ロックアウト

ロックアウト（英えい: lockout）とは、締しめ出で（し・す）・閉塞へいそく・閉鎖へいさ（する）・排除はいじょ（する）などを表あらわす英単語えいたんごである。

転てんじて、設備せつびや施設しせつ、敷地しきちの立たち入いりを制限せいげんし、本来ほんらいそれを利用りようして何なん等とうかの利益りえきを得えようとする相手あいてに対たいして譲歩じょうほなり撤回てっかいなりといった、要求ようきゅうを飲のませる交渉こうしょう手段しゅだんを指さしてこのように呼よぶ。

一いち例れいを挙あげると作業さぎょう所ところ閉鎖へいさ、工場こうじょう閉鎖へいさ、店舗てんぽ閉鎖へいさ、就労しゅうろう拒否きょひなどである。

日本にっぽんの労働ろうどう争議そうぎにおけるロックアウト

労働ろうどう争議そうぎ発生はっせい時じに経営けいえい者しゃ（使用しよう者しゃ）側がわが、事務所じむしょ、工場こうじょう、店舗てんぽなどの作業さぎょう所しょを一時いちじ的てきに閉鎖へいさ（封鎖ふうさ）して労働ろうどう者しゃの就業しゅうぎょうを拒こばみ、賃金ちんぎんを支払しはらわないことで労働ろうどう者しゃが起おこしたストライキなどの争議そうぎ行為こういに対抗たいこうする。労働ろうどう者しゃ側がわの自主じしゅ管理かんり運営うんえいを阻止そしするために行おこなわれる。即すなわち、ストライキとは逆ぎゃくの手法しゅほうである。

ロックアウトにおいては、就業しゅうぎょうを拒こばんだ使用しよう者しゃが、賃金ちんぎん支払しはらい義務ぎむを免除めんじょされるかどうかが大おおきな争点そうてんとなる。日本にっぽんの最高裁判所さいこうさいばんしょは、使用しよう者しゃの争議そうぎ行為こういとしてロックアウト権けんの存在そんざいを認みとめ、正当せいとうな範囲はんい内ないであれば賃金ちんぎん支払しはらい義務ぎむの免除めんじょを認みとめる立場たちばをとっているが、正当せいとう性せいの判断はんだんは厳格げんかくで、容易よういには認みとめていない。

職業しょくぎょう安定あんてい法ほう第だい20条じょうでロックアウトが行おこなわれている事業じぎょう所しょに公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんてい所しょが求職きゅうしょく者しゃを紹介しょうかいすることを禁止きんししている。

また、特定とくてい独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん等とう労働ろうどう関係かんけい法ほう第だい17条じょう第だい2項こう及および地方ちほう公営こうえい企業きぎょう等とう労働ろうどう関係かんけい法ほう第だい11条じょうにより、特定とくてい独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん、国有こくゆう林野りんや事業じぎょうを行おこなう国営こくえい企業きぎょう、地方ちほう公営こうえい企業きぎょう、特定とくてい地方ちほう独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじんはロックアウトをすることができない。

労働ろうどう関係かんけい調整ちょうせい法ほう第だい7条じょうでいう「争議そうぎ行為こうい」に、ロックアウトは含ふくまれると解ほぐされている。したがって、使用しよう者しゃは、同どう法ほう第だい9条じょうの規定きていにより、ロックアウトをしたときはその旨むねを届とどけ出で、また事業じぎょうが公益こうえき事業じぎょうである場合ばあいにロックアウトをしようとする場合ばあいには、同どう法ほう労ろう第だい37条じょうの規定きていにより、事前じぜんの予告よこくが必要ひつようである。

詳細しょうさいは「労働ろうどう関係かんけい調整ちょうせい法ほう」を参照さんしょう

ロックアウトの正当せいとう性せいについては、以下いかの条件じょうけんのいずれかに該当がいとうするロックアウトは正当せいとう性せいが無ないとの通達つうたつを厚生こうせい労働省ろうどうしょうは出だしており、ストライキなきロックアウトは違法いほうとの司法しほう判例はんれいを行政府ぎょうせいふとして確認かくにんしている。また、正当せいとう性せいの無ないロックアウトに対たいし、行政ぎょうせい機関きかんは指導しどうを行おこなうべきとの判断はんだんを示しめしている。

正当せいとう性せいのないロックアウトの条件じょうけん

1. 労働ろうどう者しゃによって争議そうぎ行為こういが現げんに行おこなわれていない場合ばあい
2. 労働ろうどう者しゃによって争議そうぎ行為こういが行おこなわれるおそれが明白めいはくかつひっ迫ぱくして存在そんざいしない場合ばあい
3. 労働ろうどう者しゃが争議そうぎ行為こういを中止ちゅうしして就労しゅうろうを請求せいきゅうし、かつ、その後ご争議そうぎ行為こういが行おこなわれるおそれが全まったくなくなった場合ばあい

労働ろうどう委員いいん会かいが正当せいとう性せいの無ないロックアウトを実施じっしした使用しよう者しゃに対たいして労働ろうどう委員いいん会かい規則きそく第だい59条じょうの規定きていによる警告けいこくを発はっした事例じれいとしては、パンアメリカン航空こうくう会社かいしゃ事件じけん(三さん十じゅう九都委調違第二号、東京とうきょう地労委ちろうい昭和しょうわ三さん十じゅう九きゅう年ねん十二月じゅうにがつ十じゅう八はち日にち警告けいこく)が存在そんざいする。また、警告けいこくには至いたらなかったが、同どう趣旨しゅしの判断はんだんを示しめしたものとして、ノのースウエスト航空すうえすとこうくう会社かいしゃ事件じけん(三さん十じゅう九都委調違第三号、東京とうきょう地労委ちろうい昭和しょうわ三さん十じゅう九きゅう年ねん十二月じゅうにがつ十じゅう八はち日にち通告つうこく)、関西かんさい急送きゅうそう株式会社かぶしきがいしゃ事件じけん(京きょう労ろう委い(予よ違たがえ)第だい二に号ごう、京都きょうと地労委ちろうい昭和しょうわ四よん十じゅう年ねん六ろく月がつ十じゅう八はち日にち警告けいこく)がある。

学生がくせい運動うんどう

1960年代ねんだい後半こうはんの学生がくせい運動うんどうにおいて、学生がくせい達たちが主張しゅちょうを通とおすために大学だいがくを占拠せんきょし、机つくえやイス等とうを用もちいたバリケードを築きずいて抵抗ていこう運動うんどうを展開てんかいし機動きどう隊たいが導入どうにゅうされる事態じたいになったため、全共闘ぜんきょうとうなどの組織そしきに所属しょぞくしない一般いっぱん学生がくせいの安全あんぜんを考慮こうりょし、大学だいがく側がわが対抗たいこう処置しょちとして行いったもの。大学だいがくは授業じゅぎょうを放棄ほうきし、正門せいもんなどの出入口でいりぐちを有刺鉄線ゆうしてっせんなどで封鎖ふうさ（ロックアウト）した。1968年ねん12月21日にち、上智大学じょうちだいがくで「本日ほんじつから6カ月かげつ間あいだ、臨時りんじ休業きゅうぎょうとする」と掲示けいじして大学だいがくを閉鎖へいさしたことが、この大学だいがく紛争ふんそう収束しゅうそくのモデルとなっている。

スポーツ界かいにおけるロックアウト

• NPB
  • 2004年ねん、プロ野球やきゅう再編さいへん問題もんだいでの選手せんしゅ会かいのストライキに対たいしてロックアウトを行おこなうか否ひかで一部いちぶの球団きゅうだん経営けいえい者しゃの判断はんだんが二に転てん三さん転てんとする気配けはいを見みせた。この場合ばあいのロックアウト対象たいしょう設備せつびは球場きゅうじょう、および練習れんしゅう施設しせつ・合宿がっしゅく所ところ・寮りょう・ロッカーなどの球団きゅうだん施設しせつが該当がいとうするため、選手せんしゅはこれらの施設しせつに入場にゅうじょうできない、あるいは使用しようの都度つど、使用しよう料りょうを請求せいきゅうされることとなる。これはメジャーリーグベースボール（MLB）におけるロックアウトに倣ならってのものである。しかし、結果けっか的てきにこのロックアウトは行おこなわれなかった。

• MLB
  • これまで最低さいてい給与きゅうよ額がくを巡めぐって1973年ねん2月がつ8日にちから25日にち、フリーエージェント（FA）制度せいどの導入どうにゅうを巡めぐって1976年ねん3月1日にちから17日にち、年金ねんきん基金ききんの拠出きょしゅつ額がくを巡めぐって1990年ねん2月がつ16日にちから3月がつ18日にちまでと3度ど決行けっこうされているが、いずれもレギュラーシーズンの試合しあいには影響えいきょうしなかった。
  • 2021年ねん12月2日にちから26年ねんぶりに新しん労使ろうし協定きょうていが決裂けつれつしたため、31年ねんぶりにロックアウトが決行けっこうされた。その影響えいきょうで2022年ねんの開幕かいまくが3月31日にちから4月がつ7日にちへ後うしろ倒だおしされた。

• NHL
  詳細しょうさいは「2004年ねんから2005年ねんのNHLロックアウト」を参照さんしょう
  • 2004年ねん、オーナー側がわがサラリーキャップ制度せいどを導入どうにゅうしようとしたことに対たいしてNHL選手せんしゅ会かいが反発はんぱつしたため、オーナー陣じんは9月16日にちからロックアウトを決行けっこうした。ロックアウトでは試合しあい会場かいじょうは閉鎖へいさされるためプレーは行おこなえないため欧州おうしゅうリーグに移籍いせきする選手せんしゅなどが続出ぞくしゅつした。その後ごも交渉こうしょうは継続けいぞくされるも決裂けつれつが続つづき、最終さいしゅう的てきに2004年ねん-2005年ねんシーズンで予定よていされていた全ぜん試合しあい（レギュラーシーズン、プレーオフ、スタンレー・カップの合計ごうけい1230試合しあい）が中止ちゅうしされた。
  • 2012年ねん9月がつ16日にち、新しん労使ろうし協定きょうてい締結ていけつを目指めざしていたオーナー側がわと選手せんしゅ側がわの交渉こうしょうが決裂けつれつし、オーナー側がわがロックアウトに踏ふみ切きった。その後ごも交渉こうしょうは難航なんこうし、同年どうねん11月がつ23日にちには10月11日にちの開幕かいまくから12月14日にちまでに予定よていされている公式こうしき戦せん全ぜん試合しあい（計けい422試合しあい）と、2013年ねん1月がつ27日にちのオールスター戦せんの中止ちゅうしが発表はっぴょうされた。その後ご2013年ねん1月がつ12日にちにロックアウトは終結しゅうけつし、1月がつ19日にちより開幕かいまくした。

• NFL
  • 2011年ねん3月12日にち、NFL選手せんしゅ会かいとオーナー側がわの労使ろうし協定きょうていが決裂けつれつしたため、オーナー側がわがロックアウトを決行けっこうした。ただしこのロックアウトは、労使ろうし交渉こうしょうの妥結だけつに伴ともない同年どうねん7月がつ25日にちに解除かいじょされ、シーズンへの影響えいきょうはなかった。
  • 2012年ねん、NFL審判しんぱん組合くみあいとNFLの労使ろうし交渉こうしょうが難航なんこう。正規せいきの審判しんぱんをロックアウトした状態じょうたいでシーズンに入はいったため開幕かいまくから第だい3週しゅうまで代替だいたい審判しんぱんが試合しあいを裁さばいた。

• NBA
  • 1998-1999シーズンはロックアウト解除かいじょが越年えつねんし、シーズン開幕かいまくが1999年ねん2月がつ5日にちまでずれ込こみ、NBAオールスターゲームも中止ちゅうしされた。
  • 2011-2012シーズンも、2011年ねん7月がつ1日にちに選手せんしゅ会かいとオーナー側がわでの収益しゅうえき配分はいぶんの割合わりあいを巡めぐる交渉こうしょうが紛糾ふんきゅうし、13年ねん振ふりにロックアウトに突入とつにゅうした。その後ごも交渉こうしょうは難航なんこうし、プレシーズンゲームは全すべて中止ちゅうしとなった他ほか、同年どうねん10月がつ10日とおかには11月1日にちの開幕かいまく予定よていを2週間しゅうかん遅おくらせ、その間あいだの試合しあいは全すべて中止ちゅうしとすることが決定けってい。最終さいしゅう的てきに同年どうねん11月25日にちにようやく労使ろうし交渉こうしょうが妥結だけつしロックアウトが解除かいじょされたが、シーズン開幕かいまくが同年どうねん12月がつ25日にちまでずれ込こむなど、シーズンに大おおきく影響えいきょうが出でた。

音楽おんがく業界ぎょうかいにおけるロックアウト

リハーサルや録音ろくおんのためのスタジオを、1時じ間あいだあたりの料金りょうきんを支払しはらう時とき間あいだ制せいで使用しようする場合ばあい、その前後ぜんごに他者たしゃのスタジオ利用りようを入いれず余裕よゆうをもって行おこなえることを指さす業界ぎょうかい用語ようご。スタジオの1日にち利用りよう権けん。スタジオの営業えいぎょう時間じかんにより12〜14時じ間あいだの利用りようが可能かのうになる。主おもにプロ用ようのスタジオでは、時間じかん制せいの設定せっていはなくロックアウト制せいのみを採用さいようしている。

ロックアウトが可能かのうなスタジオを2日にち以上いじょう使つかう場合ばあいは、最終さいしゅう日び以外いがいは機材きざい等とうをそのままスタジオ内ないに設置せっちできる。逆ぎゃくにロックアウトができない場合ばあいは、翌日よくじつ再ふたたび使つかう予定よていがあっても片付かたづけて、翌日よくじつ再さい設置せっちする必要ひつようがある。ロックアウト不可ふかなスタジオでは最大さいだい一いち日にち単位たんいと言いう考かんがえ方かたで、例たとえば３日にち予約よやくを入いれた場合ばあいは、単たんに１日にち分ぶんの予約よやくが三さん回かい入はいっているに過すぎない。

関連かんれん項目こうもく

• 労働ろうどう争議そうぎ
• ストライキ
• ボイコット