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有機亜鉛化合物 - Wikipedia

有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつ

炭素たんそ亜鉛あえん結合けつごう有機ゆうき化合かごうぶつ

有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつ(ゆうきあえんかごうぶつ)は炭素たんそ亜鉛あえん結合けつごう有機ゆうき化合かごうぶつであり、有機ゆうき亜鉛あえん化学かがくにおいてその物理ぶつりてき性質せいしつ合成ごうせいほう反応はんのう研究けんきゅうされる[1][2][3]

はじめてつくられたのは1849ねんエドワード・フランクランドによるジエチル亜鉛あえんであり、これは同時どうじ金属きんぞく炭素たんそあいだσしぐま結合けつごうゆうする最初さいしょ化合かごうぶつでもあった。有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつおおくは自然しぜん発火はっかしやすいためあつかいがむずかしい。通常つうじょう酸素さんそよわく、おおくの溶媒ようばい溶だが、プロトンせい溶媒ようばいでは分解ぶんかいする。たいていの反応はんのうもちいる場合ばあいにはけいちゅう発生はっせいさせ、たんはなせずにそのままもちいる。また、窒素ちっそやアルゴンなど活性かっせいガス雰囲気ふんいき操作そうさしなければならない。

おもに3つのグループ、オルガノ亜鉛あえんハライド R−Zn−X (Xはハロゲン)、ジオルガノ亜鉛あえん R−Zn−R (Rはアルキルもとまたはアリールもと)、リチウムジンケート・マグネシウムジンケート M+R3Zn (Mはリチウムまたはマグネシウム)に分類ぶんるいされる。

炭素たんそ亜鉛あえん結合けつごう電気でんき陰性いんせい炭素たんそ 2.55、亜鉛あえん 1.65)により炭素たんそがわ分極ぶんきょくしている。ジオルガノ亜鉛あえんつねたんりょうたいであるのにたいして、オルガノ亜鉛あえんハライドはハロゲンの架橋かきょうによって会合かいごうたいとして存在そんざいし、グリニャール試薬しやく同様どうようシュレンク平衡へいこうこす。

合成ごうせい

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いくつかの一般いっぱんほうられている。

  • 酸化さんかてき付加ふか。フランクランドによって最初さいしょ報告ほうこくされたジエチル亜鉛あえん合成ごうせいほうは、水素すいそガスを「活性かっせいガス」としてもちいた、ヨードエタンの金属きんぞく亜鉛あえんへの酸化さんかてき付加ふかであった。塩化えんか亜鉛あえん金属きんぞくカリウムから調整ちょうせいしたいわゆるリーケ亜鉛あえん使つかうことによって金属きんぞく亜鉛あえん反応はんのうせいすことができる。
  • ハロゲン−亜鉛あえん交換こうかん。ヨウもと亜鉛あえん交換こうかんホウ素ほうそ亜鉛あえん交換こうかんの2つが主要しゅよう交換こうかんほうである。後者こうしゃ反応はんのうだい1段階だんかいはアルケンのヒドロホウもとである。
 
  • トランスメタル典型てんけいてきなトランスメタル金属きんぞく交換こうかん)はジフェニル水銀すいぎん金属きんぞく亜鉛あえんによるジフェニル亜鉛あえん金属きんぞく水銀すいぎん生成せいせいである。反応はんのうには2週間しゅうかんようする。この反応はんのう駆動くどうりょくは、もっと電気でんき陰性いんせいひく元素げんそふく有機ゆうき化合かごうぶつ生成せいせいである。
Ph−Hg−Ph + Zn → Hg + Ph−Zn−Ph (Phはフェニルもとしめす)
  • 金属きんぞく亜鉛あえんから直接ちょくせつることもできる[4][ちゅう 1]
 
この反応はんのうでは、亜鉛あえん1,2-ジブロモエタントリメチルシリルクロリドによって活性かっせいされる。塩化えんかリチウム添加てんかしておくと生成せいせいした有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつ可溶性かようせい付加ふかたい形成けいせいして金属きんぞく表面ひょうめんからのぞくため、これがほん反応はんのうかぎとなる。

反応はんのう

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有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつおおくの反応はんのうにおいて中間ちゅうかんからだとなる。

  • バルビエール反応はんのう(Barbier reaction)はマグネシウムをもちいるグリニャール反応はんのう亜鉛あえんばんであり、そちらよりもふるくからられ、反応はんのう要求ようきゅうされる条件じょうけんもよりゆるやかである。有機ゆうきマグネシウムハライドの調製ちょうせいはわずかのみず存在そんざいしていても失敗しっぱいするのにたいして、バルビエール反応はんのう水中すいちゅうおこなうことさえ可能かのうである。しかしながら、有機ゆうき亜鉛あえんもとめかくせいはグリニャール試薬しやくよりもおとる。だい12ぞく元素げんそなかでは亜鉛あえんもっとたか反応はんのうせいゆうする。
  • レフォルマトスキー反応はんのうはオルガノ亜鉛あえんハライドを経由けいゆして αあるふぁ-ハロエステルやアルデヒドを βべーた-ヒドロキシエステルに変換へんかんする。
  • シモンズ・スミス反応はんのうではカルベノイドである(ヨードメチル)亜鉛あえんヨージドをアルケンと反応はんのうさせてシクロプロパンたまきる。
  • 亜鉛あえんアセチリドもちいた反応はんのう
  • カルボニル化合かごうぶつへの付加ふか反応はんのうジメチル亜鉛あえんジエチル亜鉛あえん、ジフェニル亜鉛あえん市販しはんされている。これらの試薬しやく高価こうかであり、あつかいもむずかしい。より安価あんか有機ゆうき臭素しゅうそ化物ばけもの前駆ぜんくたいから活性かっせい有機ゆうき亜鉛あえん化合かごうぶつ方法ほうほう報告ほうこくされている[5][ちゅう 2]
 
  • 根岸ねぎしカップリングはアルケン、アレーン、アルキンなどの飽和ほうわ炭化たんか水素すいそあらたなC−C結合けつごう導入どうにゅうする重要じゅうよう反応はんのうの1つである。触媒しょくばいとしてニッケルやパラジウムが使つかわれる。触媒しょくばいサイクルのかぎ段階だんかいは、亜鉛あえんハライドとパラジウム(またはニッケル)のあいだ有機ゆうき置換ちかんもととハロゲン原子げんしわるトランスメタルである。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ このれいでは、アリール亜鉛あえんヨージドがアリルブロミドともとめかく置換ちかん反応はんのうする。
  2. ^ このワンポット合成ごうせいではブロモベンゼンは4モルとうりょうn-ブチルリチウムフェニルリチウム変換へんかんされ、それから塩化えんか亜鉛あえんとのトランスメタルによってジエチル亜鉛あえんとなる。これがまずひとしなMIBはいと、つぎに2-ナフチルアルデヒドと反応はんのうして生成せいせいぶつキラルなアルコールをあたえる。反応はんのうちゅう塩化えんかリチウムがふくせいするが、これはMIBをともなわないはんおう触媒しょくばいしてラセミたいのアルコールをしょうじさせてしまう。塩化えんかリチウムはテトラエチルエチレンジアミン (TEEDA) を添加てんかすることによりキレーション効果こうかによって除去じょきょすることができ、eeは92%までげられる。

出典しゅってん

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  1. ^ The Chemistry of Organozinc Compounds; Patai, S., Rappoport, Z., Marek, I., Eds.; John Wiley & Sons: Chichester, UK, 2006. ISBN 0-470-09337-4.
  2. ^ Organozinc reagents – A Practical Approach; Knochel, P., Jones, P., Eds.; Oxford Medical Publications: Oxford, 1999. ISBN 0-19-850121-8.
  3. ^ Synthetic Methods of Organometallic and Inorganic Chemistry Vol 5, Copper, Silver, Gold, Zinc, Cadmium, and Mercury; Herrmann, W. A., Ed.; Thieme Chemistry: Stuttgart, 2000. ISBN 3-13-103061-5.
  4. ^ Krasovskiy, A.; Malakhov, V.; Gavryushin, A.; Knochel, P. "Efficient Synthesis of Functionalized Organozinc Compounds by the Direct Insertion of Zinc into Organic Iodides and Bromides". Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 6040–6044. doi:10.1002/anie.200601450
  5. ^ Kim, J. G.; Walsh, P. J. "From Aryl Bromides to Enantioenriched Benzylic Alcohols in a Single Flask: Catalytic Asymmetric Arylation of Aldehydes". Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 4175–4178. doi:10.1002/anie.200600741

関連かんれん項目こうもく

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