかずかく一致いっちさせるが、変化へんか形容詞けいようしもある。形容詞けいようし名詞めいしぞくかく修飾しゅうしょくする名詞めいしまえかれる。冠詞かんしはないが、不定ふていをあらわす接尾せつびがある。代名詞だいめいし独立どくりつがたと、動詞どうし主語しゅご目的もくてきあらわのち倚辞がたがある。

動詞どうし現在げんざい分詞ぶんしコピュラ人称にんしょうせいすうによって変化へんかする)をわせ、過去かこではのうかく構文こうぶんって動詞どうし自動詞じどうし主語しゅご他動詞たどうし目的もくてきせいかず一致いっちさせるが、人称にんしょうおけ二人称ににんしょうのみ、単数たんすうまたは複数ふくすう)は主語しゅご一致いっちする。未来みらい接尾せつびくわえることであらわす。完了かんりょう接尾せつびをつけた分詞ぶんしがたをコピュラとわせて表現ひょうげんする。

カシミール風変ふうがわりなてん動詞どうしぶん番目ばんめることで(V2語順ごじゅん)、みなみアジアのほとんどの言語げんご(インド・アーリアだけでなく、イランドラヴィダ語族ごぞくムンダーチベット・ビルマ語族ごぞく同様どうよう)が SOV であるのとくらべ、いちじるしく例外れいがいてきである。いち番目ばんめ要素ようそ主語しゅごである必要ひつようはなく、目的もくてきであっても、場所ばしょ時間じかんあらわかたりであってもよく、その場合ばあい主語しゅご動詞どうしのあとにかれる。また、コピュラと分詞ぶんし助動詞じょどうし不定ふていわせたかたちでは、コピュラ・助動詞じょどうし番目ばんめに、分詞ぶんし不定ふてい通常つうじょう文末ぶんまつかれる[10][11]

表記ひょうき

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かつてナーガリー文字もじ系統けいとうシャーラダー文字もじもちいたが、現在げんざいおもアラビア文字もじけいペルシア文字もじもちいる。

デーヴァナーガリー使用しようする場合ばあいは、ちゅうした母音ぼいんあらわすためのいくつかの記号きごう追加ついかしてもちいる[12]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b Ethnologue による
  2. ^ The Jammu and Kashmir Official Languages Act, 2020”. The Gazette of India (27 September 2020). 2021ねん8がつ5にち閲覧えつらん
  3. ^ インド憲法けんぽうだい8付則ふそく指定していインドの公用こうよう一覧いちらん参照さんしょう
  4. ^ Koul (2007) 1.1
  5. ^ “Jammu and Kashmir”. 50th Report of the Commissioner for Linguistic Minorities in India (July 2012 to June 2013). (2014-07-16). p. 18. http://nclm.nic.in/shared/linkimages/NCLM50thReport.pdf. "The Official Language of the State is Urdu." 
  6. ^ Koul (2011)
  7. ^ Koul (2007) pp.900-901
  8. ^ Masica (1993) pp.112-113
  9. ^ れいは Koul (2007) p.902 より
  10. ^ Masica (1993) pp.335-336
  11. ^ Koul (2007) p.931
  12. ^ Koul (2007) 1.3

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Koul, Omkar N (2007) [2003]. “Kashmiri”. In George Cardona; Dhanesh Jain. Indo-Aryan Languages. Routledge. ISBN 020394531X 
  • Koul, Omkar N (2011). “KASHMIR iv. Persian Elements in Kashmiri”. イラン百科ひゃっか事典じてん. XVI, Fasc. 1. pp. 56-61. http://www.iranicaonline.org/articles/kashmiri-language 
  • Masica, Colin P (1993) [1991]. The Indo-Aryan languages (paperback ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521299446 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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