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公訴 - Wikipedia

公訴こうそ(こうそ)とは、おおやけ立場たちばでなされる刑事けいじ手続てつづきうえうった[1]私人しじんによる訴追そつい意味いみするわたしたいする概念がいねんである[1]

日本にっぽんのように国家こっか機関きかん訴追そついおこな国家こっか訴追そつい主義しゅぎ例外れいがいなく採用さいようしているくにもあれば、イギリスのように私人しじんによる訴追そついわたし訴)が原則げんそく公訴こうそ例外れいがいとしているくにもある[2]

公訴こうそかんするしょ原則げんそく

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公訴こうそにはつぎのようなしょ原則げんそくがある。ただし、採用さいようされていないくに採用さいようしていても例外れいがい存在そんざいする場合ばあいもある。

国家こっか訴追そつい主義しゅぎ
国家こっか訴追そつい主義しゅぎとは、刑事けいじ事件じけんにおける公訴こうそ提起ていきおよびこれを遂行すいこうする権限けんげん国家こっか機関きかん専属せんぞくさせる制度せいどをいう[1]通常つうじょう刑事けいじ事件じけんについて公訴こうそ提起ていき遂行すいこうする権限けんげん検察官けんさつかんにな[1]
起訴きそ独占どくせん主義しゅぎ
起訴きそ独占どくせん主義しゅぎとは、起訴きそ権限けんげん国家こっか機関きかんのうちとく検察官けんさつかんのみにみとめる制度せいどをいう[1]
起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ
起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎとは、公訴こうそ提起ていきするにりる犯罪はんざい嫌疑けんぎおよ訴訟そしょう条件じょうけん具備ぐびしているときでも検察官けんさつかん裁量さいりょう起訴きそしないことができる制度せいどをいう[1]一定いってい場合ばあい起訴きそ強制きょうせいする起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎたいする概念がいねん
公訴こうそ不可分ふかぶんつげ原則げんそく
公訴こうそ不可分ふかぶんつげ原則げんそくとは、公訴こうそ効力こうりょく検察官けんさつかん指定していした被告人ひこくにん以外いがいものにはおよばず、検察官けんさつかん指定していした公訴こうそ事実じじつ同一どういつせいゆうする範囲はんいないでその事件じけん全部ぜんぶ不可分ふかぶんてきおよびそれ以外いがいにはおよばないとする制度せいどをいう[3]

各国かっこく法体ほうたいけい公訴こうそ手続てつづき

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大陸たいりくほうけい国々くにぐににおける公訴こうそ手続てつづき

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フランスドイツでは公訴こうそ提起ていきする権限けんげん行使こうし主体しゅたい検察官けんさつかんとされており国家こっか訴追そつい主義しゅぎ原則げんそくとしているが、例外れいがいてき被害ひがいしゃによる私人しじん訴追そついみとめられている[2]

日本にっぽん刑事けいじ手続てつづきでは私人しじんによる訴追そついみとめられていない[1]。なお日本にっぽん刑事けいじ手続てつづきにおける訴追そついについては後述こうじゅつ

えいべいほうけい国々くにぐににおける公訴こうそ手続てつづき

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イギリスではもっぱら警察官けいさつかん私人しじん立場たちば訴追そついおこなわたし訴(Private prosecution)がおこなわれており公訴こうそ例外れいがいである[2]

アメリカでは私人しじん訴追そつい制度せいど継承けいしょうされず公的こうてき訴追そつい機関きかんとして連邦れんぽうおよ各州かくしゅう検察官けんさつかん制度せいどもうけられている[2]。また、アメリカではしゅうによって検察官けんさつかんとは別個べっこ訴追そつい機関きかんとしてだい陪審ばいしん(Grand Jury)の制度せいどもうけている場合ばあいもある[2]

日本にっぽん刑事けいじ手続てつづきにおける公訴こうそ

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日本にっぽんでは国家こっか機関きかんである検察官けんさつかん独自どくじ裁量さいりょうにおいて公訴こうそ提起ていきする制度せいどがとられている[1]

公訴こうそかんするしょ原則げんそく採用さいよう

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国家こっか訴追そつい主義しゅぎ

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公訴こうそ検察官けんさつかんおこなう(刑事けいじ訴訟そしょうほうだい247じょう)。日本にっぽんほうでは私人しじんによる起訴きそわたし訴)の制度せいど採用さいようされていない[1]

起訴きそ独占どくせん主義しゅぎ

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起訴きそ国家こっか機関きかんのうち検察官けんさつかんのみがすることができる(刑事けいじ訴訟そしょうほう247じょう検察庁けんさつちょうほう4じょう[1]。ただし、例外れいがいとしてじゅん起訴きそ手続てつづきであるづけ審判しんぱん制度せいど刑事けいじ訴訟そしょうほう262じょう以下いか)と検察けんさつ審査しんさかいによる起訴きそ議決ぎけつ制度せいど(2度目どめ起訴きそ議決ぎけつによる強制きょうせい起訴きそ)の制度せいど存在そんざいする[1]

刑事けいじ訴訟そしょうほう262じょう所定しょてい手続てつづきじゅん起訴きそ手続てつづきないしづけ審判しんぱん請求せいきゅうばれる。もっとも、づけ審判しんぱん請求せいきゅう理由りゆうがあるとして裁判所さいばんしょ事件じけん審判しんぱんしたときには、その事件じけんについて公訴こうそがあったとみなされ(刑事けいじ訴訟そしょうほう267じょう)、裁判所さいばんしょ指定していする弁護士べんごし検察官けんさつかん職務しょくむおこなう。

また、検察けんさつ審査しんさかいほう改正かいせいにより2009ねん5がつ以降いこうは、検察けんさつ審査しんさかいが2かい起訴きそ相当そうとう議決ぎけつした場合ばあい裁判所さいばんしょ指定していする弁護士べんごしが、原則げんそくとして公訴こうそ提起ていきするものとされ、じゅん起訴きそ手続てつづき同様どうよう仕組しくみが導入どうにゅうされた。

事件じけん事務じむ規程きていだい191じょうにより、地方ちほう検察庁けんさつちょうまた区検くけん察庁の検察官けんさつかんがした起訴きそ処分しょぶんかんし、事件じけん関係かんけいしゃ高等こうとう検察庁けんさつちょう不服ふふくもうてをすることができ、さら高等こうとう検察庁けんさつちょう起訴きそ処分しょぶん維持いじするという判断はんだん不服ふふくがあるときは、最高さいこう検察庁けんさつちょう不服ふふくもうてをすることが内規ないきみとめられている。

起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ

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検察官けんさつかんは、犯人はんにん性格せいかく年齢ねんれいおよ境遇きょうぐう犯罪はんざい軽重けいちょうおよ情状じょうじょうならびに犯罪はんざい情況じょうきょう示談じだん成立せいりつなど)により訴追そつい(ここでは、起訴きそ同義どうぎ)を必要ひつようとしないときは、公訴こうそ提起ていきしないことができる(刑事けいじ訴訟そしょうほう248じょう)。日本にっぽんほうでは1922ねん大正たいしょう11ねん)から起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ採用さいようされている。

起訴きそじょういちほん主義しゅぎ

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公訴こうそ提起ていきさいしては起訴きそじょうのみを提出ていしゅつし、証拠しょうこ提出ていしゅつしてはならないとする原則げんそく刑事けいじ訴訟そしょうほう256じょう6こう)。事件じけん担当たんとうする裁判官さいばんかんたいしてあらかじめ被告人ひこくにん真犯人しんはんにんける予断よだんあたえてはならないという、予断よだん排除はいじょ原則げんそく有機ゆうきてきむすびついている。まんいちにも起訴きそじょう以外いがい証拠しょうこ裁判官さいばんかんれた場合ばあい、その刑事けいじ訴訟そしょう終了しゅうりょうすることになる。ひとたび予断よだんいた裁判官さいばんかん記憶きおくくすわけにもいかないからである。

変更へんこう主義しゅぎ

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検察官けんさつかんは、だいいちしん判決はんけつがあるまで公訴こうそすことができる(刑事けいじ訴訟そしょうほう257じょう変更へんこう主義しゅぎ)。

公訴こうそ不可分ふかぶんつげ原則げんそく

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公訴こうそ提起ていき効力こうりょくは、起訴きそじょう記載きさいされた単一たんいつ公訴こうそ事実じじつ全体ぜんたいおよ一方いっぽう、それ以外いがい事実じじつにはおよばない。また、公訴こうそ検察官けんさつかん指定していした被告人ひこくにん以外いがいものにその効力こうりょくおよぼさない(刑事けいじ訴訟そしょうほう249じょう)。裁判所さいばんしょ公訴こうそ提起ていきされていない事件じけん事案じあんについて審理しんりおよび判決はんけつすると、審判しんぱん請求せいきゅうけない事件じけんについて判決はんけつしたとして、絶対ぜったいてき控訴こうそ理由りゆうになる(刑事けいじ訴訟そしょうほう378じょうだい3ごう)。

公訴こうそ提起ていき手続てつづき

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公訴こうそ提起ていきは、裁判所さいばんしょ起訴きそじょう提出ていしゅつしてする(刑事けいじ訴訟そしょうほう256じょう1こう)。起訴きそじょうには被告人ひこくにん氏名しめい、(生年月日せいねんがっぴ本籍ほんせきまたは国籍こくせき住所じゅうしょ職業しょくぎょうも)公訴こうそ事実じじつ罪名ざいめい記載きさいしなければならない(どうじょう2こう)。公訴こうそ事実じじつ訴因そいん記載きさいし、できるかぎ日時にちじ場所ばしょおよ方法ほうほうをもって特定とくていしなければならないとされるが(どうじょう3こう)、このように訴因そいん主義しゅぎることで、審判しんぱん対象たいしょう被告人ひこくにん防御ぼうぎょ範囲はんい限定げんていできるメリットがある。また、裁判官さいばんかん予断よだんあたえるのを防止ぼうしするため、起訴きそじょうにそうした予断よだんきたすおそれがある余事よじ記載きさいや、証拠しょうこその書類しょるいなどを添付てんぷすることはゆるされない(起訴きそじょういちほん主義しゅぎばれる。どうじょう6こう。なお、これに違反いはんした起訴きそどうほう338じょう4ごうにより公訴こうそ棄却ききゃくとなる[4])。

裁判さいばん迅速じんそくのため、検察官けんさつかん公訴こうそ提起ていき同時どうじ略式りゃくしき手続てつづき即決そっけつ裁判さいばん手続てつづき請求せいきゅうおこなうこともできる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f g h i j k 河上かわかみ和雄かずお & 中山なかやまよしぼう 2013, p. 4高橋たかはし省吾しょうご執筆しっぴつ部分ぶぶん
  2. ^ a b c d e 河上かわかみ和雄かずお & 中山なかやまよしぼう 2013, p. 31高橋たかはし省吾しょうご執筆しっぴつ部分ぶぶん
  3. ^ 河上かわかみ和雄かずお & 中山なかやまよしぼう 2013, p. 5高橋たかはし省吾しょうご執筆しっぴつ部分ぶぶん
  4. ^ 最大さいだいばん昭和しょうわ27ねん4がつ5にち

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 河上かわかみ和雄かずお中山なかやまよしぼう古田ふるたたすく原田はらだ國男くにお河村かわむらひろし渡辺わたなべ咲子さきこだいコンメンタール 刑事けいじ訴訟そしょうほう だいはん だい5かんだい247じょうだい281じょうの6)』あおりん書院しょいん、2013ねん 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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