宇宙うちゅう工学こうがく

宇宙うちゅう工学こうがく（うちゅうこうがく、（英えい: astronautics、cosmonautics）は、宇宙うちゅう開発かいはつを行おこなうことに関連かんれんした工学こうがくの一いち分野ぶんやである。地球ちきゅうの大気たいきの外側そとがわを飛行ひこうするための理論りろんおよび技術ぎじゅつであり、言いうなれば、宇宙うちゅう飛行ひこうの科学かがく技術ぎじゅつである。

最近さいきんでは宇宙うちゅう工学こうがくは、航空こうくう工学こうがくとともに航空こうくう宇宙うちゅう工学こうがくという領域りょういきをなしている。航空こうくう工学こうがくと宇宙うちゅう工学こうがくは実際じっさい上じょう重かさなっている領域りょういきが非常ひじょうに多おおく、それらを分わけて考かんがえるのも作為さくい的てきで不適切ふてきせつな面めんもあるので、航空こうくう宇宙うちゅう工学こうがくとして統合とうごうされており、学会がっかいや大学だいがくの学部がくぶなども「航空こうくう宇宙うちゅう工こう学会がっかい」や「航空こうくう・宇宙うちゅう工学科こうがっか」などという名称めいしょうになっていて、その中なかで2大だい柱はしらのひとつとして宇宙うちゅう工学こうがくが扱あつかわれる形かたちになっていることが一般いっぱん化かしてきているのである。

概要がいよう

軌道きどうの計算けいさん

ロケットの設計せっけい・製造せいぞう・運用うんよう　等々とうとう

人工じんこう衛星えいせいの設計せっけい・製造せいぞう・運用うんよう等とう々

宇宙船うちゅうせんの設計せっけい・製造せいぞう・運用うんよう等々とうとう。この絵えは、スペースシャトルの大気圏たいきけん再さい突入とつにゅう時じの周囲しゅういの空気くうきの流ながれをコンピュータ・シミュレーションで得えたもの。

宇宙うちゅう工学こうがくの基本きほん概念がいねん

宇宙うちゅう工学こうがくは多おおくの専門せんもん的てき分野ぶんやからなり、技術ぎじゅつ者しゃや科学かがく者しゃらはこれらの異ことなる多おおくの専門せんもん的てき知識ちしきを生いかしながら働はたらいている。

軌道きどう力学りきがく:軌道きどうの運動うんどうについて研究けんきゅうする分野ぶんやである。この分野ぶんやは宇宙うちゅう機きの打うち上あげに応用おうようされ、弾道だんどう学がくや天体てんたい物理ぶつり学がくのような分野ぶんやがある。
宇宙うちゅう機きの推進すいしん方法ほうほう:いかなる方法ほうほうで宇宙うちゅう機きの軌道きどうを変更へんこうし、いかなる方法ほうほうで打うち上あげるのか。多おおくの宇宙うちゅう機きはさまざまな種類しゅるいのロケットエンジンを採用さいようしており、さまざまなロケットの研究けんきゅうがすすめられている。推進すいしん方法ほうほうとしては従来じゅうらいの化学かがく燃料ねんりょうロケットのほかに、原子力げんしりょくや電気でんき推進すいしんなどの方法ほうほうも研究けんきゅうされている。
制御せいぎょ工学こうがく:人工じんこう衛星えいせいやロケットを軌道きどうに保たもちたい場合ばあい、宇宙うちゅう機きの誘導ゆうどうに、向むきを変更へんこうしたいなら姿勢しせい制御せいぎょに応用おうようされる。

宇宙うちゅう工学こうがくの分野ぶんや

ロケット
宇宙うちゅう空間くうかんに人工じんこう衛星えいせいなどを打うち上あげる飛行ひこう体たい（launch vehicle）
人工じんこう衛星えいせい（satellite、artificial satellite）
地球ちきゅうを周回しゅうかいする人工じんこうの飛行ひこう体たい（spacecraft）
有人ゆうじん宇宙船うちゅうせん（manned spacecraft）
人間にんげんが乗のり組くんだ飛行ひこう体たい。

歴史れきし

初期しょきの宇宙うちゅう航法こうほうの研究けんきゅうは理論りろん的てき考察こうさつから始はじまった。宇宙うちゅう旅行りょこうに必要ひつような数学すうがく的てき基礎きそはアイザック・ニュートンが1687年ねんに出版しゅっぱんした『自然しぜん哲学てつがくの数学すうがく的てき諸しょ原理げんり』にて確立かくりつされた^[1]。

スイスのレオンハルト・オイラーやイタリアのジョゼフ＝ルイ・ラグランジュといった数すう学者がくしゃたちは、18世紀せいきから19世紀せいきにかけて古典こてん力学りきがくの数学すうがく的てき基礎きそづけに寄与きよした。しかし、これらの理論りろん的てき可能かのう性せいにもかかわらず、宇宙うちゅう旅行りょこうが実際じっさいに実現じつげんできるようになるのは20世紀せいき半なかばまで待またねばならなかった。その一方いっぽうで、宇宙うちゅう飛行ひこうの興味きょうみはジュール・ヴェルヌ（1828年ねん- 1905年ねん）やH・G・ウェルズ（1866年ねん - 1946年ねん）らによって小説しょうせつの世界せかいで描えがかれていたのだった。

20世紀せいき初頭しょとう、ロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーによってツィオルコフスキーの公式こうしきが導みちびきだされた。この方程式ほうていしきのおかげでロケットの推進すいしんの理論りろん的てき考察こうさつができるようになった。この方程式ほうていしきは宇宙船うちゅうせんの質量しつりょう( $m_{1}$ )、推進すいしん剤ざいと宇宙船うちゅうせんの質量しつりょうの和わ( $m_{0}$ )、推進すいしん剤ざいの排出はいしゅつ速度そくど( $v_{e}$ )、から宇宙船うちゅうせんの最終さいしゅう速度そくどを計算けいさんすることができる。

\Delta v\ =v_{e}\ln {\frac {m_{0}}{m_{1}}}

より詳細しょうさいな宇宙うちゅう旅行りょこうの数学すうがく理論りろんについては、軌道きどう力学りきがくを参照さんしょうのこと。

1920年代ねんだい初頭しょとうにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのロバート・ゴダードが液体えきたい燃料ねんりょうロケットを開発かいはつし、それは後ごのV2ロケットやサターンVの設計せっけい思想しそうにきわめて大おおきな影響えいきょうを与あたえることになった。

人物じんぶつ

ニコライ・キバリチチ（1853年ねん10月がつ31日にち - 1881年ねん4月がつ15日にち）
コンスタンチン・ツィオルコフスキー（1857年ねん 9月がつ17日にち - 1935年ねん9月がつ19日にち）
ガエターノ・アルトゥーロ・クロッコ（1877年ねん10月がつ26日にち - 1968年ねん1月がつ19日にち）
ヴァルター・ホーマン（1880年ねん3月がつ18日にち - 1945年ねん3月がつ11日にち）
ロベール・エスノー＝ペルトリ（1881年ねん11月8日にち - 1957年ねん12月6日にち）
ロバート・ゴダード（1882年ねん10月がつ5日にち – 1945年ねん8月がつ10日とおか）
フリードリッヒ・ザンデル（1887年ねん8月がつ23日にち-1933年ねん3月がつ28日にち）
ヘルマン・オーベルト（1894年ねん6月がつ25日にち - ）
ヨハネス・ヴィンクラー（1897年ねん5月がつ29日にち - 1947年ねん12月27日にち）
チャールズ・スターク・ドレイパー（1901年ねん10月がつ2日にち - 1987年ねん7月がつ25日にち）
オイゲン・ゼンガー（1905年ねん9月がつ22日にち - 1964年ねん2月がつ10日とおか）
アルトゥール・ルドルフ（ 1906年ねん11月9日にち - 1996年ねん1月がつ1日にち）
セルゲイ・コロリョフ（1906年ねん12月30日にち] – 1966年ねん1月がつ14日にち）
クラウス・リーデル（1907年ねん8月がつ2日にち - 1944年ねん8月がつ4日にち）
趙ちょう九きゅう章しょう（1907年ねん10月がつ15日にち - 1968年ねん10月がつ26日にち）
ヴァレンティン・グルシュコ（1908年ねん9月がつ2日にち - 1989年ねん1月がつ10日とおか）
ウイリアム・ヘイワード・ピカリング（1910年ねん12月24日にち - 2004年ねん3月がつ15日にち）
ミハイル・ヤンゲリ（1911年ねん10月がつ25日にち-1971年ねん10月がつ25日にち）
ボリス・チェルトック（1912年ねん3月がつ1日にち - 2011年ねん12月14日にち）
ヴェルナー・フォン・ブラウン（1912年ねん3月がつ23日にち - 1977年ねん6月がつ16日にち）
フランク・マリナ（1912年ねん10月がつ2日にち - 1981年ねん11月9日にち）
ウラジーミル・チェロメイ（1914年ねん6月がつ30日にち - 1984年ねん12月8日にち）
ヴァシーリー・ミシン（1917年ねん1月がつ18日にち - 2001年ねん10月がつ10日とおか）
ヴァルター・ヤコビ（1918年ねん1月がつ13日にち - 2009年ねん8月がつ19日にち）
トーマス・ゴールド（1920年ねん5月がつ22日にち – 2004年ねん6月がつ22日にち）
アレクサンドル・ケムルジャン（1921年ねん10月がつ4日にち - 2003年ねん2月がつ25日にち）
ヘンリク・デ・クフャトコフスキ（1924年ねん2月がつ22日にち - 2003年ねん3月がつ17日にち）
コンスタンチン・フェオクチストフ（1926年ねん2月がつ7日にち - 2009年ねん11月21日にち）
孫まご家か棟とう（1929年ねん4月がつ - ）
王おう永ひさし志こころざし（1932年ねん11月17日にち -　）
戚発軔（1933年ねん4月がつ26日にち - ）
竺苗龍りゅう（1942年ねん4月がつ - ）
バート・ルータン（1943年ねん - ）
葉は培つちかえ建けん（1945年ねん1月がつ - 　）
ロバート・ズブリン（1952年ねん4月がつ19日にち-　）
シェイック・モディボ・ディアラ（1952年ねん - ）
孫まご来らい燕つばめ（1957年ねん10月がつ - ）
ミルスワミー・アナドゥライ（1958年ねん7月がつ2日にち - ）

日本にっぽん

岡本おかもと哲史てつし（1908年ねん2月がつ13日にち - 1996年ねん10月がつ23日にち）
糸川いとかわ英夫ひでお（1912年ねん7月がつ20日はつか - 1999年ねん2月がつ21日にち）
斎藤さいとう成文せいぶん（1919年ねん9月がつ17日にち - 2020年ねん10月がつ7日にち）
林友りんゆう直じき（1927年ねん12月 - ）
三浦みうら公こう亮あきら（1930年ねん2月がつ23日にち - ）
久保くぼ園えん晃あきら（1930年ねん5月がつ6日にち - 2016年ねん12月26日にち）
五代ごだい富とみ文ぶん（1932 - ）
山中やまなか龍夫たつお（1933年ねん11月13日にち - ）
加藤かとう寛ひろし一郎いちろう（1935年ねん11月 -　）
的いくわ川がわ泰たい宣せん(1942年ねん2月がつ23日にち – ）
上杉うえすぎ邦くに憲けん（1943年ねん-）
木田きだ隆たかし（1949年ねん-）
小松こまつ敬たかし治ち（1949年ねん-）
川瀬かわせ成一郎せいいちろう（1950年ねん -　）
川口かわぐち淳あつし一郎いちろう（1955年ねん9月がつ24日にち -　）
西田にしだ信一郎しんいちろう（1956年ねん-）
大田おおた治彦はるひこ（1952 - ）
國中くになか均ひとし（1960年ねん -　）
吉田よしだ和哉かずや（1960年ねん-）
照井てるい冬ふゆ人じん（1960年ねん-）
中須賀なかすか真一しんいち（1961年ねん-）
松永まつなが三郎さぶろう（1963年ねん-）
佐さ鳥とり新しん（1964年ねん10月がつ6日にち - 2021年ねん12月31日にち）
小しょう紫むらさき公也きみや（1968年ねん-　　）
川勝かわかつ康弘やすひろ（1968年ねん - ）
山崎やまざき直子なおこ(1970年ねん - ）
森もり治おさむ（1973年ねん -）
津田つだ雄一ゆういち（1975年ねん-）

宇宙うちゅう工学こうがくの学生がくせい向むけの教科書きょうかしょなどに書かかれている内容ないよう

宇宙うちゅう工学こうがくにおいて質量しつりょう、温度おんど、外部がいぶの力ちからへの制約せいやくは過酷かこくな宇宙うちゅうの環境かんきょうで生いき延のびるために非常ひじょうに重要じゅうようである。とくに地上ちじょうでは再現さいげんできないような高こうレベルな真空しんくう、惑星わくせい間あいだ空間くうかん（英語えいご版ばん）やヴァン・アレン帯たいの強力きょうりょくな放射線ほうしゃせんなどに耐たえなければならない。

打うち上あげには大おおきな速度そくどが必要ひつようなため巨大きょだいな力ちからがかかり、軌道きどう上じょうは温度おんど変化へんかも激はげしいため人工じんこう衛星えいせいはこれらに耐たえられるように設計せっけいしなければならない^[2]。宇宙うちゅうに持もっていける質量しつりょうにはペイロードにより厳きびしい制約せいやくが課かせられるため、宇宙うちゅう工学こうがくの技術ぎじゅつ者しゃは設計せっけいにあたって、ペイロード限界げんかいを踏ふまえできる限かぎり軽量けいりょうな宇宙うちゅう機きを設計せっけいしなければならない。

民間みんかん企業きぎょう

スペースシップワン

脚注きゃくちゅう

^ Fundamentals of Astrodynamics, Bate, Mueller, and White. Dover: New York (1971).
^ Understanding Space: An Introduction to Astronautics, Sellers. 2nd Ed. McGraw-Hill (2000)