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朝日訴訟 - Wikipedia

朝日あさひ訴訟そしょう(あさひそしょう)とは、1957ねん昭和しょうわ32ねん)に、国立こくりつ岡山おかやま療養りょうようしょ入所にゅうしょしていた朝日あさひしげる(あさひ しげる、1913ねん7がつ18にち - 1964ねん2がつ14にち以下いか原告げんこく」)が厚生こうせい大臣だいじん相手取あいてどり、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい25じょう規定きていする「健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかついとな権利けんり」(生存せいぞんけん)と生活せいかつ保護ほごほう内容ないようについてあらそった行政ぎょうせい訴訟そしょうである。原告げんこくせいからこうばれる。

最高裁判所さいこうさいばんしょ判例はんれい
事件じけんめい 生活せいかつ保護ほごほうによる保護ほごかんする不服ふふく申立もうしたてたいする裁決さいけつ取消とりけし請求せいきゅう
事件じけん番号ばんごう 昭和しょうわ39ねんくだりツ)だい14ごう
1967ねん昭和しょうわ42ねん)5がつ24にち
判例はんれいしゅう みんしゅうだい21かん5ごう1043ぺーじ
裁判さいばん要旨ようし
生活せいかつ保護ほごほう規定きていもとづく保護ほご受給じゅきゅうけん一身いっしん専属せんぞくけんであり、相続そうぞく対象たいしょうとはならないから、保護ほご変更へんこう決定けっていについての不服ふふく申立もうしたて却下きゃっか裁決さいけつたいする取消とりけし訴訟そしょうは、原告げんこく死亡しぼうにより当然とうぜん終了しゅうりょうする。
だい法廷ほうてい
裁判さいばんちょう 横田よこた喜三郎きさぶろう
陪席ばいせき裁判官さいばんかん 入江いりえ俊郎としお奥野おくの健一けんいちおにじょう堅磐かきわくさ鹿しかあさこれかい長部おさべ謹吾きんご城戸きど芳彦よしひこ石田いしだかずがいかしわ原語げんごろく田中たなか二郎じろう松田まつだ二郎じろう岩田いわたまこと下村しもむら三郎さぶろう
意見いけん
多数たすう意見いけん 横田よこた喜三郎きさぶろう入江いりえ俊郎としお奥野おくの健一けんいちおにじょう堅磐かきわ長部おさべ謹吾きんご城戸きど芳彦よしひこ石田いしだかずがいかしわ原語げんごろく下村しもむら三郎さぶろう
反対はんたい意見いけん くさ鹿しかあさこれかい田中たなか二郎じろう松田まつだ二郎じろう岩田いわたまこと
参照さんしょう法条ほうじょう
民事みんじ訴訟そしょうほうだい208じょう生活せいかつ保護ほごほうだい59じょう行政ぎょうせい事件じけん訴訟そしょうほうだい9じょう
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訴訟そしょう概要がいよう

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結核けっかく患者かんじゃである原告げんこくは、日本国にっぽんこく政府せいふから1カ月かげつ600えん生活せいかつ保護ほごによる生活せいかつ扶助ふじょ医療いりょう扶助ふじょ受領じゅりょうして、岡山おかやまけん国立こくりつ岡山おかやま療養りょうようしょ生活せいかつしていたが、月々つきづき600えんでの生活せいかつ無理むりであり、保護ほご給付きゅうふきん増額ぞうがくもとめた。[1]

1956ねん昭和しょうわ31ねん)、津山つやま福祉ふくし事務所じむしょは、原告げんこくあにたいつき1,500えん仕送しおくりをめいじた。福祉ふくし事務所じむしょは、同年どうねん8がつぶんから従来じゅうらいにち用品ようひん(600えん)の支給しきゅう原告げんこく本人ほんにんわたし、上回うわまわぶんの900えん医療いりょう一部いちぶ自己じこ負担ふたんぶんとする保護ほご変更へんこう処分しょぶん仕送しおくりによっていたぶんの900えん医療いりょうとして療養りょうようしょおさめよ、というもの)をおこなった。[1]

これにたいし、原告げんこく岡山おかやま県知事けんちじ不服ふふく申立もうしたておこなったが却下きゃっかされ、いで厚生こうせい大臣だいじん不服ふふく申立もうしたてをおこなうも、厚生こうせい大臣だいじんもこれを却下きゃっかしたことから、原告げんこく行政ぎょうせい不服ふふく審査しんさほうによる訴訟そしょう提起ていきするにおよんだものである。

原告げんこく主張しゅちょう

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原告げんこくは、当時とうじの「生活せいかつ保護ほごほうによる保護ほご基準きじゅん」(昭和しょうわ28ねんあつしつげだい226ごう)による支給しきゅう基準きじゅん600えんでは生活せいかつ出来できないと実感じっかんし、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい25じょう生活せいかつ保護ほごほう規定きていする「健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかついとな権利けんり」を保障ほしょうする水準すいじゅんにはおよばないことから、日本国にっぽんこく憲法けんぽう違反いはんにあたると主張しゅちょうした。

判決はんけつ

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  • だいいちしん東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょは、にち用品ようひん月額げつがくを600えんおさえているのは違法いほうであるとし、裁決さいけつした(原告げんこく全面ぜんめん勝訴しょうそ)(東京とうきょうばんあきら35.10.19 ぎょうさい11.10.2921)。
  • だいしん東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは、にち用品ようひんがつ600えんはすこぶるひくいが、不足ふそくがくは70えんぎず憲法けんぽうだい25じょう違反いはんいきにはたっしないとして、原告げんこく請求せいきゅう棄却ききゃくした(東京とうきょうだかばん昭和しょうわ38.11.4 ぎょうさい14.11.1963)。
  • 上告じょうこくしん途中とちゅう原告げんこく死亡しぼうし(1964ねん2がつ14にち死去しきょ)、養子ようし夫妻ふさい訴訟そしょうつづけたが、最高裁判所さいこうさいばんしょは、生活せいかつ保護ほごける権利けんり相続そうぞくできないとし、本人ほんにん死亡しぼうにより訴訟そしょう終了しゅうりょうしたとの判決はんけつくだした(最大さいだいばん昭和しょうわ42.5.24 みんしゅう21.5.1043)。

ねんのため判決はんけつ

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最高さいこう裁判所さいばんしょは、「なお、ねんのため」として生活せいかつ扶助ふじょ基準きじゅん適否てきひかんする意見いけんべている。それによると「憲法けんぽう25じょう1こうはすべての国民こくみん健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかついとなるように国政こくせい運営うんえいすべきことをくに責務せきむとして宣言せんげんしたにとどまり、直接ちょくせつ個々ここ国民こくみん具体ぐたいてき権利けんり賦与ふよしたものではない」とし、国民こくみん権利けんり法律ほうりつ生活せいかつ保護ほごほう)によってまもられればいとした。「なに健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかつであるかの認定にんてい判断はんだんは、厚生こうせい大臣だいじん合目的的ごうもくてきてき裁量さいりょうゆだねされている」とする。

この部分ぶぶんは、プログラム規定きていせつのリーディング・ケースである食糧しょくりょう管理かんりほう違反いはん事件じけん最高裁判所さいこうさいばんしょ昭和しょうわ23ねん9がつ29にち)がしめした生存せいぞんけん解釈かいしゃくまえている(ただし、憲法けんぽうだい25じょう裁判さいばん規範きはんせいみとめているてんで、完全かんぜんなプログラム規定きていせつではないことに注意ちゅういする必要ひつようがある)。はたろん生存せいぞんけん性格せいかくについて詳細しょうさい意見いけんべた最高裁さいこうさいのこの判決はんけつを「ねんのため判決はんけつ」とぶことがある。

  • 以後いごこの裁判さいばん影響えいきょうにより、生活せいかつ保護ほご基準きじゅん金額きんがく改善かいぜん社会しゃかい保障ほしょう制度せいど発展はってんおおきく寄与きよした[2]

学校がっこう教育きょういくにおけるほん訴訟そしょうかた昭和しょうわ60年代ねんだいまでの小中学校しょうちゅうがっこう社会しゃかい文部省もんぶしょう検定けんていずみ教科書きょうかしょには、基本きほんてき人権じんけん尊重そんちょう問題もんだいてんげるさいに、さきほん訴訟そしょうげられた。現在げんざいでも、高等こうとう学校がっこうよう教科書きょうかしょなどでげられている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 戸松とまつ秀典ひでのり; 初宿しやけただしてん . 憲法けんぽう判例はんれいだい8はん. 有斐閣ゆうひかく. p. 409 
  2. ^ 朝日あさひ訴訟そしょうとはコトバンク

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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