水みずの子こどもたち

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『水みずの子こどもたち』（みずのこどもたち、The Water-Babies, A Fairy Tale for a Land Baby、原題げんだいの直訳ちょくやくは「水みずの赤あかちゃんたち。陸りくの赤あかちゃんのためのおとぎ話ばなし」）はイギリスの牧師ぼくしチャールズ・キングスレーによる子こども向むけのおとぎ話ばなし・ファンタジー小説しょうせつ。19世紀せいきの児童じどう文学ぶんがくで最もっとも知しられている作品さくひんの一ひとつである^[1]。

1862年ねんから1863年ねんに『マクミラン』誌しに連載れんさいされ、1863年ねんに出版しゅっぱんされた。著者ちょしゃの友人ゆうじんのチャールズ・ダーウィンの『種たねの起源きげん』を擁護ようごするための笑わらい話ばなしの側面そくめんを持もつ。イギリスで非常ひじょうに人気にんきがあり、何なん十じゅう年ねんもの間あいだ、英国えいこく児童じどう文学ぶんがくの主力しゅりょくだった。が、アイルランド人じん、ユダヤ人じん、アメリカ人じん、貧乏人びんぼうにんに対たいする偏見へんけん（当時とうじは普通ふつうだった）をふくむため、流行りゅうこうらなくなった。

あらまし

主人公しゅじんこうは煤すすだらけの煙突えんとつ掃除そうじの少年しょうねん・トム。施工しこう先さきでエリーという名前なまえの上流じょうりゅう階級かいきゅうの美少女びしょうじょに遭遇そうぐうし、彼女かのじょの家いえから追おい払はらわれ、川かわに落おちる。そこで彼かれは溺おぼれ、「水みずの赤あかちゃん」に変身へんしんする。そして、トビケラが彼かれの道徳どうとく教育きょういくを始はじめる。

物語ものがたりのテーマはキリスト教きりすときょうの「償還しょうかん」、貧乏人びんぼうにんへのイギリス国家こっかの仕打しうち、児童じどう労働ろうどうなど。

トムは冒険ぼうけんし、自分じぶん自身じしんが道徳どうとく的てきな生いき物ものであることを証明しょうめいし、聖せいブレンダンの島しま（英語えいご版ばん）の他ほかの水みずの赤あかちゃんのコミュニティーで楽たのしむ。

彼かれの新あたらしい世界せかいの主要しゅような精神せいしん的てき指導しどう者しゃは、妖精ようせいドゥアズユードビダンバイ（Doasyouwouldbedoneby、されたいようになさい）さん、夫人ふじんビダンバイアズユディド（Bedonebyasyoudid、あんたがやったようにされろ）さん、そしてマザー・ケアリー（英語えいご版ばん）（Mother Carey）である（上うえ沢さわ謙二けんじの訳わけでは妖精ようせいと夫人ふじんが「報むくいの女神めがみ」、マザー・ケアリーが「親切しんせつの女神めがみ」）。

トムは、溺おぼれなかったエリーとのデートを週しゅうに一いち度ど許可きょかされる。

トムの主人しゅじんで煙突えんとつ掃除そうじの親方おやかたグライムズも密漁みつりょうの最中さいちゅうに溺おぼれる。

最後さいごの冒険ぼうけんでトムは、悪行あくぎょうのために処罰しょばつされている人ひとを助たすけるために、世界せかいの果はてまで旅たびをする。

トムはグライムズを悔くい改あらためさせようとし、グライムズは、最終さいしゅう的てきな苦行くぎょうをうまくやれたら2度目どめのチャンスが与あたえられることになった。

億劫おっくうでも正ただしいことならやる意思いしを示しめしたことでトムは人間にんげんの姿すがたに戻もどり、鉄道てつどう・蒸気じょうきエンジン・電気でんき電信でんしん・ライフル銃じゅうを設計せっけいする科学かがく者しゃになる。

彼かれはエリーと再会さいかいする。もっとも、（おとぎ話ばなしの体裁ていさいに従したがうなら）彼かれらは結婚けっこんはしないそうだが。なぜなら二に人にんは王子おうじ様さまでもお姫様ひめさまでもないからでしょう。

解釈かいしゃく

ヴィクトリア朝あさ時代じだいの小説しょうせつのスタイルを持もち、教訓きょうくん的てきな道徳どうとく寓話ぐうわである。背景はいけいには当時とうじのイギリスの荒廃こうはいした社会しゃかい情勢じょうせいがあり、冷水れいすいこそが不潔ふけつでみすぼらしい子供こどもを洗あらい鍛きたえ、模範もはん的てきな市民しみんに変かえるというヴィクトリア朝あさ時代じだいの信念しんねんがある^[1]。主人公しゅじんこうのトムは、死しんで水みずの子ことして生うまれ変かわり、初はじめて「苦難くなんという冷つめたい水みず」を受うけ入いれることのできる人間にんげんに再生さいせいする^[1]。作者さくしゃであるキングスレーは牧師ぼくしであり、公衆こうしゅう衛生えいせいの改革かいかくに熱心ねっしんに取とり組くんでいた^[1]。

キングスレーは、当時とうじの一般いっぱん的てきな偏見へんけんの多おおくをこの作品さくひんで表現ひょうげんしており、アメリカ人じん、ユダヤ人じん、黒人こくじん、カトリック教徒きょうと、特とくにアイリッシュに否定ひてい的てき・侮辱ぶじょく的てきな言葉ことばが含ふくまれる^[2]^[3]^[4]^[5]^[6]^[7]。これらの表現ひょうげんのため、時代じだいが下くだると徐々じょじょに人気にんきは下火したびになっていった。

メディア展開てんかい

この本ほんは、1978年ねんにアニメーション映画えいが化か (The Water Babies) された。声優せいゆうはジェームズ・メイソン、バーナード・クリビンズとビリー・ホワイトローがつとめた。映画えいがのストーリーは、キラーシャークやクラーケンを含ふくむ新あたらしいサブ・プロットを持もつ。

また、ミュージカル劇場げきじょう版ばんにも、1902年ねんにロンドンでなった。タイトルは「妖精ようせいの遊あそび」で、音楽おんがく担当たんとうはアルフレッド・セリエ。

2003年ねん、ジェレミー・サムズ監督かんとく、ルイーズ・ゴールド主演しゅえん、ジョー・マクギャン、キャサリン・オシェイ、ニール・マクダーモット出演しゅつえんで劇場げきじょう上演じょうえんされた。

ラジオ・ドラマ・シリーズ（BBCオーディオブック社しゃ、1998年ねん）にもなった。

ポール・ファーリー脚本きゃくほん、エマ・ハーディング監督かんとくでBBCラジオ4で2013年ねんに放送ほうそうされたものは、ナイジェリアから人身じんしん売買ばいばいされたトミーが主人公しゅじんこうになり、新あたらしい時代じだい用ように翻案ほんあんされた。

アニメーション作品さくひん

日本にっぽんでは、1980年代ねんだいに、学研がっけんのアニメーション作品さくひん「いたずらっ子こトム」が放送ほうそうされたことがある。

大衆たいしゅう文化ぶんかへの影響えいきょう

アメリカの作曲さっきょく家かウェイン・ショーターの子こども時代じだいからのお気きに入いりであり、評伝ひょうでん『フットプリンツ』（p14）によると、彼かれが初はじめて読よんだ長編ちょうへんが『水みずの子こどもたち』であり、この物語ものがたりを通とおし、彼かれは「黄泉よみの国くに」に興味きょうみを持もった。

1960年代ねんだいにショーターは「ウォーター・ベイビーズ」という曲きょくを作曲さっきょくし、マイルス・デイビスの同名どうめいアルバム（全曲ぜんきょくショーター作曲さっきょく）のタイトル・トラックになった。

日本語にほんご訳やく

水みずの子こどもたち<上うえ><下した>（偕成社かいせいしゃ文庫ぶんこ）チャールズ・キングズリー、芹生せりょう一いち翻訳ほんやく（1996年ねん6月がつ）
水みずの子こ - 陸りくの子このためのおとぎばなし（岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ）キングスレイ作さく、阿部あべ知二ともじ訳わけ、脇田わきた和かず絵え（1978年ねん9月がつ）絶版ぜっぱん
水みずの子こトム（小学館しょうがくかん）キングスレイ作さく、宮脇みやわき紀雄としお編へん、若菜わかな珪挿絵さしえ安井やすいこうじ（1963年ねん）絶版ぜっぱん
水みずの国くにの子こどもたち（偕成社かいせいしゃ　児童じどう名作めいさく全集ぜんしゅう第だい28巻かん）キングスレー作さく、上うえ沢さわ謙二けんじ訳わけ（1956年ねん）絶版ぜっぱん

参照さんしょう

^ ^a ^b ^c ^d キャスリン・アシェンバーグ「「苦難くなんという冷つめたい水みず」－『水すいの子こ』」『図説ずせつ不潔ふけつの歴史れきし』鎌田かまた彷月訳やく、原はら書房しょぼう、2008年ねん
^ When Tom has "everything that he could want or wish," the reader is warned that sometimes this does bad things to people "Indeed, it sometimes makes them naughty, as it has made the people in America." Murderous crows that do whatever they like are described as being like "American citizens of the new school."
^ Jews are referred to twice in the text, first as archetypal rich people ("as rich as a Jew"), and then as a joking reference to dishonest merchants who sell fake religious icons – "young ladies walk about with lockets of Charles the First's hair (or of somebody else's, when the Jews' genuine stock is used up)".
^ The Powwow man is said to have "yelled, shouted, raved, roared, stamped, and danced corrobory like any black fellow," and a seal is described as looking like a "fat old greasy negro."
^ "Popes" are listed among Measles, Famines, Despots, and other "children of the four great bogies."
^ Ugly people are described as "like the poor Paddies who eat potatoes"; an extended passage discusses St. Brandan among the Irish who liked "to brew potheen, and dance the pater o'pee, and knock each other over the head with shillelaghs, and shoot each other from behind turf-dykes, and steal each other's cattle, and burn each other's homes." A character Dennis lies and says whatever he thinks others want to hear because "he is a poor Paddy, and knows no better." The statement that Irishmen always lie is used to explain why "poor ould Ireland does not prosper like England and Scotland."
^ Sandner, David (2004). Fantastic Literature: A Critical Reader. Greenwood Publishing Group. p. 328. ISBN 0-275-98053-7