サビ

寂さび（さび）とは、謡曲ようきょく・語かたりものなどで声帯せいたいを強つよく震ふるわせて発はっする調子ちょうしの低ひくいもの、低ひくく渋しぶみのある声こえの質しつ、太ふとくてすごみのあることを指さす。

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サビとは、日本にっぽん風ふうの歌謡かよう曲きょく、ポップ・ミュージック（J-POP）などの大衆たいしゅう音楽おんがくにおける楽曲がっきょくの聞きかせどころのこと。

定義ていぎ

冒頭ぼうとう及およびサビ以前いぜんとの対比たいひ

• 「冒頭ぼうとうのフレーズとは異ことなる楽節がくせつ」（ヤマハのサイト『楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょPLUS』）
• 「楽曲がっきょくの中なかほどから曲想きょくそうの変化へんかする部分ぶぶん」（河合楽器製作所かわいがっきせいさくしょのサイト『意い美音びおん』）
• 「旋律せんりつ・和声わせい共ともに最初さいしょの動機どうきとは違ちがったものによって構成こうせいされる」（平凡社へいぼんしゃ『音楽おんがく大だい事典じてん』）
• 「楽曲がっきょくの中なか間あいだ部分ぶぶんにおける、冒頭ぼうとうのテーマとは対照たいしょう的てきな楽節がくせつ部分ぶぶんを指さす俗称ぞくしょう」（リットーミュージック『最新さいしん音楽おんがく用語ようご事典じてん』）

最もっとも…

• 「しばしば曲きょく中ちゅうで最もっとも印象いんしょう的てきな部分ぶぶんになる」（音楽之友社おんがくのともしゃ『新編しんぺん音楽おんがく中ちゅう辞典じてん』）
• 「特とくに曲きょくの最もっとも盛もり上あがる部分ぶぶんを指さすことが多おおい」（河合楽器製作所かわいがっきせいさくしょのサイト『意い美音びおん』）

サビ区間くかんの自動じどう推定すいていに関かんする研究けんきゅうを行おこなう産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究所けんきゅうじょ情報じょうほう技術ぎじゅつ研究けんきゅう部門ぶもん首席しゅせき研究けんきゅう員いんの後藤ごとう真孝まさたかによると、楽曲がっきょく全体ぜんたいの構成こうせいにおいて一番いちばん代表だいひょう的てきな盛もり上あがる主題しゅだいの部分ぶぶんであるとし、最もっとも多おおく繰くり返かえされ印象いんしょうに残のこり、訓練くんれんされていない者ものが楽曲がっきょくを聴きいた場合ばあいでもサビは容易よういに判断はんだんできるものであるとしている。そのためフックとも呼よばれる。

なお、リットーミュージック『最新さいしん音楽おんがく用語ようご事典じてん』によれば、サビの概念がいねんはスタンダード・ジャズの時代じだいから存在そんざいしたが、当時とうじは曲きょくの盛もり上あがりを指さす言葉ことばではなかったとされ、「サビという言葉ことばの意味いみは時代じだいと共ともに変かわりつつある」としている。

楽らく式しきを用もちいた定義ていぎ

Bをサビとするケース

• 「A+B+A'」のB部分ぶぶん（ヤマハのサイト『楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょPLUS』）
• 「A+A+B+A」で32小節しょうせつの1コーラスを形成けいせいした上うえでのB部分ぶぶんをサビと定義ていぎ（平凡社へいぼんしゃ『音楽おんがく大だい事典じてん』）
• 「A+A+B+A」あるいは「A+A'+B+A''」という楽曲がっきょくの構成こうせいにおけるB部分ぶぶん（音楽之友社おんがくのともしゃ『新編しんぺん音楽おんがく中ちゅう辞典じてん』）
• 「A+A+B+A」という構成こうせいをアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのポピュラー音楽おんがくで最もっとも一般いっぱん的てきなリフレイン・パートとした上うえで、その中なかのB部分ぶぶんにあたる8小節しょうせつをサビと定義ていぎし、A部分ぶぶんに対たいしてB部分ぶぶんは異ことなった調しらべで書かかれるとしている。（音楽之友社おんがくのともしゃ『新しん音楽おんがく辞典じてん（楽らく語ご）』）
• 「A+A'+B+A''」の構成こうせいにおけるB部分ぶぶんを典型てんけい的てきなサビとし、この場合ばあいA''部分ぶぶんを「サビあと」という、としている。（リットーミュージック『最新さいしん音楽おんがく用語ようご事典じてん』）

Cをサビとするケース

• 「A+B+C」という構成こうせいにおけるC部分ぶぶんを指さすと定義ていぎ（音楽之友社おんがくのともしゃ『新編しんぺん音楽おんがく中ちゅう辞典じてん』）
• 新あたらしい用法ようほうとして「A+B+C」のC部分ぶぶんをサビと呼よぶこともあるとし、この場合ばあいは「楽曲がっきょくの後半こうはん部ぶでの盛もり上あがりが期待きたいされる」としている。（リットーミュージック『最新さいしん音楽おんがく用語ようご事典じてん』）

なお、リットーミュージック『最新さいしん音楽おんがく用語ようご事典じてん』によれば、「A+B+A'+C」のようにサビが存在そんざいしない場合ばあいもあるとしている。

語源ごげん

デジタル大辞泉だいじせんによると語源ごげんは不ふ詳しょうとされており、寂さびのある声こえなどと語源ごげんを同おなじくしている可能かのう性せいを指摘してきしている。また、音楽おんがく業界ぎょうかいではかなり早はやくから使つかわれていたともされている。

講談社こうだんしゃ「暮くらしのことば 新しん・語源ごげん事典じてん」によれば、「聞きかせどころ、見みどころ」などを意味いみする語かたり「さわり」の別べつない回いまわしであると定義ていぎした上うえで、香辛料こうしんりょうのワサビが語源ごげんであるとしており、「ワサビは『サビ抜ぬき』という表現ひょうげんなどに見みられるように縮ちぢめて『サビ』とも言いう。サビは少量しょうりょうでも刺激しげき的てきな味あじがすることから、曲きょくの中なかで最もっともインパクトがある部分ぶぶんを『サビ』と言いうようになったのだろう」と述のべている。

サビの「要素ようそ」

音楽おんがくプロデューサーの亀田かめだ誠治せいじによると、邦楽ほうがくにおける「サビに欠かかせない3要素ようそ」として「高たかい音おと」「長ながく伸のびる音おと」「リフレイン（繰くり返かえし）」を挙あげている。

「高たかい音おと」について、亀田かめだはレミオロメン「粉雪こゆき」を例れいに挙あげ、「高たかい音おとは良よく届とどき、周囲しゅういの声こえに埋うずもれない」「音おとの高低こうてい差さがドラマを生うむ」「歌うたい手ての気持きもちを最もっとも強つよく伝つたえるサビに楽曲がっきょくの最さい高音こうおんを持もってくるのがコツ」であると述のべている。「リフレイン」については円まどか広志ひろし「夢想むそう花はな」、THE BLUE HEARTS「リンダリンダ」、DREAMS COME TRUE「何なん度どでも」を例れいに挙あげ、「サビで同おなじフレーズを繰くり返かえすが、これには呪文じゅもんのようなインパクトがある」「楽曲がっきょくを印象いんしょう付つけるための要素ようそとしてリフレインは有効ゆうこうな手段しゅだん」であると述のべている。

発展形はってんけい

頭あたまサビ（あたまサビ）とは、楽曲がっきょくの冒頭ぼうとうにおけるサビを指さす。このような「いきなりサビから始はじまる曲きょく」のことを「サビ始はじまり」と言いうときもある。

大だいサビ（おおサビ）とは、楽曲がっきょくの後半こうはん部分ぶぶんで、最後さいごのサビの前まえに挿入そうにゅうされる独自どくじのメロディの事ことを指さす。繰くり返かえし出でてきたサビとは異ことなるメロディが出でてくる事ことによって、最後さいごのサビをより新鮮しんせんに、印象いんしょう的てきに聴きかせる効果こうかを持もつ。前出ぜんしゅつの亀田かめだ誠治せいじは、大だいサビを「結婚式けっこんしきでいうところのお色直いろなおし」、「起承転結きしょうてんけつの転てんにあたる部分ぶぶん」としている。また、「最後さいごのサビをもう一度いちど美味おいしく味あじわっていただきたいという日本人にっぽんじんならではのおもてなし」と表現ひょうげんしている。ただしこの部分ぶぶんを「Dメロ」の様ように呼よび、楽曲がっきょくの最後さいごのサビを「大だいサビ」と呼よぶ場合ばあいもある。

落おちサビ（おちサビ）とは、最後さいごのサビの前まえに挿入そうにゅうされる、楽器がっきの音量おんりょうを極端きょくたんに落おとしてボーカルを目立めだたせたサビを指さす。「ラストに向むけて盛もり上あがっていくために抑おさえめにする」意味いみがあるという。

大だいサビと落おちサビは、同おなじ曲きょくの中なかで併用へいようされることもある。

ラスサビとは、楽曲がっきょくの最後さいごのサビの事ことを指さす。

サビと類似るいじする概念がいねんとの比較ひかく

英語えいごでは同様どうようの概念がいねんをリリース（release）、ブリッジ（bridge）、チャネル（channel）、ミドルパートなどと呼よばれるとされる。前出ぜんしゅつの平凡社へいぼんしゃ『音楽おんがく大だい辞典じてん』によれば、通常つうじょうのポピュラー音楽おんがくは「ヴァース」と「コーラス」から構成こうせいされ（ヴァース‐コーラス形式けいしき）、このうち「コーラス」部分ぶぶんが反復はんぷくされるとしている。「A+A+B+A」で構成こうせいされた楽曲がっきょくの場合ばあいは32小節しょうせつで「1コーラス」を形成けいせいし、このB部分ぶぶんがブリッジ（サビ）である、と解説かいせつしている。「ヴァース」は省略しょうりゃくされる場合ばあいもあるとしている。

前出ぜんしゅつの亀田かめだ誠治せいじの解説かいせつによれば、ヴァース‐コーラス形式けいしきにおいては「ヴァース」の部分ぶぶんで「サビ」で言いうようなことをすべて言いいきり、「コーラス」は「大だいサビ」にあたるような「別べつのメロディー感かん」がある、としている。