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暖炉 - Wikipedia

暖炉だんろ(だんろ、煖炉だんろとも、Fireplace)とは、室内しつないつくりつけられた暖房だんぼう装置そうち一種いっしゅである。暖房だんぼうとしての役割やくわり副次的ふくじてきまたはく、おも部屋へや装飾そうしょくとして設置せっちされる場合ばあいもある。

暖炉だんろ(ドイツ)

概要がいよう

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暖炉だんろ耐火たいか煉瓦れんが石材せきざいなどをもちいて室内しつない壁面へきめんなどにつくられたで、煙突えんとつ家屋かおく外部がいぶ直結ちょっけつしている。ないたきぎ石炭せきたんやし、そのねつ室内しつない暖房だんぼうする。現代げんだいでは、けむり人体じんたい有害ゆうがい一酸化いっさんか炭素たんそさないエタノール燃焼ねんしょう暖炉だんろや、ほのおのようにらめくイルミネーションうつ電気でんきしき疑似ぎじえん暖炉だんろもある[1]

 
電気でんき暖炉だんろ

ストーブとの根本こんぽんてきちがいは、燃焼ねんしょうよう空気くうき調整ちょうせいべん有無うむである。暖炉だんろおな開放かいほう燃焼ねんしょうであるため燃料ねんりょうりょうのみで燃焼ねんしょう制御せいぎょする。ゆかには耐火たいか煉瓦れんが必要ひつようで、火事かじふせぎ、燃焼ねんしょう効率こうりつげるためにその断熱だんねつには最大限さいだいげん注意ちゅういはらわねばならない。また、煙突えんとつへの接続せつぞくはスロート(英語えいごでthroat, のどの意味いみ)があり、燃焼ねんしょうガスのみをいだし、屋外おくがい空気くうき逆流ぎゃくりゅうふせぐためにしぼりがあたえられている。これがないと室内しつない空気くうき過度かどいだされるため、部屋へや温度おんどがりにくく、使用しよう隙間風すきまかぜはいる。ダンパでそのひらけ調節ちょうせつでき、使用しようにはめることができる。

暖炉だんろはスロートをもちいても暖房だんぼう効率こうりつひくたきぎやしてられたエネルギーのうち90%は煙突えんとつから外部がいぶ放出ほうしゅつされるために、部屋へや空気くうきあたためる能力のうりょく限定げんていてきである[2]。そのわりはだかによる暖房だんぼうのため輻射熱ふくしゃねつはとてもたかい。近年きんねんではたきぎやしたエネルギーの半分はんぶん以上いじょう暖房だんぼうとしてもちいること出来できたきぎストーブを暖炉だんろようかべんだビルトインたきぎストーブを暖炉だんろしょうすることもある。

また、暖炉だんろとく西洋せいようでは部屋へや格式かくしきや、席次せきじめるうえでの重要じゅうよう調度ちょうどひんであり、暖炉だんろまわりのマントルピース英語えいごばんなどの装飾そうしょくにはちからそそがれる。

ほのお前方ぜんぽうにはたいねつガラスとびらがつけられることもあるが、輻射熱ふくしゃねつ減少げんしょうするため、暖炉だんろ後方こうほう通気つうきし、られた熱風ねっぷうしたから噴出ふんしゅつしてねつ効率こうりつ改善かいぜんするタイプもある。

 
ともされた暖炉だんろ前方ぜんぽうあみ

前面ぜんめん開放かいほうしきたきぎ燃料ねんりょうとする場合ばあいぜためるため暖炉だんろ前方ぜんぽう金網かなあみ、ロートアイアンやガラスせい衝立ついたて鎖帷子くさりかたびらのようなカーテンを設置せっちする。金網かなあみほのおあいだゆか(ハース、英語えいごでhearth)は耐火たいかざいつくられる。石炭せきたん場合ばあい心配しんぱいいため衝立ついたてもちいない。

開放かいほう燃焼ねんしょう暖炉だんろ室内しつない空気くうき消費しょうひしてしまうので、やせばやすほどからとおいところでは隙間風すきまかぜさむくなる。最近さいきん欧米おうべい設計せっけい手法しゅほうでは、空気くうきこう暖炉だんろはいばこもうけて、外部がいぶ空気くうきやされる。

完全かんぜん外部がいぶ空気くうきだけでやして、ほのおをガラスまどからるビルトインたきぎストーブも出現しゅつげんしている。たきぎをくべるときにはとびらけるが、その一切いっさい外気がいきとの接続せつぞくつので、けむり室内しつないへの流出りゅうしゅつ暖炉だんろがいとの空気くうき出入でいりがない。この方式ほうしきこう気密きみつ住宅じゅうたくにもてきするため、通常つうじょうたきぎストーブでも同様どうよう製品せいひんおおくなっている。海外かいがいでは大気たいき汚染おせん防止ぼうし観点かんてんから都市としでの暖炉だんろ禁止きんしされている地域ちいきもあり[3]、このタイプの暖炉だんろ普及ふきゅうしつつある。

開放かいほう燃焼ねんしょう暖炉だんろ場合ばあいたきぎ広葉樹こうようじゅもちいなければならない。スギマツではや、燃焼ねんしょうたきぎぜがおおく、火事かじ原因げんいんともなる。暖炉だんろおなじく供給きょうきゅうされる空気くうきりょう調整ちょうせいして燃焼ねんしょう速度そくど調整ちょうせいすることが出来できないので、たきぎおおきさでおおきさと燃焼ねんしょう時間じかん調整ちょうせいする。現在げんざいおおられているたきぎストーブようたきぎではほそぎるため、おおきくなりぎて危険きけんであおおきさが適正てきせい場合ばあいはすぐにきるため、頻繁ひんぱんきゅうたきぎ必要ひつようとなる。金属きんぞく煙突えんとつ場合ばあいは、「じゅう煙突えんとつ」を利用りようすると、煙突えんとつ外部がいぶとの断熱だんねつせい煙突えんとつ内部ないぶ高温こうおんたもたれる。レンガ煙突えんとつ場合ばあい保温ほおんのために中空ちゅうくうレンガと断熱だんねつざいもちいられる場合ばあいがある。煙突えんとつ保温ほおんした場合ばあいえやすい煙突えんとつくらべて排気はいき効率こうりつたかくよりすくないねつ排気はいきできるためあまったねつ燃焼ねんしょうにフィードバックさせること出来できる。それにより燃焼ねんしょうおよ暖房だんぼう効率こうりつ向上こうじょうする。副次的ふくじてき効果こうかとして煙突えんとつ内部ないぶへのタールぶん付着ふちゃくすくなく、煙突えんとつ掃除そうじらくなため、結果けっかとして経済けいざいてきである。 煙突えんとつはレンガや石材せきざい場合ばあいあまよけのかさとく必要ひつようがない。かりに20cmかく煙突えんとつに30mmのあめって上部じょうぶから1.5mの範囲はんいれたと仮定かていすると、そのみずまくはわずか1mmにとどまるためである。

暖房だんぼうよう暖炉だんろ場合ばあい表面ひょうめん木材もくざい石材せきざい化粧けしょうざいとしてけたり、上部じょうぶたなじょうになったマントルピース英語えいごばんつくったりすることがおおい。

11世紀せいきまでのヨーロッパでは、日本にっぽん囲炉裏いろり構造こうぞう屋内おくないもうもちいていた。12世紀せいきはいると2かいての建物たてものつくられはじめるようになり、屋内おくないもうけると天井てんじょうだかけの平屋ひらやくらべてひくいために火災かさい危険きけんたかまった。その解決かいけつほうとして、不燃材ふねんざいつくられたいしやレンガの壁際かべぎわけむりどうもうけるようになったのがヨーロッパにおける煙突えんとつ発明はつめいおよび暖炉だんろはじまりである。そのため初期しょき暖炉だんろ現在げんざい暖炉だんろことなり排煙はいえん目的もくてきとしたおおきなフードとゆかのみで構成こうせいされていた。暖炉だんろはその建造けんぞうにかなりのコストがかかるため、暖炉だんろかず煙突えんとつかずおうじて税金ぜいきんがかけられるほどの高級こうきゅうひんであり、1819世紀せいきころまでは一般いっぱんてき家庭かていには存在そんざいしなかった。

ただし紀元前きげんぜん中国ちゅうごくローマでもたきぎストーブや暖炉だんろるいするものがすでに発明はつめいされ、使つかわれていた。それらの技術ぎじゅつつてせいしなかったため、現代げんだい暖炉だんろとの技術ぎじゅつてきなつながりはない。

煙突えんとつおよ暖炉だんろ発明はつめいによりいえ間取まどりのどの位置いちにももうけることが可能かのうになった結果けっか部屋へや区切くぎかく部屋へや調理ちょうり目的もくてきとしない暖房だんぼう装置そうちとしての暖炉だんろもうけられるようになる。その結果けっか客間きゃくま暖炉だんろには一番いちばん居心地いごこち暖炉だんろのそばを上座かみざとする習慣しゅうかんができた。部屋へや調度ちょうどひんとしての重要じゅうようたかまり、暖炉だんろまわりのマントルピースの装飾そうしょくちからそそがれる伝統でんとう出来できた。 16世紀せいきころには暖炉だんろ設計せっけい手法しゅほう確立かくりつされてけむり逆流ぎゃくりゅうたいするたいせいなどががり、現在げんざい暖炉だんろとほぼおなじものがつくられるようになる。 17世紀せいきには北欧ほくおう囲炉裏いろりまわりをレンガでかこ技術ぎじゅつ発明はつめいされ、それがロシアつたわったことでペチカ発明はつめいされた。

いまたきぎストーブに発展はってんする鉄製てつせい暖炉だんろは、1742ねんにアメリカで発明はつめいされたフランクリンストーブ(ペンシルバニア暖炉だんろ)(en)である。てつ暖炉だんろ自体じたい14世紀せいきすえからフランスで使用しようされていたが、それらの暖炉だんろにはバッフルばんがなく暖房だんぼう効率こうりつ暖炉だんろわりがなかった。フランクリンストーブは前面ぜんめん以外いがいの5めんてつかこってバッフルいたとそれによるぎゃくサイフォン燃焼ねんしょう機構きこう装着そうちゃくしたため放熱ほうねつ面積めんせきおおく、通常つうじょう暖炉だんろよりは暖房だんぼう効率こうりつたかかった。改良かいりょうがたのフランクリンストーブはとびらがついており、とびらじて使用しようするとさらにたか暖房だんぼう効率こうりつ発揮はっきした。発明はつめいしゃベンジャミン・フランクリンは「発明はつめいひんやその恩恵おんけいすべての人々ひとびと自由じゆうかちうべき。」とのかんがえから特許とっきょ取得しゅとくしなかった。このため安価あんか模倣もほうひん大量たいりょう流通りゅうつうした結果けっか一般いっぱん家庭かていにも暖炉だんろ普及ふきゅうした。改良かいりょうがたフランクリンストーブは暖炉だんろであると同時どうじに、たきぎストーブの最初さいしょ製品せいひんにも位置いちづけられる。

有害ゆうがいせい

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大気たいき汚染おせん規制きせい

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フランス・リヨンの大気たいき汚染おせん

暖炉だんろたきぎなどの精製せいせいされていない燃料ねんりょう使つかうため、大量たいりょう汚染おせん物質ぶっしつ(粒子りゅうしじょう物質ぶっしつ)を大気たいきへと放出ほうしゅつする。フランスでは暖炉だんろによる大気たいき汚染おせん深刻しんこく事態じたいとなっており、同国どうこくにおける大気たいき汚染おせんの4%あるいは23%が暖炉だんろ使用しようによって発生はっせいするばいえんであったとされる。これら大気たいき汚染おせん喘息ぜんそくなどの呼吸こきゅう疾患しっかん原因げんいんとなっている。そのため、2015ねん1がつ以降いこう、パリ市内しないにおいて開放かいほう燃焼ねんしょう暖炉だんろ使用しよう禁止きんしされている[4]

煙突えんとつ掃除そうじじんがん

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暖炉だんろそなけられる煙突えんとつにはすすまるため、煙突えんとつ掃除そうじじんしょく存在そんざいする。煙突えんとつ掃除そうじじんあいだでは皮膚ひふがん多発たはつしており、煙突えんとつ掃除そうじじんがんばれていた。 すすにははつがんせいがあり、19世紀せいき煙突えんとつ掃除そうじじん健康けんこう福祉ふくし問題もんだいとして注目ちゅうもくされ、少年しょうねん煙突えんとつ掃除そうじしょくたることが禁止きんしされた[5]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ まいナビ】たきぎのない暖炉だんろぐらし 手入てい簡単かんたんどもがいても安心あんしん日本経済新聞にほんけいざいしんぶん夕刊ゆうかん2017ねん12月27にち
  2. ^ 暖炉だんろづくりハンドブック そのはたらきと詳細しょうさい,奥村おくむら昭雄あきお編著へんちょ,建築資料研究社けんちくしりょうけんきゅうしゃ ,1991 / 148p / 237×218mm / hard
  3. ^ フランス 暖炉だんろ使用しようダメ、パリっなげ日本経済新聞にほんけいざいしんぶん夕刊ゆうかん2014ねん3がつ18にち
  4. ^ 大気たいき汚染おせん対策たいさく暖炉だんろ使用しよう禁止きんしに、ふつパリ首都しゅとけん afpbb news
  5. ^ Publications | Human Nature

関連かんれん事項じこう

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