併用へいよう軌道きどう

併用へいよう軌道きどう（へいようきどう）とは、道路どうろ上うえに敷設ふせつされた軌道きどう。

日本にっぽんにおける併用へいよう軌道きどう

日本にっぽんでは軌道きどう建設けんせつ規程きていにおける分類ぶんるいで、「道路どうろ上じょうその他た公衆こうしゅうの通行つうこうする場所ばしょに敷設ふせつされる軌道きどう」を「併用へいよう軌道きどう」、その他たの軌道きどうを「新設しんせつ軌道きどう」に分わける^[1]^[2]。自動車じどうしゃ交通こうつうの普及ふきゅうに伴ともなう路面ろめん電車でんしゃの廃止はいしにより減少げんしょう傾向けいこうにあったが、国くにのLRT整備せいびの方針ほうしんの下した、2006年ねんに富山とやまライトレール（当時とうじ、2020年ねんより富山とやま地方ちほう鉄道てつどうが運営うんえい）富山港線とやまこうせんの一部いちぶ区間くかん（富山とやま駅えき北きた駅えき - 奥田おくだ中学校ちゅうがっこう前まえ駅えき付近ふきん）で、2023年ねんには宇都宮うつのみやライトレールの宇都宮うつのみや芳賀はがライトレール線せんで、新規しんきに整備せいびされている。

軌道きどう法ほうと鉄道てつどう事業じぎょう法ほう

日本にっぽん国内こくないにおいては、基本きほん的てきには軌道きどう法ほうに準拠じゅんきょする軌道きどうとして敷設ふせつされているが、例外れいがい的てきに鉄道てつどう事業じぎょう法ほうに準拠じゅんきょしている場合ばあいもある。

軌道きどう法ほうによるもの

軌道きどう法ほうに於おける路線ろせんについては、第だい二に条じょうに「軌道きどうハ特別とくべつノ事由じゆうアル場合ばあいヲ除じょクノ外がい之のヲ道路どうろニ敷設ふせつスヘシ」とあるように道路どうろへの敷設ふせつを原則げんそくとしている。併用へいよう軌道きどうから新設しんせつ軌道きどうへは工事こうじ方法ほうほう書しょの変更へんこうにより行おこなうことが出来できて、鉄道てつどうより変更へんこうが容易よういになっている。

なお、道路どうろ(公道こうどう)上じょうを走行そうこうするため、運転うんてんは日本にっぽんにおいては軌道きどう運転うんてん規則きそくだけでなく道路どうろ交通こうつう法ほうにも準拠じゅんきょして行おこなわれる。通常つうじょうの鉄道てつどうと違ちがう点てんは概おおむね以下いかの通とおりである。

列車れっしゃの長ながさは30 m以下いかに制限せいげんされる。ただし広島電鉄ひろしまでんてつの5000形かたち（グリーンムーバー）や、4両りょう編成へんせいで運行うんこうしている京阪けいはん京津線けいしんせんは編成へんせい長ちょうがこれを超こえるため許可きょかを得えており、それ以外いがいでもそのような路線ろせんは過去かこに複数ふくすう存在そんざいしていた。
最高さいこう速度そくどは40 km/h以下いかに制限せいげんされる。
系統けいとうや行いき先さきを車両しゃりょう外部がいぶに明示めいじしなければならない。
複線ふくせん区間くかんでは閉塞へいそく設備せつびを要ようせず、目視もくしで続行ぞっこう運転うんてんできる。
通つう票ひょうが存在そんざいする単線たんせん区間くかんにおいても、最さい後尾こうび以外いがいの車両しゃりょうは続行ぞっこう標しるべ（続行ぞっこう運転うんてんを行おこなっていることを示しめす、車両しゃりょうに取とり付つける標識ひょうしき）を掲出けいしゅつして続行ぞっこう運転うんてんできる。（併用へいよう軌道きどう区間くかんでのスタフ閉塞へいそくを参照さんしょう）
信号しんごう機きは軌道きどう信号しんごう機きと呼よばれており、進行しんこう信号しんごうは黄色おうしょくの矢印やじるし、停止ていし信号しんごうは赤色あかいろ×印しるしだが、単線たんせん区間くかんでは、鉄道てつどうでの自動じどう閉塞へいそくによる運転うんてんと続行ぞっこう運転うんてんの両方りょうほうができるように、行いき違ちがいができる停車場ていしゃじょうに単線たんせん区間くかんでの車両しゃりょう数すうと進行しんこう方向ほうこうを表示ひょうじする信号しんごうが併設へいせつされている場合ばあいがある。
自動車じどうしゃ用ようの信号しんごう機きにも従したがう。

なお、路面ろめん電車でんしゃサイズを超こえる大型おおがたの鉄道てつどう車両しゃりょうが軌道きどうを走行そうこうする場合ばあいは、後述こうじゅつの鉄道てつどう事業じぎょう法ほうに基もとづく場合ばあいのみならず、福井ふくい鉄道てつどう福武線ふくぶせんのように専用せんよう軌道きどう部分ぶぶんは鉄道てつどう事業じぎょう法ほう、併用へいよう軌道きどうは軌道きどう法ほうに基もとづき建設けんせつされている場合ばあいや、京阪けいはん京津線けいしんせんのように専用せんよう軌道きどうを含ふくめ全線ぜんせんが軌道きどう法ほうに基もとづき建設けんせつされている場合ばあいもあり、車両しゃりょうの大おおきさと適用てきようされる法令ほうれいは一致いっちしない。この場合ばあいには軌道きどうを大型おおがたの鉄道てつどう車両しゃりょうが走行そうこうしていることになる。

ギャラリー

京阪電気鉄道けいはんでんきてつどうの併用へいよう軌道きどうと、4両りょう編成へんせいで全長ぜんちょう64mの京阪けいはん京津線けいしんせん「京阪けいはん800系けい電車でんしゃ」（2019年ねん11月）
自動車じどうしゃ用ようの信号しんごう機きに併設へいせつされている軌道きどう信号しんごう機き、自動車じどうしゃは進行しんこう、電車でんしゃは停止ていしを現げん示しめしている
自動車じどうしゃ用ようの信号しんごう機きに併設へいせつされている軌道きどう信号しんごう機き、自動車じどうしゃは停止ていし、電車でんしゃは左側ひだりがわに進行しんこうを現げん示しめしている
車両しゃりょう数すうと進行しんこう方向ほうこうの信号しんごうが併設へいせつされた軌道きどう信号しんごう機き。停止ていし信号しんごうを現げん示しめしており、この先さきの単線たんせん区間くかんに1本ほんの電車でんしゃがあり、進行しんこう方向ほうこうが奥おくから信号しんごう機き側がわになっていることを現げん示しめしている

鉄道てつどう事業じぎょう法ほうによるもの

併用へいよう軌道きどうは鉄道てつどう事業じぎょう法ほう（旧きゅう・地方ちほう鉄道てつどう法ほう）に基もとづくものも存在そんざいする。鉄道てつどう事業じぎょう法ほうによる場合ばあい、同どう法ほう第だい61条じょうは道路どうろへの線路せんろ敷設ふせつを原則げんそく禁止きんししているが、同どう条じょう2項こうに基もとづく政令せいれいによる手続てつづきを経へて許可きょかを得えている。

現存げんそんするものでは江ノ島えのしま電鉄でんてつ線せんと、熊本くまもと電気でんき鉄道てつどう藤崎線ふじさきせんがある。いずれも元もとは軌道きどうとして敷設ふせつされ、後のちに鉄道てつどうへ変更へんこうされたものである。

過去かこのものでは近鉄きんてつ奈良なら線せん奈良なら市し内うち（軌道きどうより変更へんこうしたもの）の他ほか、鉄道てつどう道路どうろ併用へいよう橋きょうとして名鉄めいてつ犬山線いぬやませんの犬山いぬやま橋きょう、東急とうきゅう大井おおい町まち線せんの二子ふたご橋きょうなど、日本にっぽん各地かくちに多おおくが存在そんざいした。

江ノ島えのしま電鉄でんてつの江ノ島えのしま駅えき - 腰越こしごえ駅えき間あいだの併用へいよう軌道きどう
熊本くまもと電気でんき鉄道てつどうの藤崎宮前ひじさきぐうまえ駅えき - 黒髪くろかみ町まち駅えき間あいだの併用へいよう軌道きどう（2006年ねん9月がつ）
かつて併用へいよう軌道きどうであった犬山いぬやま橋きょうは、道路どうろ交通こうつうの増加ぞうかのため専用せんよう軌道きどう化かされた（1990年ねん5月がつ）