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ヴァラ - Wikipedia

ヴァラvala複数ふくすうがたヴァラールvalar)は、J・R・R・トールキンの『指輪ゆびわ物語ものがたり』、『シルマリルの物語ものがたり』の世界せかい登場とうじょうする架空かくう神格しんかくである。イルーヴァタールによってつくられたアイヌアなかで、アルダなかくにのある世界せかい)にりたものなかもっとちからつ15はしらのアイヌアをし、アルダの管理かんりまかされた。トールキンの世界せかいかんからえば上級じょうきゅう精霊せいれいだい天使てんし神霊しんれい大神おおがみ主要しゅようかみ々に相当そうとうするものとおもわれる。

概要がいよう

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ヴァラールはクウェンヤしょちからPowers)を意味いみする。

世界せかい(エア)が創造そうぞうされたとき、ほとんどのアイヌアは世界せかいそとの「なきかん」にとどまっていたが、える姿すがたをまとって地上ちじょう(アルダ)にりるものもいた。そのなかでもとくちからつよい15はしらものをヴァラール、彼等かれらしたが多数たすうのアイヌアをマイアールというが、マイアール以外いがいにもアイヌアは存在そんざいするとかんがえられる(たとえば、トム・ボンバディル、ゴールドベリと彼女かのじょおや、モルゴスやサウロンにしたがっていた多数たすう悪霊あくりょう悪魔あくまなど)。

ヴァラールは当初とうしょなかくに中央ちゅうおうおおきなみずうみかぶしまに、アルマレンというくにきずいた。かれらは南北なんぼく2つの巨大きょだい灯火ともしびによって世界せかいらしたが、もっと偉大いだいなヴァラであるメルコール(モルゴス)が反乱はんらんこしたために、灯火ともしびもアルマレンも破壊はかいされてしまった。

そこでかれらは西方せいほう大陸たいりくアマンうつり、あらたにヴァリノールくにきずいた。メルコールのたくらみがアマンをもおそうこともあったが、ヴァラールはそれ以降いこうもヴァリノールで世界せかい管理かんりつづけている。

唯一ゆいいつかみエル・イルーヴァタールは世界せかいそとにいるため、いわゆるかみ々としての活動かつどうはおおむねヴァラールにまかされている。しかしそれらはすべてイルーヴァタールの意思いししたがってのことである。たとえば、人間にんげんさだめられた寿命じゅみょうを、ヴァラールが独断どくだんりはらって永遠えいえんいのちあたえることはできない。その人間にんげん不死ふしもとめてきんじられたアマンのあしれたときは、ヴァラールは地上ちじょう統治とうちけん放棄ほうきしてイルーヴァタールの介入かいにゅうもとめた。

また、ヴァラールは余程よほどのことがないかぎり、ちゅうくに出来事できごと当地とうち住人じゅうにんまかせる姿勢しせいっている。『指輪ゆびわ物語ものがたり』で、危険きけんひとつの指輪ゆびわ西方せいほうおくってしまおうというあんときも、ちゅうくにぞくするものをってはもらえないだろうとガンダルフべている。「よほどのこと」にてはまるのは、航海こうかいしゃエアレンディルがモルゴスの暴虐ぼうぎゃくからのすくいをもとめてあらわれたときで、かれこたえてヴァラールはヴァリノールから軍勢ぐんぜい出撃しゅつげきさせた。

ヴァラの女性じょせいがたはヴァリエ(Valië)、その複数ふくすうがたはヴァリエア(Valier)となる。『ヴァラクウェンタ』ちゅう用法ようほうられる。

ヴァラールのうちもっとおおきなちからった8はしら(マンウェ、ウルモ、アウレ、オロメ、マンドス、ヴァルダ、ヤヴァンナ、ニエンナ)をとくアラタール(Aratar)("The Exalted"、だかものたち、の)と[1]かれらアラタールは彼等かれら以外いがいのヴァラールであれ、マイアールであれ、あるいはそれ以外いがいのエルの使つかいであれ、それらをはるかに凌駕りょうがするちからっているとされる。なお元々もともとはメルコールもふくめて9はしらであったが、メルコールはヴァラールの地位ちいわれると同時どうじにアラタールとしての資格しかくうしなった。

また、霊魂れいこんつかさであるナーモとイルモの兄弟きょうだいは、フェアントゥリ(Fëanturi)とばれる。

男性だんせいかくのヴァラ

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そらおうふうおうマンウェ・スーリモ(Manwe Súlimo)はアルダの支配しはいしゃ。ヴァラのなかでも最高さいこうちからつ。長上ちょうじょうおうばれる。

うみおうみずおうウルモ(Ulmo)、別名べつめいグルマ(Gulma)はみず支配しはいしゃ海水かいすいだけでなく、かわいずみあめなどにもかれちから宿やどっているとわれる。ウルモはマンウェにちからぬしで、ひとである。

ヴァリノール建国けんこくはあまり会議かいぎにも出席しゅっせきせず、アルダを見守みまもっている。かれ人間にんげんやエルフをふかあいし、のヴァラールがいきどおっているときですら見捨みすてようとはしなかった。とくテレリぞくにはおおくのことをおしえている。人前ひとまえあらわれるときくろかぶとぎんみどりくさりかたびらをまとった姿すがたをとるが、肉体にくたい着用ちゃくようすることはこのまず、しばしばえないままの状態じょうたい岸辺きしべおとずれる。ウルモはしろかい角笛つのぶえウルムーリをらしてうみへのあこがれをてるほか、みず調しらべのかたち人々ひとびとはなけることがある。

ウルモは孤島ことうしまえ、わたぶねのようにうごかしてエルダールをなかくにからアマンへとはこんだ。これがこうの「はなじま」トル・エレッセアである。またおげをつうじて、フィンロドにはナルゴスロンドを、トゥアゴンにはゴンドリン建造けんぞうするようにうながしている。このりょう王国おうこく危機ききせまった時代じだいにはトゥオル使者ししゃえらんでみちびいた。さらにシルマリル所持しょじしゃエルウィングめられてうみとうじたときには、彼女かのじょしろとり姿すがたあたえてすくっている。

おう工匠こうしょうアウレ(Aulë)は、工芸こうげい貴金属ききんぞく細工ざいく採掘さいくつ技術ぎじゅつつ。ヤヴァンナである。ウルモとは同格どうかくたる。また、メルコールとは能力のうりょく嗜好しこう似通にかよっていたところからライバル関係かんけいだった。

アウレはアルダつくすべての物質ぶっしつ支配しはいしており、すべての陸地りくち形成けいせいした。灯火ともしび時代じだい世界せかいらしたふたつの巨大きょだい灯台とうだいや、太陽たいようつきおさめる容器ようきつくったのもかれである。

あるときアウレは、イルーヴァタールの到来とうらいちわびるあまり、独自どくじドワーフつくした。しかしイルーヴァタールから、ぶんえた行為こういであること、そしてこの種族しゅぞくがアウレのあやつ人形にんぎょういきないことを指摘してきされると、なみだながらに作品さくひんこわそうとした。アウレがあらためたので、イルーヴァタールはドワーフを地上ちじょうきる種族しゅぞくとしてれた。ただし最初さいしょ目覚めざめる種族しゅぞくさだめられたエルフさきんじてあらわれることはゆるさず、ときいたるまで地下ちかねむらせた。このような経緯けいいから、ドワーフはかれマハル(Mahal)とんであがめている。

アウレはエルフたちのともわれ、かれらに文字もじ言葉ことば工芸こうげい刺繍ししゅう絵画かいが彫刻ちょうこくなどをおしえており、とくノルドールしたしかった。

オロメ(Oromë)はもりおうであり狩人かりゅうど。エルフのみちびしゅ。ネッサのあにで、ヴァーナの配偶はいぐうしゃかれはヴァラールアローメーズ(Arômêz)が変化へんかしたものである。

オロメはなかくに土地とちあいしており、木々きぎししいつくしんだ。ほん時代じだいになってほとんどのヴァラールがアマンのがれたとき最後さいごまでとどまっていた。そのもしばしばちゅう国東くにさき奥地おくちはいっては、配下はいかものししとももりかりをしている。おおきな角笛つのぶえヴァラローマたずさえ、偉大いだい白銀はくぎんうまナハールにまたがったかれ獲物えものは、メルコールはなった凶暴きょうぼうしし怪物かいぶつだった。オロメは、戦闘せんとうりょくにおいてはトゥルカスにおとるものの、おこればかれよりもおそろしい。ただしだい蜘蛛くもウンゴリアント暗闇くらやみにはおくれをっている。つき守護しゅごしゃであるティリオンはかれ直属ちょくぞくのマイアである。

オロメはあるりの途中とちゅうクイヴィエーネンみずうみり、エルフ目覚めざめを見出みいだして、かれらを「ほしみん」エルダールと名付なづけた。かれはしばらくエルフたちのあいだらし、ヴァリノールへの報告ほうこくわるとまたすぐにもどってきた。メルコールが捕縛ほばくされたのち、3めいのエルフを代表だいひょう使者ししゃとしてアマンにれてたのも、エルダールの西方せいほうへの「おおいなるたび」をみちびいたのも、みなオロメである。かれとくフェアノール息子むすこケレゴルムしたしく、のちおおかみカルハロスをたおすことになる猟犬りょうけんフアンをかれおくっている。

オロメがなかくにんだ動物どうぶつおおく、なかでもしろうしは、かれ別名べつめいって「アラウの野牛やぎゅう(Kine of Araw)」とばれた。そのかくからられたのが、『指輪ゆびわ物語ものがたり』でボロミア所持しょじしていた角笛つのぶえである。そのためローハンではオロメはベーマ(Bémaトランペット)ともばれた。また、ローハンの名馬めいばメアラスの先祖せんぞも、かれ西方せいほうかられてきたとわれる。

本名ほんみょうナーモ(Nâmo)だが、かれかん名前なまえってマンドス(Mandos)とばれる。たましいおうであり審判しんぱんしゃ

本名ほんみょうイルモ(Irmo)だが、かれ庭園ていえん名前なまえってローリエン(Lórien)とばれる。ゆめまぼろしつかさどもの。マンドスのおとうとであり、ニエンナのあに配偶はいぐうしゃにエステをつ。

かれむローリエンの庭園ていえん世界中せかいじゅう一番いちばんうつくしい場所ばしょといわれており、メリアンをはじめとする様々さまざまなマイアールが、そこでいこっていた。

なかくにロスローリエンは、本来ほんらい地名ちめいから、この庭園ていえんにちなんで改名かいめいされたとおもわれる[2]

トゥルカス(Tulkas)は「不屈ふくつなるもの」を意味いみするアスタロド(Astaldo)の異名いみょうつ。ネッサの配偶はいぐうしゃ。ヴァラールの闘士とうし

もっと体力たいりょく武勇ぶゆうすぐれたヴァラであり、メルコールとたたかうためにアルダにやってきた最後さいごのヴァラールでもある。メルコールはかれげ、平和へいわ時代じだい「アルダのはる」がはじまった。

ふたつの灯火ともしびち、ヴァラールがアルマレンにはじめて、トゥルカスはおおいなるうたげでネッサをめとった。かれつかれて満足まんぞくしてねむり、そのときにメルコールは復讐ふくしゅう決意けついした。

トゥルカスは角力すもうちからくらべをよろこんだ。武器ぶきたず、うまにもらなかった。過去かこ未来みらいにしなかったので、相談役そうだんやくとはいえなかったが、力強ちからづよともであった。てきまえにしてもわらいをやさず、おそろしげではない。しかしすぐにおこることはなかったが、すぐにゆるすこともなかった。このため、メルコールの解放かいほう反対はんたいしたヴァラールの1はしらである。

また、トゥルカスは性急せいきゅう性格せいかくだった。エルフの覚醒かくせいまえのヴァラールにたいしメルコールとのたたかいをするように主張しゅちょうし、ふたつのれたときにもフェアノールたいシルマリルいそいでかえすようつよいている。

メルコール(モルゴス)

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メルコール(Melkor)はもっとちからあるヴァラであったが反逆はんぎゃくし、もはやヴァラールの一員いちいんとしてはかぞえられず、「くろてきモルゴス(Morgoth)とばれるようになった。初代しょだいめいおう

女性じょせいかくのヴァラ

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エルベレス・ギルソニエル

ほし々の女王じょおうヴァルダ(Varda)は言葉ことばあらわせないほどうつくしく、ひかりよろこびとともにある。彼女かのじょはマンウェので、普段ふだんはマンウェのかんらしており、めったにはなれることはない。ヴァルダががわにいればマンウェの視力しりょくはいっそうするどくなり、マンウェががわにいればヴァルダの聴力ちょうりょくはいっそうさとくなるという。

をともすものティンタルレ(Tintallë)の異名いみょうつヴァルダは、エア(世界せかい)の創造そうぞうほしつくり、灯火ともしび時代じだい由来ゆらいとなったふたつの灯火ともしびひかりともした。だが最大さいだい偉業いぎょうは、ほん時代じだいテルペリオンぎんつゆってあらたなほし々をつくしたことである。またこのときふるほし々をあつめて星座せいざ形作かたちづくりもしている。エルフはこのてんひかりした目覚めざめたため、かれらはヴァルダをだれよりも敬愛けいあいしており、クウェンヤで「ほし々の女王じょおう」の意味いみであるエレンターリ(Elentári)やシンダールで「ほし々の女王じょおう」を意味いみするエルベレスElbereth)あるいは「ほしかがやかすおかたギルソニエルGilthoniel)とんでとなえている。

このほか、ふたつのれたのちまれた太陽たいようふねつきしまそらわたちからあたえたのもヴァルダである。

メルコールとはアイヌリンダレ以前いぜんから不仲ふなかであり、はげしくにくまれている。

果実かじつをもたらすものヤヴァンナ(Yavanna)は「大地だいち女王じょおうケメンターリ(Kementári)ともばれる。アウレの植物しょくぶつ創造そうぞうし、地上ちじょう最初さいしょたねいたのは彼女かのじょである。みどりふくをまとった女性じょせい姿すがたをしているが、ときそのもののかたちる。

テルペリオンとラウレリンのふたつのしたはヤヴァンナの歌声うたごえだった。エルダールのために、テルペリオンにせたしろガラシリオンもつくっている。しかし彼女かのじょうたでも、だい蜘蛛くもウンゴリアント破壊はかいされたふたつのよみがえらせることはできず、つきとなるぎんはな太陽たいようとなるかねのこすのがしらげいちはいだった。

また、エント彼女かのじょおもいからまれている。アウレがドワーフをつくったことをったヤヴァンナは、かれらが(そして人間にんげんやエルフも)植物しょくぶつきずつけるようになると懸念けねんし、マンウェに相談そうだんした。そのときイルーヴァタールの啓示けいじくだり、やがて植物しょくぶつ守護しゅごする牧人ぼくじんまれることがあきらかになったのである。

彼女かのじょ狩人かりゅうどオロメやみずおうウルモともども、アマンのにあってもなかくにのことをにかけ、メルコールの暗闇くらやみしたにある動植物どうしょくぶつたちにしんくだいた。それ彼女かのじょ時折ときおりちゅうくにい、メルコールによってつけられたきずやし、ときるまでかれらをねむりにつかせた。「ヤヴァンナのねむり」とばれるものである。これはのちつき昇天しょうてんするとともかれる。

なげきのニエンナ(Nienna)。彼女かのじょなみだはメルコールによりきずつけられたアルダすべてのきずそそがれる。しかし彼女かのじょ自分じぶんのためにくことはないという。一方いっぽうのヴァラールにメルコールの恩赦おんしゃ懇願こんがんしている。彼女かのじょなげきをくものは憐憫れんびん忍耐にんたいまなび、マンドスのかんいこ霊魂れいこんたちはちから叡智えいちるという。オローリンもまた、彼女かのじょした憐憫れんびん忍耐にんたいとをまなんだ1めいであった。

ニエンナはひとで、ナーモとイルモのいもうとにあたる。彼女かのじょかんはアマンの西にしはずれにあり、まどからは世界せかいてがえる。ニエンナはヴァリノールの出向でむくよりも、ちかくのマンドスのかんおとずれることがおおい。

ふたつのは、ヤヴァンナがうたい、ニエンナがなみだそそぐことで誕生たんじょうした。しかし彼女かのじょなみだでも枯死こししたいやすことはできなかった。

いやしゅエステ(Estë)はイルモ(ローリエン)の灰色はいいろころもをまとい、おおきなくるしみをつものに休息きゅうそくおくる。ローリエンの庭園ていえんなか、ローレルリンのみずうみしまきょかまえている。

織姫おりひめヴァイレ(Vairë)はナーモ(マンドス)の。マンドスのかんなか織機しょっきまえすわり、歴史れきし運命うんめい織物おりもの仕上しあげている。できがったつづれりは死者ししゃいえかべけられ、ときわりがおとずれるまでアルダの物語ものがたりつたえるのである。

つねわかヴァーナ(Vána)はヤヴァンナのいもうと、オロメのはる象徴しょうちょうであり、とりはなあいする。金色きんいろはな庭園ていえんんでいる。

おどネッサ(Nessa)はオロメのいもうと、トゥルカスのもりけるししとく鹿しかあいする。ヴァリノールのみどりしばうえで、やすむことなくおどっているという。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ または"the High Ones of Arda"、アルダのいとだかしゃたち、ともやく
  2. ^ 新版しんぱん シルマリルの物語ものがたり』(評論ひょうろんしゃ)p.525 - 526より。

関連かんれん項目こうもく

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