主任しゅにんの大臣だいじん

主任しゅにんの大臣だいじん（しゅにんのだいじん）は、日本にっぽんの内閣ないかくに置おかれる機関きかん・各省かくしょうの長ちょうとして、行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりする地位ちいにある内閣ないかく総理そうり大臣だいじん及およびその他たの国務大臣こくむだいじんのこと（内閣ないかく法ほう第だい3条じょう第だい1項こう等とう）。講こう学がく上じょう、国務大臣こくむだいじんと区別くべつして行政ぎょうせい大臣だいじんとも呼よぶ。内閣ないかく総理そうり大臣だいじん以外いがいの主任しゅにんの大臣だいじんのうち、「各省かくしょうの長ちょう」たる大臣だいじんを各省かくしょう大臣だいじんと呼よぶ。

「主任しゅにんの大臣だいじん」に類似るいじした用語ようごに「主務しゅむ大臣だいじん」がある。主務しゅむ大臣だいじんとは、主務しゅむ官庁かんちょうたる大臣だいじんを指さし、当該とうがい行政ぎょうせい事務じむの遂行すいこうについて主管しゅかん権限けんげんを持もつ大臣だいじんのことである。「主任しゅにんの大臣だいじん」が組織そしきの面めんから、機関きかんの長ちょうとしての大臣だいじんを指さすのに対たいして、「主務しゅむ大臣だいじん」は事務じむの面めんから、行政ぎょうせい事務じむの遂行すいこうについて主管しゅかん権限けんげんを持もつ者ものとしての大臣だいじんを指さす。一ひとつの機関きかんには「主任しゅにんの大臣だいじん」が一人ひとりしかいないのに対たいして、一ひとつの行政ぎょうせい事務じむには「主務しゅむ大臣だいじん」が一人ひとりのことも複数ふくすうのこともある。

また、「主任しゅにんの大臣だいじん」の対義語たいぎごに「無任所むにんしょ大臣だいじん」がある。無任所むにんしょ大臣だいじんは講こう学がく上じょうの用語ようごで、「主任しゅにんの大臣だいじん」の対義語たいぎごとして用もちいる場合ばあい、行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりしない国務大臣こくむだいじんを指さす（内閣ないかく法ほう第だい3条じょう第だい2項こう、狭義きょうぎの無任所むにんしょ大臣だいじん）。

概要がいよう

「主任しゅにんの大臣だいじん」とは、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい74条じょうに定さだめる「主任しゅにんの国務大臣こくむだいじん」のことであり、内閣ないかく法ほう第だい3条じょう第だい1項こうに「各かく大臣だいじんは、別べつに法律ほうりつの定さだめるところにより、主任しゅにんの大臣だいじんとして、行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりする。」と定さだめられている^[1]。この「主任しゅにんの国務大臣こくむだいじん」、「各かく大臣だいじん」には、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんも含ふくまれる。また、国家こっか行政ぎょうせい組織そしき法ほう5条じょう1項こうは「各省かくしょうの長ちょうは、それぞれ各省かくしょう大臣だいじんとし、内閣ないかく法ほうにいう主任しゅにんの大臣だいじんとして、それぞれ行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりする。」と定さだめている。具体ぐたい的てきに、どの大臣だいじんがどの機関きかんの「主任しゅにんの大臣だいじん」となるかは、各かく機関きかんの設置せっち法ほうその他たの根拠こんきょ法ほうに定さだめられる。

主任しゅにんの大臣だいじんの地位ちいは、内閣ないかく総理そうり大臣だいじん及および各省かくしょう大臣だいじんの職しょくに当然とうぜんに付随ふずいするため、通常つうじょうの任官にんかん辞令じれい・補職ほしょく辞令じれいとは別べつに「主任しゅにんの大臣だいじん」に補ほする辞令じれいが発令はつれいされたり「主任しゅにんの大臣だいじん」に任命にんめいする旨むねの文ぶんが通常つうじょうの辞令じれいに付記ふきされたりすることはない。

「主任しゅにんの大臣だいじん」の不在ふざい時じには、正式せいしきな「臨時りんじ代理だいり」を立たてることが必要ひつようとされる。内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの臨時りんじ代理だいりは「内閣ないかく総理そうり大臣だいじん臨時りんじ代理だいり」、各省かくしょう大臣だいじんの臨時りんじ代理だいりは「○○大臣だいじん臨時りんじ代理だいり」という職名しょくめいで、他たの国務大臣こくむだいじんが職務しょくむを行おこなう。この点てん、「主任しゅにんの大臣だいじん」でない大臣だいじんの不在ふざい時じには、臨時りんじ代理だいりを立たてることが定さだめられておらず、慣例かんれい・内規ないき等とうにより「事務じむ代理だいり」という職名しょくめいで、他たの国務大臣こくむだいじんが職務しょくむを行おこなう。

職責しょくせき・権限けんげん

行政ぎょうせい事務じむの分担ぶんたん管理かんり

「主任しゅにんの大臣だいじん」は、独どく任にん制せいの行政ぎょうせい庁ちょうとして、機関きかん・行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりする。「主任しゅにんの大臣だいじん」は、分担ぶんたん管理かんりする行政ぎょうせい事務じむの責任せきにん者しゃであり、管理かんりする機関きかんの人事じんじ・経理けいり・組織そしき運営うんえい等とうにも全般ぜんぱん的てきな職責しょくせきを有ゆうしている。

また、「主任しゅにんの大臣だいじん」は、自みずからの分担ぶんたん管理かんりする機関きかん・行政ぎょうせい事務じむに関連かんれんのある法律ほうりつ及および政令せいれいに署名しょめいし、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが連署れんしょする。この署名しょめいは、その法律ほうりつ及および政令せいれいの執行しっこう責任せきにんを明確めいかくにするために行おこなわれるものである^[2]。

内閣ないかく法ほうは、「内閣ないかくがその職権しょっけんを行おこなうのは、閣議かくぎによるものとする。」と定さだめ、「閣議かくぎは、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんがこれを主宰しゅさいする。」と定さだめる。閣議かくぎの議題ぎだいについて、「内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは、内閣ないかくの重要じゅうよう政策せいさくに関かんする基本きほん的てきな方針ほうしんその他たの案件あんけんを発議はつぎすることができる。」と定さだめ、「各かく大臣だいじんは、案件あんけんの如何いかを問とわず、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに提出ていしゅつして、閣議かくぎを求もとめることができる。」と定さだめる。この「各かく大臣だいじん」は、「主任しゅにんの大臣だいじん」であると否ひとにかかわらず、すべての国務大臣こくむだいじんである。すなわち、すべての国務大臣こくむだいじんが、案件あんけんにかかわらず、閣議かくぎ請議を行おこなうことができる。

しかし、実務じつむ上じょう、「主任しゅにんの大臣だいじんが、その分担ぶんたん管理かんりする事務じむに係かかる案件あんけんについて閣議かくぎ請議を行おこなってきて」おり、「これまで、このような案件あんけんについて、当該とうがい主任しゅにんの大臣だいじん以外いがいの国務大臣こくむだいじんが閣議かくぎ請議を行おこなった例れいはない。」とされる ^[3]。

署名しょめいの方法ほうほう

法律ほうりつ・政令せいれいの末尾まつびに付ふされる署名しょめいは、次つぎのような原則げんそくにより行おこなわれる。

その法律ほうりつ・政令せいれいに関係かんけいする主任しゅにんの大臣だいじんが「総務そうむ大臣だいじん」のような各省かくしょう大臣だいじんの肩書かたがきの下したに署名しょめいし、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが最後さいごに連署れんしょをする。署名しょめいの順序じゅんじょはいわゆる建けん制せい順じゅんによる。したがって、たとえばその法律ほうりつ・政令せいれいに関係かんけいする主任しゅにんの大臣だいじんが1人ひとりである場合ばあいは、総理そうりと2人ふたりだけが署名しょめいすることになる。
内閣ないかく総理そうり大臣だいじん自身じしんが当該とうがい法律ほうりつ・政令せいれいに関係かんけいする主任しゅにんの大臣だいじんに含ふくまれる場合ばあいは、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが署名しょめい順じゅんの最初さいしょとなる。この場合ばあいは、最後さいごの連署れんしょは省略しょうりゃくされる。したがって、その法律ほうりつ・政令せいれいに関係かんけいする主任しゅにんの大臣だいじんが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんのみである場合ばあいは、総理そうり1人にんの署名しょめいとなる。
肩書かたがきとして「主任しゅにんの大臣だいじん」は用もちいられない。
臨時りんじ代理だいりによる署名しょめいの場合ばあいは、「内閣ないかく総理そうり大臣だいじん臨時りんじ代理だいり」「総務そうむ大臣だいじん臨時りんじ代理だいり」などの肩書かたがきに続つづけて、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんによる臨時りんじ代理だいりの場合ばあいは「内閣ないかく総理そうり大臣だいじん」を、それ以外いがいの場合ばあいは「国務大臣こくむだいじん」の肩書かたがきを用もちいて署名しょめいする。臨時りんじ代理だいりへの就任しゅうにんは「同おなじ閣かく内ないにある国務大臣こくむだいじんとして助たすける」という内閣ないかく法ほう上じょうの趣旨しゅしがあり、「内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかんだから総理そうりの臨時りんじ代理だいりとなる」という現実げんじつとは別べつの考かんがえ方かたによっているため、それらの職名しょくめいは用もちいず、総理そうりによる代理だいり以外いがいは一律いちりつ「国務大臣こくむだいじん」を用もちいる。