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守屋山 - Wikipedia

守屋山もりやさん

長野ながのけんやま

守屋山もりやさん(もりやさん)は、長野ながのけん諏訪すわ伊那いなとのさかいにある標高ひょうこう1,651mのやまである[1][2]

守屋山もりやさん
八ヶ岳やつがたけあかだけからのぞ守屋山もりやさん
標高ひょうこう 1,650.3 m
所在地しょざいち 日本の旗 日本にっぽん
長野ながのけん諏訪すわ伊那いな
位置いち 北緯ほくい3558ふん03びょう 東経とうけい13805ふん36びょう / 北緯ほくい35.96750 東経とうけい138.09333 / 35.96750; 138.09333座標ざひょう: 北緯ほくい3558ふん03びょう 東経とうけい13805ふん36びょう / 北緯ほくい35.96750 東経とうけい138.09333 / 35.96750; 138.09333
山系さんけい 伊那いな山地さんち
守屋山の位置(日本内)
守屋山
守屋山もりやさん位置いち
プロジェクト やま
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名称めいしょう

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伝承でんしょうによると旧名きゅうめいを「森山もりやまもりやま」という。古文書こもんじょには「守屋もりやだけ」「守矢もりやたけ」という名称めいしょうられる[3]

諏訪すわ地方ちほう人々ひとびとには守屋山もりやさんふくめた伊那いながわ山並やまなみを「西山にしやま」ともばれている。

概要がいよう

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伊那いな山地さんちさい北部ほくぶにあり、山頂さんちょうからは、みなみアルプス中央ちゅうおうアルプスきたアルプス八ヶ岳やつがだけ連峰れんぽうといった山々やまやま眺望ちょうぼうできる。清流せいりゅうとうたわれる沢川さわかわ水源すいげんで、もみじ箕輪みのわダム人造湖じんぞうこ)を天竜川てんりゅうがわそそぐ。

緑色みどりいろ凝灰岩ぎょうかいがんでできているこのやまは、糸魚川いといがわ静岡しずおか構造こうぞうせん中央ちゅうおう構造こうぞうせんまじわる地点ちてんにあたり、地質ちしつがくてきにきわめて重要じゅうよう地域ちいきである。

東峰とうほうには山頂さんちょうからすこくだったところにいしほこらがあり、絵図えずには「守矢もりや大臣だいじんみや」「守矢もりや大神おおがみ」というえがかれている。現在げんざいみなみふもとにある守屋もりや神社じんじゃ伊那いな高遠こうえんまち藤澤ふじさわ片倉かたくら)の奥宮おくのみやとされている[4]

信仰しんこう

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守屋もりや神社じんじゃ奥宮おくのみやいわ東峰ひがしみね

その名称めいしょうから「モリヤ」というかみ矢神やがみあるいは物部守屋もののべのもりや)が宿やどやまとして信仰しんこうあつめた。

雨乞あまご信仰しんこう

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守屋もりややまかみおこるとあめをもたらすとしんじられ、過去かこには干天かんてんつづくと雨乞あまごとして山頂さんちょうほこらたにそことす習慣しゅうかんがあった。現在げんざいほこらしがらみかこってあるのはこれをふせぐためである[5]

「おじり[注釈ちゅうしゃく 1]守屋もりやくもげて 百舌鳥もずきちかば かまぐべし」ということわざわれているように、山頂さんちょうくもがかかるとかならあめるとしんじられていたことから、諏訪盆地すわぼんち伊那いなだに人々ひとびとにはふるくから気象きしょう予知よちもちいられた[6]

いわ信仰しんこう

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ほこらかって右側みぎがわにあるいわいわとして信仰しんこう対象たいしょうであった。かつては守屋山もりやさん西側にしがわひとたちがきゅう6がつ朔日さくじつ登山とざんして、ほこらはいしたのちいわを7かいまわって諏訪すわ上社かみやしろ参拝さんぱいするという行事ぎょうじおこない、これを「七堂しちどう」とんだ[7]

いわ表面ひょうめんには文字もじらしきものがってあり、いのり五穀豊穣ごこくほうじょうねがうまじないの痕跡こんせきではないかとおもわれる[8]

諏訪すわ大社たいしゃ上社かみやしろとの関係かんけい

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20世紀せいき前半ぜんはん東峰とうほうほこら様子ようす
宮地みやじ直一なおかず諏訪すわふみ』(1931ねん)より

近年きんねん諏訪すわ上社かみやしろ神体しんたいやまとされるが、もともと諏訪すわ明神みょうじんけん御名ぎょめいかたしん)の神体しんたい諏訪すわだしだいしゅくであり、歴史れきしてき守屋山もりやさん神体しんたいとした記録きろくはない。それどころか、山頂さんちょういしほこらにははしらがなく、諏訪すわけている[9]。ただし、たからおさむ3ねん(1249ねん)にかれたといわれる『諏訪すわ信重のぶしげかいじょう』には、諏訪すわ明神みょうじん守屋山もりやさんふもと降臨こうりんして、このおさめていた守屋もりや大臣だいじん矢神やがみ)と覇権はけんあらそをしたのち上社かみやしろかまえたという伝承でんしょうかれているため[10][11][12]かならずしも上社かみやしろとはまった関係かんけいがないとはえない。

天正てんしょう10ねん(1582ねん)3がつ織田おだ信忠のぶただ軍勢ぐんぜい上社かみやしろちしたとき神官しんかんたちが神輿しんよかつ守屋山もりやさん避難ひなんしたとわれている。この事跡じせき関係かんけいする地名ちめい御輿みこしざかけんしゅく昼飯ひるめしじょうなど)が山中さんちゅうのこっている[13]

寛政かんせい12ねん(1800ねん)、白銅はくどうせいはちりょうきょうやま発見はっけんされ、天正てんしょう兵乱へいらんさい紛失ふんしつした宝物ほうもつだろうということで上社かみやしろ寄進きしんされた。このかがみ現在げんざい上社かみやしろ本宮ほんぐう宝物殿ほうもつでん収蔵しゅうぞうされている[14]

はしらさいときえられる2つの宝殿ほうでん網代あじろ天井てんじょう一部いちぶには、山中さんちゅう一角いっかくえている「かや」がふるくから使用しようされている[15]

守矢もりや物部ものべとの関係かんけい

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かみ長官ちょうかんうら古墳こふん茅野ちの
守矢もりや屋敷やしきない現在げんざいかみ長官ちょうかん守矢もりや史料しりょうかん)にある7世紀せいきごろ古墳こふん守矢もりやのいいつたえによると、この古墳こふんたけ麿まろおとうとくん)のものといわれている。

諏訪すわ上社かみやしろ神長かみながかんのおさという筆頭ひっとうしょくいた守矢もりや家伝かでんによると、物部守屋もののべのもりや次男じなんたけ麿まろおとうとくんおとぎみとも)が丁未ていみらんのち守屋山もりやさんのがれて、やがて守矢もりや養子ようしりして神長かみながとなった[16][17]。なお、守矢もりや養子ようしりしたといわれる平忠度たいらのただのりについてもまったくおな伝承でんしょうかたられている。これらには、神長かみながとなるもの通過つうか儀礼ぎれいとして聖地せいちとされた守屋山もりやさんこもっていたこと反映はんえいしているのではないかと指摘してきされている[18]

物部守屋もののべのもりやまつ守屋もりや神社じんじゃ伊那いな片倉かたくら地区ちくにも、物部守屋もののべのもりや子孫しそん名乗なの守屋もりやせいいえおお存在そんざいする[16]。また、山中さんちゅうには鍛冶たんや技術ぎじゅつった物部ものべとは関係かんけいがあるとおもわれる「鋳物いものいもじがま」の地名ちめいのこっている[19]

ふう三郎さぶろう信仰しんこう

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諏訪すわ上社かみやしろ一帯いったいえがいたつて天正てんしょういにしえ』(『天正てんしょうのボロボロ絵図えず』とも[20])から、山中さんちゅうには東日本ひがしにっぽんられる風神ふうじんふう三郎さぶろう」をまつる「三郎さぶろうみや」がかつてあったことがかる。諏訪すわ上社かみやしろにはこのしゃたいする神事しんじ見当みあたらないため、この痕跡こんせき民間みんかん信仰しんこうあとだと推測すいそくされる[21]

製鉄せいてつにはふう必要ひつようとされたため、鋳物師いもじがまにいたとおもわれる鍛冶たんや鋳物いものまつったかぜかみがそのルーツだったとかんがえられる[21]

周辺しゅうへんやま

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 諏訪湖すわこしり、つまり釜口かまぐち水門すいもんから天竜川てんりゅうがわながちる方面ほうめんす。

出典しゅってん

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  1. ^ しめぎ高値たかね改定かいていする山岳さんがく一覧いちらん 資料しりょう1”. 国土こくど地理ちりいん. https://www.gsi.go.jp/common/000091072.pdf 2014ねん3がつ26にち閲覧えつらん 
  2. ^ GNSS測量そくりょうとう点検てんけん補正ほせい調査ちょうさによる2014ねん4がつ1にち国土こくど地理ちりいん日本にっぽん山岳さんがく標高ひょうこう一覧いちらん-1003やま-』における改定かいてい。なお、旧版きゅうばんでの標高ひょうこうは1,650m。
  3. ^ 太田おおたあきらだいななしょう 祠官しかん」『諏訪すわ神社じんじゃ だい1かんかんぬさ大社たいしゃ諏訪すわ神社じんじゃ附属ふぞく 諏訪すわ明神みょうじん講社こうしゃ、1926ねん、225, 227ぺーじ
  4. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、133-137ぺーじ
  5. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、141-143ぺーじ
  6. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、140-141ぺーじ
  7. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、143ぺーじ
  8. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、144ぺーじ
  9. ^ 寺田てらだ鎮子ちんし鷲尾わしおとおるふとし諏訪すわ明神みょうじん―カミ信仰しんこうはらぞう岩田いわた書店しょてん、2010ねん、133ぺーじ
  10. ^ 諏訪すわ編纂へんさん委員いいんかい へんだいせつ 諏訪すわ神社じんじゃ上社かみやしろ下社しもしゃ」『諏訪すわ 上巻じょうかん (はらはじめ古代こだい中世ちゅうせい)』1995ねん、682-683ぺーじ
  11. ^ 宮坂みやさか光昭みつあき諏訪すわ大社たいしゃはしら年中ねんじゅう行事ぎょうじ郷土きょうど出版しゅっぱんしゃ、1992ねん、91-93ぺーじ
  12. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、148-149ぺーじ
  13. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、134-135ぺーじ
  14. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、135ぺーじ
  15. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろへん国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねん、139ぺーじ
  16. ^ a b はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろ、2018ねん、149-154ぺーじ
  17. ^ 大和やまと岩雄いわお信濃しなの古代こだいこう名著めいちょ出版しゅっぱん、1990ねん、110-111ぺーじ
  18. ^ 田中たなかはじめあなはじめ外来がいらいたましい」『諏訪すわ信仰しんこう発生はっせい展開てんかい部族ぶぞく研究けんきゅうかいへん人間にんげんしゃ日本にっぽん原初げんしょこう 3〉、2018ねん、210-212ぺーじ
  19. ^ はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろ、2018ねん、157-158ぺーじ
  20. ^ 上社かみやしろいにしえ 天正てんしょうのボロボロ絵図えず”. 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん はちじゅう文化ぶんか財団ざいだん (2018ねん12月29にち). 2018ねん12月29にち閲覧えつらん
  21. ^ a b はら正直まさなお守屋山もりやさん習俗しゅうぞく伝承でんしょう」『諏訪すわまなぶ山本やまもとひろ、2018ねん、158-160ぺーじ

関連かんれん図書としょ

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  • かきがい富士男ふじお津野つの祐次ゆうじ中山なかやま秀幸ひでゆきしんふんけん登山とざんガイド(改訂かいていばん) 15 長野ながのけんやまやま渓谷社けいこくしゃ、2010ねんISBN 978-4-6350-2365-8
  • 諏訪すわ編纂へんさん委員いいんかい へん諏訪すわ 上巻じょうかん (はらはじめ古代こだい中世ちゅうせい)』 、諏訪すわ、1995ねん
  • 寺田てらだ鎮子ちんし鷲尾わしおとおるふとし諏訪すわ明神みょうじん―カミ信仰しんこうはらぞう岩田いわた書店しょてん、2010ねんISBN 978-4-8729-4608-6
  • 徳久とくひさだまゆう武内たけうちただし石井いしい光造こうぞう へん三省堂さんせいどう 日本にっぽん山名やまな事典じてん三省堂さんせいどう、2004ねんISBN 978-4-3851-5404-6
  • 日本にっぽん山岳さんがくかいしん日本にっぽん山岳さんがくナカニシヤ出版しゅっぱん、2005ねんISBN 4-7795-0000-1
  • 日本にっぽん山岳さんがくかい東海とうかい支部しぶ東海とうかい北陸ほくりくの200秀山しゅうざん 東海とうかい信州しんしゅうへん)』中日新聞社ちゅうにちしんぶんしゃ、2009ねんISBN 978-4-8062-0599-9
  • 宮坂みやさか光昭みつあき諏訪すわ大社たいしゃはしら年中ねんじゅう行事ぎょうじ郷土きょうど出版しゅっぱんしゃ、1992ねんISBN 978-4-8766-3178-0
  • 宮地みやじ直一なおかず諏訪すわ だい2かん 前編ぜんぺん信濃しなの教育きょういくかい諏訪すわ部会ぶかい、1931ねん
  • 山本やまもとひろ へん諏訪すわまなぶ国書刊行会こくしょかんこうかい、2018ねんISBN 978-4-3360-6254-3
  • 改訂かいてい新版しんぱん 名古屋なごや周辺しゅうへんやまやま渓谷社けいこくしゃ、2010ねんISBN 978-4-6351-8017-7

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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