ヴァラールはクウェンヤ で諸 しょ 力 ちから (Powers )を意味 いみ する。
世界 せかい (エア)が創造 そうぞう された時 とき 、ほとんどのアイヌアは世界 せかい の外 そと の「時 じ なき館 かん 」にとどまっていたが、目 め に見 み える姿 すがた をまとって地上 ちじょう (アルダ)に降 お りる者 もの もいた。その中 なか でも特 とく に力 ちから の強 つよ い15柱 はしら の者 もの をヴァラール、彼等 かれら に従 したが う多数 たすう のアイヌアをマイアール というが、マイアール以外 いがい にもアイヌアは存在 そんざい すると考 かんが えられる(例 たと えば、トム・ボンバディル 、ゴールドベリと彼女 かのじょ の親 おや 、モルゴスやサウロンに従 したが っていた多数 たすう の悪霊 あくりょう や悪魔 あくま など)。
ヴァラールは当初 とうしょ 、中 なか つ国 くに 中央 ちゅうおう の大 おお きな湖 みずうみ に浮 う かぶ島 しま に、アルマレンという国 くに を築 きず いた。彼 かれ らは南北 なんぼく 2つの巨大 きょだい な灯火 ともしび によって世界 せかい を照 て らしたが、最 もっと も偉大 いだい なヴァラであるメルコール (モルゴス)が反乱 はんらん を起 お こしたために、灯火 ともしび もアルマレンも破壊 はかい されてしまった。
そこで彼 かれ らは西方 せいほう 大陸 たいりく アマン に移 うつ り、新 あら たにヴァリノール の国 くに を築 きず いた。メルコールの企 たくら みがアマンをも襲 おそ うこともあったが、ヴァラールはそれ以降 いこう もヴァリノールで世界 せかい の管理 かんり を続 つづ けている。
唯一 ゆいいつ 神 かみ エル・イルーヴァタールは世界 せかい の外 そと にいるため、いわゆる神 かみ 々としての活動 かつどう はおおむねヴァラールに任 まか されている。しかしそれらは全 すべ てイルーヴァタールの意思 いし に従 したが ってのことである。例 たと えば、人間 にんげん に定 さだ められた寿命 じゅみょう を、ヴァラールが独断 どくだん で取 と りはらって永遠 えいえん の命 いのち を与 あた えることはできない。その人間 にんげん が不死 ふし を求 もと めて禁 きん じられたアマンの地 ち に足 あし を踏 ふ み入 い れた時 とき は、ヴァラールは地上 ちじょう の統治 とうち 権 けん を放棄 ほうき してイルーヴァタールの介入 かいにゅう を求 もと めた。
また、ヴァラールは余程 よほど のことがない限 かぎ り、中 ちゅう つ国 くに の出来事 できごと は当地 とうち の住人 じゅうにん に任 まか せる姿勢 しせい を取 と っている。『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』で、危険 きけん な一 ひと つの指輪 ゆびわ を西方 せいほう に送 おく ってしまおうという案 あん が出 で た時 とき も、中 ちゅう つ国 くに に属 ぞく するものを受 う け取 と ってはもらえないだろうとガンダルフ が述 の べている。「よほどのこと」に当 あ てはまるのは、航海 こうかい 者 しゃ エアレンディル がモルゴスの暴虐 ぼうぎゃく からの救 すく いを求 もと めて現 あらわ れた時 とき で、彼 かれ に応 こた えてヴァラールはヴァリノールから軍勢 ぐんぜい を出撃 しゅつげき させた。
ヴァラの女性 じょせい 形 がた はヴァリエ(Valië)、その複数 ふくすう 形 がた はヴァリエア(Valier)となる。『ヴァラクウェンタ』中 ちゅう に用法 ようほう が見 み られる。
ヴァラールのうち最 もっと も大 おお きな力 ちから を持 も った8柱 はしら (マンウェ、ウルモ、アウレ、オロメ、マンドス、ヴァルダ、ヤヴァンナ、ニエンナ)を特 とく にアラタール (Aratar)("The Exalted"、高 だか 位 い の者 もの 達 たち 、の意 い )と呼 よ ぶ[1] 。彼 かれ らアラタールは彼等 かれら 以外 いがい のヴァラールであれ、マイアールであれ、或 ある いはそれ以外 いがい のエルの御 ご 使 つか いであれ、それらを遥 はる かに凌駕 りょうが する力 ちから を持 も っているとされる。なお元々 もともと はメルコールも含 ふく めて9柱 はしら であったが、メルコールはヴァラールの地位 ちい を追 お われると同時 どうじ にアラタールとしての資格 しかく も失 うしな った。
また、霊魂 れいこん の司 つかさ であるナーモとイルモの兄弟 きょうだい は、フェアントゥリ (Fëanturi)と呼 よ ばれる。
空 そら の王 おう や風 ふう の王 おう マンウェ・スーリモ (Manwe Súlimo)はアルダの支配 しはい 者 しゃ 。ヴァラの中 なか でも最高 さいこう の力 ちから を持 も つ。長上 ちょうじょう 王 おう と呼 よ ばれる。
海 うみ の王 おう や水 みず の王 おう ウルモ (Ulmo)、別名 べつめい グルマ (Gulma)は水 みず の支配 しはい 者 しゃ 。海水 かいすい だけでなく、川 かわ や泉 いずみ や雨 あめ などにも彼 かれ の力 ちから が宿 やど っていると言 い われる。ウルモはマンウェに次 つ ぐ力 ちから の持 も ち主 ぬし で、独 ひと り身 み である。
ヴァリノール建国 けんこく 後 ご はあまり会議 かいぎ にも出席 しゅっせき せず、アルダを見守 みまも っている。彼 かれ は人間 にんげん やエルフを深 ふか く愛 あい し、他 た のヴァラールが憤 いきどお っている時 とき ですら見捨 みす てようとはしなかった。特 とく にテレリ 族 ぞく には多 おお くのことを教 おし えている。人前 ひとまえ に現 あらわ れる時 とき は黒 くろ い兜 かぶと に銀 ぎん と緑 みどり の鎖 くさり かたびらをまとった姿 すがた をとるが、肉体 にくたい を着用 ちゃくよう することは好 この まず、しばしば見 み えないままの状態 じょうたい で岸辺 きしべ や入 い り江 え を訪 おとず れる。ウルモは白 しろ い貝 かい の角笛 つのぶえ ウルムーリを吹 ふ き鳴 な らして海 うみ への憧 あこが れを掻 か き立 た てるほか、水 みず の調 しら べの形 かたち で人々 ひとびと に話 はな し掛 か けることがある。
ウルモは孤島 ことう を浮 う き島 しま に変 か え、渡 わた し舟 ぶね のように動 うご かしてエルダールを中 なか つ国 くに からアマンへと運 はこ んだ。これが後 こう の「離 はな れ島 じま 」トル・エレッセアである。またお告 つ げを通 つう じて、フィンロド にはナルゴスロンド を、トゥアゴン にはゴンドリン を建造 けんぞう するように促 うなが している。この両 りょう 王国 おうこく に危機 きき が迫 せま った時代 じだい にはトゥオル を使者 ししゃ に選 えら んで導 みちび いた。さらにシルマリル の所持 しょじ 者 しゃ エルウィング が追 お い詰 つ められて海 うみ に身 み を投 とう じた時 とき には、彼女 かのじょ に白 しろ い鳥 とり の姿 すがた を与 あた えて救 すく っている。
地 ち の王 おう や工匠 こうしょう アウレ (Aulë)は、工芸 こうげい や貴金属 ききんぞく の細工 ざいく や採掘 さいくつ の技術 ぎじゅつ を持 も つ。ヤヴァンナ が妃 ひ である。ウルモとは同格 どうかく に当 あ たる。また、メルコールとは能力 のうりょく や嗜好 しこう が似通 にかよ っていたところからライバル関係 かんけい だった。
アウレはアルダ を造 つく る全 すべ ての物質 ぶっしつ を支配 しはい しており、全 すべ ての陸地 りくち を形成 けいせい した。灯火 ともしび の時代 じだい に世界 せかい を照 て らした二 ふた つの巨大 きょだい な灯台 とうだい や、太陽 たいよう と月 つき を収 おさ める容器 ようき を作 つく ったのも彼 かれ である。
ある時 とき アウレは、イルーヴァタールの子 こ ら の到来 とうらい を待 ま ちわびるあまり、独自 どくじ にドワーフ を創 つく り出 だ した。しかしイルーヴァタールから、分 ぶん を越 こ えた行為 こうい であること、そしてこの種族 しゅぞく がアウレの操 あやつ り人形 にんぎょう の域 いき を出 で ないことを指摘 してき されると、涙 なみだ ながらに作品 さくひん を打 う ち壊 こわ そうとした。アウレが悔 く い改 あらた めたので、イルーヴァタールはドワーフを地上 ちじょう で生 い きる種族 しゅぞく として受 う け入 い れた。ただし最初 さいしょ に目覚 めざ める種族 しゅぞく と定 さだ められたエルフ に先 さき んじて現 あらわ れることは許 ゆる さず、時 とき が至 いた るまで地下 ちか に眠 ねむ らせた。このような経緯 けいい から、ドワーフは彼 かれ をマハル (Mahal)と呼 よ んで崇 あが めている。
アウレはエルフ たちの友 とも と言 い われ、彼 かれ らに文字 もじ や言葉 ことば 、工芸 こうげい 、刺繍 ししゅう 、絵画 かいが 、彫刻 ちょうこく などを教 おし えており、特 とく にノルドール と親 した しかった。
オロメ (Oromë)は森 もり の王 おう であり狩人 かりゅうど 。エルフの導 みちび き手 しゅ 。ネッサの兄 あに で、ヴァーナの配偶 はいぐう 者 しゃ 。彼 かれ の名 な はヴァラール語 ご のアローメーズ (Arômêz)が変化 へんか したものである。
オロメは中 なか つ国 くに の土地 とち を愛 あい しており、木々 きぎ や獣 しし を慈 いつく しんだ。二 に 本 ほん の木 き の時代 じだい になってほとんどのヴァラールがアマン に逃 のが れた時 とき も最後 さいご までとどまっていた。その後 ご もしばしば中 ちゅう つ国東 くにさき 部 ぶ の奥地 おくち に分 わ け入 はい っては、配下 はいか の者 もの や獣 しし と共 とも に森 もり で狩 かり をしている。大 おお きな角笛 つのぶえ ヴァラローマ を携 たずさ え、偉大 いだい な白銀 はくぎん の馬 うま ナハール にまたがった彼 かれ の獲物 えもの は、メルコール の放 はな った凶暴 きょうぼう な獣 しし や怪物 かいぶつ だった。オロメは、戦闘 せんとう 力 りょく においてはトゥルカスに劣 おと るものの、怒 おこ れば彼 かれ よりも恐 おそ ろしい。ただし大 だい 蜘蛛 くも ウンゴリアント の暗闇 くらやみ には遅 おく れを取 と っている。月 つき の守護 しゅご 者 しゃ であるティリオンは彼 かれ の直属 ちょくぞく のマイアである。
オロメはある狩 か りの途中 とちゅう でクイヴィエーネン 湖 みずうみ に立 た ち寄 よ り、エルフ の目覚 めざ めを見出 みいだ して、彼 かれ らを「星 ほし の民 みん 」エルダールと名付 なづ けた。彼 かれ はしばらくエルフたちの間 あいだ で暮 く らし、ヴァリノールへの報告 ほうこく が終 お わるとまたすぐに戻 もど ってきた。メルコールが捕縛 ほばく された後 のち 、3名 めい のエルフを代表 だいひょう の使者 ししゃ としてアマンに連 つ れて来 き たのも、エルダールの西方 せいほう への「大 おお いなる旅 たび 」を導 みちび いたのも、みなオロメである。彼 かれ は特 とく にフェアノール の息子 むすこ ケレゴルム と親 した しく、後 のち に魔 ま 狼 おおかみ カルハロスを倒 たお すことになる猟犬 りょうけん フアンを彼 かれ に贈 おく っている。
オロメが中 なか つ国 くに に持 も ち込 こ んだ動物 どうぶつ は多 おお く、中 なか でも白 しろ い牛 うし は、彼 かれ の別名 べつめい を採 と って「アラウの野牛 やぎゅう (Kine of Araw)」と呼 よ ばれた。その角 かく から取 と られたのが、『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』でボロミア が所持 しょじ していた角笛 つのぶえ である。そのためローハン ではオロメはベーマ(Béma 、トランペット の意 い )とも呼 よ ばれた。また、ローハンの名馬 めいば メアラスの先祖 せんぞ も、彼 かれ が西方 せいほう から連 つ れてきたと言 い われる。
本名 ほんみょう はナーモ (Nâmo)だが、彼 かれ の住 す む館 かん の名前 なまえ を取 と ってマンドス (Mandos)と呼 よ ばれる。魂 たましい の王 おう であり審判 しんぱん 者 しゃ 。
本名 ほんみょう はイルモ (Irmo)だが、彼 かれ の住 す む庭園 ていえん の名前 なまえ を取 と ってローリエン (Lórien)と呼 よ ばれる。夢 ゆめ と幻 まぼろし を司 つかさど る者 もの 。マンドスの弟 おとうと であり、ニエンナの兄 あに 。配偶 はいぐう 者 しゃ にエステを持 も つ。
彼 かれ の住 す むローリエンの庭園 ていえん は世界中 せかいじゅう で一番 いちばん 美 うつく しい場所 ばしょ といわれており、メリアンを初 はじ めとする様々 さまざま なマイアールが、そこで憩 いこ っていた。
中 なか つ国 くに のロスローリエン は、本来 ほんらい の地名 ちめい から、この庭園 ていえん の名 な にちなんで改名 かいめい されたと思 おも われる[2] 。
トゥルカス (Tulkas)は「不屈 ふくつ なる者 もの 」を意味 いみ するアスタロド (Astaldo)の異名 いみょう を持 も つ。ネッサの配偶 はいぐう 者 しゃ 。ヴァラールの闘士 とうし 。
最 もっと も体力 たいりょく と武勇 ぶゆう に優 すぐ れたヴァラであり、メルコールと戦 たたか うためにアルダ にやってきた最後 さいご のヴァラールでもある。メルコールは彼 かれ を見 み て逃 に げ、平和 へいわ な時代 じだい 「アルダの春 はる 」が始 はじ まった。
二 ふた つの灯火 ともしび が建 た ち、ヴァラールがアルマレンに住 す み始 はじ めて後 ご 、トゥルカスは大 おお いなる宴 うたげ でネッサを娶 めと った。彼 かれ は疲 つか れて満足 まんぞく して眠 ねむ り、その時 とき にメルコールは復讐 ふくしゅう を決意 けつい した。
トゥルカスは角力 すもう や力 ちから 比 くら べを喜 よろこ んだ。武器 ぶき を持 も たず、馬 うま にも乗 の らなかった。過去 かこ も未来 みらい も気 き にしなかったので、良 よ い相談役 そうだんやく とはいえなかったが、力強 ちからづよ い友 とも であった。敵 てき を前 まえ にしても笑 わら いを絶 た やさず、恐 おそ ろしげではない。しかしすぐに怒 おこ ることはなかったが、すぐに許 ゆる すこともなかった。このため、メルコールの解放 かいほう に反対 はんたい したヴァラールの1柱 はしら である。
また、トゥルカスは性急 せいきゅう な性格 せいかく だった。エルフの覚醒 かくせい の前 まえ に他 た のヴァラールに対 たい しメルコールとの戦 たたか いをするように主張 しゅちょう し、二 ふた つの木 き が枯 か れた時 とき にもフェアノール に対 たい しシルマリル を急 いそ いで返 かえ すよう強 つよ いている。
メルコール (Melkor)は最 もっと も力 ちから あるヴァラであったが反逆 はんぎゃく し、もはやヴァラールの一員 いちいん としては数 かぞ えられず、「黒 くろ き敵 てき 」モルゴス (Morgoth)と呼 よ ばれるようになった。初代 しょだい 冥 めい 王 おう 。
エルベレス・ギルソニエル
星 ほし 々の女王 じょおう ヴァルダ (Varda )は言葉 ことば で表 あらわ せないほど美 うつく しく、光 ひかり と喜 よろこ びと共 とも にある。彼女 かのじょ はマンウェの妃 ひ で、普段 ふだん はマンウェの館 かん で暮 く らしており、めったに離 はな れることはない。ヴァルダが側 がわ にいればマンウェの視力 しりょく はいっそう鋭 するど くなり、マンウェが側 がわ にいればヴァルダの聴力 ちょうりょく はいっそう聡 さと くなるという。
「灯 ひ をともす者 もの 」ティンタルレ (Tintallë)の異名 いみょう を持 も つヴァルダは、エア(世界 せかい )の創造 そうぞう 時 じ に星 ほし を創 つく り、灯火 ともしび の時代 じだい の名 な の由来 ゆらい となった二 ふた つの灯火 ともしび に光 ひかり を灯 とも した。だが最大 さいだい の偉業 いぎょう は、二 に 本 ほん の木 き の時代 じだい にテルペリオン の銀 ぎん の露 つゆ を取 と って新 あら たな星 ほし 々を創 つく り出 だ したことである。またこの時 とき 、古 ふる い星 ほし 々を集 あつ めて星座 せいざ を形作 かたちづく りもしている。エルフ はこの天 てん の光 ひかり の下 した で目覚 めざ めたため、彼 かれ らはヴァルダを誰 だれ よりも敬愛 けいあい しており、クウェンヤ で「星 ほし 々の女王 じょおう 」の意味 いみ であるエレンターリ (Elentári)やシンダール語 ご で「星 ほし 々の女王 じょおう 」を意味 いみ するエルベレス (Elbereth )あるいは「星 ほし 輝 かがや かすお方 かた 」ギルソニエル (Gilthoniel )と呼 よ んで称 とな えている。
このほか、二 ふた つの木 き が枯 か れた後 のち に生 う まれた太陽 たいよう の船 ふね と月 つき の島 しま に空 そら を渡 わた る力 ちから を与 あた えたのもヴァルダである。
メルコールとはアイヌリンダレ の以前 いぜん から不仲 ふなか であり、激 はげ しく憎 にく まれている。
果実 かじつ をもたらす者 もの ヤヴァンナ (Yavanna)は「大地 だいち の女王 じょおう 」ケメンターリ (Kementári)とも呼 よ ばれる。アウレの妃 ひ 。植物 しょくぶつ を創造 そうぞう し、地上 ちじょう に最初 さいしょ の種 たね を蒔 ま いたのは彼女 かのじょ である。緑 みどり の服 ふく をまとった女性 じょせい の姿 すがた をしているが、時 とき に木 き そのものの形 かたち を取 と る。
テルペリオンとラウレリンの二 ふた つの木 き を生 う み出 だ したはヤヴァンナの歌声 うたごえ だった。エルダール のために、テルペリオンに似 に せた白 しろ の木 き ガラシリオンも作 つく っている。しかし彼女 かのじょ の歌 うた でも、大 だい 蜘蛛 くも ウンゴリアント に破壊 はかい された二 ふた つの木 き を甦 よみがえ らせることはできず、月 つき となる銀 ぎん の花 はな と太陽 たいよう となる金 かね の実 み を遺 のこ すのが精 しらげ 一 いち 杯 はい だった。
また、エント も彼女 かのじょ の思 おも いから生 う まれている。アウレがドワーフを創 つく ったことを知 し ったヤヴァンナは、彼 かれ らが(そして人間 にんげん やエルフも)植物 しょくぶつ を傷 きず つけるようになると懸念 けねん し、マンウェに相談 そうだん した。その時 とき イルーヴァタールの啓示 けいじ が下 くだ り、やがて植物 しょくぶつ を守護 しゅご する木 き の牧人 ぼくじん が生 う まれることが明 あき らかになったのである。
彼女 かのじょ は狩人 かりゅうど オロメや水 みず の王 おう ウルモともども、アマンの地 ち にあっても中 なか つ国 くに のことを気 き にかけ、メルコールの暗闇 くらやみ の下 した にある動植物 どうしょくぶつ たちに心 しん を砕 くだ いた。それ故 こ 彼女 かのじょ は時折 ときおり 中 ちゅう つ国 くに を訪 と い、メルコールによってつけられた傷 きず を癒 い やし、時 とき が来 く るまで彼 かれ らを眠 ねむ りにつかせた。「ヤヴァンナの眠 ねむ り」と呼 よ ばれるものである。これは後 のち に月 つき が昇天 しょうてん すると共 とも に解 と かれる。
嘆 なげ きのニエンナ (Nienna)。彼女 かのじょ の涙 なみだ はメルコールにより傷 きず つけられたアルダ の全 すべ ての傷 きず に注 そそ がれる。しかし彼女 かのじょ は自分 じぶん のために泣 な くことはないという。一方 いっぽう で他 た のヴァラールにメルコールの恩赦 おんしゃ を懇願 こんがん している。彼女 かのじょ の嘆 なげ きを聞 き くものは憐憫 れんびん と忍耐 にんたい を学 まな び、マンドスの館 かん に憩 いこ う霊魂 れいこん たちは力 ちから と叡智 えいち を得 え るという。オローリン もまた、彼女 かのじょ の下 した で憐憫 れんびん と忍耐 にんたい とを学 まな んだ1名 めい であった。
ニエンナは独 ひと り身 み で、ナーモとイルモの妹 いもうと にあたる。彼女 かのじょ の館 かん はアマンの西 にし の外 はず れにあり、窓 まど からは世界 せかい の果 は てが見 み える。ニエンナはヴァリノールの都 と に出向 でむ くよりも、近 ちか くのマンドスの館 かん を訪 おとず れることが多 おお い。
二 ふた つの木 き は、ヤヴァンナが歌 うた い、ニエンナが涙 なみだ を注 そそ ぐことで誕生 たんじょう した。しかし彼女 かのじょ の涙 なみだ でも枯死 こし した木 き を癒 いや すことはできなかった。
癒 いや し手 しゅ エステ (Estë)はイルモ(ローリエン)の妃 ひ 。灰色 はいいろ の衣 ころも をまとい、大 おお きな苦 くる しみを持 も つものに休息 きゅうそく を贈 おく る。ローリエンの庭園 ていえん の中 なか 、ローレルリンの湖 みずうみ の島 しま に居 きょ を構 かま えている。
織姫 おりひめ ヴァイレ (Vairë)はナーモ(マンドス)の妃 ひ 。マンドスの館 かん の中 なか で織機 しょっき の前 まえ に座 すわ り、歴史 れきし や運命 うんめい を織物 おりもの に仕上 しあ げている。でき上 あ がったつづれ織 お りは死者 ししゃ の家 いえ の壁 かべ に掛 か けられ、時 とき の終 お わりが訪 おとず れるまでアルダの物語 ものがたり を伝 つた えるのである。
常 つね 若 わか のヴァーナ (Vána)はヤヴァンナの妹 いもうと 、オロメの妃 ひ 。春 はる の象徴 しょうちょう であり、鳥 とり と花 はな を愛 あい する。金色 きんいろ の花 はな が咲 さ く庭園 ていえん に住 す んでいる。
踊 おど り子 こ ネッサ (Nessa)はオロメの妹 いもうと 、トゥルカスの妃 ひ 。森 もり を駆 か ける獣 しし 、特 とく に鹿 しか を愛 あい する。ヴァリノールの緑 みどり の芝 しば の上 うえ で、休 やす むことなく踊 おど っているという。
^ または"the High Ones of Arda"、アルダのいと高 だか き者 しゃ 達 たち 、とも訳 やく す
^ 『新版 しんぱん シルマリルの物語 ものがたり 』(評論 ひょうろん 社 しゃ )p.525 - 526より。