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相続 - Wikipedia

相続そうぞく

おも死亡しぼう原因げんいんとして、財産ざいさんとう譲渡じょうとする行為こうい

相続そうぞく(そうぞく、えい: inheritance)とは、自然人しぜんじん財産ざいさんなどの様々さまざま権利けんり義務ぎむ自然人しぜんじん包括ほうかつてき承継しょうけいすること[ちゅう 1]

概説がいせつ

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近代きんだいほう相続そうぞく制度せいど趣旨しゅし

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相続そうぞく制度せいどのどのしょ制度せいどよりもその根拠こんきょわれる[1]

近代きんだいほう相続そうぞく制度せいどについては、相続そうぞくじん生計せいけいをともにした遺族いぞく生活せいかつ保障ほしょうする趣旨しゅしであるとみるせつ相続そうぞくじんのこした財産ざいさん無主むしゅぶつとなってしまうことをふせ趣旨しゅしであるとみるせつなどがある。

一方いっぽう相続そうぞく財産ざいさんという、いわば不労所得ふろうしょとくによる所有しょゆう財産ざいさん多寡たかしょうずることによって、平等びょうどうであるべき個人こじん経済けいざいてき競争きょうそう条件じょうけんそこなうものとして、相続そうぞく制度せいど否定ひていろんしゃからは制度せいど撤廃てっぱいもとめる主張しゅちょうがある。したがって相続そうぞく課税かぜい強化きょうかによりとみさい分配ぶんぱい機能きのう強化きょうかすべきとなる[1]

一般いっぱんてきには、自然人しぜんじん死亡しぼう原因げんいんとするものを相続そうぞくしょうすることがおおいが、死亡しぼう原因げんいんとしない生前せいぜん相続そうぞく制度せいどもある(日本国にっぽんこく憲法けんぽう施行しこうされるまえ、いわゆる明治めいじ憲法けんぽう日本にっぽんにおける家督かとく相続そうぞく死亡しぼう原因げんいんとする場合ばあいもしない場合ばあいふくむ)。

相続そうぞくにおける財産ざいさん承継しょうけい形態けいたい

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比較ひかくほうじょう相続そうぞく原因げんいん発生はっせいした場合ばあい死亡しぼうなど)に相続そうぞくじんから相続そうぞくじん財産ざいさん移転いてんする形態けいたいとしては、包括ほうかつ承継しょうけい主義しゅぎ清算せいさん主義しゅぎ形態けいたいがある。

包括ほうかつ承継しょうけい主義しゅぎ
相続そうぞく原因げんいん発生はっせい同時どうじに、相続そうぞくじん利害りがいゆうするものとのあいだなんらの清算せいさん手続てつづきずに、相続そうぞくじん財産ざいさん包括ほうかつてき相続そうぞくじん移転いてんする形態けいたいである。この制度せいどでは、相続そうぞくじん財産ざいさん債務さいむふくめて一切いっさい承継しょうけいされるため、債務さいむ相続そうぞく回避かいひするためにはべつ手続てつづき相続そうぞく放棄ほうき限定げんてい承認しょうにん)が必要ひつようになる。日本にっぽん、ドイツなどで採用さいようされている形態けいたいである。
もっとも、この場合ばあいでも、限定げんてい承認しょうにん制度せいど採用さいようされている場合ばあいは、所定しょてい手続てつづきれば清算せいさん主義しゅぎちか形態けいたいになる。
清算せいさん主義しゅぎ
この形態けいたいでは、相続そうぞく原因げんいん発生はっせいした場合ばあい相続そうぞく財産ざいさんただちに相続そうぞくじん承継しょうけいされず、一旦いったん死者ししゃ人格じんかく代表だいひょうしゃ(personal representative)に帰属きぞくさせ管理かんりさせる。そして、このもの相続そうぞくじん利害りがい関係かんけいじんとのあいだ財産ざいさん関係かんけい清算せいさんをし、その結果けっかプラスの財産ざいさんのこ場合ばあいはそれを相続そうぞくじん承継しょうけいする。えいべい採用さいようされている形態けいたいである。
包括ほうかつ承継しょうけい主義しゅぎことなり、建前たてまえじょう相続そうぞくじん相続そうぞくじん債務さいむ承継しょうけいすることはない。もっとも、相続そうぞく財産ざいさん小額しょうがく場合ばあい費用ひようたおれになること、多額たがく場合ばあいでも清算せいさん手続てつづきないほう経済けいざいてきのぞましい場合ばあいもあるため、現実げんじつには清算せいさん手続てつづきずに債務さいむふくめてそのまま相続そうぞくじん財産ざいさん承継しょうけいする便法べんぽうられることもある。

不平等ふびょうどう

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相続そうぞくされたとみ分配ぶんぱいことなった文化ぶんか法的ほうてき伝統でんとうにおいておおいに多様たようである。大陸たいりくほうによるくにでは、たとえば、子供こどもおやから相続そうぞくする権利けんりあらかじさだめられた割合わりあいは、はる時代じだいさかのぼハムラビ法典ほうてん紀元前きげんぜんやく1750ねん)でのように[2]法律ほうりつ明記めいきされている[3]アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのルイジアナしゅうは、法体ほうたいけいフランス民法みんぽうてん由来ゆらいする、合衆国がっしゅうこく唯一ゆいいつのところのしゅうである。両親りょうしん証明しょうめい義務付ぎむづけられるところの、わずかな厳密げんみつ定義ていぎされた理由りゆうのぞいて、成人せいじん子供こども相続そうぞく許可きょかあたえるものとして、この体系たいけいられる[4]べつほう伝統でんとうは、当事とうじしゃ一人ひとりのぞむような、またはなんらかの理由りゆう子供こどもだれかに相続そうぞくさせない分割ぶんかつゆるす、コモン・ローによるものが合衆国がっしゅうこく一部いちぶおこなわれる。

'均等きんとう'(えい: unequal )な相続そうぞく場合ばあいすくないかず相続そうぞくだけがおおきな総額そうがくであるのに多数たすうものすくなくるかもしれない[よう出典しゅってん]

社会しゃかい階層かいそう

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社会しゃかい階層かいそうにおいて顕著けんちょ効果こうか相続そうぞくあたえることを指摘してきされてきた。相続そうぞくは、家族かぞく経済けいざいほう制度せいど、ならびに階級かいきゅう分化ぶんか での基礎きそてき機構きこうの、集積しゅうせきてきわせである。それは社会しゃかいてき水準すいじゅんにおいてもとみ分布ぶんぷ 英語えいご: Distribution of wealth 影響えいきょうおよぼす。その分野ぶんやにおいて検証けんしょうをする学者がくしゃにより、分化ぶんか結果けっかにおける相続そうぞくそう累積るいせきてき効果こうかみっつの形態けいたいをとる。

相続そうぞくじょう不平等ふびょうどう社会しゃかいてきかつ経済けいざいてき影響えいきょう

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経済けいざいてき地位ちいのどの階級かいきゅうであるか、そして世代せだいにわたり継承けいしょうされる相続そうぞくが、社会しゃかいでの当事とうじしゃ人生じんせい機会きかい決定けっていすることがさらに主張しゅちょうされる。おおくはそのもの社会しゃかいてき出自しゅつじ人生じんせい機会きかい目的もくてき達成たっせいする教育きょういく関係かんけいするけれども、教育きょういく経済けいざいてき移動いどうせい 英語えいご: economic mobility もっと影響えいきょうのある予測よそくぶつとして提供ていきょうされない。実際じっさい裕福ゆうふく両親りょうしんそうじてよい教育きょういく物質ぶっしつてき文化ぶんかてき生来せいらいてき利益りえきあたえられる[5]

王朝おうちょうてきとみ

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'王朝おうちょうてきとみ'(えい: dynastic wealth )とはかせがれなかったものである、世代せだい継承けいしょうされる金銭きんせんてきとみである[6]王朝おうちょうてきとみ金権きんけん政治せいじという用語ようご関連かんれんする。フランスの経済けいざい学者がくしゃトマ・ピケティによる多売たばいほん21世紀せいき資本しほんふくめて、おおくのもの王朝おうちょうてきとみ増大ぞうだい影響えいきょうについてべている[7]

ビル・ゲイツはその用語ようごかれ記事きじWhy Inequality Mattersもちいる[8]

相続そうぞくについてのソビエト連邦れんぽう対応たいおう

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マルクス主義まるくすしゅぎ労働ろうどう価値かちせつによる共産きょうさん主義しゅぎはじまるにつれ、もしそれがひと自身じしん労働ろうどう果実かじつもとづき他人たにんやとったものでなければ、生涯しょうがい道筋みちすじでのいかなる金銭きんせん正当せいとうされた。

ロシア革命かくめい以降いこう成立せいりつした最初さいしょ共産きょうさん主義しゅぎ政府せいふは、いくつかの例外れいがいのぞき、相続そうぞく権利けんり廃止はいしすることで解決かいけつした[9]

日本にっぽんほうにおける相続そうぞく

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日本にっぽんほうにおける相続そうぞくほうは、おも相続そうぞくについてさだめた民法みんぽうだいへん規定きていされている。民法みんぽうにおける相続そうぞくかんする規定きていには遺言ゆいごんにより民法みんぽう規定きていことなるさだめをすることができる任意にんい規定きていおおふくまれる一方いっぽう遺留分いりゅうぶん規定きていのように遺言ゆいごんでの排除はいじょゆるさない強行きょうこう規定きてい存在そんざいする。

  • 日本にっぽん民法みんぽうについて以下いかでは、じょうめいのみ記載きさいする。

相続そうぞく開始かいし

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相続そうぞく死亡しぼうによって開始かいしする(882じょう)。死亡しぼうには失踪しっそう宣告せんこく認定にんてい死亡しぼうふくまれる。相続そうぞく相続そうぞくじん住所じゅうしょにおいて開始かいしする(883じょう)。

相続そうぞくじんは、相続そうぞく開始かいしとき相続そうぞくじん死亡しぼうとき)から、相続そうぞくじん財産ざいさんぞくした一切いっさい権利けんり義務ぎむ承継しょうけいする(896じょう)。

相続そうぞくじん

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相続そうぞくじん財産ざいさんじょう地位ちい承継しょうけいするもののことを相続そうぞくじん(そうぞくにん)という。これにたいして相続そうぞくされる財産ざいさん権利けんり法律ほうりつ関係かんけいきゅう主体しゅたい相続そうぞくじん(ひそうぞくにん)という。相続そうぞく開始かいしまえには、推定すいてい相続そうぞくじんといい、相続そうぞくじん死亡しぼうによる相続そうぞく開始かいしによって確定かくていする。なお、相続そうぞくじんとなり一般いっぱんてき資格しかく相続そうぞく能力のうりょくといい、法人ほうじん相続そうぞく能力のうりょくたないが、胎児たいじ相続そうぞく能力のうりょくつ(886じょう)。

相続そうぞく順位じゅんい

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相続そうぞくじん血族けつぞくつぎ順位じゅんい相続そうぞくじんとなる(887じょう889じょう)。

  1. 相続そうぞくじん
  2. 相続そうぞくじん直系ちょっけい尊属そんぞく
  3. 相続そうぞくじん兄弟きょうだい姉妹しまい

また、相続そうぞくじん配偶はいぐうしゃつね相続そうぞくじんとなり、上記じょうき順位じゅんい相続そうぞくじんとなったものどう順位じゅんい相続そうぞくじんとなる(890じょう)。どう順位じゅんい同士どうしとの相続そうぞくとなるのであって、遺言ゆいごんによる指定していがないかぎ順位じゅんいあいだとで相続そうぞくすることはない。他人たにん同然どうぜん関係かんけい人間にんげん遺言ゆいごん指名しめいされるか養子ようし縁組えんぐみ手続てつづきをしないかぎり、相続そうぞくけん一切いっさいない。れい血縁けつえんじょう異母いぼ姉妹しまい父親ちちおや相続そうぞくけん全員ぜんいんにあっても異母いぼ財産ざいさん相続そうぞくする権利けんりはない。

だいかさね相続そうぞく

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相続そうぞく開始かいし以前いぜん相続そうぞくじんあるいは相続そうぞくじん兄弟きょうだい姉妹しまい死亡しぼう相続そうぞく欠格けっかく相続そうぞく廃除はいじょによって相続そうぞくけんうしなった場合ばあい、そのものわって相続そうぞくする(887じょう2こう本文ほんぶん889じょう2こう)。これをだいかさね相続そうぞくといい、だいかさね相続そうぞくするものだいかさねしゃだいかさね相続そうぞくされるものだいかさねしゃという。

だいかさねしゃ相続そうぞくじん直系ちょっけい卑属ひぞくでなければならない(887じょう2こう但書ただしがき)。養子ようし縁組えんぐみまえ出生しゅっしょうしていた養子ようし相続そうぞくじん直系ちょっけい卑属ひぞくではない(民法みんぽう727じょう養子ようし養親ようしんおよびその血族けつぞくとのあいだ血族けつぞく関係かんけいしょうじることをみとめているが、養親ようしん養子ようし血族けつぞくとのあいだ血族けつぞく関係かんけいしょうじることはみとめてない。)からだいかさね相続そうぞくすることはできない(大判おおばん昭和しょうわ7ねん5がつ11にちみんしゅう11かん1062ぺーじ)。

なお、相続そうぞく放棄ほうきだいかさね原因げんいんとはならず、相続そうぞく放棄ほうきをしたもの直系ちょっけい卑属ひぞくまご曾孫そうそん…)にはだいかさね相続そうぞく発生はっせいしない。

だいかさねしゃである相続そうぞくじん死亡しぼう相続そうぞく欠格けっかく相続そうぞく廃除はいじょによって相続そうぞくけんうしなった場合ばあいまごわって相続そうぞくする(887じょう3こう)。これをさいだいかさね相続そうぞくといい、だいかさねしゃ直系ちょっけい卑属ひぞくまご曾孫そうそん…)では延々えんえんつづくことになる。ただし、相続そうぞくじん兄弟きょうだい姉妹しまい場合ばあいにはだいかさねしゃおいめいまでとなり、だいおいだいめいさいだいかさね相続そうぞくみとめられていない(889じょう参照さんしょう)。

相続そうぞく欠格けっかく

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故意こい相続そうぞくじん相続そうぞくじん死亡しぼういたらせたり、遺言ゆいごんしょ破棄はき捏造ねつぞうするなどだい891じょう規定きていされる重大じゅうだい不正ふせい行為こうい相続そうぞく欠格けっかく事由じゆう)をおこなったものは、その相続そうぞくじん相続そうぞくにおいて当然とうぜん相続そうぞくじんとしての資格しかくうしなう。これを相続そうぞく欠格けっかくという。

相続そうぞくじん廃除はいじょ

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相続そうぞくじんたいして虐待ぎゃくたい侮辱ぶじょくあるいはいちじるしい非行ひこうがあった場合ばあい相続そうぞくじん家庭かてい裁判所さいばんしょもうてることによって、その相続そうぞくけん喪失そうしつさせることができる(892じょう)。これを相続そうぞくじん廃除はいじょという。相続そうぞくじん廃除はいじょ遺言ゆいごんによるもうてによっても可能かのうである(893じょう)。廃除はいじょされた推定すいてい相続そうぞくじん相続そうぞくけんうしなう。

相続そうぞく効果こうか

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相続そうぞく一般いっぱんてき効果こうか

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相続そうぞくにより相続そうぞくじん原則げんそくとして相続そうぞくじん財産ざいさんぞくした一切いっさい権利けんり義務ぎむ承継しょうけいする(896じょう本文ほんぶん)。しかし、以下いか例外れいがいがある。

  • 一身いっしん専属せんぞくてき権利けんり
相続そうぞくじん一身いっしん専属せんぞくてき権利けんり相続そうぞく発生はっせいしても承継しょうけいされない(896じょう但書ただしがき)。以下いかのようなものがある。
  1. 代理だいりけん111じょう1こう1ごう
  2. 定期ていき給付きゅうふ目的もくてきとする贈与ぞうよ定期ていき贈与ぞうよ552じょう
  3. 使用しよう貸借たいしゃくにおける借主かりぬしとしての地位ちい599じょう
  4. 委任いにんにおける委任いにんしゃあるいは受任じゅにんしゃとしての地位ちい653じょう
  5. 民法みんぽうじょう組合くみあい組合くみあいいんとしての地位ちい679じょう
  6. 定期ていき預金よきん契約けいやく銀行ぎんこう特別とくべつみとめた場合ばあいのぞく)
  • 祭祀さいしかんする権利けんり
系譜けいふ祭具さいぐ墳墓ふんぼ所有しょゆうけん原則げんそくとして慣習かんしゅうにより祖先そせん祭祀さいし主宰しゅさいすべきもの承継しょうけいするものとされるが、相続そうぞくじん指定していがあるときはそのもの承継しょうけいすることになる(897じょう1こう)。

相続そうぞく財産ざいさん共有きょうゆう

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相続そうぞくじんすうにんあるときは相続そうぞく財産ざいさん共同きょうどう相続そうぞくじん共有きょうゆうぞくすることになる(898じょう)。この「共有きょうゆう」の意味いみについては共有きょうゆうせつごうゆうせつ対立たいりつがあるが、判例はんれい249じょう以下いか共有きょうゆうことならないものとかいして共有きょうゆうせつをとっている(さいはん昭和しょうわ30ねん5がつ31にちみんしゅう9かん6ごう793ぺーじ)。

相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけん

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相続そうぞく欠格けっかくしゃ本来ほんらい相続そうぞくじんでないのに相続そうぞくじんよそおっているものおもて相続そうぞくじん僭称せんしょう相続そうぞくじん真正しんせい相続そうぞくじんなどという)が、遺産いさん管理かんり処分しょぶんおこなっている場合ばあい相続そうぞくじん遺産いさんもどすことができる。これを相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけんという(884じょう)。相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけんはこれを包括ほうかつてき行使こうしでき個々ここ財産ざいさん具体ぐたいてき列挙れっきょして行使こうしする必要ひつようはない(だい連判れんばん大正たいしょう8ねん3がつ28にちみんろく25輯507ぺーじ)。相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけん相続そうぞくじんまたはその法定ほうてい代理人だいりにん相続そうぞくけん侵害しんがいされた事実じじつったときから5年間ねんかん行使こうししないときは、時効じこうによって消滅しょうめつする(884じょう前段ぜんだん)。また、相続そうぞく開始かいしときから20ねん経過けいかしたときも消滅しょうめつする(884じょう後段こうだん)。なお、清算せいさん主義しゅぎでプラスの財産ざいさんしか相続そうぞくしないえいべいほうでは相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけんおおいに尊重そんちょうされており、日本にっぽん民法みんぽうとの相違そういおおきい。

そして、その相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけん共同きょうどう相続そうぞくじん相互そうごあいだ相続そうぞくけん帰属きぞく問題もんだいについても適用てきようがあるとされている。ただし、判例はんれいじょう相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけんにおける消滅しょうめつ時効じこう援用えんようけんしゃについて、共同きょうどう相続そうぞくじん真正しんせい共同きょうどう相続そうぞくじん持分もちぶんまで主張しゅちょうする場合ばあいは、真正しんせい共同きょうどう相続そうぞくじん持分もちぶん侵害しんがいしている事実じじつらずかつみずからが相続そうぞくけんがあるとしんずるにりる合理ごうりてき理由りゆうがあることをようするとして(最大さいだいばん昭和しょうわ53ねん12がつ20日はつかみんしゅう32かん9ごう1674ぺーじ)その範囲はんい制限せいげんしている。

相続そうぞくぶん

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相続そうぞくじん相続そうぞく財産ざいさんたいするまえ割合わりあいかずがくのことで、普通ふつうはその割合わりあいをいう(900じょう)。

指定してい相続そうぞくぶん

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相続そうぞくじん遺言ゆいごん共同きょうどう相続そうぞくじん相続そうぞくぶんさだめ、または、相続そうぞくぶんさだめることを第三者だいさんしゃ委託いたくすることができる(902じょう1こう本文ほんぶん)。このような方法ほうほうによってさだまった相続そうぞくぶん指定してい相続そうぞくぶんという。ただし、相続そうぞくじん第三者だいさんしゃ相続そうぞくぶん指定していについて遺留分いりゅうぶんかんする規定きてい違反いはんすることができない(902じょう1こう但書ただしがき)。相続そうぞくじん共同きょうどう相続そうぞくじんのうちの一人ひとりもしくはすうにん相続そうぞくぶんのみをさだめ、または第三者だいさんしゃさだめさせたときは、共同きょうどう相続そうぞくじん相続そうぞくぶん法定ほうてい相続そうぞくぶん規定きていによってさだまることになる(902じょう2こう)。

上記じょうきのように遺言ゆいごんにより相続そうぞくぶん指定してい指定してい委託いたくをした場合ばあいでも、消極しょうきょく財産ざいさん指定してい相続そうぞくぶんによらず法定ほうてい相続そうぞくぶんおうじて分割ぶんかつされるというせつ有力ゆうりょくである。これについて大審院だいしんいん決定けってい昭和しょうわ5ねん12月4にちは、「…金銭きんせん債務さいむのその可分かぶん債務さいむについては各自かくじ負担ふたん平等びょうどう割合わりあいにおいて債務さいむ負担ふたんするものにして…」とべている。(したがって消極しょうきょく財産ざいさん遺産いさん分割ぶんかつ対象たいしょうとならないとされる下級かきゅうしん判例はんれい福岡ふくおかだかけつ平成へいせい4・12・25ばんタ826・259)。平成へいせい21ねん03がつ24にち最高裁判所さいこうさいばんしょだいさんしょう法廷ほうてい判決はんけつ平成へいせい19(受)1548)は、はたろんではあるが「もっとも,上記じょうき遺言ゆいごんによる相続そうぞく債務さいむについての相続そうぞくぶん指定していは,相続そうぞく債務さいむ債権さいけんしゃ以下いか相続そうぞく債権さいけんしゃ」という。)の関与かんよなくされたものであるから,相続そうぞく債権さいけんしゃたいしてはその効力こうりょくおよばないものとするのが相当そうとうであり,かく相続そうぞくじんは,相続そうぞく債権さいけんしゃから法定ほうてい相続そうぞくぶんしたがった相続そうぞく債務さいむ履行りこうもとめられたときには,これにおうじなければならず,指定してい相続そうぞくぶんおうじて相続そうぞく債務さいむ承継しょうけいしたことを主張しゅちょうすることはできないが,相続そうぞく債権さいけんしゃほうから相続そうぞく債務さいむについての相続そうぞくぶん指定してい効力こうりょく承認しょうにんし,かく相続そうぞくじんたいし,指定してい相続そうぞくぶんおうじた相続そうぞく債務さいむ履行りこう請求せいきゅうすることはさまたげられないというべきである。」と判示はんじしており、大審院だいしんいん判例はんれい見解けんかい維持いじしているものとかんがえられる。この判例はんれいでは、指定してい相続そうぞくによって明示めいじまたは黙示もくしてき債務さいむ帰属きぞくさだめた場合ばあい債権さいけんしゃたいしては効力こうりょくおよばないが、相続そうぞくじん相互そうごあいだではその指定していどおりの効力こうりょくしょうじることを判示はんじしている。

ただし、国税こくぜい通則つうそくほうまたは地方ちほう税法ぜいほう適用てきよう準用じゅんようがある公租こうそ公課こうかについては、遺言ゆいごんによる指定してい指定してい委託いたくがあれば、指定してい相続そうぞくぶんによる承継しょうけい原則げんそくとなる(国税こくぜい通則つうそくほう5じょう2こう地方ちほう税法ぜいほう9じょう2こう民法みんぽう902じょうもちいることを明記めいきしている)。なお、公租こうそ公課こうかについては、承継しょうけいする財産ざいさん価額かがく承継しょうけい税額ぜいがくえるときは、その超過ちょうか部分ぶぶん限度げんど相続そうぞくじん連帯れんたいして納付のうふする義務ぎむう(国税こくぜい通則つうそくほう5じょう3こう地方ちほう税法ぜいほう9じょう3こう)。

法定ほうてい相続そうぞくぶん

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遺言ゆいごんによる相続そうぞくぶん指定していがない場合ばあい法定ほうてい相続そうぞくぶん900じょう)による。

前述ぜんじゅつのように、相続そうぞくじん血族けつぞくは、1.相続そうぞくじん、2.相続そうぞくじん直系ちょっけい尊属そんぞく親等しんとうことなるものあいだでは最近さいきんおやもの)、3.相続そうぞくじん兄弟きょうだい姉妹しまいじゅん相続そうぞくひととなり(889じょう1こう)、相続そうぞくじん配偶はいぐうしゃつね相続そうぞくじん相続そうぞくじん血族けつぞく相続そうぞくじんとなるべきものがあればそのものどう順位じゅんい)となる(890じょう)。

以上いじょう相続そうぞくじん範囲はんいにおいて相続そうぞくじんすうにんあるときは、その法定ほうてい相続そうぞくぶんは、つぎ各号かくごうさだめるところによる(900じょう)。

  1. およ配偶はいぐうしゃ相続そうぞくじんであるとき
    相続そうぞくぶんおよ配偶はいぐうしゃ相続そうぞくぶんはそれぞれ2ぶんの1である(900じょう1ごう)。すうにんあるときは、各自かくじ相続そうぞくぶんは、そうひとしいもの(均等きんとうぶん)とする(900じょう4ごう)。
  2. 配偶はいぐうしゃおよ直系ちょっけい尊属そんぞく相続そうぞくじんであるとき
    配偶はいぐうしゃ相続そうぞくぶんが3ぶんの2、直系ちょっけい尊属そんぞく相続そうぞくぶんが3ぶんの1である(900じょう2ごう)。直系ちょっけい尊属そんぞくすうにんあるときは、各自かくじ相続そうぞくぶんは、そうひとしいもの(均等きんとうぶん)とする(900じょう4ごう)。また、直系ちょっけい尊属そんぞく場合ばあい生存せいぞんするのみの相続そうぞくとなる。
  3. 配偶はいぐうしゃおよ兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくじんであるとき
    配偶はいぐうしゃ相続そうぞくぶんが4ぶんの3、兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくぶんが4ぶんの1(900じょう3ごう)。兄弟きょうだい姉妹しまいすうにんあるときは、各自かくじ相続そうぞくぶんは、そうひとしいもの(均等きんとうぶん)とするが、父母ちちはは一方いっぽうのみをおなじくする兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくぶんは、父母ちちはは双方そうほうおなじくする兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくぶんの2ぶんの1となる(900じょう4ごう)。

相続そうぞくじん配偶はいぐうしゃがいない場合ばあいにも、直系ちょっけい尊属そんぞくまた兄弟きょうだい姉妹しまいすうにんあるときは、各自かくじ相続そうぞくぶんは、そうひとしいものとするが、父母ちちはは一方いっぽうのみをおなじくする兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくぶんは、父母ちちはは双方そうほうおなじくする兄弟きょうだい姉妹しまい相続そうぞくぶんの2ぶんの1となる(900じょう4ごう)。

だいかさね相続そうぞくじん相続そうぞくぶんはその直系ちょっけい尊属そんぞくけるべきであったものとおなじであり、だいかさね相続そうぞくじんとなる直系ちょっけい卑属ひぞくすうにんあるときはその各自かくじ直系ちょっけい尊属そんぞくけるべきであった部分ぶぶんについて900じょう規定きていしたがってその相続そうぞくぶんさだめる(901じょう)。

なお、嫡出ちゃくしゅつ相続そうぞくぶんは900じょう4ごうにより嫡出ちゃくしゅつ相続そうぞくぶんの2ぶんの1と規定きていされていたが、こん外子そとこ相続そうぞく差別さべつ訴訟そしょうで2013ねん9がつ4にち最高さいこう裁判所さいばんしょこん外子そとこ嫡出ちゃくしゅつ)の相続そうぞくぶん違憲いけんであるとの判断はんだんくだした[10]ことをけ、2013ねん12月11にち民法みんぽう一部いちぶ改正かいせいにより900じょう4ごう削除さくじょされた。附則ふそくにおいて、改正かいせい規定きていについては2013ねん9がつ5にち以後いご開始かいしした相続そうぞくについて適用てきようするものとさだめられている。

順位じゅんい 相続そうぞくじん 相続そうぞくぶん遺留分いりゅうぶん
適用てきよう 法定ほうてい 配偶はいぐうしゃ 親族しんぞく 配偶はいぐうしゃ 親族しんぞく
1 だい1順位じゅんい ゆう 1/2(1/4) 1/2(1/4)
2 だい2順位じゅんい 直系ちょっけい尊属そんぞく 2/3(1/3) 1/3(1/6)
3 だい3順位じゅんい 兄弟きょうだい姉妹しまい 3/4(1/2) 1/4(
4   全部ぜんぶ(1/2) -
5 だい1順位じゅんい - 全部ぜんぶ(1/2)
6 だい2順位じゅんい 直系ちょっけい尊属そんぞく - 全部ぜんぶ(1/3)
7 だい3順位じゅんい 兄弟きょうだい姉妹しまい - 全部ぜんぶ

特別とくべつ受益じゅえきしゃ相続そうぞくぶん

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共同きょうどう相続そうぞく人中ひとなか相続そうぞくじんから特別とくべつ受益じゅえきけたものについては、相続そうぞくにおける実質じっしつてき公平こうへいはかるため、相当そうとうがく財産ざいさんについてもどしをおこなう(903じょう)。

特別とくべつ受益じゅえきにはつぎのようなものがある。

  1. 遺贈いぞう
  2. 婚姻こんいんのための贈与ぞうよ
  3. 養子ようし縁組えんぐみのための贈与ぞうよ
  4. 生計せいけい資本しほんとして贈与ぞうよ
  5. 学費がくひ援助えんじょ

寄与きよぶん

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共同きょうどう相続そうぞく人中ひとなか相続そうぞくじん財産ざいさん維持いじまたは増加ぞうかについて寄与きよをしたものについては、相続そうぞくにおける実質じっしつてき公平こうへいはかるため、相当そうとうがく財産ざいさん取得しゅとくさせる寄与きよぶん制度せいど904じょうの2)がもうけられている。これは1980ねん民法みんぽう改正かいせいもうけられたものである。

特別とくべつ寄与きよ

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2018ねん民法みんぽう改正かいせいにて、相続そうぞくじんのうち、相続そうぞくじん療養りょうよう介護かいご無償むしょうおこなったものについては、相続そうぞく財産ざいさん維持いじまたは増加ぞうか寄与きよしたものとして、それにおうじた金銭きんせん請求せいきゅうをすることができることとなっている(民法みんぽうだい1050じょう)。改正かいせいまえにおいて、このような貢献こうけんは、上記じょうき寄与きよぶんとしてあつかわれており、寄与きよぶんあらそいとしてももっとおお事例じれいであったが、家事かじ労働ろうどう評価ひょうかなど客観きゃっかんてき算定さんてい困難こんなん場合ばあいすくなくないことから、これらの事項じこうについての一連いちれん手続てつづきを、その寄与きよぶん独立どくりつしてさだめた。一般いっぱん寄与きよぶん同様どうよう相続そうぞく人間にんげん協議きょうぎ調ととのわなければ、家庭かてい裁判所さいばんしょにそのがく決定けっていもとめることができるが、一般いっぱん寄与きよぶんことなり、相続そうぞく開始かいし相続そうぞくじんったときから6ヶ月かげつ経過けいかまたは相続そうぞく開始かいしから1ねん経過けいかまでに請求せいきゅうする必要ひつようがある。

相続そうぞくぶん譲渡じょうと相続そうぞくぶんもどけん相続そうぞくぶん放棄ほうき

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共同きょうどう相続そうぞくじん一人ひとり遺産いさん分割ぶんかつまえにその相続そうぞくぶん第三者だいさんしゃ譲渡じょうとしたときは、共同きょうどう相続そうぞくじんはその価額かがくおよ費用ひよう償還しょうかんして、その相続そうぞくぶんゆずけることができる(905じょう1こう)。ただし、このもどけんは1ヶ月かげつ以内いない行使こうしする必要ひつようがある(905じょう2こう)。 また、相続そうぞくぶん放棄ほうき遺産いさん分割ぶんかつまえ財産ざいさん放棄ほうきすることの意思いし表示ひょうじであり、その相続そうぞくじん相続そうぞくぶん相続そうぞくじん法定ほうてい相続そうぞくぶん割合わりあい譲渡じょうとするという効果こうかつ。

遺産いさん分割ぶんかつ

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共同きょうどう相続そうぞく場合ばあいにおいて、相続そうぞくぶんおうじて遺産いさん分割ぶんかつし、かく相続そうぞくじん単独たんどく財産ざいさんにすること。

  • 遺産いさん分割ぶんかつ協議きょうぎまた審判しんぱんとう907じょう
  • 遺言ゆいごんによる分割ぶんかつ方法ほうほう指定してい908じょう
    相続そうぞくじんは、遺言ゆいごんで、遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほうさだめ、しくはこれをさだめることを第三者だいさんしゃ委託いたくし、また相続そうぞく開始かいしときから5ねんえない期間きかんさだめて、遺産いさん分割ぶんかつきんずることができる。
  • 遺産いさん分割ぶんかつ効力こうりょく909じょう
    遺産いさん分割ぶんかつは、相続そうぞく開始かいしときにさかのぼってその効力こうりょくしょうずる。ただし、第三者だいさんしゃ権利けんりがいすることはできない。
  • 相続そうぞく開始かいし認知にんちされたもの価額かがく支払しはらい請求せいきゅうけん910じょう

判例はんれいでは、遺産いさん分割ぶんかつにより不動産ふどうさん権利けんり取得しゅとくした相続そうぞくじんは、登記とうきなければ、分割ぶんかつ権利けんり取得しゅとくした第三者だいさんしゃたいし、対抗たいこうすることができない。

相続そうぞく承認しょうにんおよ放棄ほうき

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相続そうぞく相続そうぞくじん権利けんり義務ぎむ相続そうぞくじん承継しょうけいする効果こうかをもつものであるが、実際じっさい相続そうぞく承認しょうにんして権利けんり義務ぎむ承継しょうけいするか、あるいは、相続そうぞく放棄ほうきして権利けんり義務ぎむ承継しょうけい拒絶きょぜつするかはかく相続そうぞくじん意思いしゆだねられている。ただし、相続そうぞくじん921じょう規定きていされる事由じゆうおこなったときは後述こうじゅつ単純たんじゅん承認しょうにんをしたものとみなされる。

相続そうぞくじん相続そうぞくじん権利けんり義務ぎむ承継しょうけい受諾じゅだくすることを相続そうぞく承認しょうにんといい、権利けんり義務ぎむ承継しょうけい受諾じゅだくする範囲はんいにより単純たんじゅん承認しょうにん限定げんてい承認しょうにんけられる。相続そうぞくじん相続そうぞくじん権利けんり義務ぎむ承継しょうけい受諾じゅだくすることを相続そうぞく放棄ほうき相続そうぞく放棄ほうきという。

なお、じん相続そうぞく承認しょうにんしくは放棄ほうきまた遺産いさん分割ぶんかつをするには、そのじん同意どういなければならない(13じょう)。

熟慮じゅくりょ期間きかん

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相続そうぞく承認しょうにん放棄ほうきをすべき期間きかん熟慮じゅくりょ期間きかん)には制限せいげんがある。相続そうぞく承認しょうにん放棄ほうき自己じこのために相続そうぞく開始かいしがあったことをったときから3ヶ月かげつ以内いないにしなければならない(915じょう1こう本文ほんぶん)。ただし、この期間きかん利害りがい関係かんけいじん検察官けんさつかん請求せいきゅうにより家庭かてい裁判所さいばんしょ伸長しんちょうすることができる(915じょう1こう但書ただしがき)。「自己じこのために相続そうぞく開始かいしがあったことをったとき」とは、相続そうぞく開始かいし原因げんいんとなるべき事実じじつり、かつ、それによって自分じぶん相続そうぞくじんとなったことをったときをいう(だいけつ大正たいしょう15ねん8がつ3にちみんしゅう5かん679ぺーじ)。相続そうぞくじん相続そうぞく承認しょうにん放棄ほうきをするまで、その固有こゆう財産ざいさんにおけるのと同一どういつ注意ちゅういをもって、相続そうぞく財産ざいさん管理かんりしなければならない(918じょう1こう)。

なお、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいともな特例とくれいについては東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいともな相続そうぞく承認しょうにんまた放棄ほうきをすべき期間きかんかか民法みんぽう特例とくれいかんする法律ほうりつ参照さんしょう

相続そうぞく承認しょうにんおよ放棄ほうき態様たいよう

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単純たんじゅん承認しょうにん
単純たんじゅん承認しょうにん相続そうぞくにより相続そうぞくじん相続そうぞくじん権利けんり義務ぎむ無限むげん承継しょうけいするものである(920じょう以下いか)。なお、相続そうぞくじん921じょう規定きていされる事由じゆう法定ほうてい単純たんじゅん承認しょうにん事由じゆう)をおこなったときは単純たんじゅん承認しょうにんしたものとみなされる。
限定げんてい承認しょうにん
限定げんてい承認しょうにん相続そうぞくによって財産ざいさん限度げんど相続そうぞくじん債務さいむおよび遺贈いぞう弁済べんさいすることとするものである(922じょう以下いか)。共同きょうどう相続そうぞく場合ばあいには限定げんてい承認しょうにん共同きょうどう相続そうぞくじん全員ぜんいん共同きょうどうしてのみこれをすることができる(923じょう)。
相続そうぞく放棄ほうき
相続そうぞく放棄ほうきした場合ばあいには、その相続そうぞくかんしてはじめから相続そうぞくじんとならなかったものとみなされることになる(939じょう)。相続そうぞく放棄ほうき相続そうぞく財産ざいさん債務さいむ超過ちょうかである可能かのうせいたか場合ばあいや、一部いちぶ相続そうぞくじん相続そうぞく財産ざいさん集中しゅうちゅうさせたい場合ばあいなどにおこなわれる。相続そうぞく放棄ほうきする場合ばあいには相続そうぞくじん最後さいご住所じゅうしょ管轄かんかつする家庭かてい裁判所さいばんしょ申述もうしのべしなければならない(940じょう)。なお、相続そうぞく放棄ほうきだいかさね相続そうぞくだいかさね原因げんいんとはならない。

相続そうぞく承認しょうにんおよ放棄ほうき撤回てっかいおよ取消とりけ

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相続そうぞくじん相続そうぞく承認しょうにんまたは放棄ほうきをしたときは、以後いご915じょう期間きかんないであっても撤回てっかいできない(919じょう1こう)。ただし、民法みんぽう総則そうそくおよび親族しんぞくへんさだめられる取消とりけし原因げんいんがあれば919じょう3こうさだめられる一定いってい期間きかん取消とりけしをすることはできる(919じょう2こう・3こう)。この場合ばあい限定げんてい承認しょうにんまたは相続そうぞく放棄ほうき取消とりけしをしようとするもの家庭かてい裁判所さいばんしょ申述もうしのべしなければならない(919じょう4こう)。

財産ざいさん分離ぶんり

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相続そうぞく財産ざいさん相続そうぞくじん財産ざいさん混同こんどうしないように分離ぶんり管理かんり清算せいさんする手続てつづきのこと。財産ざいさん分離ぶんりには相続そうぞく債権さいけんしゃまたは受遺しゃ請求せいきゅうによるだい一種いっしゅ財産ざいさん分離ぶんり941じょう以下いか)と相続そうぞくじん債権さいけんしゃ請求せいきゅうによるだいしゅ財産ざいさん分離ぶんり950じょう)がある。財産ざいさん分離ぶんり941じょう以下いか規定きていされているものの、実際じっさいにはほとんど利用りようされていない。これは、相続そうぞく財産ざいさん相続そうぞくじん破産はさん原因げんいんがあれば破産はさん申立もうしたてが可能かのうであることによるとおもわれる。

相続そうぞくじん存在そんざい

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相続そうぞくじん存在そんざいあきらかでない場合ばあい相続そうぞく財産ざいさん相続そうぞく財産ざいさん法人ほうじんとなり(951じょう)、以下いか相続そうぞくじん存在そんざい確定かくてい手続てつづきがとられることになる。なお、遺言ゆいごんしゃにつき相続そうぞくじん存在そんざいであるが、その相続そうぞく財産ざいさん全部ぜんぶについて包括ほうかつ受遺しゃがいる場合ばあいには、その包括ほうかつ受遺しゃ相続そうぞく財産ざいさん帰属きぞくすることになるので相続そうぞくじん存在そんざい確定かくてい手続てつづきはとられない(さいはん平成へいせい9ねん9がつ12にちみんしゅう51かん8ごう3887ぺーじ参照さんしょう)。

  • 相続そうぞく財産ざいさん法人ほうじん成立せいりつ951じょう)・相続そうぞく財産ざいさん管理人かんりにん選任せんにんとその公告こうこく952じょう) - だいいち捜索そうさく期間きかん
    • 公告こうこく期間きかんは2ヶ月かげつ957じょう1こう前段ぜんだん)で、この公告こうこく期間きかんない相続そうぞくじんのあることがあきらかにならなかったときはつぎ捜索そうさく段階だんかいうつる。
  • 相続そうぞく債権さいけんしゃおよび受遺しゃたいする請求せいきゅうさるをすべきむね公告こうこく957じょう1こう) - だい捜索そうさく期間きかん
    • 公告こうこく期間きかんは2ヶ月かげつ以上いじょう期間きかん設定せっていされ(957じょう1こう後段こうだん)、以後いご債権さいけんしゃとうとの清算せいさん手続てつづきはいる。この公告こうこく期間きかんない相続そうぞくじんのあることがあきらかにならなかったときはつぎ捜索そうさく段階だんかいうつる。
  • 相続そうぞくじん捜索そうさく公告こうこく958じょう前段ぜんだん) - だいさん捜索そうさく期間きかん
    • 公告こうこく期間きかんは6ヶ月かげつ以上いじょう期間きかん設定せっていされる(952じょう2こう後段こうだん)。
    • 相続そうぞく財産ざいさん法人ほうじん成立せいりつから相続そうぞくじん存在そんざい確定かくていまでの期間きかん相続そうぞくじんのあることがあきらかになったときは相続そうぞく財産ざいさん法人ほうじん成立せいりつしなかったものとみなされる(955じょう本文ほんぶん)。ただし、相続そうぞく財産ざいさん清算せいさんじんがその権限けんげんないでした行為こうい効力こうりょく影響えいきょうしない(955じょう但書ただしがき
  • 相続そうぞくじん捜索そうさく公告こうこく期間きかん満了まんりょう相続そうぞくじん存在そんざい確定かくていじょ斥(958じょうにより相続そうぞくじん、また、相続そうぞく財産ざいさん清算せいさんじんれなかった相続そうぞく債権さいけんしゃ・受遺しゃ権利けんり行使こうし不可ふか
  • 特別とくべつ縁故えんこしゃ相続そうぞくじん生計せいけいおなじくしていたもの相続そうぞくじん療養りょうよう看護かんごつとめたものなど)にたいする相続そうぞく財産ざいさん分与ぶんよ
    • 特別とくべつ縁故えんこしゃ相続そうぞく財産ざいさん分与ぶんよ請求せいきゅう相続そうぞくじん存在そんざい確定かくてい3ヶ月かげつ以内いないになされることが必要ひつよう958じょうの2)。
  • 残余ざんよ財産ざいさん国庫こっこへの帰属きぞく959じょう

しょ外国がいこくにおける相続そうぞく

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

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イギリスではみとめられていた遺産いさん相続そうぞくじん限定げんていが、世論せろん批判ひはんけ、法律ほうりつ禁止きんしされている。2だいさきまでせない信託しんたくにするという脱法だつほう行為こういがボストンでおこなわれている。[11]

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく

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中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでの相続そうぞくについては中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく継承けいしょうほうさだめられており、つぎのような特徴とくちょうがある。

  • 相続そうぞく回復かいふく請求せいきゅうけん短期たんき時効じこう期間きかんが2ねんである(中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく継承けいしょうほう8じょう)。
  • 配偶はいぐうしゃ相続そうぞく順位じゅんいについて、父母ちちはは同列どうれつだいいち順位じゅんいとされている(中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく継承けいしょうほう10じょう1こう)。
  • 嫡出ちゃくしゅつ嫡出ちゃくしゅつ相続そうぞくにおける地位ちいひとしい(中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく継承けいしょうほう10じょう3こう)。
  • 配偶はいぐうしゃ一方いっぽうくなった配偶はいぐうしゃ父母ちちははたいしてしゅたる扶養ふよう義務ぎむくした場合ばあいには、だいいち順位じゅんい相続そうぞくじんとなる(中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく継承けいしょうほう12じょう)。

なお、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでの相続そうぞく制度せいど扶養ふよう制度せいど密接みっせつ関連かんれんしたものとなっており、扶養ふようとの関係かんけいにより相続そうぞくじん相続そうぞくぶん変更へんこうになる場合ばあいがある[12]

相続そうぞくかかわる職業しょくぎょう

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せんもん国家こっか資格しかくしゃとして公証こうしょうじん司法しほう書士しょし弁護士べんごし税理士ぜいりしなどがある。公証こうしょうじん公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん作成さくせいたずさわり[13]司法しほう書士しょし相続そうぞく登記とうき相続そうぞく起因きいんする登記とうき手続てつづき法定ほうてい相続そうぞく証明しょうめい情報じょうほう申請しんせい手続てつづき遺産いさん承継しょうけい業務ぎょうむ裁判所さいばんしょ提出ていしゅつ書類作成しょるいさくせいおよびこれら手続てつづきに添付てんぷする書類しょるい作成さくせい戸籍こせき調査ちょうさとう相続そうぞく事務じむ[14]を、弁護士べんごし相続そうぞく事務じむ全般ぜんぱんほか紛争ふんそう事案じあんにつき唯一ゆいいつ法律ほうりつじょう関与かんよでき[15]税理士ぜいりし相続そうぞくぜい申告しんこく手続てつづきをおこなう。[16]

手続てつづ代行だいこうサービス

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手続てつづ代行だいこうサービスをおこな業者ぎょうしゃがある(銀行ぎんこうなど)。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 法学ほうがくてきにはつぎのようにも表現ひょうげんされる。「自然人しぜんじん相続そうぞくじん)の財産ざいさんほううえ地位ちいを、そのもの死後しご法的ほうてきまたは本人ほんにん最終さいしゅう意志いし(遺言ゆいごん)によって相続そうぞくじん承継しょうけいさせること」。北川きたがわ善太郎ぜんたろう親族しんぞく相続そうぞく有斐閣ゆうひかく,1994ねん

出典しゅってん

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  1. ^ a b 前田まえだ, 本山もとやま & 浦野うらの 2017, p. 230
  2. ^ Cahn 1936
  3. ^ Twigg & Grand 1998
  4. ^ Connell-Thouez 1997
  5. ^ Bowles & Gintis 2002
  6. ^ Miller 2006
  7. ^ Piketty 2014
  8. ^ Gates 2014
  9. ^ MSU 2015
  10. ^ こん外子そとこ相続そうぞく差別さべつ違憲いけん 最高裁さいこうさいだい法廷ほうてい日本経済新聞にほんけいざいしんぶん 2013ねん9月4にち
  11. ^ en:Ferdinand Lundberg 原題げんだいThe Rich and the Super-Rich 邦題ほうだい富豪ふごうだい富豪ふごう上巻じょうかん 早川書房はやかわしょぼう 1974ねん p.269.
  12. ^ 加藤かとう美穂子みほこ中国ちゅうごく家族かぞくほう婚姻こんいん養子ようし相続そうぞく問答もんどう解説かいせつ』2008ねん(460ぺーじ
  13. ^ 民法みんぽうだい967じょう民法みんぽうだい969じょう公証こうしょうじんほうだい1じょうだい2ごう
  14. ^ 司法しほう書士しょしほうだい3じょう司法しほう書士しょしほうだい29じょう司法しほう書士しょしほう施行しこう規則きそくだい31じょう
  15. ^ 弁護士べんごしほうだい3じょう
  16. ^ 税理士ぜいりしほうだい2じょう

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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