西 にし ゲルマン語 ご 群 ぐん の一種 いっしゅ である低 てい ザクセン語 ご は、標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご (高地 たかち ドイツ語 ご 東 ひがし 中部 ちゅうぶ ドイツ語 ご のテューリンゲン・オーバーザクセン方言 ほうげん を母胎 ぼたい にして近世 きんせい に作 つく られた)が経験 けいけん した「第 だい 二 に 次 じ 子音 しいん 推移 すいい 」ないし「高地 たかち ドイツ語 ご 子音 しいん 推移 すいい 」と呼 よ ばれる子音 しいん 変化 へんか を経験 けいけん していないので、英語 えいご やフリジア語 ご 、スカンジナビア諸 しょ 言語 げんご との共通 きょうつう 点 てん が標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご より多 おお い。文法 ぶんぽう 的 まと にも、英語 えいご と共通 きょうつう の部分 ぶぶん がある。たとえば、低 てい ザクセン語 ご の名詞 めいし には、格 かく が3つしかない(標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご は4、英語 えいご は代名詞 だいめいし で3)。北部 ほくぶ 方言 ほうげん では、過去 かこ 分詞 ぶんし にドイツ語 ご やオランダ語 ご のそれに付 つ くようなge-が付 つ かず、多 おお くの南部 なんぶ 方言 ほうげん ではge-の代 か わりにe-が使 つか われる。このような多 おお くの相違 そうい 点 てん から言語 げんご 学 がく 的 てき 見地 けんち からは、同 おな じ西 にし ゲルマン語 ご 群 ぐん に属 ぞく する別 べつ 言語 げんご 、つまりは外国 がいこく 人 じん にとってのドイツ語 ご であるところの標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご と親子 おやこ 関係 かんけい ではなく、むしろフランス語 ふらんすご に対 たい するイタリア語 ご ・スペイン語 ご のような兄弟 きょうだい としての立 た ち位置 いち にあると考 かんが えるのが一般 いっぱん 的 てき な見解 けんかい である。
しかし、ドイツ政府 せいふ は近年 きんねん に至 いた るまでこの事実 じじつ を否定 ひてい 的 てき に捉 とら え、あくまでドイツ語 ご の一方 いっぽう 言 げん として処理 しょり してきた歴史 れきし を持 も つ。これは元々 もともと 、何 なん らかの言語 げんご が独立 どくりつ 言語 げんご なのか方言 ほうげん なのかを客観 きゃっかん 的 てき に決 き めることは言語 げんご 学者 がくしゃ の仕事 しごと ではなく、多 おお くの場合 ばあい は政治 せいじ 的 てき な理由 りゆう から判断 はんだん されることが多 おお いためである。領土 りょうど ・経済 けいざい ・人口 じんこう ・文化 ぶんか ・歴史 れきし など様々 さまざま な面 めん で「ドイツ人 じん 」の少 すく なくない部分 ぶぶん を担 にな ってきた北 きた ドイツ住民 じゅうみん が、言語 げんご という最 もっと も重要 じゅうよう な文化 ぶんか 的 てき 概念 がいねん において他 ほか のドイツ住民 じゅうみん との違 ちが いが大 おお きい性質 せいしつ を持 も つことは、ドイツ住民 じゅうみん を意識 いしき の上 うえ で単一 たんいつ に纏 まと めたいドイツ政府 せいふ にとって認 みと め難 がた いことだった。
しかし政府 せいふ の立場 たちば はともかく、学術 がくじゅつ 的 てき には北 きた ドイツで話 はな される言葉 ことば は中部 ちゅうぶ ・南部 なんぶ で話 はな される言葉 ことば とは著 いちじる しく異 こと なる特徴 とくちょう を持 も っており、人為 じんい 的 てき に作 つく り出 だ されたと言 い ってよい標準 ひょうじゅん 語 ご の存在 そんざい が無 な ければ意思 いし の疎通 そつう すら困難 こんなん と言 い わねばならない。
低 てい ザクセン語 ご の歴史 れきし は大 おお きく古代 こだい ・中世 ちゅうせい ・現代 げんだい に分 わ けられる。
古 こ ザクセン語 ご はエルベ川 がわ の近辺 きんぺん で生 しょう じたと考 かんが えられている言語 げんご が基 もと になっており、古 こ フランク語 ご 、古 こ 英語 えいご 、古 こ フリジア語 ご とともに北海 ほっかい ゲルマン語 ご に分類 ぶんるい され、今日 きょう の低 てい ザクセン語 ご と英語 えいご の基 もと になったとされる(英語 えいご では低 てい ザクセン語 ご を低 てい サクソン語 ご 、英 えい : Low Saxon と呼 よ ぶ)。実際 じっさい に文字 もじ として現 あら われるのは9世紀 せいき からである。上述 じょうじゅつ の通 とお り、近年 きんねん までドイツ政府 せいふ は国民 こくみん 国家 こっか を目指 めざ した民族 みんぞく 政策 せいさく から低 てい ザクセン語 ご は標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご の起源 きげん である中東 ちゅうとう 部 ぶ ドイツ語 ご の方言 ほうげん と判断 はんだん しており、その辻褄 つじつま を合 あ わせるために古 こ ザクセン語 ご も「古 こ 低地 ていち ドイツ語 ご 」(Altniederdeutsch)と呼称 こしょう していた。しかしこれは明確 めいかく な(或 ある いは確信 かくしん 的 てき な)誤 あやま りで、「古 こ ザクセン語 ご 」(Altsächsisch)と呼称 こしょう するのが正当 せいとう であるとする見解 けんかい がある。
中世 ちゅうせい ザクセン語 ご (1200年 ねん –1650年 ねん )
編集 へんしゅう
古 こ ザクセン語 ご の時代 じだい 、徐々 じょじょ に北 きた ドイツやそれに近 ちか い地域 ちいき へ広 ひろ まっていった低 てい ザクセン語 ご は、中世 ちゅうせい 時代 じだい に飛躍 ひやく の時 とき を迎 むか える。北方 ほっぽう はバルト海 ばるとかい の海上 かいじょう 貿易 ぼうえき を一 いち 手 て に担 にな い、近世 きんせい ヨーロッパにその名 な を知 し らしめたハンザ同盟 どうめい の公用 こうよう 語 ご とされたのである。ハンザ同盟 どうめい の勢力 せいりょく 拡大 かくだい と共 とも に北欧 ほくおう へと進出 しんしゅつ した低 てい ザクセン語 ご は現地 げんち の言葉 ことば と混 ま ざり合 あ い、自 みずか らと北欧 ほくおう の言語 げんご の双方 そうほう に新 あら たな変化 へんか を与 あた えた。
古 ふる いドイツ関連 かんれん の資料 しりょう ではこの低 てい ザクセン語 ご による北欧 ほくおう 諸 しょ 言語 げんご への影響 えいきょう を「(標準 ひょうじゅん )ドイツ語 ご の成果 せいか 」としている物 もの が多 おお いが、これも誤 あやま りである。
17世紀 せいき 後半 こうはん からは、Neddersassischという呼称 こしょう は徐々 じょじょ にPlattdüütsch という呼称 こしょう に取 と って代 か わられるようになった[ 3] 。
現代 げんだい の低 てい ザクセン語 ご は多数 たすう の方言 ほうげん を抱 かか えているが、相互 そうご 理解 りかい の手段 しゅだん である標準 ひょうじゅん 語 ご は制定 せいてい されていない。これは低 てい ザクセン語 ご が幾 いく つかの国 くに に存在 そんざい する事 こと や、大 だい 多数 たすう が占 し める北 きた ドイツの話者 わしゃ が、長年 ながねん に亘 わた ってそれぞれ一方 いっぽう 言 げん という地位 ちい に押 お し込 こ められていたためである。オランダで幾 いく つかの方言 ほうげん を纏 まと めて標準 ひょうじゅん 語 ご を作 つく ろうとする試 こころ みも見 み られたが、低 てい ザクセン語 ご 全体 ぜんたい の統合 とうごう には程遠 ほどとお い状況 じょうきょう にある。
北 きた ドイツで話 はな される言葉 ことば が中部 ちゅうぶ ・南部 なんぶ ドイツの言語 げんご やオランダ語 ご と異 こと なる言語 げんご ではないのか、という指摘 してき は過去 かこ から今日 きょう に至 いた るまで幾度 いくど もなされていた。しかしドイツの言語 げんご 学会 がっかい (特 とく に冷戦 れいせん 期 き の西 にし ドイツ )ではこうした議論 ぎろん は半 なか ば禁 きん じられ、北 きた ドイツの言葉 ことば に関 かん する研究 けんきゅう 者 しゃ 達 たち も暗黙 あんもく の了解 りょうかい として「低 てい ドイツ語 ご 」としての研究 けんきゅう しか行 おこな えなかった[ 4] 。
政府 せいふ の語学 ごがく 教育 きょういく への圧力 あつりょく から、若年 じゃくねん 層 そう の北 きた ドイツ住民 じゅうみん は自分 じぶん 達 たち の「方言 ほうげん 」が標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご とは距離 きょり があるという事実 じじつ を知 し らず、更 さら にはアメリカに移住 いじゅう したドイツ地方 ちほう 出身 しゅっしん 者 しゃ の多 おお くが標準 ひょうじゅん ドイツ語 ご ではなく、低 てい ザクセン語 ご を用 もち いている歴史 れきし 的 てき 事実 じじつ すら知 し らぬままに過 す ごしている。独立 どくりつ 言語 げんご の象徴 しょうちょう である「行政 ぎょうせい 的 てき 手続 てつづき での使用 しよう 」も古 こ サクソン語 ご 時代 じだい の様 よう には叶 かな わず、地方 ちほう 言語 げんご 文学 ぶんがく の製作 せいさく も局地 きょくち 的 てき な展開 てんかい に留 とど まっていた。これらは低 てい ザクセン語 ご の存続 そんぞく にとって重大 じゅうだい な危機 きき であり、言語 げんご の消滅 しょうめつ はもちろん、低 てい ザクセン語 ご 自体 じたい が各 かく 方言 ほうげん の一層 いっそう の独自 どくじ 化 か により、更 さら なる分裂 ぶんれつ を生 う む可能 かのう 性 せい もある。
しかし冷戦 れいせん 後 ご のヨーロッパに広 ひろ がったローカリズム (郷土 きょうど 主義 しゅぎ )に由来 ゆらい する方言 ほうげん 保護 ほご 運動 うんどう の高 たか まりや、既存 きそん の国家 こっか の枠組 わくぐ みを緩 ゆる めたい欧州 おうしゅう 連合 れんごう の後援 こうえん の元 もと 、他国 たこく 他 た 言語 げんご の方言 ほうげん 同様 どうよう に低 てい ザクセン語 ご もその地位 ちい 向上 こうじょう が盛 さか んに求 もと められる時代 じだい になりつつある。80年代 ねんだい から90年代 ねんだい にかけて北 きた ドイツ各地 かくち で低 てい ザクセン語 ご の復興 ふっこう 運動 うんどう が展開 てんかい され、大 おお きな成功 せいこう を収 おさ めた。1994年 ねん に欧州 おうしゅう 連合 れんごう は低 てい ザクセン語 ご を独立 どくりつ した地域 ちいき 言語 げんご であるとし、1999年 ねん にはヨーロッパ地方 ちほう 言語 げんご ・少数 しょうすう 言語 げんご 憲章 けんしょう (European Charter for Regional or Minority Languages )による保護 ほご がドイツ政府 せいふ に命 めい じられている。これによって低 てい ザクセン語 ご は分布 ぶんぷ 地域 ちいき において公的 こうてき に用 もち いる事 こと が可能 かのう になり、テレビなどの放送 ほうそう 言語 げんご で実際 じっさい に用 もち いられている。「低 てい ザクセン運動 うんどう 」が国内外 こくないがい での正当 せいとう 性 せい を獲得 かくとく した事 こと は独立 どくりつ 派 は にとっての大 おお きな後押 あとお しとなった[ 5] 。
現在 げんざい のところ低 てい ザクセン語 ご が公用 こうよう 語 ご とされているのは、ニーダーザクセン州 しゅう 、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州 しゅう 、自由 じゆう ハンザ都市 とし ハンブルク 、自由 じゆう ハンザ都市 とし ブレーメン で、北 きた ドイツの大 だい 部分 ぶぶん を含 ふく んでいる。しかし一方 いっぽう でザクセン=アンハルト州 しゅう やブランデンブルク州 しゅう などは非 ひ 低 てい ザクセン語 ご 圏 けん と低 てい ザクセン語 ご 圏 けん の双方 そうほう にまたがっているためか、1999年 ねん の保護 ほご 対象 たいしょう からは除外 じょがい されている。
方言 ほうげん に留 と め置 お かれている言語 げんご が国際 こくさい 的 てき 認知 にんち を得 え て、文語 ぶんご としての地位 ちい を確立 かくりつ するにはその言語 げんご 独自 どくじ の文学 ぶんがく が不可欠 ふかけつ である。低 てい ザクセン語 ご も例外 れいがい ではなく、詩人 しじん クラウス・グロート 、フリッツ・ロイター らが盛 さか んに低 てい ザクセン語 ご の方言 ほうげん 文学 ぶんがく を製作 せいさく し、高 たか い名声 めいせい を獲得 かくとく している。ただし前者 ぜんしゃ はホルシュタイン語 ご 、後者 こうしゃ はメクレンブルク語 ご で執筆 しっぴつ しており、必 かなら ずしも同 おな じ形 がた の文章 ぶんしょう という訳 わけ ではない。こうした事 こと が低 てい ザクセン語 ご もまた一 ひと つの言語 げんご たりえるかどうかという問題 もんだい 点 てん を示 しめ している。
低地 ていち ドイツ語 ご の方言 ほうげん 図 ず
プロイセン地方 ちほう を除 のぞ き、低地 ていち 地方 ちほう を含 ふく んだもの
低 てい ザクセン語 ご (Niedersächsisch )
1.シュレスヴィヒ語 ご (Schleswigisch )
2.ホルシュタイン語 ご (Holsteinisch )
3.北 きた 低 てい ザクセン語 ご (Nordniedersächsisch )
3-1.ハンブルク語 ご (Hamburgisch ) - ハンブルク を中心 ちゅうしん に話 はな される言語 げんご 。
4.オストフリース語 ご (Ostfriesisch ) - 低 てい ザクセン語 ご の東 ひがし フリースラント方言 ほうげん であり、東 ひがし フリジア語 ご (Saterfriesisch/Saterländisch ) とは異 こと なる。
5.オランダ低 てい ザクセン語 ご (Nedersaksisch ) - 低 てい ザクセン語 ご のうち、オランダ領内 りょうない で話 はな されるウェスタークワーティア語 ご 等 とう の諸 しょ 方言 ほうげん 。低 てい フランク諸語 しょご に含 ふく まれる狭義 きょうぎ のオランダ語 ご とは区分 くぶん される。
6.ヴェストファーレン語 ご (Westfälisch )
7.オストファーレン語 ご (Ostfälisch ) - 発音 はつおん に関 かん してはハノーファー 都市 とし 部 ぶ の発音 はつおん が最 もっと もドイツ語 ご の標準 ひょうじゅん 語 ご に近 ちか いとされる。
(番号 ばんごう は右 みぎ 下 か の地図 ちず に準拠 じゅんきょ )