(Translated by https://www.hiragana.jp/)
権利能力 - Wikipedia

権利けんり能力のうりょく

私法しほうじょう権利けんり義務ぎむ帰属きぞく主体しゅたいとなり資格しかく
法人ほうじんかくから転送てんそう

権利けんり能力のうりょく(けんりのうりょく)とは、ドイツ民法みんぽうがくやその影響えいきょうけた民法みんぽうがく日本にっぽん民法みんぽうがくふくむ)において、私法しほううえ権利けんり義務ぎむ帰属きぞく主体しゅたいとなり資格しかくをいう。ドイツの「Rechtsfähigkeit」の訳語やくごである(「権利けんり能力のうりょくがある」は「rechtsfähig」)。

フランス民法みんぽうにおける「私権しけん享有きょうゆう」に相当そうとうする概念がいねんであり、日本にっぽん民法みんぽう3じょうは「権利けんり能力のうりょく」のかたりもちいずにこの表現ひょうげんによっている(民法みんぽうだい2しょうだい1せつふしめいもかつては「私権しけん享有きょうゆう」であったが、現代げんだいさいに「権利けんり能力のうりょく」にあらためられた)。すぐれて近代きんだいてき概念がいねんであり、身分みぶんによって享有きょうゆうしうる私法しほうじょう権利けんり義務ぎむ差異さいのある中世ちゅうせいてき世界せかいかん打破だはしたてん意味いみがある。

以下いか日本にっぽんほうにおける権利けんり能力のうりょくについて解説かいせつする。

権利けんり能力のうりょく主体しゅたいとしての「ひと

編集へんしゅう

権利けんり能力のうりょくゆうする主体しゅたいこうがくじょうひと」とばれ、自然人しぜんじん法人ほうじん分類ぶんるいされる。すなわち、権利けんり能力のうりょくゆうするということは法的ほうてき意義いぎにおいて人格じんかくゆうするということであり、したがって、権利けんり能力のうりょく同義語どうぎごとして法人ほうじんかく(ほうじんかく、Rechtspersönlichkeit)という用語ようごもちいられることがある。

ただし、法人ほうじんかくゆうしていても、特定とくてい権利けんりとの関係かんけいでは特別とくべつ権利けんり能力のうりょくゆうしない場合ばあい外国がいこくじん外国がいこく法人ほうじんについて権利けんり能力のうりょく制限せいげんされる場合ばあいなど)があるてんには留意りゅういようする。また、法人ほうじんかくゆうしていないが、特定とくてい権利けんりとの関係かんけいでは特別とくべつ権利けんり能力のうりょくゆうする場合ばあいもある(胎児たいじ)。

自然人しぜんじん権利けんり能力のうりょく

編集へんしゅう

自然人しぜんじんはすべて権利けんり能力のうりょくゆうし、自然人しぜんじんでないものは法人ほうじんのぞいて権利けんり能力のうりょくゆうしない。このことは歴史れきしてきにはまった一般いっぱん認識にんしきではないが、日本にっぽん民法みんぽうにおいてはとく明示めいじてき規定きていいていない。

権利けんり能力のうりょく始期しき

編集へんしゅう

自然人しぜんじん出生しゅっしょうにより権利けんり能力のうりょくみとめられる(民法みんぽうだい3じょう1こう)。「出生しゅっしょう」の時期じきについて学説がくせつかれているが、民法みんぽうじょうの「出生しゅっしょう」については、その時期じき明確めいかく判断はんだんできることから胎児たいじ母体ぼたいから全部ぜんぶ露出ろしゅつすることをいうとする全部ぜんぶ露出ろしゅつせつ通説つうせつである[1]自然人しぜんじんにおいては出生しゅっしょうにより当然とうぜん権利けんり能力のうりょくみとめられるのであって(近代きんだいほう権利けんり能力のうりょく平等びょうどう原則げんそく)、戸籍こせきほううえ出生しゅっしょう届出とどけで有無うむ権利けんり能力のうりょく取得しゅとく影響えいきょうしない。また、自然人しぜんじん主体しゅたいとなり権利けんり義務ぎむ範囲はんいには原則げんそくとして制限せいげんはない。

胎児たいじ権利けんり能力のうりょく

編集へんしゅう

胎児たいじについては、不法ふほう行為こういによる損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう相続そうぞく遺贈いぞうについて、「すでまれたものとみなす」(民法みんぽうだい721じょう民法みんぽうだい886じょう民法みんぽうだい965じょう)ものとされ権利けんり能力のうりょくみとめられる。ただし、この「すでまれたものとみなす」の解釈かいしゃくについて学説がくせつ対立たいりつしており、従来じゅうらい通説つうせつ判例はんれい[2]胎児たいじ出生しゅっしょうまでは権利けんり能力のうりょくみとめられないものの、胎児たいじきてまれてきたことを条件じょうけんとして権利けんり能力のうりょく問題もんだいとなる時点じてんにまで遡及そきゅうしてしょうじるものとしてあつか意味いみであるとする法定ほうてい停止ていし条件じょうけんせつ人格じんかく遡及そきゅうせつ)の立場たちばっている(「胎児たいじ」の項目こうもくの「法学ほうがくにおける胎児たいじ」のふし参照さんしょう)。また、胎児たいじちちから認知にんちける地位ちいゆうする(民法みんぽうだい783じょう)。

権利けんり能力のうりょく終期しゅうき

編集へんしゅう

明文めいぶん規定きていはないが、自然人しぜんじん権利けんり能力のうりょく終期しゅうき死亡しぼうであるとするのが通説つうせつである[3]

外国がいこくじん権利けんり能力のうりょく

編集へんしゅう

外国がいこくじん日本にっぽんこく国籍こくせきゆうしないものをいう。)の権利けんり能力のうりょくには、「法令ほうれいまた条約じょうやく禁止きんしある場合ばあい」がありる(民法みんぽうだい3じょう2こう)。そのれいとして、土地とちかんする権利けんり享有きょうゆう外国がいこくじん土地とちほう1じょう)、国家こっか賠償ばいしょう国家こっか賠償ばいしょうほう6じょう)などが採用さいようする相互そうご主義しゅぎもとづく制限せいげんや、知的ちてき財産ざいさんけん享有きょうゆうかんする制限せいげん特許とっきょほう25じょう実用じつよう新案しんあんほう55じょう3こう意匠いしょうほう68じょう3こう商標しょうひょうほう77じょう3こうなど)がある。

法人ほうじん権利けんり能力のうりょく

編集へんしゅう

法律ほうりつにより権利けんり能力のうりょく法人ほうじんかく)がみとめられ、権利けんり義務ぎむ主体しゅたいとなることのできるもの(社団しゃだんまたは財団ざいだん)を法人ほうじんという。法人ほうじん権利けんり能力のうりょくには、以下いかのような制限せいげんがある。

性質せいしつによる制限せいげん
婚姻こんいん関係かんけい当事とうじしゃとなるなど、性質せいしつじょう自然人しぜんじんのみが主体しゅたいとなる行為こういについての権利けんり能力のうりょくはない。
法令ほうれいによる制限せいげん
権利けんり能力のうりょく範囲はんいは、法令ほうれいによって制限せいげんされる。
目的もくてきによる制限せいげん
従前じゅうぜんは、法人ほうじん目的もくてき範囲はんいえる行為こういについての権利けんり能力のうりょくはないとされていたが(ウルトラ・ヴィーレスの法理ほうり参照さんしょう)、最近さいきん行為こうい能力のうりょく制限せいげんまたは代表だいひょうしゃ代表だいひょうけん制限せいげんにとどまるとする見解けんかい有力ゆうりょくである。「目的もくてき範囲はんい」は営利えいり法人ほうじん場合ばあいについてはひろゆるやかに、営利えいり法人ほうじん場合ばあいについては文言もんごん解釈かいしゃく重視じゅうしされ、厳格げんかく判断はんだんされるというのが、通説つうせつである。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ 我妻あづまさかえちょしんてい 民法みんぽう総則そうそく』51ぺーじ岩波書店いわなみしょてん、1965ねん
  2. ^ 大判おおばん昭和しょうわ7ねん10がつ6にちみんしゅう11かん2023ぺーじ阪神電鉄はんしんでんてつ事件じけん
  3. ^ 我妻あづまさかえちょしんてい 民法みんぽう総則そうそく』53ぺーじ岩波書店いわなみしょてん、1965ねん

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう