ホラー小説しょうせつ

ホラー小説しょうせつ（ホラーしょうせつ）は、恐怖きょうふを主題しゅだいとして、読者どくしゃに恐怖きょうふ感かんを与あたえるため（恐こわがらせるため）に書かかれた小説しょうせつ。恐怖きょうふ小説しょうせつあるいは怪奇かいき小説しょうせつなどとも呼よぶ。

ブラム・ストーカーの小説しょうせつ『吸血鬼きゅうけつきドラキュラ』は、20世紀せいきで最もっとも高たかく評価ひょうかされたホラーベストセラーの一ひとつであり、現在げんざいでも最もっとも尊敬そんけいされている文学ぶんがく作品さくひんの一ひとつ。

「恐怖きょうふは人類じんるいの最もっとも古ふるい感情かんじょうである」というラヴクラフトの言葉ことばがある。それを反映はんえいして恐怖きょうふの対象たいしょうとして描えがかれたものは多岐たきにわたり、古ふるくは神かみや霊れい、吸血鬼きゅうけつき等ひとしといった超ちょう自然しぜん的てきな物事ものごとが扱あつかわれた。宇宙うちゅうから見みた人間にんげん存在そんざいの儚はかなさ／疎外そがい感かんを恐怖きょうふと感かんじれば、それも恐怖きょうふ小説しょうせつのテーマとなりうる（ラヴクラフト自身じしんのコズミック・ホラーのなかで見事みごとに描えがかれている）。近年きんねんでは人間にんげん心理しんりの謎なぞを扱あつかうサイコホラー（あるいはサイコスリラー）も人気にんきである。しかし一方いっぽうで、発達はったつ障害しょうがいや精神せいしん疾患しっかんに対たいするステレオタイプな誤解ごかいをもたらす可能かのう性せいもある（例れいとして「アスペルガー症候群しょうこうぐんと社会しゃかい」、「『狂きょう鬼おに人間にんげん』について」など）。スタイルや恐怖きょうふの対象たいしょうによって、ゴシックホラーやモダンホラーという分類ぶんるいもある。ホラー小説しょうせつとホラー映画えいがの間あいだには、同おなじ怪奇かいきを扱あつかっているという以上いじょうの強つよい関連かんれんがみられる。

欧米おうべいにおけるホラー小説しょうせつの歴史れきし

「ゴシック小説しょうせつ」も参照さんしょう

欧米おうべいにおけるホラー小説しょうせつの根源こんげんは、民話みんわや聖ひじり伝つたえ、死しや来世らいせ、悪わるないしは人間にんげんの心しんの内うちを占しめるものへの関心かんしんがある^[1]。これらの要素ようそは魔女まじょや吸血鬼きゅうけつき、人ひと狼おおかみ、幽霊ゆうれいといった形かたちで表現ひょうげんされた

18世紀せいきにおけるゴシックホラー小説しょうせつ

エドガー・アラン・ポー

1764年ねんにホレス・ウォルポールが発表はっぴょうした『オトラント城じょう奇き譚たん』は、世間せけんに賛否さんぴ両論りょうろんを巻まき起おこし、前述ぜんじゅつの要素ようそを組くみ合あわせたゴシックホラー小説しょうせつが18世紀せいきに流行りゅうこうすることとなった。『オトラント城じょう奇き譚たん』は純粋じゅんすいな現実げんじつ主義しゅぎよりも超ちょう自然しぜん的てきなものに重おもきを置おいたところが、現代げんだい小説しょうせつ史しにおいて画期的かっきてきな存在そんざいであるとみなされている実際じっさい、この小説しょうせつの初版しょはんは、中世ちゅうせいのイタリアで実際じっさいにあったロマンスを架空かくうの翻訳ほんやく者しゃが翻訳ほんやくしたという体裁ていさいをとっていた時代じだい錯誤さくごや当時とうじの常識じょうしきに反はんする要素ようそが含ふくまれていただけでなく、文体ぶんたいが貧相ひんそうであるという欠点けってんがあったにもかかわらず、『オトラント城じょう奇き譚たん』は瞬またたく間まに世間せけんの人気にんきを博はくし、ウィリアム・トマス・ベックフォードの『ヴァセック』 (1786年ねん) 、アン・ラドクリフの『ユードルフォの秘密ひみつ』（1794年ねん）および『イタリアの惨劇さんげき』（ 1797年ねん）、マシュー・グレゴリー・ルイスの『マンク』（1796年ねん）といったこの作品さくひんに影響えいきょうを受うけたゴシック小説しょうせつが生うみ出だされた。もう一ひとつ特筆とくひつすべき点てんとして、ゴシックホラー小説しょうせつの書かき手ての大半たいはんが女性じょせいであり、読よみ手ての多おおくも女性じょせいであったことが挙あげられる。この当時とうじのゴシックホラー小説しょうせつの典型てんけい的てきな筋書すじがきは、裕福ゆうふくな女おんな主人公しゅじんこうが陰気いんきな城しろで恐おそろしい目めに遭あうというものだった^[2]。

19世紀せいきにおけるホラー小説しょうせつ

メアリー・シェリー

19世紀せいきになると、それまで流行りゅうこうしたゴシック小説しょうせつは、今日きょうまで続つづくホラー小説しょうせつへと昇華しょうかし、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』 (1818)や、ロバート・ルイス・スティーブンソン『ジーキル博士はかせとハイド氏し』 (1886)、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像しょうぞう』(1890)、ブラム・ストーカーの『吸血鬼きゅうけつきドラキュラ』(1897)、エドガー・アラン・ポーおよびシェリダン・レ・ファニュの作品さくひん群ぐんといった、今日きょうでも映画えいがなどでよく知しられる名作めいさくがこの時代じだいに誕生たんじょうした^[3]。

20世紀せいき

20世紀せいきに入はいって間あいだもないころ、パルプ・マガジンの大だいブームが起おき、それに伴ともなう形かたちでホラー作家さっかの数かずも増ふえた。見世物みせもの小屋こやの一団いちだんを描えがいた映画えいが『フリークス』の原作げんさく『スパーズ（英語えいご版ばん）』の著者ちょしゃとして知しられるトッド・ロビンズ（英語えいご版ばん）は、『オールストーリー』といった大手おおてパルプ誌しに、狂気きょうきや残酷ざんこくさを売うりにした作品さくひんを度々たびたび投稿とうこうした^[4]^[5]。その後ご、ホラー作家さっかに活躍かつやくの場ばを与あたえに来きたかのようにウィアード・テイルズ^[6]やアンノウン・ワールズといった専門せんもん誌しが登場とうじょうした^[7]。

クトゥルフ神話しんわをはじめとするコズミックホラーの開拓かいたく者しゃとして知しられるハワード・フィリップス・ラヴクラフトや、幽霊ゆうれいもの（英語えいご版ばん）の再さい定義ていぎを行おこなったことで知しられるモンタギュウ・ロウズ・ジェイムズといった、20世紀せいき初頭しょとうに活躍かつやくした大物おおものホラー作家さっかの一部いちぶは、これらの雑誌ざっしを利用りようした。

草創そうそう期きの映画えいがも様々さまざまな面めんにおいてホラー小説しょうせつの影響えいきょうを受うけていた一方いっぽう、ホラー映画えいがおよびホラー小説しょうせつを原作げんさくとした映画えいがも一いちジャンルとして確立かくりつし今日きょうまで生いき続つづけている。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

「冷気れいき」（1925）、「アウトサイダー」（1921）、「死体したい安置あんち所しょで」（1926）をはじめとするラヴクラフトの作品さくひん群ぐんにおける「動うごく屍かばね」の描写びょうしゃは今日きょうにおけるゾンビものの先駆さきがけとして知しられる。また、1954年ねんにリチャード・マシスンが発表はっぴょうした『地球ちきゅう最後さいごの男おとこ』もジョージ・A・ロメロをはじめとするゾンビ映画えいがの製作せいさく者しゃたちに影響えいきょうを与あたえた作品さくひんとして知しられている。

現代げんだいホラー

スティーブン・キング

『キャリー』、『シャイニング』、『IT-イット-』、『ミザリー』等ひとし多数たすうの作品さくひんで知しられるスティーヴン・キングは現代げんだいホラーで最もっとも知しられている作家さっかの一人ひとりである^[8] 。 1970年代ねんだい初頭しょとうから、キングの作品さくひんは多おおくの読者どくしゃの支持しじを集あつめ、2003年ねんには長年ながねんの功績こうせきがたたえられ全米ぜんべい図書としょ協会きょうかいから表彰ひょうしょうを受うけた^[9] 。他たに著名ちょめいな現代げんだいホラー作家さっかとして、ディーン・R・クーンツ、クライヴ・バーカー^[10] 、ラムジー・キャンベル,^[11]、ピーター・ストラウブ、そして『タイタス・クロウ』シリーズで知しられるブライアン・ラムレイや、映画えいが『ザ・フォッグ』の原作げんさく者しゃであるジェームズ・ハーバート（英語えいご版ばん）、などがいる。現代げんだいのベストセラー作さくの中なかにも、ホラー小説しょうせつに関連かんれんしたジャンルの作品さくひんがいくつかある。たとえば、人ひと狼おおかみものと現代げんだいファンタジーを融合ゆうごうさせたキャリー・ヴォーン（英語えいご版ばん）の『キティ・ノーヴィル（英語えいご版ばん）』や、官能かんのう的てきなゴシック小説しょうせつ作品さくひんを多おおく出だしてきたアン・ライス、映像えいぞう化かもされたR・L・スタインのオムニバスホラー『グースバンプス』などがある。また、他たジャンルとのクロスオーバー作品さくひんも増ふえている。たとえば、ダン・シモンズの『ザ・テラー極北きょくほくの恐怖きょうふ（英語えいご版ばん）』は古典こてんホラーの「もし」を描えがいた歴史れきし改変かいへんSFであり、セス・グレアム＝スミスの『高慢こうまんと偏見へんけんとゾンビ』はジェーン・オースティンの小説しょうせつ『高慢こうまんと偏見へんけん』のパロディとしても知しられている。また、マーク・Z・ダニエレブスキーの『紙かみ葉はの家いえ』（ en:House of Leaves）は恐怖きょうふをより突つき詰つめた複雑ふくざつ怪奇かいきな作品さくひんであり、全米ぜんべい図書としょ賞しょうの最終さいしゅう候補こうほ作さくになったことでも知しられている。

ホラー作家さっか一覧いちらん（日本にっぽん）

ホラー作家さっか一覧いちらん（日本にっぽん以外いがい）

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