ズグロハゲコウ

ズグロハゲコウ
	パンタナールで撮影さつえい
保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか
	LEAST CONCERN; (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)); ワシントン条約じょうやく附属ふぞく書しょI
分類ぶんるい
学名がくめい
	Jabiru mycteria; Lichtenstein, 1819
英名えいめい
	Jabiru
	分布ぶんぷ域いき

ズグロハゲコウ（頭あたま黒くろ禿かぶろ鸛こうのとり、学名がくめい：Jabiru mycteria）は、コウノトリ目めコウノトリ科かに分類ぶんるいされる鳥類ちょうるいの一種いっしゅ。別名べつめいズグロコウ。ズグロハゲコウ属ぞくは本ほん種しゅのみが分類ぶんるいされる単たん型がた属ぞくである。英名えいめいにもなっている「Jabiru」はトゥピ・グアラニー語ごで「腫はれた首くび」を意味いみする^[3]。

分類ぶんるいと名称めいしょう

1819年ねんにマルティン・ハインリヒ・リヒテンシュタインによって記載きさいされた。「Jabiru」という名なは他たの鳥とりにも使つかわれており、オーストラリアのセイタカコウとサブサハラアフリカのクラハシコウはこう呼よばれることがある。アラン・ガーディナーのヒエログリフにおけるG29はクラハシコウを描えがいたものと考かんがえられており、記号きごう表ひょうでは「Jabiru」と表記ひょうきされることがある。Ephippiorhynchus はズグロハゲコウに最もっとも近ちかい現生げんなま種しゅであると考かんがえられており、この種たねが旧きゅう世界せかいに起源きげんを持もつことを示しめしている^[4]。

ブラジルで発見はっけんされた後期こうき更新こうしん世よの化石かせき属ぞくであるProciconia は、実際じっさいにはズグロハゲコウ属ぞくに分類ぶんるいされる可能かのう性せいがある。ズグロハゲコウ属ぞくの化石かせき種しゅは、ベネズエラのウルマコ（英語えいご版ばん）近郊きんこうにあるザンクリアンの地層ちそうから発見はっけんされ、Jabiru codorensis と命名めいめいされた^[5]。

ポルトガル語ごでは「tuiuiu」、「tuim-de-papo-vermelho （マットグロッソ州しゅうでの呼よび名な、意味いみは「赤あかい首くびのtuim」）」、「cauauá（アマゾン盆地ぼんちでの呼よび名な）」と呼よばれる。「jabiru」という名前なまえはアメリカトキコウにも使用しようされている。

分布ぶんぷ

メキシコからアルゼンチンまでのアンデス山脈あんですさんみゃくより西側にしがわを除のぞくアメリカ大陸あめりかたいりくに分布ぶんぷする。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに迷鳥として現あらわれることもあり、通常つうじょうはテキサス州しゅうで、またミシシッピ州しゅう、オクラホマ州しゅう、ルイジアナ州しゅうでも目撃もくげきされている^[6]^[7]。ブラジルのパンタナールとパラグアイのグランチャコ東部とうぶで最もっともよく見みられる。

形態けいたい

南みなみアメリカと中央ちゅうおうアメリカの飛とぶ鳥とりの中なかでは最もっとも背せが高たかく、はるかに重おもい飛とべない鳥とりであるレアとほぼ同おなじ高たかさになることが多おおい。大陸たいりく全体ぜんたいで見みると、翼つばさ開ひらき長ちょうはアンデスコンドルに次ついで2番目ばんめに大おおきい（ただし南みなみアメリカ大陸あめりかたいりくの南岸なんがんには時折ときおり本ほん種しゅより大おおきなワタリアホウドリ属ぞく（英語えいご版ばん）が飛来ひらいする。）^[4]。成鳥せいちょうは全長ぜんちょう120-140cm、翼つばさ開ひらき長ちょう2.3-2.8m、体重たいじゅう4.3-9kgである^[4]。性的せいてき二形ふたなりが大おおきく、おそらくコウノトリ類るいでは最大さいだいで、雄ゆうは雌めすより約やく25%大おおきい。雄ゆうの体重たいじゅうは平均へいきん6.89kgで、雌めすは平均へいきん5.22kgである^[8]。大型おおがたの雄ゆうでは体高たいこう1.53mに達たっすることもある。嘴くちばし長ちょうは25-35cmで、黒くろく幅広はばひろの嘴くちばしはわずかに上向うわむきで、先端せんたんは鋭するどく尖とがっている。尾長おながは20-25cm、跗蹠長ちょうは28.5-39cm、翼つばさ弦つる長ちょうは58.5-73cmである^[4]。羽毛うもうは大だい部分ぶぶんが白色はくしょくだが、頭部とうぶと首くびの上部じょうぶは羽毛うもうが無なく黒色こくしょくの肌はだが露出ろしゅつしており、首くびの基部きぶは赤あかく、伸縮しんしゅく性せいがある^[9]。雌雄しゆうは外見がいけんが似にているが、雄ゆうの方ほうが大型おおがたであるため、両性りょうせいが一緒いっしょにいると目立めだつ。地上ちじょうでは不格好ぶかっこうに見みえるかもしれないが、力強ちからづよく優雅ゆうがに飛とぶ鳥とりである。

生態せいたい

生活せいかつと食しょく性せい

川かわや池いけの近ちかくに大おおきな群むれで生息せいそくし、カエル、魚さかな、ヘビ、カタツムリ、昆虫こんちゅう、その他たの無む脊椎動物せきついどうぶつを食たべる^[10]。乾期かんきに死しんだ魚さかななど、新鮮しんせんであれば死し肉にくも食たべるため、孤立こりつした水域すいいきの水質すいしつ維持いじに役立やくだつ。群むれで餌えさを食たべ、通常つうじょうは浅瀬あさせを歩あるいて餌えさを探さがす。視覚しかくよりも触覚しょっかくで獲物えものを探知たんちしており、嘴くちばしを水面すいめんに対たいして45度どの角度かくどで開ひらいて移動いどうする。獲物えものに触ふれると、嘴くちばしを閉とじて水みずから引ひき上あげ、頭あたまを後うしろに倒たおして飲のみ込こむ^[11]。通常つうじょうは8-20cmの魚さかなを捕食ほしょくするが、500g以上いじょうの大おおきな魚さかなや80cmのウナギも捕食ほしょくされることがある^[12]^[13]。日和見ひよりみ的てきな捕食ほしょく者しゃであり、農業のうぎょう地帯ちたいでハツカネズミの個体こたい数すうが爆発ばくはつ的てきに増加ぞうかした際さいには、普段ふだんは大群たいぐんで見みられることの少すくないズグロハゲコウ数すう百ひゃく羽わがネズミを餌えさにしているのが観察かんさつされた^[4]。小型こがたのコウノトリであるアメリカトキコウとエンビコウに労働ろうどう寄生きせいをしようとする姿すがたも稀まれに観察かんさつされている^[4]。

繁殖はんしょくと成長せいちょう

巣すと雛ひな

巣すはつがいで作つくられ、繰くり返かえし使用しようされる。他たの多おおくのコウノトリと異ことなり、繁殖はんしょく期き以外いがいもつがいでいることが多おおいため、生涯しょうがいにわたる絆きずながあると推測すいそくされる^[14]。巣すは両親りょうしんが8-9月に背せの高たかい木きの上うえに作つくり、毎年まいとし拡大かくだいし、直径ちょっけい数すうmにもなる。幅はばよりも深ふかさの大おおきいことが多おおく、最大さいだいで幅はばは1m、深ふかさは1.8mになる^[11]。6個この巣すが至近しきん距離きょりに作つくられることもあり、サギなど他たの鳥とりの巣すの間あいだに作つくられることもある。両親りょうしんは交代こうたいで2-5個この白しろい卵たまごを温あたため、繁殖はんしょく期きには他たのコウノトリに対たいして通常つうじょうよりも縄張なわばり意識いしきが強つよくなる。アライグマや同種どうしゅを含ふくむ他ほかのコウノトリはズグロハゲコウの卵たまごを時折ときおり捕食ほしょくするが、捕食ほしょく者しゃのほとんどは巨大きょだいな嘴くちばしを持もつ成鳥せいちょうを避さけるようで、健康けんこうな成鳥せいちょうを捕食ほしょくする生物せいぶつは知しられていない^[11]。幼鳥ようちょうは生後せいご約やく110日とおかで巣立すだつが、その後ご約やく3ヶ月かげつ間あいだ、親鳥おやどりの世話せわを受うけることが多おおい。抱だき卵たまご期間きかんが長ながいため、毎年まいとし繁殖はんしょくすることは難むずかしく、二に年ねん連続れんぞくで繁殖はんしょくをするつがいは半分はんぶん以下いかである。さらには二に年ねん連続れんぞく繁殖はんしょくに成功せいこうするつがいはわずか25％である。平均へいきん寿命じゅみょうは36年ねんである^[11]。染色せんしょく体たい数かずは2n = 56である^[15]。

人ひととの関かかわり

広範囲こうはんいに分布ぶんぷしているが、どの地域ちいきでも数かずが多おおいわけではない。IUCNのレッドリストでは低てい危険きけん種しゅとされており、1988年ねん時点じてんの近きん危急ききゅう種しゅという評価ひょうかからは改善かいぜんされた^[1]。ベリーズでは1973年ねん以来いらい保護ほごの対象たいしょうとなっており、同どう地域ちいきでの個体こたい数すうは徐々じょじょに増加ぞうかしている。米国べいこくでは渡わたり鳥どりを保護ほごする法律ほうりつの対象たいしょうとなっている^[11]。

画像がぞう

巣すとつがい
飛翔ひしょう
巻貝まきがいを食たべる
巣すの材料ざいりょうを運はこぶ
頭蓋骨ずがいこつ

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

出典しゅってん

^ ^a ^b BirdLife International (2021). “Jabiru mycteria”. IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T22697710A163624043. doi:10.2305/IUCN.UK.2021-3.RLTS.T22697710A163624043.en 2024年ねん10月がつ2日にち閲覧えつらん。.
^ “Appendices CITES”. cites.org. 2024年ねん10月がつ2日にち閲覧えつらん。
^ Wildlife of the World. Dorling Kindersley Ltd. (2015). p. 103. ISBN 9780241247143
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f Hancock & Kushan, Storks, Ibises and Spoonbills of the World. Princeton University Press (1992), ISBN 978-0-12-322730-0
^ Walsh, S. A.; Sánchez, R. (2008). “The first Cenozoic fossil bird from Venezuela”. Paläontologische Zeitschrift 82 (2): 105–112. Bibcode: 2008PalZ...82..105W. doi:10.1007/bf02988402.
^ Steven L. Hilty; William L. Brown (1986). A Guide to the Birds of Colombia. Princeton University Press. p. 72. ISBN 9780691083728
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^ CRC Handbook of Avian Body Masses, 2nd Edition by John B. Dunning Jr. (Editor). CRC Press (2008), ISBN 978-1-4200-6444-5.
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^ Seligmann ICA; Furo, I. O.; Dos Santos, M. S.; Tagliarini, M. M.; Araujo CCD; O'Brien PCM; Ferguson-Smith, M. A.; de Oliveira EHC (2019). “Comparative Chromosome Painting in Two Brazilian Stork Species with Different Diploid Numbers”. Cytogenetic and Genome Research 159 (1): 32–38. doi:10.1159/000503019. PMID 31542782.

参考さんこう文献ぶんけん

『世界せかいの動物どうぶつ｜分類ぶんるいと飼育しいく　コウノトリ目め+フラミンゴ目め』、財団ざいだん法人ほうじん東京とうきょう動物どうぶつ園えん協会きょうかい、1985年ねん、58頁ぺーじ

外部がいぶリンク

"Jabiru" . Encyclopædia Britannica (英語えいご). Vol. 15 (11th ed.). 1911.

[IUCN-1] BirdLife International (2021). “Jabiru mycteria”. IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T22697710A163624043. doi:10.2305/IUCN.UK.2021-3.RLTS.T22697710A163624043.en 2024年ねん10月がつ2日にち閲覧えつらん。.

[2] “Appendices CITES”. cites.org. 2024年ねん10月がつ2日にち閲覧えつらん。

[3] Wildlife of the World. Dorling Kindersley Ltd. (2015). p. 103. ISBN 9780241247143

[Hancock-4] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f Hancock & Kushan, Storks, Ibises and Spoonbills of the World. Princeton University Press (1992), ISBN 978-0-12-322730-0

[5] Walsh, S. A.; Sánchez, R. (2008). “The first Cenozoic fossil bird from Venezuela”. Paläontologische Zeitschrift 82 (2): 105–112. Bibcode: 2008PalZ...82..105W. doi:10.1007/bf02988402.

[6] Steven L. Hilty; William L. Brown (1986). A Guide to the Birds of Colombia. Princeton University Press. p. 72. ISBN 9780691083728

[7] Steve N. G. Howell; Ian Lewington; Will Russell (2014). Rare Birds of North America. Princeton University Press. p. 211. ISBN 9780691117966

[8] CRC Handbook of Avian Body Masses, 2nd Edition by John B. Dunning Jr. (Editor). CRC Press (2008), ISBN 978-1-4200-6444-5.

[9] Thomas S. Schulenberg (2010). Birds of Peru: Revised and Updated Edition. Princeton University Press. p. 38. ISBN 9780691130231

[10] Kahl, M. P. (1971). “Observations on the Jabiru and Maguari storks in Argentina, 1969”. The Condor 73 (2): 220–229. doi:10.2307/1365842. JSTOR 1365842.

[ADW-11] “[https://animaldiversity.org/accounts/Jabiru_mycteria/ Jabiru mycteria jabiru]”. Animal Diversity Web. 2024年ねん10月がつ2日にち閲覧えつらん。

[12] Thomas, Betsy Trent (1985). “Coexistence and behavior differences among the three western hemisphere storks”. Ornithological Monographs (36): 921–931. doi:10.2307/40168325. JSTOR 40168325.

[13] Del Hoyo, Josep, et al. Handbook of the birds of the world. Vol. 1. No. 8. Barcelona: Lynx edicions, 1992.

[14] Kahl, M. P. (1973). “Comparative ethology of the Ciconiidae. Part 6. The blacknecked, saddlebill, and jabiru storks (genera Xenorhynchus, Ephippiorhynchus, and Jabiru)”. The Condor 75 (1): 17–27. doi:10.2307/1366532. JSTOR 1366532.

[15] Seligmann ICA; Furo, I. O.; Dos Santos, M. S.; Tagliarini, M. M.; Araujo CCD; O'Brien PCM; Ferguson-Smith, M. A.; de Oliveira EHC (2019). “Comparative Chromosome Painting in Two Brazilian Stork Species with Different Diploid Numbers”. Cytogenetic and Genome Research 159 (1): 32–38. doi:10.1159/000503019. PMID 31542782.

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