ミタンニ(ヒッタイト語:Mi-ta-an-ni)またはミッタニ(ヒッタイト語:Mi-it-ta-ni、アッシリア語: Ḫa-ni-gal-bat - 「ハニガルバト」)は、フルリ人が紀元前16世紀頃メソポタミア北部のハブル川上流域を中心に建国した王国である。多民族社会で戦士階級に支配される封建的国家だった。フルリ人の系統は不明だが、支配階級層については元はインド・アーリア語派の出自を持つと推定される(後述)。
フルリ人(フリ人、旧約聖書でホリ人と呼ばれる人々と言われている)のフルリ語は系統不明の膠着語と考えられている(インド・アーリア系ではない)[注釈 1]。ヒッタイトのボアズキョイ、エジプトのアマルナ等から出土した楔形文字で記された外交文書(アマルナ文書など)によって知られる。かつてはインド=ヨーロッパ語族とされていた。書き言葉として、アッカド語と楔形文字を用いていたといわれる。フルリ人は紀元前18世紀頃から活動したらしく、同じ頃エジプトに侵入したヒクソスと関係があるとの見方もある。特に馬を用いる技術に長け、ヒッタイトにおける馬の技術もフルリ人から導入されたと考えられる。
ただし残された文書の中には明らかにサンスクリットで解釈できる単語が多い。ヒッタイトとミタンニとの間の条約ではインドのヴェーダの神ミトラ、ヴァルナ、インドラやナーサティヤ(アシュヴィン双神)に誓いが立てられている。また人名にもサンスクリットで解釈できるものが多い。「ミタンニの調馬師キックリ」による文書(ボアズキョイ出土)にはaika(サンスクリットのeka、1を意味する)、tera(tri、 3)、panza(pañca、5)、satta(sapta、7)、na(nava、9)、vartana(丸い、梵: vartana)といった単語が使われ、ほかの文書にはbabru(babhru、茶色い)、parita(palita、灰色の)、pinkara(赤い、梵: piṅgala [赤みがかった茶色] )といった単語もある。彼らの一番重要な祭りはvishuva(冬至・夏至)であった。ミタンニの支配階級である戦士は自分たちをmaryannu(勇士)[注釈 2]と呼んだ。これらのことから戦士はインド・アーリア語派の出自を持つと考えられる。
いずれもサンスクリットで解釈できる名である(Sutarna「善き太陽」、Paratarna「大いなる太陽」、Parashukshatra「斧を持つ支配者」、Saukshatra「善き支配者」、Ritadhama「宇宙の法に従う」、Mativaja「祈りに富める者」など)。
- キルタ Kirta 紀元前1500年 - 紀元前1490年頃
- シュッタルナ1世 Šuttarna 紀元前1490年 - 紀元前1470年頃
- バラタルナ(フランス語版) Barattarna 紀元前1470年 - 紀元前1450年頃
- パルシャタタール Parša(ta)tar 紀元前1450年 - 紀元前1440年頃※バラタルナと同一人物の可能性あり
- シャウシュタタール Sauštatar 紀元前1440年 - 紀元前1410年頃
- アルタタマ1世 Artatama 紀元前1410年 - 紀元前1400年頃
- シュッタルナ2世 Šutarna II 紀元前1400年 - 紀元前1380年頃
- アルタシュマラ Artaššumara 紀元前1380年 - 紀元前1380年頃
- トゥシュラッタ Tušratta 紀元前1380年 - 紀元前1350年頃
- アルタタマ2世
- シュッタルナ3世
- シャッティワザ Šattiwaza(マッティワザMattiwaza) 紀元前1350年 - 紀元前1320年頃
- シャットゥアラ1世 Šattuara I 紀元前1320年 - 紀元前1300年頃
- ワサシャッタ Wasašatta 紀元前1300年 - 紀元前1280年頃
- シャットゥアラ2世 Šattuara II 紀元前1280年 - 紀元前1270年頃[注釈 3]
- ケムネ宮殿の発掘調査
2019年、前年の旱魃によりモスルダムの水位が低下し、ミタンニ王国時代のケムネ宮殿の遺跡が発見された[1]。同遺跡からは楔形文字が記載された粘土板が発掘されたが発掘直後に水位が回復したため、再び水没した[1]。
2022年、旱魃により再び同遺跡が出現し、100枚以上の粘土板が入った陶器が発見された[2]。発掘後、遺跡保護のためにビニールシートと砂利で覆っており、その後の水位の回復により再び水没している状態となっている[3]。
- ^ コーカサス諸語とくに北東コーカサス語との関連を主張する説もある
- ^ 梵: marya [死すべきもの]
- ^ シャットゥアラ1世と同一人物の可能性あり。
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