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サイエンス・ファンタジー - Wikipedia

サイエンス・ファンタジーえい: science fantasy)とは、サイエンス・フィクション要素ようそファンタジー要素ようそ混合こんごうした作品さくひんぞくするジャンルである。

『Other Worlds』の表紙ひょうし

サイエンス・ファンタジーとサイエンス・フィクション

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ロッド・サーリングは、「サイエンス・フィクションはしんじがたい可能かのうなことをえがき、サイエンス・ファンタジーはもっともらしい不可能ふかのうなことをえがく」と定義ていぎしている。すなわち、サイエンス・フィクションはありないとおもわれるがじつ世界せかい特定とくてい条件下じょうけんかではきうることをえがき、サイエンス・ファンタジーは一見いっけんしてリアルなことをえがくが、それはじつ世界せかいではどういう状況じょうきょうでもないことである。べつ解釈かいしゃくとして、サイエンス・フィクションはちょうつね現象げんしょうてき要素ようそ存在そんざい許容きょようしないが、サイエンス・ファンタジーは許容きょようするという見方みかたもできる。しかし、サイエンス・フィクションとされている作品さくひんであってもテレパシーなどのちょうつね現象げんしょうてき要素ようそ使つかっている場合ばあいがあるので、この定義ていぎはややなんがある。

一般いっぱんに「サイエンス・ファンタジー」は、サイエンス・フィクションとぶにはファンタジーてきかんじられる現実げんじつからの距離きょりかんがある作品さくひんや、ファンタジーとぶにはサイエンス・フィクションてき要素ようそつよ作品さくひんす。出発しゅっぱつてんことなるため理論りろんじょうことなるジャンル(ファンタジック・サイエンス・フィクションとサイエンティフィック・ファンタジー)のようにおもわれるが、最終さいしゅうてき作品さくひん区別くべつがつかないことがある。

アーサー・C・クラーククラークのさん法則ほうそくにある「充分じゅうぶん発達はったつした科学かがく技術ぎじゅつは、魔法まほう見分みわけがかない」という言葉ことばはこれをしめしている。様々さまざま魔法まほう登場とうじょうするファンタジーをくとき、高度こうどすすんだ技術ぎじゅつ未知みち高度こうど先進せんしん科学かがく魔法まほう仕組しくみを説明せつめいするものとして利用りようし、サイエンス・フィクションにちかづけることができる。また、技術ぎじゅつ高度こうど進化しんかした未来みらい世界せかいえがき、その技術ぎじゅつ効果こうか魔法まほうのようにえがくこともできる。あるいは、魔法まほうのある世界せかいえがき、一部いちぶ人々ひとびと(たとえばリーダーだけ)がそれがテクノロジーによるものだとっているとすることもある。

したがって、魔法まほうのような現象げんしょうえがかれたとしても、それをもってサイエンス・フィクションなのかファンタジーなのかを判断はんだんする本質ほんしつてき基準きじゅんとはならない。魔法まほうてき現象げんしょうを「ファンタジーてき」とするか「サイエンス・フィクションてき」とするかは、慣習かんしゅう問題もんだいである。ハイパースペース、タイムマシン、科学かがくしゃなどはサイエンス・フィクションの慣習かんしゅうてき概念がいねんであり、そらぶじゅうたん、魔法まほうのアミュレット、魔法使まほうつかいはファンタジーの用語ようごである。これは、ジャンルの発達はったつ史上しじょう偶然ぐうぜんである。一部いちぶ概念がいねん現象げんしょう)はかさなりっており、物質ぶっしつ転送てんそうビームによる瞬間しゅんかん移動いどうはサイエンス・フィクションだが、魔法まほうによる瞬間しゅんかん移動いどうはファンタジーである。不可視ふかしせいあたえるはこ可能かのう偽装ぎそう機械きかいはサイエンス・フィクションだが、不可視ふかしせいあたえるちから指輪ゆびわはファンタジーである。精神せいしん精神せいしん通信つうしんは「精神せいしん力学りきがく(サイオニクス)」によるものかもしれないし、古代こだい妖精ようせいのような技能ぎのうかもしれない。したがって問題もんだい現象げんしょうそのものではなく(科学かがくてきには一般いっぱん不可能ふかのうとされていても、作者さくしゃはそうしんじているとはかぎらない)、そこでえがこうとしている世界せかい全体ぜんたいぞうである。たとえば宇宙うちゅう旅行りょこう陽子ようしじゅうてきたら「サイエンス・フィクション」に分類ぶんるいされ、それにふさわしい用語ようご偽装ぎそう機械きかい物質ぶっしつ転送てんそう)が使つかわれ、しろ帆船はんせんけんてきたら「ファンタジー」に分類ぶんるいされ、魔法まほう指輪ゆびわ魔法まほう使つかった移動いどう方法ほうほうかたられることになる。まとめると、サイエンス・フィクションは不思議ふしぎ現象げんしょう説明せつめいするのにテクノロジーをし、ファンタジーは魔法まほうす。おおくの場合ばあい、サイエンス・フィクションは現象げんしょう説明せつめい既知きち物理ぶつり法則ほうそく使つかうか、それらの妥当だとう拡張かくちょう使つかう。サイエンス・ファンタジーは一般いっぱん物理ぶつり法則ほうそく無視むしする(つまり魔法まほうす)か、既知きち物理ぶつり法則ほうそくとは無関係むかんけい独自どくじ物理ぶつり法則ほうそく考案こうあんして使つかう。また、サイエンス・フィクションは物理ぶつり法則ほうそくやその拡張かくちょう詳細しょうさい記述きじゅつする傾向けいこうがあるが、サイエンス・ファンタジーは独自どくじ物理ぶつり法則ほうそくについておおまかな説明せつめいしかくわえない。

サイエンス・フィクションとサイエンス・ファンタジーの境界きょうかいせんこうとしても、どちらも架空かくう世界せかいえがき、人類じんるい以外いがい知的ちてき生物せいぶつ登場とうじょうし(たとえばC・L・ムーアの『シャンブロウ』)、ものすごいモンスターが登場とうじょうすることがあり、なかなか明確めいかくには線引せんひきできない。C・S・ルイスの『ナルニアこくものがたり』がファンタジーであってべつ惑星わくせいはなしではないというのは、作者さくしゃ意思いしおおきくかかわっている。

懐古かいこ趣味しゅみはファンタジーの重大じゅうだいしるしの1つだが、それさえも両者りょうしゃ完全かんぜん識別しきべつする特徴とくちょうではない。のある武器ぶき銃眼じゅうがんきの要塞ようさいがある古風こふう世界せかいであっても、そのような文明ぶんめい段階だんかい到達とうたつしたべつ惑星わくせいえがいていることもある。マリオン・ジマー・ブラッドリーの《ダーコーヴァ年代ねんだい》はそのような世界せかいえがいており、魔法まほう区別くべつのつかないテクノロジーの典型てんけいである。アン・マキャフリイの《パーンのりゅう騎士きし》シリーズは、最初さいしょ作品さくひん冒頭ぼうとう部分ぶぶんでサイエンス・フィクションてき設定せっていかれているにもかかわらず、りゅうてくるというだけでファンタジーだとおも読者どくしゃおおい。

歴史れきしてき観点かんてん

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「サイエンス・ファンタジー」という呼称こしょうひろまったのは、実際じっさいにそのような作品さくひんロバート・A・ハインラインの「魔法まほう株式会社かぶしきがいしゃ」、L・ロン・ハバードSlaves of Sleep など)がパルプ・マガジン多数たすう掲載けいさいされたのちのことである。フレッチャー・プラットL・スプレイグ・ディ=キャンプの《ハロルド・シェイ》シリーズなどもある。これらはジョン・W・キャンベルアンノウン掲載けいさいされたもので、やや合理ごうり主義しゅぎてきなストーリーであった。これらは、ファンタジーや伝説でんせつにサイエンス・フィクションの技法ぎほう精神せいしん適用てきようしようとするこころみだった。

ヘンリー・カットナーC・L・ムーアスタートリング・ストーリーズ掲載けいさいした作品さくひんぐんはもっとロマン主義しゅぎてきである。それらはかれらや作家さっかウィアード・テイルズいたおおくの作品さくひん(たとえば、前述ぜんじゅつした「シャンブロウ」をふくむムーアの《ノースウェスト・スミス》シリーズ)と密接みっせつ関連かんれんしている。

初期しょきのサイエンス・フィクションの出版しゅっぱんしゃノーム・プレスは1950ねんロバート・E・ハワードの『征服せいふくおうコナン』のハードカバーばん出版しゅっぱんしたが、そのカバーにははっきりと「サイエンス・ファンタジー」とかれていた。

エース・ブックスは1950年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけて、サイエンス・ファンタジーを多数たすう出版しゅっぱんした。リイ・ブラケット火星かせい舞台ぶたいにしたしょ作品さくひんもそのように分類ぶんるいされていた。『征服せいふくおうコナン』はエースダブルでも出版しゅっぱんされたが、わされた作品さくひんはブラケットの『リアノンのけん』だった。ほかにもアンドレ・ノートンの《ウィッチ・ワールド》シリーズがあるが、これはいまでは完全かんぜんなファンタジーに分類ぶんるいされている。マーセデス・ラッキー最近さいきん、《ウィッチ・ワールド》の初期しょきの3作品さくひん合本がっぽんにしたほん前書まえがきで、このあたりの経緯けいいろんじている。この当時とうじ(1960年代ねんだい後半こうはん)、アメリカでサイエンス・ファンタジーとばれていたのはこのシリーズだけだったとっても過言かごんではない。

サイエンス・ファンタジーのなかのサブジャンル

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にゆく地球ちきゅう

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ジャック・ヴァンスの『Dying Eatrh』シリーズ(『終末しゅうまつあか地球ちきゅう』など)は、サイエンス・フィクションで一般いっぱんてき宇宙うちゅうろんとはことなる宇宙うちゅうろん採用さいようしていることから、サイエンス・ファンタジーと分類ぶんるいされることがある。にゆく地球ちきゅうえがいたほか作品さくひんとしては、M・ジョン・ハリスンの『ヴィリコニウム》シリーズ、ジーン・ウルフの『あたらしい太陽たいようしょ』シリーズがサイエンス・ファンタジーに分類ぶんるいされることがおおい。

惑星わくせい冒険ぼうけん小説しょうせつ

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ストーリーのほとんどが1つの惑星わくせい展開てんかいし、その風景ふうけい原住民げんじゅうみん文化ぶんか描写びょうしゃしつつ冒険ぼうけんたんつづられるもの。サイエンス・フィクションの道具立どうぐだてでファンタジーのような物語ものがたりえがくという意味いみでサイエンス・ファンタジーの色彩しきさいい。

デイヴィッド・リンゼイの『アルクトゥールスへのたび』(1920ねん)が初期しょきれいとしてげられるが、サイエンス・フィクションてき道具立どうぐだてがほとんど登場とうじょうしないため、ほし哲学てつがくてきテーマを展開てんかいするための舞台ぶたいとして使つかった哲学てつがくてき冒険ぼうけんたんとでもうべきものである。C・S・ルイスの『マラカンドラ 沈黙ちんもく惑星わくせいはなれて』(1938ねん)も同種どうしゅ小説しょうせつだが、こちらは哲学てつがくてきというよりも神学しんがくてきである。どちらも魔法まほうてき要素ようそはかろうじて合理ごうりてき説明せつめいされており、ルイスの場合ばあいはストーリー展開てんかい疑似ぎじ科学かがくてき機械きかいからんでくるてんこう対照たいしょうをなしている。

このたねのサイエンス・ファンタジーには、元々もともとあいまいなサイエンス・フィクションふうちょう自然しぜんてきパワーと魔法まほう意図いとてきにぼやかしてえがくものもある。たとえば、ポール・アンダースンの「空気くうきやみ女王じょおう」には、神話しんわ神秘しんぴてきちから幻影げんえいとしてせるほしじん登場とうじょうする。そのほしじんみずからを魔術まじゅつしょうしている。

世界せかい

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サイエンス・ファンタジーのなかにはファンタジー世界せかいをサイエンス・フィクションてき装飾そうしょくうすおおったような世界せかいえがくものがあり、標準ひょうじゅんてきなファンタジーとの区別くべつもっとむずかしい。初期しょきれいとしてはE・R・エディスンの『ウロボロス』がある。舞台ぶたい水星すいせいとされているが、ファンタジー世界せかいまった区別くべつできないような世界せかいえがかれている。これは、ファンタジーとサイエンス・ファンタジーの境界きょうかいせんにあるともえる。

アンドレ・ノートンの《ウィッチ・ワールド》シリーズでは、パラレルワールドとしてファンタジー世界せかいえがいている。このシリーズの初期しょき短編たんぺんにはサイエンス・フィクションてき要素ようそすこしだけあったが、作品さくひんほどその要素ようそうすれていった。

テリー・ブルックスの《シャナラ》シリーズでは、技術ぎじゅつ文明ぶんめいうしなわれたどお未来みらい世界せかいとしてファンタジー世界せかいえがいている。

けん惑星わくせい

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地球ちきゅう以外いがい惑星わくせい舞台ぶたいとしてヒロイック・ファンタジーのようなストーリーが展開てんかいする作品さくひんエドガー・ライス・バローズしょ作品さくひんはほとんどこの分類ぶんるいになる。またかれ模倣もほうして追随ついずいしたO・A・クラインケネス・バルマーリン・カータージョン・ノーマンなども同様どうようである。武器ぶきとしてけん使用しようし、古代こだい貴族きぞく社会しゃかいえがかれていることから「サイエンス・ファンタジー」に分類ぶんるいされる。しかしバローズ本人ほんにん作品さくひん懐疑かいぎ主義しゅぎてきで、(ジョン・カーターがどうやって火星かせいったのかという説明せつめいがないてんのぞいて)不合理ふごうりなファンタジーてき要素ようそがほとんどない。

ファンタジーがファンタジーてき要素ようそをファンタジーの論理ろんりだけで説明せつめいするのにたいして、サイエンス・ファンタジーはじつ世界せかい科学かがくとも互換ごかんせいのあるかたち説明せつめいするという部分ぶぶん両者りょうしゃ区別くべつすることがある。古典こてんてきれいとしてポール・アンダースンの『魔界まかい紋章もんしょう』がある。このなか炭素たんそをシリコンにえると放射ほうしゃせい同位どういたいしょうじるため、いし非常ひじょう危険きけんとされている。また、『だい魔王まおう作戦さくせん』にはおおかみおとこ登場とうじょうするが、変身へんしんさいには質量しつりょう保存ほぞん法則ほうそくっているため、おおきさはわらない。

テーブルトークRPGで「サイエンス・ファンタジー」という言葉ことば使つかわれたのは1980ねんGamma World最初さいしょの1つとおもわれる(ダンジョンズ&ドラゴンズ発売はつばいしたTSRしゃ作品さくひん)。そのまえMetamorphosis Alpha(1976ねん)はサイエンス・フィクションと分類ぶんるいされており、2つのジャンルの混乱こんらんぶりを象徴しょうちょうしている。ロールプレイングゲームではサイエンス・ファンタジーはよくられ、コンピュータRPGでもその傾向けいこうわらない。コンピュータRPGのれいとしては「ファイナルファンタジーシリーズ」、「女神めがみ転生てんせい」、「ペルソナシリーズ」、「ドラゴンクエストシリーズ」、「スターオーシャンシリーズ」などがあり、ディストピアてき未来みらい世界せかい設定せっていにファンタジー要素ようそ導入どうにゅうしたものとることもできる。

関連かんれん項目こうもく

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