司祭しさい

司祭しさい（しさい、英語えいご: Priest、ラテン語らてんご: Sacerdos, Presbyter、ギリシア語ご: Ιερέας, Πρεσβύτερος）とは、キリスト教きりすときょうにおける聖職せいしょく者しゃの位階いかいの一ひとつ。正教会せいきょうかい、東方とうほう諸しょ教会きょうかい、カトリック教会きょうかい、聖せい公会こうかいに存在そんざいする。

プロテスタントには、「万まん人にん祭司さいし」の教理きょうりにより司祭しさいがおらず、指導しどう者しゃ（教きょう役者やくしゃ、教職きょうしょく者しゃ）として牧師ぼくしがいる。

「神父しんぷ」および「牧師ぼくし」も参照さんしょう

教派きょうはごとの比較ひかく対照たいしょう

呼称こしょうと役職やくしょくの教派きょうは別べつ対照たいしょう表ひょう

以下いかの対照たいしょう表ひょうは教派きょうはごとに異ことなる聖職せいしょく者しゃ、教きょう役者やくしゃの呼称こしょうについてのものであるが、そもそも司祭しさいと牧師ぼくしは位置いちづけ・理解りかいが異ことなるものであり、日本語にほんご以外いがいの言語げんごでも異ことなる名称めいしょうが用もちいられている。他た言語げんごでは同おなじ言葉ことばを使つかっていても、日本語にほんごでは教派きょうはごとに別べつの訳語やくごを用もちいているようなもの（例れい: 英語えいごの"deacon"につき、正教会せいきょうかいは「輔祭」、カトリック教会きょうかいは「助祭じょさい」、聖せい公会こうかいは「執事しつじ」の訳語やくごをあてている）とは違ちがい、例たとえば英語えいごでは牧師ぼくしは"Pastor"であり、司祭しさいは"Priest"である。Pastorはカトリック教会きょうかいでは主任しゅにん司祭しさいであることにも、両者りょうしゃについて等ひとしい役割やくわりを持もつ者ものとは捉とらえられていないことが表あらわれている。

呼称こしょうと役職やくしょくの教派きょうは別べつ対応たいおう表ひょう
教派きょうは	正教会せいきょうかい	カトリック教会きょうかい	聖せい公会こうかい	プロテスタント	学校がっこうに喩たとえると
職位しょくい/資格しかく	司祭しさい	司祭しさい	司祭しさい	（正せい教師きょうし^{[* 1]}）	教諭きょうゆ
役職やくしょく	管轄かんかつ司祭しさい	主任しゅにん司祭しさい	牧師ぼくし^{[* 2]} （Rector, Vicar）	牧師ぼくし^{[* 3]} （Pastor）	担任たんにん
呼称こしょう	神父しんぷ^{[* 4]}	神父しんぷ^{[* 5]}	司祭しさい/先生せんせい/ 師し^{[* 6]}/（神父しんぷ^{[* 7]}）	牧師ぼくし/先生せんせい/師し^{[* 6]}	先生せんせい

^ 日本にっぽん基督教きりすときょう団だんなどにおいて^[1]。聖職せいしょく位いではなくあくまで「資格しかく」であり、概念がいねんは司祭しさい（Priest）とは全まったく異ことなる。
^ 聖せい公会こうかいにおける「牧師ぼくし」の概念がいねんおよび原語げんご（Rector, Vicar）はプロテスタントの牧師ぼくし（Pastor）とは異ことなり、一いち個こ教会きょうかいの司つかさ牧まき責任せきにん者しゃたる司祭しさいまたは主教しゅきょうのことを指さす。
^ 聖せい公会こうかいにおける「牧師ぼくし（Rector, Vicar）」が一時いちじ的てきな「役職やくしょく」であるのに対たいして、プロテスタントにおける「牧師ぼくし（Pastor）」は基本きほん的てきには一生いっしょう保たもたれる、「職位しょくい」に近ちかい面めんもある^[2]^[3]。
^ コンスタンティノープル総そう主教しゅきょう庁ちょう系列けいれつなどの一部いちぶの正教会せいきょうかいでは輔祭の敬称けいしょうとしても用もちいられる^[4]。
^ 聖せい公会こうかいの司祭しさいやプロテスタント教会きょうかいの牧師ぼくしが「先生せんせい」という敬称けいしょうで呼よばれるのはあくまで口頭こうとうの呼よびかけなど非公式ひこうしきな敬称けいしょうであるが、カトリック教会きょうかいにおいて神父しんぷという敬称けいしょうは公おおやけの文書ぶんしょなどにも用もちいられる正式せいしきな敬称けいしょうである^[5]。
^ ^a ^b かしこまった文書ぶんしょにおいて、名前なまえの後のちに敬称けいしょうとして付加ふかする。
^ 英語えいご圏けんでは神父しんぷを意味いみする「Father」という敬称けいしょうは比較的ひかくてき広ひろく使つかわれる^[6]が、日本にっぽんでは稀まれで、修道しゅうどう司祭しさいを神父しんぷと呼よぶケースにほぼ限かぎられる^[7]^[8]。

妻帯さいたい（結婚けっこん）の可否かひ・女性じょせい司祭しさいの有無うむ

結婚けっこん（妻帯さいたい）可否かひの正教会せいきょうかい・カトリック教会きょうかい・聖せい公会こうかい対照たいしょう表ひょう

結婚けっこん（妻帯さいたい）可否かひの正教会せいきょうかい・カトリック教会きょうかい・聖せい公会こうかい対照たいしょう表ひょう
-	正教会せいきょうかい	カトリック教会きょうかい	聖せい公会こうかい
教区きょうく司祭しさい（在俗ざいぞく司祭しさい）（街まちの教会きょうかいでサクラメント執行しっこう、信徒しんとの指導しどうにあたる）	妻帯さいたい可か（但ただし結婚けっこんは司祭しさいの一ひとつ手前てまえ、輔祭に叙じょ聖きよしされる前まえにしなければならず、従したがって司祭しさいになってからの結婚けっこんは不可ふか）	妻帯さいたい不可ふか（東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかいの司祭しさい、および聖せい公会こうかいなどから改宗かいしゅうした司祭しさいには妻帯さいたいが認みとめられる例外れいがいがある）	妻帯さいたい可か（司祭しさいとなった後のちでも結婚けっこん可か）
修道しゅうどう司祭しさい（修道院しゅうどういんでサクラメント執行しっこう、修道しゅうどう士し・信徒しんとの指導しどうにあたる）	妻帯さいたい不可ふか（但ただし妻帯さいたい司祭しさいが子この成長せいちょう後ごに、配偶はいぐう者しゃとの同意どういを経へて夫婦ふうふで修道しゅうどう士し・修道しゅうどう女おんなになり、それぞれ修道院しゅうどういんに入はいる場合ばあいや、配偶はいぐう者しゃと死別しべつした者ものが修道しゅうどう司祭しさいになった場合ばあい等とう、結婚けっこん歴れきはある場合ばあいがある^{[注ちゅう 1]}）	妻帯さいたい不可ふか	妻帯さいたい不可ふか

プロテスタントには万まん人にん祭司さいしの教理きょうりをもとに司祭しさい制度せいどはないため、対照たいしょう表ひょうには司祭しさい制度せいどを持もつ正教会せいきょうかい・カトリック教会きょうかい・聖せい公会こうかいについてのみ含ふくまれている。司祭しさいと比較ひかくされる事ことが多おおいプロテスタントにおける教きょう役者やくしゃである牧師ぼくしは妻帯さいたいが可能かのう。

「神父しんぷは結婚けっこんできない」といった記述きじゅつが様々さまざまな媒体ばいたいで散見さんけんされるが、不十分ふじゅうぶんな説明せつめいである。カトリック教会きょうかいの神父しんぷ（司祭しさい）は妻帯さいたい出来できないが（一部いちぶに例外れいがいあり）、正教会せいきょうかいの神父しんぷ（司祭しさい）は神品しんぴん (正教会せいきょうかいの聖職せいしょく) になる前まえ（司祭しさいの前ぜん段階だんかいである輔祭になる前まえ）であれば結婚けっこんでき、その上うえで結婚けっこん生活せいかつ・家庭かてい生活せいかつを営いとなむ事ことは出来できる（上記じょうき対照たいしょう表ひょうおよび下記かき比較ひかく詳細しょうさい参照さんしょう）。従したがって正教会せいきょうかいの司祭しさいは、輔祭になる前まえに結婚けっこんするかしないかを決心けっしんしなければならない^[9]。

各かく教派きょうはの比較ひかく詳細しょうさい

正教会せいきょうかい - 叙じょ聖きよし前まえであれば妻帯さいたい可か。

リヤサを着用ちゃくようし、妻子さいしら家族かぞくと共ともに写うつって居いる正教会せいきょうかいの司祭しさいの写真しゃしん（1910年代ねんだいから1920年代ねんだい）。

男性だんせいのみが司祭しさい職しょくに就つく。呼称こしょうは神父しんぷ。
聖職せいしょく者しゃ（神品しんぴん）のうち、輔祭・司祭しさいには妻帯さいたいが許ゆるされている。
ただし正教会せいきょうかいでは輔祭・司祭しさい・主教しゅきょうという順序じゅんじょを経へて叙じょ聖きよしされていくが（生涯しょうがい輔祭、もしくは司祭しさいを務つとめる者ものがほとんどであり、主教しゅきょうとなる者ものは少すくない）、結婚けっこん（婚こん配はい機密きみつ）は輔祭叙じょ聖せい前まえに受うけなければならない。
離婚りこんは許ゆるされず、離婚りこんした場合ばあいは神品しんぴん職しょくを解とかれる。死別しべつ等とうの理由りゆうであっても、司祭しさいの再婚さいこんは許ゆるされない。
独身どくしんで輔祭となった者ものは生涯しょうがい独身どくしんを維持いじする。万まんが一いち結婚けっこんする場合ばあいには、神品しんぴん職しょくを解とかれる。
正教会せいきょうかいでは在俗ざいぞく司祭しさいのほとんどが妻帯さいたいしている（死別しべつした場合ばあいはそのまま独身どくしん）。これに対たいし修道しゅうどう司祭しさいは修道しゅうどう士しなので独身どくしんを維持いじしている。
主教しゅきょうは修道しゅうどう士しから選えらばれるため、必然ひつぜん的てきに独身どくしん（但ただし妻つまと死別しべつした後のちに修道院しゅうどういんに入はいり、その後ご主教しゅきょうとなる例れい^{[注ちゅう 1]}や、夫おっとが司祭しさいである夫婦ふうふが修道しゅうどう司祭しさい・修道しゅうどう女おんなとなり、その後ご夫おっとが主教しゅきょうとなる例れいもある）。

カトリック教会きょうかい - 一部いちぶ例外れいがいを除のぞき妻帯さいたい不可ふか。

男性だんせいのみが司祭しさい職しょくに就つく。呼称こしょうは神父しんぷ。
教区きょうく司祭しさいであるか修道しゅうどう司祭しさいであるかを問とわず叙じょ階かい前まえも叙じょ階かい後ごも独身どくしん。司教しきょう職しょくも独身どくしん。
助祭じょさいもかつては独身どくしん者しゃのみであったが、近年きんねんは妻帯さいたいした終身しゅうしん助祭じょさい職しょくが設もうけられている。
東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかい（正教会せいきょうかいと同様どうように叙じょ階かい前まえになされた婚姻こんいんによるもののみ）、および聖せい公会こうかいから改宗かいしゅうした司祭しさいに対たいしては、妻帯さいたいが例外れいがい的てきに認みとめられている。

聖せい公会こうかい - 司祭しさいとなった後のちも妻帯さいたい可か。女性じょせい司祭しさい・女性じょせい主教しゅきょうは教区きょうくによる。

教区きょうくによっては女性じょせい司祭しさい・女性じょせい主教しゅきょうを認みとめている。呼称こしょうは先生せんせいなど。
修士しゅうし・修道しゅうどう司祭しさいを除のぞき妻帯さいたい可か。司祭しさい按手後ごの婚姻こんいんも可か。

プロテスタント

プロテスタントには、万まん人にん祭司さいしの教理きょうりにより司祭しさいがおらず、教きょう役者やくしゃ・教職きょうしょく者しゃとして牧師ぼくしがいる。牧師ぼくしは妻帯さいたい可か。女性じょせい牧師ぼくしを認みとめるかどうかは教派きょうはによる。

教派きょうはごとの詳細しょうさい

西方せいほう教会きょうかい

カトリック教会きょうかい

カトリック司祭しさいオランダ、1964年ねん

カトリック教会きょうかいにおいて、司祭しさいとは司教しきょう・司祭しさい・助祭じょさいと三みっつある聖職せいしょく位階いかいのうちの一ひとつ。既すでに助祭じょさいに叙じょ階かいされている者ものが、叙じょ階かいの秘跡ひせきの中なかで司教しきょうの按手を受うけることで司祭しさいに叙じょ階かいされる。一般いっぱんには神父しんぷという敬称けいしょうで呼よばれる。

司祭しさいはミサをはじめとする秘跡ひせきを執とり行おこなうが、男性だんせいに限かぎられ、終生しゅうせい独身どくしんであることが求もとめられる（西方にしかた典礼てんれいのカトリック教会きょうかいでは古代こだい以来いらい、伝統でんとう的てきに独身どくしん制せいをとっているが、特殊とくしゅな例れいとして東方とうほう典礼てんれいのカトリック教会きょうかいや聖せい公会こうかいなどからの改宗かいしゅう者しゃの司祭しさいの場合ばあい、司教しきょうの特別とくべつな許可きょかによって妻帯さいたいが認みとめられる事ことがまれにある）。司祭しさいは、教区きょうくに籍せきを置おいて小しょう教区きょうく（教会きょうかい）で暮くらす教区きょうく司祭しさいと、修道しゅうどう会かいに属ぞくして修道院しゅうどういんで生活せいかつする修道しゅうどう司祭しさいに分わけられる。修道しゅうどう司祭しさいは清貧せいひん、貞潔ていけつ、従順じゅうじゅんの三みっつの修道しゅうどう誓願せいがんをたてている。

一般いっぱんに、教会きょうかい（小しょう教区きょうく）には主任しゅにん司祭しさいがおり、教会きょうかいの規模きぼによっては主任しゅにん司祭しさいを補佐ほさする助じょ任にん司祭しさいがいることがある。教区きょうく司祭しさいは修道しゅうどう者しゃのように清貧せいひんの誓願せいがんをたてたり、共同きょうどう生活せいかつを送おくる義務ぎむはなく、教区きょうく管轄かんかつの司祭しさい館かんや教会きょうかい（小しょう教区きょうく）で生活せいかつすることが多おおい。修道しゅうどう会かいに属ぞくする司祭しさいの場合ばあいは、修道院しゅうどういん内ないで共同きょうどう生活せいかつをしながら小しょう教区きょうくや学校がっこう、諸しょ施設しせつなどで司つかさ牧まき活動かつどうを行おこなう。

司祭しさいの独身どくしん制せいについては、緩和かんわを求もとめる声こえもカトリック教会きょうかい内部ないぶに存在そんざいする。現実げんじつに結婚けっこんにより司祭しさいを辞やめていくものも相当そうとう数すういるとされる。一方いっぽうで、家族かぞくを養やしなう必要ひつようがないことで司祭しさいとしての活動かつどうに集中しゅうちゅうできることや、司祭しさいが妻帯さいたいしないことで、信徒しんとが司祭しさいの家族かぞくの生活せいかつを支ささえる負担ふたんをしなくてよいことなど、独身どくしん制せいの利点りてんを指摘してきする声こえもある。

聖せい公会こうかい

聖せい公会こうかいの司祭しさい

聖せい公会こうかいにおける聖職せいしょく者しゃの職位しょくいの一ひとつ。執事しつじが主教しゅきょうから聖職せいしょく按手を受うけて司祭しさいになる。司祭しさい以上いじょうの聖職せいしょく位いの者ものは聖餐せいさん式しき（ユーカリスト）を執行しっこうすることが出来できる。

各個かっこ教会きょうかいの司つかさ牧まき責任せきにん者しゃたる司祭しさい（または主教しゅきょう）は「牧師ぼくし」（Rector, Vicar）と呼よばれるが、これはカトリック教会きょうかいにおける主任しゅにん司祭しさいに相当そうとうする役職やくしょく名めいであり、プロテスタントにおける「牧師ぼくし」（Pastor）とは語源ごげんも概念がいねんも全まったく異ことなる語かたりである。肩書かたがきとしては、「○○教会きょうかい牧師ぼくし　司祭しさい　教きょう名めい　姓せい・名めい」と表記ひょうきする^[10]。また、同おなじ漢字かんじ文化ぶんか圏けんでも、大韓たいかん聖せい公会こうかいでは「牧師ぼくし（목사）」という語かたりは用もちいられない^[11]。つまり、日本にっぽん聖せい公会こうかい特有とくゆうの訳語やくごである。

詳細しょうさいは「牧師ぼくし#聖せい公会こうかいの牧師ぼくし」を参照さんしょう

聖職せいしょく者しゃ（主教しゅきょう・司祭しさい・執事しつじ）の按手・叙任じょにんは「聖せい奠的諸式しょしき」（Sacramental Rites）すなわち聖せい奠（サクラメント）に準じゅんずる神秘しんぴ的てき儀礼ぎれいとされ、「魂たましいの刻印こくいん」と見みなされるため、教会きょうかいでの教導きょうどう職しょくを退しりぞいたのちも、原則げんそく的てきに逝去せいきょするまでその地位ちいは保たもたれる。それに対たいして、「牧師ぼくし」はあくまで役職やくしょくであるため、任にんが解とかれたら牧師ぼくしではなくなる。

司祭しさいに対たいする呼称こしょうは、そのまま「司祭しさい」、あるいは「先生せんせい」と呼よぶことが多おおい。かしこまった文書ぶんしょにおいては、職位しょくい・教きょう名めい・姓名せいめいの後のちに「師し」という敬称けいしょうを付加ふかする。英語えいご圏けんでは神父しんぷを意味いみする「Father」という敬称けいしょうは比較的ひかくてき広ひろく使つかわれる^[6]が、日本にっぽんでは稀まれで、修道しゅうどう司祭しさいを神父しんぷと呼よぶケースにほぼ限かぎられる^[7]^[8]。一方いっぽう、ハイ・チャーチの影響えいきょうが強つよい大韓たいかん聖せい公会こうかいでは「神父しんぷ（신부）」という敬称けいしょうが広ひろく使つかわれており^[11]、「女性じょせい神父しんぷ（여성 신부）」なる語かたりさえある^[12]。（ただし、韓国かんこく語ごでは「婦ふ」も「父ちち」と同おなじ発音はつおん・同おなじハングル表記ひょうきである。）

聖せい公会こうかいの司祭しさいは妻帯さいたいが認みとめられている（修道しゅうどう司祭しさいを除のぞく）。また、ここ数すう十じゅう年ねんの間あいだの変革へんかくであるが、女性じょせいの聖職せいしょく者しゃへの按手・叙任じょにんも認みとめられつつある（女性じょせい聖職せいしょく者しゃを拒絶きょぜつしている管区かんく・教区きょうくもある）。

東方とうほう教会きょうかい

正教会せいきょうかい

ブルガリア正教会せいきょうかいの司祭しさい（中央ちゅうおうの4人にん）。大だい聖水せいすい式しきの光景こうけい。リヤサの上うえからフェロン、エピタラヒリ、ポルーチを着用ちゃくようしている。写真しゃしんの司祭しさいのような祭服さいふく着用ちゃくようは、写真しゃしん撮影さつえいの為ためなどの僅わずかな例外れいがいを除のぞき、基本きほん的てきには奉たてまつ神かみ礼あやの中なかでのみ行おこなわれる。映画えいが「セイント^{[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]}」等とう、西欧せいおう・米国べいこく・日本にっぽんの各種かくしゅ媒体ばいたい・作品さくひんに於おいて、祭服さいふくを完備かんびした状態じょうたいで世俗せぞくの集会しゅうかいに出席しゅっせきする正教会せいきょうかい聖職せいしょく者しゃの姿すがたが描えがかれている例れいが散見さんけんされるが、実際じっさいにはそのような事ことはまずない。

ロシア正教会せいきょうかいの典てん院いん。リヤサを着用ちゃくようし、十字架じゅうじかを胸むねにかけただけの、奉たてまつ神かみ礼あやの場面ばめん以外いがいでの簡素かんそな普段ふだんの姿すがた。

概要がいよう

「教きょう衆しゅ」も参照さんしょう

正教会せいきょうかいにおける神品しんぴん (正教会せいきょうかいの聖職せいしょく) の職分しょくぶんのひとつ。主教しゅきょうによる神品しんぴん機密きみつを受うけ司祭しさいに叙じょ聖きよしされてその任にんに就つく。敬称けいしょうは神父しんぷ^[13]。

司祭しさいは主教しゅきょうから教会きょうかいの牧まき会かいと機密きみつを執行しっこうする権能けんのうを委任いにんされ、輔祭の補助ほじょを受うけてこれを行おこなう^[14]（機密きみつのうち神品しんぴん機密きみつを行おこなう権能けんのうは主教しゅきょうのみに属ぞくするものであり、司祭しさいには委任いにんされていない）^[15]。

叙じょ聖ひじりの対象たいしょうは輔祭であり、司祭しさいになる前まえには必かならず輔祭への叙じょ聖ひじりを経へていなくてはならない。そのため、輔祭でない者ものが司祭しさいに選えらばれた場合ばあいであっても、輔祭としてまず叙じょ聖ひじりされ、数日すうじつ以上いじょうの時ときを置おいてから司祭しさいに叙じょ聖ひじりされる^[16]。

正教会せいきょうかいの司祭しさいは在俗ざいぞく司祭しさい（白しろ教きょう衆しゅの一員いちいん）と修道しゅうどう司祭しさい（修道しゅうどう教きょう衆しゅの一員いちいん）に分わけられる^[17]。正教会せいきょうかい外がいの学界がっかい等とうでは白しろ教きょう衆しゅを「白しろ僧そう」、修道しゅうどう教きょう衆しゅを「黒くろ僧そう」と呼よび分わけることがあるが^[18]、日本にっぽん正教会せいきょうかいでこの語彙ごいが使つかわれる事ことは皆無かいむである。在俗ざいぞく司祭しさいと修道しゅうどう司祭しさいの間あいだで、執行しっこうする機密きみつに差異さいは無ない。

在俗ざいぞく司祭しさいとその妻帯さいたい

在俗ざいぞく司祭しさいはその功績こうせきによって上位じょういの長ちょう司祭しさい (archpriest) や首くび司祭しさい (protopresbyter) に昇叙しょうじょされる。

在俗ざいぞく司祭しさいには妻帯さいたいが許ゆるされるが、結婚けっこんを望のぞむ者ものは輔祭に叙じょ聖きよしされる前まえに婚姻こんいんをしなければならない。そして再婚さいこんすることはできない。また再婚さいこん者しゃが司祭しさいになることも禁止きんしされる。正教会せいきょうかいにおいては、在俗ざいぞく司祭しさいのほとんどが妻帯さいたいしている。

修道しゅうどう司祭しさい

詳細しょうさいは「修道しゅうどう司祭しさい」を参照さんしょう

修道しゅうどう司祭しさいは修道しゅうどう士しが司祭しさいに任にんじられたものであり、独身どくしんを義務付ぎむづけられる。在俗ざいぞく司祭しさいが修道しゅうどう誓願せいがんを立たてて修道しゅうどう司祭しさいとなることもあるが、未婚みこんであるか、若もしくは配偶はいぐう者しゃと死別しべつしていることが条件じょうけんである。

修道しゅうどう司祭しさいのみが主教しゅきょうに選出せんしゅつされる資格しかくを持もつ。しかしながら、事情じじょうや状況じょうきょうでどうしても配偶はいぐう者しゃを持もつ司祭しさいを主教しゅきょうに叙じょ聖ひじりする必要ひつようがある場合ばあい、配偶はいぐう者しゃが事情じじょうを汲くんで同意どういすれば婚姻こんいんを解消かいしょうし、修道しゅうどう士しの誓願せいがんを立たてることが教会きょうかい法ほうで許ゆるされている。なお、この場合ばあいには元もと配偶はいぐう者しゃにも修道しゅうどう誓願せいがんを立たてて修道院しゅうどういんに入はいることが求もとめられる。日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかいでは、第だい二に次じ大戦たいせん中ちゅう、官かん警の圧あつ力りょくによって引退いんたいを余儀よぎなくされたセルギイ・チホミーロフ府ふ主教しゅきょうに代かわって、妻帯さいたいの在俗ざいぞく司祭しさいだった長ちょう司祭しさいイオアン小野おの帰一きいち師しを主教しゅきょうに選せん立りつするときにこの特例とくれいを適用てきようした。小野おの神父しんぷは夫人ふじんとの婚姻こんいんを解消かいしょうし、主教しゅきょうニコライ小野おの帰一きいちとして叙じょ聖ひじりされた。

また、修道しゅうどう司祭しさいは典てん院いん (hegumen) 、掌てのひら院いん (archimandrite) の順じゅんに昇叙しょうじょされた後のち、主教しゅきょうに叙じょ聖ひじりされる。この位階いかいはロシア正教会せいきょうかいや日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかいの例れいであり、ギリシャ正教会せいきょうかいなど、他たの正教会せいきょうかいでは多少たしょう異ことなる部分ぶぶんがある。

日本にっぽんに正教せいきょうを伝つたえた聖ひじりニコライは日本にっぽん初はつ渡航とこう当時とうじ、ロシア正教会せいきょうかいの修道しゅうどう司祭しさいであり、かつ宣教師せんきょうしとして日本にっぽんの宣教せんきょうに当あたった。「亜あ使徒しと」「成なり聖者せいじゃ」のタイトルを以って列聖れっせいされている。