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死罪 (江戸時代) - Wikipedia
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死罪しざい (江戸えど時代じだい)

江戸えど時代じだいに庶民しょみんに科かされていた6種類しゅるいの死刑しけいの一ひとつ

死罪しざい（しざい）とは、江戸えど時代じだいに庶民しょみんに科かされていた6種類しゅるいある死刑しけいのうちの一ひとつ。斬首ざんしゅ刑けいの一種いっしゅで、処刑しょけい後ご死骸しがいを試ためし斬ぎりにする刑罰けいばつである。付加ふか刑けいとして財産ざいさんが没収ぼっしゅうされ、死体したいの埋葬まいそうや弔ちょういも許ゆるされなかった。罪状ざいじょうが重おもい場合ばあいは引廻まわしが付加ふかされることもあった[1]。

死罪しざいの執行しっこう（『古事ふるごと類るい苑えん』）。

概要がいよう

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公事こうじ方かた御ご定じょう書しょの規定きていでは追つい落[2]、土蔵どぞうを破やぶる盗賊とうぞく、人妻ひとづまとの密通みっつう、十じゅう両りょう以上いじょうの窃盗せっとうなどの犯罪はんざいに対たいする刑罰けいばつとなっている[3]。それに対たいし、戸とが開ひらいている家いえへの空あき巣すやスリは、被害ひがい者しゃにも落おち度どがあることを理由りゆうに、敲・入いれ墨ずみという軽かるい刑けいとなった。ただし、累犯るいはんで入いれ墨ずみ刑けいを複ふく数すう回かい受うけた場合ばあい、3度目どめの犯行はんこうで死罪しざいとなった[3]。十両じゅうりょう以上いじょうの窃盗せっとうで死罪しざいは当時とうじから重おもすぎるととみなされたためか、特とくに犯人はんにんが奉公人ほうこうにんなどの顔見知かおみしりだった場合ばあい、被害ひがい額がくを9両りょう3分ふんなどと過少かしょうに届とどけ出でて、死罪しざいを免まぬかれさせることが珍めずらしくなかった[4]。

重じゅう追放ついほう（田畑たはた・家屋かおく敷じき・家財かざい没収ぼっしゅうの上うえ、武蔵むさし、山城やましろ等ひとしの十じゅう五ごか国こく及および東海道とうかいどう筋すじ、木曽きそ路ろ筋すじへの立たち入いり禁止きんし）以上いじょうの重おもい刑罰けいばつは町奉行まちぶぎょうだけで出だすことはできず、老中ろうじゅうに上申じょうしんし、採決さいけつを待またねばならず[5]更さらには将軍しょうぐんの最終さいしゅう決裁けっさいを経へなければ確定かくていはできない[6]。

もとは小塚原こづかはら・鈴ヶ森すずがもりの刑場けいじょうで処刑しょけいを行おこなったが、のちに伝馬てんま町まち牢ろう屋敷やしきの中なかで処刑しょけいを行おこなうようになった[7]。受刑じゅけい者しゃは半紙はんしの目隠めかくしをして、非人ひにん3人にんによって血ち溜だまり穴あなという地面じめんに空あけられた穴あなの前まえに連行れんこうされて斬首ざんしゅされた[8][9]。首くびを刎ねるのは町まち同心どうしんの役目やくめで刀かたな研とぎ代だいとして金かね2分ぶんを与あたえられる習ならわしだったが、試ためし切ぎりを本来ほんらいの役目やくめとする山田やまだ浅あさ右みぎ衛門えもんが頼たのまれて行おこなうこともあった[10][11]。死骸しがいは葬ほうむることが禁きんじられていたので、俵たわらに入いれて本所ほんじょ回向えこう院いんへ運はこんで埋うめた[12]。

妊娠にんしんしている女性じょせいを死罪しざいに処しょする場合ばあいは、出産しゅっさん後ごに処刑しょけいすることとなっていた[13][11]。

同おなじく江戸えど幕府ばくふ法ほうにおける打うち首くびによる処刑しょけいとしては、獄門ごくもん・下手人げしゅにん・斬罪ざんざいが存在そんざいするが、獄門ごくもんは処刑しょけい後ご晒さらし首くびにする、死罪しざいよりも重おもい刑けいにあたる。斬罪ざんざいは庶民しょみんではなく武士ぶしに科かされる刑けいで、下手人げしゅにん・斬罪ざんざいでは死骸しがいを試ためし切ぎりに用もちいることもなかった[14]。

また、斬首ざんしゅ刑けい自体じたいは1882年ねん（明治めいじ15年ねん）1月がつ1日にちに施行しこうされた旧きゅう・刑法けいほうにより廃止はいしされるまで残のこる。

斬首ざんしゅが最後さいごに行おこなわれたのは、少すくなくとも当時とうじの法ほうに適法てきほうであった状態じょうたいで山田やまだ浅あさ右みぎ衛門えもんによる執行しっこうの場合ばあいは、1881年ねん（明治めいじ14年ねん）7月がつ27日にちに市ヶ谷いちがや監獄かんごくにて強盗ごうとう目的もくてきで一家いっか4人にんを殺害さつがいした岩尾いわお竹次郎たけじろう、川口かわぐち国蔵くにぞうの2人ふたりの死刑しけい執行しっこうである[15]。また、府県ふけん史料しりょうで確認かくにんできる限かぎり、日本にっぽん法制ほうせい史上しじょう最後さいごの斬首ざんしゅ刑けい(少すくなくとも当時とうじの法ほうに適法てきほうである)の判決はんけつが下くだされたのは、鳥取とっとり県けんでこの年としの12月30日にちに下くだされた徳田とくた徹夫てつお（罪状ざいじょう：徳田とくたを含ふくむ6人組にんぐみにより1880年ねん（明治めいじ13年ねん）12月21日にちから翌年よくねん1月がつ21日にちの約やく1か月げつの間あいだに4件けんの侵入しんにゅう強盗ごうとうを起おこし、4件けん目めの侵入しんにゅう強盗ごうとうの際さい、家主やぬしの母ははを殺害さつがい）である[16]。更さらに、判決はんけつでは除じょ族ぞく（士族しぞくの身分みぶんを剥奪はくだつすること）も付加ふかされている。

そして、事実じじつであるか定さだかではないが、旧きゅう・刑法けいほう施行しこう後ごの1886年ねん（明治めいじ19年ねん）12月に「青森あおもりの亭主ていしゅ殺ごろし」事件じけんの加害かがい者しゃである小山内おさないスミと小野おの長之助ちょうのすけの公開こうかい斬首ざんしゅ刑けいが青森あおもり県けん弘前ひろさき市しの青森あおもり監獄かんごく前まえで行おこなわれたのが最後さいごという説せつがあり、事実じじつであればこの死刑しけい執行しっこうは事実じじつ上じょうの斬首ざんしゅ刑けいの最後さいごであると共ともに、官憲かんけんによる日本にっぽん国内こくないにおける一般いっぱん刑法けいほう犯はんに対たいする最後さいごの非合法ひごうほう（当時とうじの旧きゅう・刑法けいほうでは、非公開ひこうかい絞首刑こうしゅけいのみ）の死刑しけい執行しっこうかつ公開こうかい処刑しょけいとなる[17]。

死罪しざいによる死刑しけい執行しっこう数すう

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「日本にっぽんにおける死刑しけい囚しゅう#日本にっぽんにおける死刑しけい囚しゅうの確定かくていと執行しっこうの推移すいい」も参照さんしょう

少すくなくとも記録きろくのある江戸えど時代じだい後期こうき以降いこうの天領てんりょうに関かんしては、死罪しざいは6種類しゅるいある死刑しけいのうち最もっとも多おおく執行しっこうされている。期間きかんと場所ばしょが限定げんていされるが、1862年ねん(文久ぶんきゅう2年ねん)～1865年ねん(慶応けいおう元年がんねん)にかけて江戸えどで15歳さい以上いじょうの男性だんせい庶民しょみん（武士ぶし・公家くげ・僧侶そうりょ神職しんしょく・被ひ差別さべつ部落ぶらく民みんを除のぞく）が執行しっこうされた死刑しけい（427件けん）の内うち、約やく3分ぶんの2（285件けん）が死罪しざいであった。更さらに、この死罪しざいで執行しっこうされた者ものの内うち、約やく6人にんに1人ひとりが市中しちゅう引ひき回まわしが付加ふかされている。そして、1781年ねん(天明てんめい2年ねん)～1785年ねん(天明てんめい6年ねん)にかけて、大坂おおさか町奉行まちぶぎょうによって執行しっこうされた死刑しけい（230件けん）の内うち、江戸えどと同おなじく約やく3分ぶんの2（150件けん）が死罪しざいであった。更さらに、この死罪しざいで執行しっこうされた者ものの内うち、約やく8人にんに1人ひとりが市中しちゅう引ひき回まわしが付加ふかされている[18]。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 石井いしい 1964, p. 30.
  2. ^ 追おい剥はぎと異ことなり直接ちょくせつ被害ひがい者しゃに手てをかけずに、相手あいてを脅おどしたり追おいかけたりし、逃にげる相手あいてが落おとした金品きんぴんを盗ぬすめる行為こうい。
  3. ^ a b 大久保おおくぼ, 治男はるお『江戸えどの犯罪はんざいと刑罰けいばつ―残虐ざんぎゃく・江戸えど犯科はんか帳ちょう十じゅう話わ―』高文たかふみ堂どう出版しゅっぱん社しゃ、1988年ねん1月がつ15日にち、61-62頁ぺーじ。ISBN 4-7707-0234-5。 
  4. ^ 氏家うじいえ, 幹人みきひと『江戸えど時代じだいの罪つみと罰ばち』株式会社かぶしきがいしゃ草そう思おもえ社しゃ、2015年ねん11月25日にち、296-297頁ぺーじ。ISBN 978-4-7942-2168-1。 
  5. ^ 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい. “江戸えど時代じだいの奉行ぶぎょうは慎重しんちょうだった？ 当時とうじの貴重きちょうな「裁判さいばん記録きろく」発見はっけん | NHK”. NHKニュース. 2022年ねん5月がつ1日にち閲覧えつらん。
  6. ^ 山本やまもと『江戸えどの組織そしき人じん』P82-84
  7. ^ 石井いしい 1964, p. 38.
  8. ^ 石井いしい 1964, pp. 35–36.
  9. ^ 刑務けいむ協会きょうかい 1943, p. 656.
  10. ^ 石井いしい 1964, pp. 39–40.
  11. ^ a b 刑務けいむ協会きょうかい 1943, p. 660.
  12. ^ 石井いしい 1964, p. 37.
  13. ^ 石井いしい 1964, p. 41.
  14. ^ 刑務けいむ協会きょうかい 1943, p. 655.
  15. ^ 山下やました 恒夫つねお『明治めいじ東京とうきょう犯罪はんざい暦れき 明治めいじ元年がんねん～明治めいじ23年ねん』東京法経学院出版とうきょうほうけいがくいんしゅっぱん、1988年ねん4月がつ1日にち、148 - 155頁ぺーじ。ISBN 4-8089-4438-3。 NCID BN02158260。 
  16. ^ 鳥取とっとり県けん (1881). 鳥取とっとり県けん史し（鳥取とっとり県けん歴史れきし）　政治せいじ部ぶ（明治めいじ14年ねん）(27-32コマ) (JPEG,PDF) (Report). 国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん. 2021年ねん10月がつ17日にち閲覧えつらん。
  17. ^ 手塚てづか 豊ゆたか『刑罰けいばつと国家こっか権力けんりょく　 国家こっか的てき刑罰けいばつ権けんと非ひ国家こっか的てき刑罰けいばつ権けん――明治めいじ前期ぜんきの場合ばあいに関かんする一いち未定稿みていこう』法制ほうせい史し学会がっかい、1960年ねん4月がつ、182 - 185頁ぺーじ。doi:10.11501/2527269。 NCID BN0366777X。 
  18. ^ 平松ひらまつ義郎よしお『近世きんせい刑事けいじ訴訟そしょう法ほうの研究けんきゅう』創そう文ぶん社しゃ、1960年ねん1月がつ1日にち、1056-1069頁ぺーじ。doi:10.11501/3033456。ISBN 4423740117。 NCID BN02799356。 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 石井いしい, 良助りょうすけ『江戸えどの刑罰けいばつ』（2版はん）中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ〉、1964年ねん3月がつ15日にち。 
  • 刑務けいむ協会きょうかい 編へん『日本にっぽん近世きんせい行刑ぎょうけい史し稿こう』 上じょう、刑務けいむ協会きょうかい、1943年ねん7月がつ5日にち。doi:10.11501/1459304。 (要よう登録とうろく)

関連かんれん項目こうもく

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