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起訴便宜主義 - Wikipedia

起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ(きそべんぎしゅぎ)とは、検察官けんさつかん被疑ひぎしゃ性格せいかく年齢ねんれい境遇きょうぐう犯罪はんざい軽重けいちょう情状じょうじょう考慮こうりょし、訴追そついするかかを判断はんだんするという原則げんそく対義語たいぎご起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎ

起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎ

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訴追そつい機関きかん訴追そつい裁量さいりょうみとめる制度せいど起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎという。一方いっぽう訴追そつい裁量さいりょうけんみとめず法律ほうりつじょう公訴こうそ提起ていき要件ようけんたすかぎかなら起訴きそしなければならないとする制度せいど起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎという[1]

起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎ特色とくしょく

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起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎドイツなどで採用さいようされている[2]

起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎは、訴追そつい機関きかん恣意しいみとめず、公平こうへい公訴こうそけん運用うんようはかろうとするもので、不当ふとう政治せいじてき圧力あつりょく介入かいにゅう防止ぼうしすることができるといった長所ちょうしょがある[2]

一方いっぽう犯罪はんざいにおける情状じょうじょう具体ぐたいてき事件じけんごとにことなるもので形式けいしきてき公平こうへいといっても実質じっしつてきには不公平ふこうへい場合ばあいがあり、犯罪はんざいしゃ更生こうせい機会きかいうしなわせるおそれがあるという短所たんしょもある[2]

起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ特色とくしょく

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起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎフランス日本にっぽん、アメリカの一部いちぶしゅうなどでひろ採用さいようされているが、日本にっぽん以外いがい微罪びざいまたは少年しょうねん事件じけん限定げんていされた起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎであり、あらゆる犯罪はんざいたいして起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎみとめられているのは世界せかい日本にっぽんだけである[3]

長所ちょうしょ

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被疑ひぎしゃ刑事けいじ手続てつづきから早期そうき解放かいほうされる。そのため、起訴きそ猶予ゆうよされた場合ばあい被疑ひぎしゃ公訴こうそ提起ていきによってける可能かのうせいのあるダメージをけずにむ。その結果けっか社会しゃかい復帰ふっきへの障害しょうがい最小限さいしょうげんにすることができ、短期たんき自由じゆうけいのもつ弊害へいがいけずにむ。そのうえ、公訴こうそ提起ていき必然ひつぜんてきすくなくなるので、刑事けいじ司法しほうにおける資源しげん有効ゆうこう活用かつようもできる。

短所たんしょ

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検察官けんさつかんによる濫用らんよう可能かのうせいがある。起訴きそされるべき事件じけん起訴きそされないことや、不当ふとう公訴こうそ提起ていきこることも想定そうていできる。あらゆるつみしゅ事件じけんについて、起訴きそするかかの判断はんだん検察官けんさつかん裁量さいりょうすなわち行政ぎょうせいちょうとしての個人こじんてき能力のうりょく依存いぞんしている欠点けってんであるといえる。

日本にっぽんほうにおける起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ

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日本にっぽん刑事けいじ訴訟そしょうほう248じょうは、検察官けんさつかんは、犯人はんにん性格せいかく年齢ねんれいおよ境遇きょうぐう犯罪はんざい軽重けいちょうおよび情状じょうじょうならびに犯罪はんざい情況じょうきょうにより訴追そつい必要ひつようとしないときは、公訴こうそ提起ていきしないことができるとしており起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ採用さいようしている。

1880ねん明治めいじ13ねん)のざいほう1890ねん明治めいじ23ねん)の明治めいじ刑訴法けいそほうには起訴きそかんする明文めいぶん規定きていはなく、学説がくせつうえ起訴きそ法定ほうてい主義しゅぎ採用さいようしているという理解りかい有力ゆうりょくであった[4]予備よび審問しんもん予審よしん方式ほうしきしたでは検察官けんさつかんには起訴きそとう決定けっていけんはなく、起訴きそ起訴きそ略式りゃくしき裁判さいばんべつ決定けっていするのは裁判所さいばんしょであった。

予審よしん裁判所さいばんしょでは実務じつむじょうは「微罪びざい検挙けんきょ」(起訴きそしない)とする起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎてき解釈かいしゃく運用うんようもなされていた[4]。ただし、略式りゃくしき裁判さいばんとう適用てきよう決定けっていについては事前じぜん検察庁けんさつちょう通告つうこくされ、検察官けんさつかん異議いぎべて正式せいしき公判こうはんもとめることができる期間きかんもうけられていた。平沼ひらぬま騏一郎きいちろう検事けんじ総長そうちょうのころには官営かんえい八幡やはた製鉄せいてつしょ事件じけん汚職おしょく事件じけん)など逮捕たいほしゃが110めいのぼるような現象げんしょうもあった。

起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ明文化めいぶんかされたのは、1922ねん大正たいしょう11ねん)の大正たいしょう刑訴法けいそほうからである[4][注釈ちゅうしゃく 1][注釈ちゅうしゃく 2]

大正たいしょう刑訴法けいそほうでは、だい279じょう規定きてい犯人はんにん性格せいかく年齢ねんれいおよ境遇きょうぐうならびに情状じょうじょうおよ犯罪はんざい情況じょうきょうにより訴追そつい必要ひつようとせざるときは、公訴こうそ提起ていきせざることをとく」として明文化めいぶんかされた[6]同時どうじに、略式りゃくしき命令めいれいとう事前じぜん予告よこく制度せいど廃止はいしされた。平沼ひらぬま法案ほうあん段階だんかいで、「いたずらに手数てかず繁雑はんざつならしめ、かえって制度せいど実益じつえきげんずるは、実験じっけんにより明白めいはくなるをもって、この手続てつづき廃止はいしするを至当しとうみとめた」ものと説明せつめいしている[7]

現行げんこう刑訴法けいそほうからは予審よしん制度せいど削除さくじょされたが、公訴こうそ提起ていき条文じょうぶんがれ、「犯罪はんざい軽重けいちょう」をいう語句ごく追加ついかしたうえで、検察官けんさつかんによる起訴きそ便宜べんぎ主義しゅぎ採用さいようした。

不当ふとう起訴きそ抑制よくせい

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不当ふとう公訴こうそ提起ていき(あるいは公訴こうそ事実じじつ不足ふそく)の問題もんだいについては明治めいじ憲法けんぽうしたではわたし制度せいどもうけられていたが、日本国にっぽんこく憲法けんぽうではこれにわりじゅん起訴きそ手続てつづき起訴きそ理由りゆう開示かいじ制度せいどおよ一定いっていのチェック機関きかんとしての検察けんさつ審査しんさかいとう設置せっちさだめた。

検察官けんさつかん事件じけん起訴きそ相当そうとう判断はんだんすると、その事件じけんについて裁判所さいばんしょにおいて審判しんぱん機会きかいがなくなり、重要じゅうよう犯人はんにん処罰しょばつまぬかれるといった危険きけんせいがある。そのため、現行げんこうほうじょうでは、

  1. 告訴こくそじんとうへの起訴きそ処分しょぶんおよび理由りゆう通知つうち刑訴法けいそほう260・261じょう
  2. 検察けんさつ審査しんさかいへの問題もんだい提起ていき検察けんさつ審査しんさかいほう
  3. じゅん起訴きそ手続てつづき刑訴法けいそほう262 - 269じょうづけ審判しんぱん請求せいきゅう
  4. 再起さいき事件じけん事務じむ規程きていだい3じょう a検事けんじ起訴きそ処分しょぶんをb検事けんじして起訴きそする)

といった不当ふとう起訴きそ抑制よくせいする手段しゅだん用意よういされている。以下いか、その内容ないようについてべる。

じゅん起訴きそ手続てつづき

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大正たいしょう刑訴法けいそほうには「わたし訴」制度せいどとして、犯罪はんざい起因きいんする損害そんがいにつき被害ひがいしゃ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうおこなうための手続てつづきもうけられており、わたし訴の請求せいきゅう事実じじつ公訴こうそ請求せいきゅう事実じじつ同一どういつのものとされていたものの、不当ふとう起訴きそにつき一定いってい監視かんし機能きのうっていたとられる。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうじゅん起訴きそ手続てつづきづけ審判しんぱん請求せいきゅうは、警察官けいさつかん検察官けんさつかんなど公務員こうむいんによる職権しょっけん乱用らんようざい不当ふとう起訴きそ処分しょぶん抑制よくせいし、国民こくみん人権じんけん保障ほしょう実行じっこうするための制度せいどとして位置いちづけられている(起訴きそ独占どくせん主義しゅぎ例外れいがい)。被害ひがいしゃ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうについて別途べっと民事みんじ裁判さいばん提起ていきするかたちになるが、公訴こうそ事実じじつ以外いがい事実じじつたとえば、交通こうつう事故じこ事件じけん公訴こうそ事実じじつ事実じじつ欠落けつらくしていた場合ばあい)を民事みんじ裁判さいばん指摘してきしたときに裁判所さいばんしょがこれを認容にんようする判決はんけつおこなうかは、個別こべつ事情じじょうによるとられる[注釈ちゅうしゃく 3]

じゅん起訴きそ手続てつづきでは、捜査そうさ不十分ふじゅうぶんさについての審査しんさという本来ほんらい機能きのうたすべく、事件じけん内容ないようをよく請求せいきゅうじん協力きょうりょく必要ひつようとする場合ばあいがある。そのために、請求せいきゅうじん代理人だいりにん捜査そうさ記録きろく閲覧えつらん謄写とうしゃみとめられているか、といったてん問題もんだいとなっている。判例はんれいでは、じゅん起訴きそ手続てつづき捜査そうさ類似るいじする性格せいかくゆうする職権しょっけん手続てつづきであるので、対立たいりつ当事とうじしゃ存在そんざい前提ぜんていとする対審たいしん構造こうぞうゆうしない、と判示はんじしている[8]

この制度せいどは、検察官けんさつかん起訴きそ処分しょぶん一部いちぶ起訴きそ処分しょぶん妥当だとうせい審議しんぎすることで間接かんせつてき事実じじつ証明しょうめいすることが可能かのうであるが、適用てきようける事件じけん職権しょっけん乱用らんようざい限定げんていされるため公務員こうむいん不利益ふりえき直接ちょくせつつながること、づけ審判しんぱん決定けってい事件じけん非常ひじょうすくないため使つか勝手がってわるいという欠点けってんがあり、抑制よくせい手段しゅだんとしては限界げんかいがある。

起訴きそ処分しょぶんおよび理由りゆう通知つうち

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起訴きそ起訴きそ通知つうち

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検察官けんさつかんは、告訴こくそなどの請求せいきゅうのあった事件じけんについて、公訴こうそ提起ていきするかかの処分しょぶん決定けっていしたさいには、すみやかに告訴こくそじん告発こくはつじんなどに通知つうちする義務ぎむがある[9]。その趣旨しゅしは、検察官けんさつかんによる起訴きそ処分しょぶんたいする自主じしゅてきなコントロールを期待きたいし、告訴こくそじんとう検察けんさつ審査しんさかいへの審査しんさもうての機会きかいじゅん起訴きそ手続てつづき機会きかいあたえることにある。

告訴こくそじんとうへの理由りゆう通知つうち

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告訴こくそじんとうから請求せいきゅうがある場合ばあいには、その理由りゆう通知つうちする必要ひつようがある[10]。しかし実務じつむじょう、このてんについては「起訴きそ猶予ゆうよ」「嫌疑けんぎなし」「つみたらず」など、直接的ちょくせつてき理由りゆうのみを通知つうちすればりるとされている[11]

検察けんさつ審査しんさかい

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検察けんさつ審査しんさかい目的もくてきは、公訴こうそけん実行じっこう起訴きそ)にかんして、民意みんい反映はんえいさせてその適正てきせいはかることである[12]

告訴こくそ告発こくはつをしたもの請求せいきゅうをしたもの、および被害ひがいしゃ検察官けんさつかん起訴きそ処分しょぶん不服ふふくがあるとき、その処分しょぶんについての審査しんさもうてることが可能かのうである[13]。そしてその決議けつぎ参考さんこうにして、検事正けんじせい起訴きそすべきとかんがえる場合ばあい起訴きそ手続てつづきをする必要ひつようがある[14]

2009ねん5がつ20日はつかまではあくまで議決ぎけつ参考さんこうであり法的ほうてき拘束こうそくりょくはなかったが、2009ねん5がつ21にち以降いこうは、2かい起訴きそ相当そうとう」と議決ぎけつした事件じけんについては裁判所さいばんしょ指定していした指定してい弁護士べんごし検察官けんさつかんやく担当たんとうしてかなら起訴きそされることになった。起訴きそ議決ぎけつ制度せいど起訴きそ独占どくせん主義しゅぎ例外れいがいである。

検察けんさつ審査しんさかい制度せいど短所たんしょとしては、公訴こうそ事実じじつ不足ふそくのまま起訴きそ手続てつづきがおこなわれたという場合ばあい本来ほんらいであれば同一どういつ事件じけんとしてあつかうべき事実じじつ片方かたがたが、公訴こうそ事実じじつ対象たいしょうから除外じょがいされていたが起訴きそ自体じたいおこなわれた場合ばあい)には検察けんさつ審査しんさかい審査しんさもとめることができないというてんがあげられる。

不当ふとう起訴きそ抑制よくせい公訴こうそけん濫用らんようろん

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検察官けんさつかんによる不当ふとう公訴こうそ提起ていき抑制よくせいしようとする明文めいぶん規定きてい存在そんざいしない。手続てつづき利用りようする方法ほうほうとしては、検察官けんさつかんみずか公訴こうそげる(公訴こうそ取消とりけし。257じょう)ことがかんがえられるが、これができるのはだいいちしん公判こうはん手続てつづき判決はんけつまえまでであるし[15]公訴こうそげがおこなわれるかどうかは検察官けんさつかん自制じせい問題もんだいである。

こうして、裁判所さいばんしょ訴追そつい裁量さいりょうけん行使こうしについて一定いってい審査しんさおこな必要ひつようせい存在そんざいすることとなる。このような必要ひつようせいもとづいて、一定いってい場合ばあい検察官けんさつかん公訴こうそ提起ていきそれ自体じたい違法いほうとして、裁判所さいばんしょ検察官けんさつかん公訴こうそ提起ていき棄却ききゃくすべき場合ばあいがあるとの見解けんかい学説がくせつじょう有力ゆうりょくとなえられた。これが公訴こうそけん濫用らんようろんである。

公訴こうそけん濫用らんようろんについてはつぎのような判例はんれい存在そんざいする。検察官けんさつかん公訴こうそけん濫用らんよう認定にんていして公訴こうそ棄却ききゃく判示はんじした原審げんしんたいして検察官けんさつかん上告じょうこくしたチッソ川本かわもと事件じけんにおいて最高裁判所さいこうさいばんしょは、検察官けんさつかんによる裁量さいりょうけん逸脱いつだつ理由りゆうとして公訴こうそ提起ていき無効むこうとなることはありるが、それは公訴こうそ提起ていき自体じたい職務しょくむ犯罪はんざい構成こうせいするような極限きょくげんてき場合ばあいかぎられるときわめて限定げんていてき判示はんじをし、原審げんしん維持いじしている(結論けつろんとしては公訴こうそ棄却ききゃく[16]

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく
  1. ^ この刑訴法けいそほう趣旨しゅしは「検事けんじ行動こうどう範囲はんい法律ほうりつをもって限定げんていし、その行動こうどうについては将来しょうらい疑義ぎぎおこらざることを」ることであるとされていた[5]
  2. ^ 当時とうじ内閣ないかく高橋たかはし内閣ないかく司法しほう大臣だいじん大木たいぼくとおよし、また大審院だいしんいん院長いんちょうおよび法曹ほうそうかい会長かいちょう平沼ひらぬま騏一郎きいちろうであった。なお法曹ほうそうかい当時とうじに、判例はんれい同様どうよう裁判さいばん方針ほうしんとして『法曹ほうそうかい決議けつぎ』を発行はっこうしており、刑事けいじ事件じけんあつかいにもおおきな影響えいきょうあたえていた。
  3. ^ 和解わかい解決かいけつする場合ばあいにはある程度ていどみとめられる場合ばあいがある。
出典しゅってん
  1. ^ 河上かわかみ和雄かずお et al. 2013, pp. 57–58.
  2. ^ a b c 河上かわかみ和雄かずお et al. 2013, p. 58.
  3. ^ [[#CITEREF|]].
  4. ^ a b c 河上かわかみ和雄かずお et al. 2013, p. 59.
  5. ^ 大正たいしょう11ねん刑事けいじ訴訟そしょう法案ほうあん議事ぎじろく一覧いちらん”. 2022ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ 1922ねん5がつ5にち官報かんぽう法律ほうりつだい75ごう 刑事けいじ訴訟そしょうほうだい279じょうNDLJP:2955042/8
  7. ^ 平沼ひらぬま騏一郎きいちろう 1917.
  8. ^ 最高裁判所さいこうさいばんしょだいしょう法廷ほうてい決定けってい 昭和しょうわ49ねん3がつ13にちけいしゅう28かん2ごう1ぺーじ判例はんれい情報じょうほう、2014ねん8がつ30にち閲覧えつらん
  9. ^ 刑事けいじ訴訟そしょうほう260じょう:
    検察官けんさつかんは、告訴こくそ告発こくはつまたは請求せいきゅうのあった事件じけんについて、公訴こうそ提起ていきし、またはこれを提起ていきしない処分しょぶんをしたときは、すみやかにそのむね告訴こくそじん告発こくはつじんまたは請求せいきゅうじん通知つうちしなければならない。公訴こうそし、または事件じけん検察庁けんさつちょう検察官けんさつかん送致そうちしたときも、同様どうようである。
  10. ^ 刑事けいじ訴訟そしょうほう261じょう:
    検察官けんさつかんは、告訴こくそ告発こくはつまたは請求せいきゅうのあった事件じけんについて公訴こうそ提起ていきしない処分しょぶんをした場合ばあいにおいて、告訴こくそじん告発こくはつじんまたは請求せいきゅうじん請求せいきゅうがあるときは、すみやかに告訴こくそじん告発こくはつじんまたは請求せいきゅうじんにその理由りゆうげなければならない。
  11. ^ 名古屋なごや高等こうとう裁判所さいばんしょ判決はんけつ 昭和しょうわ58ねん8がつ10日とおか
  12. ^ 検察けんさつ審査しんさかいほう1じょう前段ぜんだん:
    公訴こうそけん実行じっこうかん民意みんい反映はんえいせしめてその適正てきせいはかるため、政令せいれいさだめる地方裁判所ちほうさいばんしょおよび地方裁判所ちほうさいばんしょ支部しぶ所在地しょざいち検察けんさつ審査しんさかいく。
  13. ^ 検察けんさつ審査しんさかいほう30じょう前段ぜんだん:
    だいじょうだいこうかかげるものは、検察官けんさつかん公訴こうそ提起ていきしない処分しょぶん不服ふふくがあるときは、その検察官けんさつかんぞくする検察庁けんさつちょう所在地しょざいち管轄かんかつする検察けんさつ審査しんさかいにその処分しょぶん当否とうひ審査しんさ申立もうしたてをすることができる。
  14. ^ 検察けんさつ審査しんさかいほう41じょう:
    検事正けんじせいは、前条ぜんじょう規定きていにより議決ぎけつしょ謄本とうほん送付そうふがあつた場合ばあいにおいて、その議決ぎけつ参考さんこうにし、公訴こうそ提起ていきすべきものと思料しりょうするときは、起訴きそ手続てつづきをしなければならない。
  15. ^ 刑事けいじ訴訟そしょうほう257じょう:
    公訴こうそは、だいいちしん判決はんけつがあるまでこれをすことができる。
  16. ^ 最高裁判所さいこうさいばんしょだいいちしょう法廷ほうてい判決はんけつ 昭和しょうわ55ねん12月17にち けいしゅう34かん7ごう672ぺーじ昭和しょうわ52(あ)1353、『傷害しょうがい』「 いち 検察官けんさつかん訴追そつい裁量さいりょうけん逸脱いつだつ公訴こうそ提起ていき効力こうりょく
     公訴こうそ提訴ていそ無効むこうならしめるような訴追そつい裁量さいりょうけん逸脱いつだつがあるとはいえないとされた事例じれい
    さん 刑訴法けいそほうよんいちいちじょうにあたらないとされた事例じれい」、“いち 検察官けんさつかん訴追そつい裁量さいりょうけん逸脱いつだつ公訴こうそ提起ていき無効むこうならしめる場合ばあいがありうるが、それはたとえば公訴こうそ提起ていき自体じたい職務しょくむ犯罪はんざい構成こうせいするような極限きょくげんてき場合ばあいかぎられる。
     本件ほんけん公訴こうそ提起ていきいちじるしく不当ふとうであつたとする原審げんしん認定にんてい判断はんだんはらばんぶん参照さんしょう)はただちに肯認することができず、まして、本件ほんけん事態じたい公訴こうそ提起ていき無効むこう結果けっかするような極限きょくげんてき場合ばあいにあたるとはいえない。
    さん はら判決はんけつ本件ほんけん公訴こうそ棄却ききゃくしたのは判決はんけつ影響えいきょうおよぼすべき法令ほうれい違反いはんであるが、本件ほんけん事案じあんのもとでは(はんぶん参照さんしょう)、はら判決はんけつ破棄はきしなければいちじるしく正義せいぎはんするものとはみとめられない。”。

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん書籍しょせき
  • 田宮たみやひろし へん刑事けいじ訴訟そしょうほう』(改訂かいてい新版しんぱんきたじゅ出版しゅっぱん〈ホーンブック〉、1995ねん1がつISBN 4-89384-376-1 
  • 刑事けいじ訴訟そしょうほう判例はんれいひゃくせん』(だい8はん有斐閣ゆうひかく別冊べっさつジュリスト〉、2005ねん3がつISBN 4-641-11474-9