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キュクロープス - Wikipedia

キュクロープス

ギリシア神話しんわ巨人きょじん

キュクロープス古代こだいギリシャ: ΚύκλωψKýklōps)は、ギリシア神話しんわ登場とうじょうする卓越たくえつした鍛冶たんや技術ぎじゅつ単眼たんがん巨人きょじんであり、下級かきゅうかみである一族いちぞくである。あるいは、これを下敷したじおよびベースとして後世こうせい誕生たんじょうした伝説でんせつ生物せいぶつをもす。

エラスムス・フランキスキErasmus Francisci)の著書ちょしょられるキュクロープスの挿絵さしえ

ちょう母音ぼいん省略しょうりゃくしてキュクロプスとも表記ひょうきされる。英語えいごみのサイクロプス (Cyclopsでもられる。

呼称こしょう

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ギリシア Κύκλωψ原義げんぎは "κύκλος"(kýklosえんまる)と "ψぷさい"(ṓps)からもとめられる「まる」にあり、がく中央ちゅうおうまるが1つだけいていることに由来ゆらいする。

ラテン語らてんご Cyclops(キュクロープス)。英語えいごめいCyclopsサイクロプス)であり、この英語えいごめい発音はつおん仮名かめい転写てんしゃされ、日本語にほんごでは一般いっぱんてきとなっている。フランス語ふらんすごでは cyclope (スィクロプ)、ドイツでは Kyklop (キュクロープ)。中国ちゅうごくでは「独眼どくがん巨人きょじん」、もしくは、音訳おんやくで「もとかつらくひろし」としるす。

なお、そのちなんだ事象じしょう、および、ここから派生はせいした創作そうさくぶつについては「サイクロプス」を参照さんしょう

かみとしてのキュクロープス

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天空てんくうしんウーラノス大地だいちははしんガイア息子むすこたちで、アルゲース落雷らくらい[1]稲妻いなづま[2])、ステロペース電光でんこう[1]雷光らいこう[2])、ブロンテース雷鳴らいめい[1][2])の3兄弟きょうだいから構成こうせいされる。いずれもかみなり関連かんれんする名前なまえであり、かみなりせいだったのではないかといわれる。

かれらはちちしんきらわれ、兄弟きょうだいぞくヘカトンケイルぞくとともに奈落ならくタルタロスとされた。おとうとぞくティーターンかみ1人ひとりクロノス政権せいけんにぎったあとも、ひさしく拘禁こうきんされたままであった。しかし、ティーターノマキアーとき、ゼウスらによって解放かいほうされる。キュクロープスたちはそのれいとして、ゼウスには雷霆らいていを、ポセイドーンには三叉みつまたの銛を、ハーデースにはかくかぶとつくった。

以後いごヘーパイストスのもとで鍛冶たんやぎょうつづけたといわれる。その一方いっぽうで、息子むすこアスクレーピオスをゼウスの稲妻いなづまうしなったアポローンたりをらい、虐殺ぎゃくさつされたという悲劇ひげきてきつてもある。

怪物かいぶつとしてのキュクロープス

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『オデュッセイア』に登場とうじょうする単眼たんがん巨人きょじんポリュペーモス。

ホメーロス叙事詩じょじしオデュッセイア』のだい9うた登場とうじょうするキュクロープスぞくは、上述じょうじゅつこう次元じげんてき存在そんざいとしてのキュクロープスとはおおきくことなり、旅人たびびとらうただ粗暴そぼうなだけの怪物かいぶつである。ポセイドーンしんちちポリュペーモスふくめて、そうであった。

キュクロープスの巨石きょせき建造けんぞうぶつ

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イオーニアじんアカイアじんドーリアじんというだい3ギリシアじんよりまえ時代じだいペロポネーソス半島はんとうではミュケーナイ(ミケーネ)、ティーリュンスアルゴスなどに代表だいひょうされるミュケーナイ文明ぶんめいさかえたが、それらは巨石きょせきによって城砦じょうさいそのをきずきあげるものであった。

おくれてこのはい定着ていちゃくしただい3ギリシアじんは、先人せんじんのこした大掛おおがかりな巨石きょせき建造けんぞうぶつ数々かずかずるにつけ、これらを巨人きょじんキュクロープスのになるものとかんがえ、「キュクロープスの石造せきぞうぶつ英語えいごばん」とならわすようになったらしい。これは英国えいこくストーンヘンジ代表だいひょうされるストーンサークルヨーロッパ各地かくちメンヒルドルメンといった巨石きょせき記念きねんぶつ神秘しんぴてきられ、巨人きょじんのこしたものかんがえられたのにている部分ぶぶんがある。

芸術げいじゅつ作品さくひんなかのキュクロープス

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単眼たんがんきょじんなにであったのか

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英国えいこくロンドン自然しぜん博物館はくぶつかん地質ちしつ博物館はくぶつかんない地球ちきゅうギャラリー展示てんじされているキュクロープスの模型もけい(なぜこれが地質ちしつがく関連かんれん展示てんじぶつなのかについては、#単眼たんがんきょじんなにであったのか参照さんしょうのこと)。

製鉄せいてつかみ

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天目てんもくいち箇神(アメノマヒトツノカミ)と天津てんしんあさ(アマツマラ)はともに日本にっぽん神話しんわ登場とうじょうする製鉄せいてつ鍛冶たんやかみであり、キュクロプスとおなじく、1つである。同様どうように、たたら製鉄せいてつ関連かんれんしてかみちかきょじんであるダイダラボッチ隻眼せきがん(せきがん)とされる場合ばあいがある。また、妖怪ようかい一本いっぽんだたらさき天目てんもくいち箇神が凋落ちょうらくした姿すがたともかんがえられている。これら、製鉄せいてつぜん世界せかいてきにはさらにふるきをふくめて「せい」とうべき)と隻眼せきがん単眼たんがん)の関連かんれんせい注目ちゅうもくあたいする。「隻眼せきがん#神話しんわ伝説でんせつなか隻眼せきがん」も参照さんしょう

このほかにも、日本にっぽん妖怪ようかいひと小僧こぞうがそうであるように、逃亡とうぼうふせ目的もくてき故意こい片目かためつぶした人身御供ひとみごくうよう人間にんげん神格しんかくしたことに起源きげんするともわれる存在そんざいも、なかにはある。

先天せんてんせいの1つ、ほか

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関連かんれんせい証明しょうめいされないが、可能かのうせいとして無視むしのできないものに、先天せんてんせい奇形きけいの1形態けいたいである単眼たんがんしょうcyclopia)がある。これは、ぜんのう胞の発育はついく異常いじょうによって胞が左右さゆう分離ぶんりしなかったために、不完全ふかんぜん眼球がんきゅう1個いっこだけ本来ほんらいはなができるはずの付近ふきんっているという奇形きけいである[3]単眼たんがんしょうは、上述じょうじゅつ隻眼せきがん後天こうてんせい隻眼せきがん)とは異質いしつである。差別さべつされ排斥はいせきされる対象たいしょうであった異形いぎょう人間にんげんは、どのような時代じだいにも、口伝くでんする人々ひとびとかたわらにいたのであり、伝承でんしょうじょう異形いぎょう存在そんざいとの関係かんけいを、いとばかりはえないであろう。ちなみに、すんでじゅつとおり、英語えいごではキュクロープスのことをサイクロプス(cyclops)とむ。単眼たんがんしょうがキュクロープスのモデルであるかどうかはべつとして、単眼たんがんしょう英語えいごでは「cyclopia」と命名めいめいされているのは、1つ巨人きょじんサイクロプスに由来ゆらいしてのことである[3]

ゾウの頭蓋骨ずがいこつ由来ゆらい

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コビトゾウ (Dwarf elephant頭蓋骨ずがいこつ化石かせき標本ひょうほん。ドイツ、ミュンヘンのヘラブルン動物どうぶつえん (Tierpark Hellabrunn) 所蔵しょぞう

地質ちしつがくてき知見ちけんからは、「出土しゅつどしたゾウ頭蓋骨ずがいこつ化石かせき由来ゆらいがある」とのせつとなえられている[だれ?]。ゾウの頭蓋骨ずがいこつ正面しょうめんには、長大ちょうだいはな見合みあ巨大きょだい鼻腔びこうが1つひらいている。かれらの眼窩がんか(がんか)は側面そくめん位置いちしているうえ鼻腔びこうくらべてはるかにちいさい。そのため、「ゾウをたことのかった当時とうじ人々ひとびと鼻腔びこう眼窩がんか勘違かんちがいし、“頭部とうぶ前面ぜんめんに1つそなえたこわろしげな巨人きょじんぞう”を想起そうきしたのではないか」という推論すいろんである。なお、ここでう「当時とうじ人々ひとびと」とは、よくられている“自然しぜん科学かがく発達はったつした全盛期ぜんせいきギリシア文明ぶんめい人々ひとびと”のことではなく、“ギリシア文化ぶんかつらなる特定とくていのきわめてふる時代じだいきた人々ひとびと”をす。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c フェリックス・ギラン『ギリシア神話しんわ中島なかじまけんやく青土おうづちしゃ 1991、23ぺーじ
  2. ^ a b c 山北やまきたあつし細江ほそえひろみ『1にち3ふんむだけで一生いっしょうかたれる モンスター図鑑ずかんすばるしゃ 2020、148ぺーじ
  3. ^ a b 菊地きくち ひろしよし吉木よしき たかし 監修かんしゅう病態びょうたい病理びょうりがく改訂かいていだい17はん)』 p.669 南山なんざんどう 2004ねん4がつ14にち発行はっこう ISBN 4-525-15147-1

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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