炎ほのお

炎ほのお（ほのお）は、火ひの中なかでも、気体きたいが燃焼ねんしょうするときに見みられる穂ほのような、光ひかりと熱ねつを発はっしている部分ぶぶんを指さす。語源ごげんは火ひの穂ほ（ほのほ）から由来ゆらいしていると言いわれている。

炎ほのおの発生はっせい

気体きたい以外いがいが燃焼ねんしょうする場合ばあいにも炎ほのおが見みられることがあるが、これらも実際じっさいには、一旦いったん可燃かねん性せいの気体きたいが生成せいせいしてそれが燃焼ねんしょうしている。例たとえば、石油せきゆの燃焼ねんしょうでは、熱ねつによって一部いちぶが気化きかして、それが燃焼ねんしょうして炎ほのおを生しょうじる（蒸発じょうはつ燃焼ねんしょう）。木材もくざいの燃焼ねんしょうでは、熱ねつによって木材もくざいを構成こうせいする物質ぶっしつの一部いちぶが分解ぶんかいして、可燃かねん性せいの気体きたいを生しょうじて、それが燃焼ねんしょうし、炎ほのおを生しょうじる（分解ぶんかい燃焼ねんしょう）。

炎ほのおの構造こうぞう

ろうそくの炎ほのおの構造こうぞう。

炎ほのおの構造こうぞうは、燃焼ねんしょうする可燃かねん性せいの気体きたいにあらかじめ酸素さんそが混まぜられているかどうかによって異ことなる。

ろうそくの炎ほのおでは、熱ねつによって発生はっせいした可燃かねん性せいの気体きたいと周囲しゅういの空気くうき中ちゅうの酸素さんそが拡散かくさんによって混合こんごうすることによって燃焼ねんしょうしている（拡散かくさん燃焼ねんしょう）。このような場合ばあいには、炎ほのおの外側そとがわほど酸素さんその濃度のうどが高たかくなり、その濃度のうどに応おうじて炎ほのおは大おおきく分わけて3つの部分ぶぶんに分わけられる。

炎ほのおの一番いちばん外側そとがわは外そと炎えん（がいえん）と呼よばれる。ここは酸素さんそとの接触せっしょくが十分じゅうぶんであるため、酸化さんか反応はんのうが迅速じんそくに進行しんこうして熱ねつを発生はっせいしており、炎ほのおの中なかで最もっとも高温こうおんとなっている。ここに他たの物質ぶっしつを投入とうにゅうすると豊富ほうふな酸素さんそと高たかい温度おんどにより、酸化さんか反応はんのうが進行しんこうするため、酸化さんか炎えん（さんかえん）とも呼よばれる。外そと炎えんにはCH、C₂といった反応はんのう中ちゅう間あいだ体たいが存在そんざいしており、これらが熱ねつによって励起れいきされて発光はっこうしている。これらは主おもに青あおの輝線きせんスペクトルを持もつ光ひかりを放射ほうしゃしているが、この光ひかりはあまり強つよくなく明あかるい場所ばしょでは目立めだたない。

その内側うちがわには内うち炎えん（ないえん）と呼よばれる部分ぶぶんがある。ここは外側そとがわの外そと炎えんで酸素さんそが消費しょうひされており、酸素さんその供給きょうきゅうが不十分ふじゅうぶんとなるため、酸化さんか反応はんのうはあまり進行しんこうせず温度おんどが若干じゃっかん低ひくい。酸素さんそが不足ふそくしているので、ここに酸化さんか物ぶつを投入とうにゅうすると、酸化さんか物ぶつから酸素さんそを奪うばう還元かんげん反応はんのうが進行しんこうする。そのため還元かんげん炎えん（かんげんえん）とも呼よばれる。ここでは不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうが起おこっており、炭素たんその微粒子びりゅうし（すす）が発生はっせいしている。この微粒子びりゅうしが熱ねつ放射ほうしゃによって主おもにオレンジ色しょくをした連続れんぞくスペクトルを持もつ光ひかりを放射ほうしゃする。炎ほのおの中なかでは一番いちばん明あかるく光ひかって見みえる部分ぶぶんである。

炎ほのおの中心ちゅうしん部ぶは炎ほのお心こころ（えんしん）と呼よばれており、酸素さんそがほとんど供給きょうきゅうされておらず、温度おんども低ひくいために未み反応はんのうの可燃かねん性せい気体きたいが存在そんざいしている。ここは光ひかりを発はっしていないため暗くらく見みえる。

ブンゼンバーナーの炎ほのおでは、あらかじめ空気くうきと可燃かねん性せいの気体きたいを一定いっていの比率ひりつで混まぜて燃焼ねんしょうさせる（予よ混こん燃焼ねんしょう）。このような炎ほのおでは炎ほのお全体ぜんたいに酸素さんそが十分じゅうぶんに供給きょうきゅうされるため、炎ほのお全体ぜんたいが拡散かくさん燃焼ねんしょうの外そと炎えんと同おなじような青あおい炎ほのおとなり顕著けんちょな構造こうぞうを持もたなくなる。

炎ほのおの形かたち

炎ほのおはその熱ねつによって周囲しゅういの空気くうきの密度みつどを小ちいさくし、自身じしんの周囲しゅういに上昇じょうしょう気流きりゅうを発生はっせいさせる。この上昇じょうしょう気流きりゅうによって炎ほのおを形成けいせいする気体きたいが吹ふき流ながされて、炎ほのおの穂ほのような形かたちが作つくられている。この上昇じょうしょう気流きりゅうには燃焼ねんしょうの結果けっか生成せいせいする二酸化炭素にさんかたんそを除去じょきょし、新あたらしい酸素さんそを供給きょうきゅうする働はたらきもある。

大おおきい炎ほのおでは乱らん流りゅうも発生はっせいする。

無む重量じゅうりょう状態じょうたいにおいては上昇じょうしょう気流きりゅうができないため、炎ほのおは球形きゅうけいとなり、新あたらしい酸素さんそが供給きょうきゅうされにくいためにすぐに消きえてしまう。

炎ほのおの色いろ

酸素さんそ供給きょうきゅう量りょうの違ちがいによる色いろの違ちがい。数字すうじが大おおきくなるほど酸素さんそ供給きょうきゅう量りょうが多おおい。

有機物ゆうきぶつの燃焼ねんしょうの場合ばあい、炎ほのおの色いろは外そと炎えんにおいてはCHやC₂といった物質ぶっしつの発光はっこう、内うち炎えんにおいては炭素たんその微粒子びりゅうしの発光はっこうによって決きまっている。炭素たんそ含量の少すくなく酸素さんそを含ふくむ有機物ゆうきぶつ、例たとえばメタノールの燃焼ねんしょうにおいては炭素たんその微粒子びりゅうしの発生はっせい量りょうが少すくないため、内うち炎えんが目立めだたずに炎ほのおがほとんど見みえないという特徴とくちょうがある。

また、有機物ゆうきぶつ以外いがいの燃焼ねんしょうでは炎ほのおの色いろが異ことなる。例たとえば水素すいその燃焼ねんしょうで生しょうじる炎ほのおはほとんど色しょくを持もたないが、硫黄いおうの燃焼ねんしょうで生しょうじる炎ほのおは青色あおいろである。金属きんぞく自身じしんを燃焼ねんしょうさせたり、炎ほのおの中なかに金属きんぞくの塩しお（えん）を投入とうにゅうすると、炎ほのおの色いろが変化へんかすることがある。これは熱ねつによって炎ほのおの中なかに金属きんぞくのイオンが発生はっせいし、これが熱ねつ励起れいきされて発光はっこうするためである。金属きんぞくの種類しゅるいによって色いろが決きまっており、炎ほのお色しょく反応はんのうと呼よばれている。これは金属きんぞくの定性ていせい分析ぶんせき、定量ていりょう分析ぶんせきに利用りようされている（フレーム発光はっこう）。

その他た

炎ほのお、特とくに外そと炎えんは高温こうおんで、人間にんげんの皮膚ひふが直接ちょくせつ触ふれると火傷かしょうを起おこす。

炎ほのおが激はげしく燃もえる様ようから、身体しんたいの一部いちぶが細菌さいきんや科学かがく的てきな反応はんのうによって発熱はつねつや発赤はっせきを引ひき起おこす症状しょうじょうを炎症えんしょうと呼よぶ。

また、強つよい恋愛れんあい感情かんじょうや憎悪ぞうおなどの感情かんじょうは炎ほのおに例たとえられることがある。