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器楽 - Wikipedia

器楽きがく

はな言葉ことばうたわれた言葉ことばのない音楽おんがく

器楽きがく(きがく、英語えいご: instrumental musicイタリア: musica strumental)とは、楽器がっき演奏えんそうによる音楽おんがくのこと。声楽せいがく対語たいごである[1]

楽器がっきこえ両方りょうほうもちいられる場合ばあいもあるが、楽器がっき中心ちゅうしん部分ぶぶんてき声楽せいがくふく場合ばあいれいベートーヴェン交響こうきょうきょくだい9ばんなど)は、器楽きがくとしてあつか[2]オペラオラトリオといっただい規模きぼ声楽せいがくきょくなかでは、序曲じょきょく間奏かんそうきょくとして器楽きがくもちいられる場合ばあいもある[3]

器楽きがく形態けいたい

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演奏えんそう形態けいたいにより、単独たんどく演奏えんそうする独奏どくそうと、複数ふくすうじん演奏えんそうする重奏じゅうそうおよび合奏がっそう区別くべつされる。かくこえを1にんずつの演奏えんそうしゃ形態けいたい重奏じゅうそうび、合奏がっそう2人ふたり以上いじょうからなるこえふく場合ばあい[2]合奏がっそうのうち、すべての演奏えんそうしゃ同一どういつ旋律せんりつ演奏えんそうする場合ばあいひとしそう[4]

西洋せいよう音楽おんがくにおける器楽きがく発達はったつ

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16世紀せいきまで

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声楽せいがく対比たいひする器楽きがくという概念がいねん登場とうじょうは、17世紀せいき以降いこう西洋せいよう音楽おんがく発展はってんと、楽器がっき製作せいさく技術ぎじゅつ発達はったつむすびついている[3]

古代こだいから16世紀せいきまついたるまで、器楽きがく音楽おんがくなかでは重視じゅうしされていなかった。初期しょきキリスト教きりすときょう音楽おんがくでは、楽器がっき演奏えんそう典礼てんれい言葉ことばやくにたず、信仰しんこう無縁むえんであるとして重要じゅうようされていなかった。9世紀せいきにはきたヨーロッパにおける器楽きがく合奏がっそうポリフォニー成立せいりつ寄与きよし、13世紀せいきから14世紀せいきにはサルタレロなどの舞曲ぶきょくエスタンピー器楽きがくによるモテットがフランスやイタリアで発達はったつした。やがて器楽きがくてき発想はっそう声楽せいがく影響えいきょうあたえるようになり、15世紀せいきから16世紀せいきフランドルらくでは器楽きがくてき要素ようそ重視じゅうしされている。15世紀せいきにはドイツの舞曲ぶきょく前奏ぜんそうきょく典礼てんれいのためのオルガン音楽おんがく発達はったつせた[1][2]

また、中世ちゅうせいからルネサンスまでは声楽せいがく器楽きがく区別くべつかならずしも明確めいかくではなく、おな作品さくひん器楽きがくとしても声楽せいがくとしても演奏えんそうされていた。16世紀せいきになると鍵盤けんばん楽器がっきリュートのための独奏どくそうきょく各種かくしゅ楽器がっきわせた重奏じゅうそうきょくなどが登場とうじょうしはじめた。前奏ぜんそうきょくトッカータは、調しらべつる調律ちょうりつ必要ひつようせいなどから純粋じゅんすい器楽きがくきょくとして発生はっせいした[3]

ただ、16世紀せいきまつまでは音楽おんがく代表だいひょうてき地位ちい依然いぜんとして声楽せいがくにあり、言葉ことば歌詞かし)と音楽おんがく不可分ふかぶん関係かんけいにあった[2]

バロック時代じだい

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17世紀せいき初頭しょとうからバロック音楽おんがく時代じだいになると、器楽きがく声楽せいがく同様どうよう重視じゅうしされるようになった。多種たしゅ楽器がっき特性とくせいかした独自どくじ器楽きがく様式ようしきが、従来じゅうらいからの声楽せいがく様式ようしきたがいに影響えいきょううことで発展はってんした。この時代じだい18世紀せいきなかばまでつづいた[3]

バロック音楽おんがく時代じだい確立かくりつした形式けいしきには、つぎのようなものがある[1][2]

古典こてんから現代げんだい

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18世紀せいきなかばに発生はっせいした古典こてん音楽おんがく以降いこうは、器楽きがく声楽せいがくしのぐようになった。これは科学かがく技術ぎじゅつ進歩しんぽ楽器がっき改良かいりょう寄与きよした部分ぶぶんおおきい。また、歌詞かしによる制約せいやくけないために抽象ちゅうしょうてき普遍ふへんてき表現ひょうげんてきしているとされ、古典こてん音楽おんがく時代じだいソナタ形式けいしきがその理想りそうがたとして確立かくりつされた[2][3]

19世紀せいきになると音楽おんがく詩的してき絵画かいがてき要素ようそむすびつき、事物じぶつ事象じしょう思想しそうなどを音楽おんがく表現ひょうげんしようとするロマン音楽おんがく隆盛りゅうせい標題ひょうだい音楽おんがく交響こうきょうされた。一方いっぽう標題ひょうだい音楽おんがくたいして音楽おんがく自律じりつせい重視じゅうしする傾向けいこうつよまり、そのような作品さくひん絶対ぜったい音楽おんがくとされ、(言葉ことばをもたない)器楽きがくこそ絶対ぜったい音楽おんがく神髄しんずいなされるようになった。現代げんだい音楽おんがくにおいては、電子でんし楽器がっきのような従来じゅうらい伝統でんとうえたあたらしい楽器がっき使つかったこころみもなされている[2][5]

古典こてん音楽おんがく時代じだい以降いこう確立かくりつした形式けいしきには、つぎのようなものがある[1][2]

西洋せいよう以外いがいにおける器楽きがく

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西洋せいよう音楽おんがく以外いがいにおいては、器楽きがくよりも声楽せいがく中心ちゅうしんである[5]

古代こだい文明ぶんめいにおいても器楽きがくおこなわれていたとられ、エジプト文明ぶんめいメソポタミア文明ぶんめい古代こだいインド古代こだい中国ちゅうごく、また東南とうなんアジアにおいては、合奏がっそう形態けいたい器楽きがくだい規模きぼおこなわれていたと推定すいていされている[5]

日本にっぽん伝統でんとうてき音楽おんがく邦楽ほうがく)でも声楽せいがく優勢ゆうせいであり、器楽きがく非常ひじょうすくない。声楽せいがくかたりものうたいものかれて非常ひじょうおおくのジャンルをつのにたいし、器楽きがく雅楽ががく合奏がっそうきょく箏曲そうきょく尺八しゃくはちたのしなどすくなく、それ自体じたい邦楽ほうがく特徴とくちょうとなっている。分類ぶんるいとしては少数しょうすうとはいえ、これらは高度こうど芸術げいじゅつせいち、邦楽ほうがく器楽きがくきょくでも雅楽ががくの「こしたかしらく」、箏曲そうきょくの「ろくだん調しらべ」、しん邦楽ほうがくの「はるうみ」など名曲めいきょくとされる作品さくひんおお存在そんざいする[1][3][5]

インドネシア伝統でんとう音楽おんがくであるガムランは、器楽きがく合奏がっそう重要じゅうようれいである[2]

器楽きがくによる楽曲がっきょく器楽きがくきょくというが、レコード分類ぶんるいなどでは合奏がっそうきょく器楽きがくきょくふくめないことがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e しんてい 標準ひょうじゅん音楽おんがく辞典じてん ア-テ だいはん』、音楽之友社おんがくのともしゃ、2008ねんしんていだい2はん、467-468ぺーじ器楽きがくこう
  2. ^ a b c d e f g h i 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん 6』、平凡社へいぼんしゃ、2007ねん改訂かいてい新版しんぱん、577-578ぺーじ器楽きがくこう植村うえむら耕三こうぞうちょ)。
  3. ^ a b c d e f 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ 6』、小学館しょうがくかん、1985ねん、373-374ぺーじ器楽きがくこう寺本てらもとまりちょ)。
  4. ^ コトバンク「ひとしそう」 - 『デジタル大辞泉だいじせん』、『大辞林だいじりん だいさんはん
  5. ^ a b c d 『ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん 3』、TBSブリタニカ、1991ねんだい2はん改訂かいてい、「音楽おんがくこう、559ぺーじ

関連かんれん項目こうもく

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