無料むりょう送迎そうげいバス

無料むりょう送迎そうげいバス（むりょうそうげいバス）は、観光かんこう施設しせつや商業しょうぎょう施設しせつ、工場こうじょうなどが施設しせつの最寄もより交通こうつう機関きかんと施設しせつの間あいだで利用りよう客きゃくや従業じゅうぎょう員いんを送迎そうげいする目的もくてきで、乗客じょうきゃくから運賃うんちん徴収ちょうしゅうを行おこなわずに運行うんこうされる送迎そうげいバスの総称そうしょう。シャトルバスの一種いっしゅである。

日本にっぽんの事例じれい

概要がいよう

駅えき、バス停留所ていりゅうじょ、空港くうこう、港みなと等ひとしから施設しせつまでの距離きょりが、徒歩とほでの到達とうたつでは時間じかん、労力ろうりょくを要ようする場合ばあいに運行うんこうされることが多おおい。また施設しせつ最寄もよりの交通こうつう機関きかんが極端きょくたんに少すくない場合ばあい（郊外こうがいの結婚式けっこんしき場じょう、宴会えんかい場じょう、斎場さいじょう、ホテル、工場こうじょう、物流ぶつりゅう倉庫そうこなど）、交通こうつうの便びんがよい遠方えんぽうの駅えきまでの送迎そうげいバスが運行うんこうされることもある。

自動車じどうしゃ教習所きょうしゅうじょ、フィットネスクラブ、病院びょういんなどが定期ていき的てきに地域ちいきを巡めぐる送迎そうげいバスを出だして来所らいしょの便宜べんぎを図はかる例れいや、ショッピングセンター、病院びょういん、宿泊しゅくはく施設しせつ、健康けんこうランドなどが集客しゅうきゃくの一環いっかんとして最寄もより駅えきや近隣きんりんで乗降じょうこう客数きゃくすうの多おおい駅えきまで送迎そうげいバスや送迎そうげい車しゃを運行うんこうする例れいがある。宿泊しゅくはく施設しせつによっては特急とっきゅうまたは新幹線しんかんせん停車駅ていしゃえきまで運行うんこうする例れいや都市とし部ぶまで運行うんこうする例れい（東京とうきょう - 軽井沢かるいざわ、東京とうきょう - 白樺湖しらかばこ、東京とうきょう - スパリゾートハワイアンズ他た）、宿泊しゅくはく者しゃの便宜べんぎを図はかりテーマパークやスキー場じょうなどの娯楽ごらく施設しせつへの送迎そうげいバスを運行うんこうする例れいも見みられる。

競馬けいば場じょうや競輪けいりん場じょう、競艇きょうてい場じょう、オートレース場じょうといった公営こうえい競技きょうぎの競技きょうぎ場じょうで、来場らいじょう者しゃの利便りべん性せいを向上こうじょうさせるため最寄もより駅えきや近郊きんこうの主要しゅよう都市としとの間あいだで無料むりょう送迎そうげいバス（「ファンバス」と呼よぶケースもあり）を運行うんこうする例れいがある。原則げんそくとして往復おうふくでの運行うんこうだが、一部いちぶの競技きょうぎ場じょうでは往路おうろのみの運行うんこう（片道かたみち運行うんこう）や往路おうろのみ無料むりょう・復路ふくろは有料ゆうりょう、としている事例じれいもある。また、サテライト阪神はんしんなど一部いちぶの遠隔えんかく地ちの競輪けいりん場外じょうがい車券しゃけん売場うりばなどでも運行うんこうするケースがある。

一部いちぶのスーパーマーケットでは、公共こうきょう交通こうつう機関きかんが通かよっていない地域ちいきで、高齢こうれい者しゃなど交通こうつう弱者じゃくしゃ向むけに買かい物ものバスとして運行うんこうしている例れいもある。また、自治体じちたいが高齢こうれい者しゃや障害しょうがい者しゃ向むけの福祉ふくしバスとしての性格せいかくを有ゆうする送迎そうげいバスの例れいもある^[1]。

1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）9月5日にちに青森あおもり県けん八戸はちのへ市しにあった『シネコン専用せんよう劇場げきじょう「中央ちゅうおう劇場げきじょう」』が市内しない鮫さめ町まち - 中央ちゅうおう劇場げきじょう間あいだに無料むりょう送迎そうげいバスを運行うんこうした。同年どうねん9月4日にち付づけ『デーリー東北とうほく』3面めんの「中央ちゅうおう劇場げきじょう」広告こうこく記事きじでは「さあ出でた!日本にっぽん最初さいしょのサービス!どしどし御ご利用りようください!」のキャッチコピーが掲載けいさいされており、同どう施設しせつではこれを日本にっぽん初はつの無料むりょう送迎そうげいバスであると宣伝せんでんしていた。

法的ほうてき根拠こんきょと運行うんこう形態けいたい

日本にっぽんにおける無料むりょう送迎そうげいバス（バス以外いがいによる無料むりょう送迎そうげいも含ふくむ）については、

輸送ゆそう形態けいたいが（そもそも）道路どうろ運送うんそう法ほうにおける許可きょか又または登録とうろくを要ようしないもの
バス事業じぎょう者しゃが道路どうろ運送うんそう法ほうに基もとづく運送うんそう事業じぎょうの許可きょかを受うけた上うえで、旅客りょかく（利用りよう者しゃ）から運賃うんちん（相当そうとう額がく）を収受しゅうじゅしないもの

に大分おおいたされる。

道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょかを要ようしないもの

道路どうろ運送うんそう法ほう第だい2条じょう第だい3項こうでは、旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょうを「他人たにんの需要じゅように応おうじ、有償ゆうしょうで、自動車じどうしゃを使用しようして旅客りょかくを運送うんそうする事業じぎょう」と定義ていぎしており、そもそも有償ゆうしょう運送うんそうではない、すなわち運送うんそうサービスの提供ていきょうに対たいする反対はんたい給付きゅうふとしての財物ざいぶつ（運賃うんちん等とう）を収受しゅうじゅしない場合ばあいは道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょかを要ようしないとされている。この「運送うんそうサービスの提供ていきょうに対たいする反対はんたい給付きゅうふ」とはならない事例じれいについて、国土こくど交通省こうつうしょうは以下いかの例れいを示しめしている^[2]。

運送うんそうに対たいする謝礼しゃれいを支払しはらうもの
運送うんそうにかかる実費じっぴ（燃料ねんりょう費ひ、有料ゆうりょう道路どうろ料金りょうきん、駐車ちゅうしゃ場代ばだい、保険ほけん料りょう、車両しゃりょうの賃借ちんしゃく料りょう）のみを負担ふたんするもの

国土こくど交通こうつう省しょうでは、これらの金銭きんせんの授受じゅじゅが発生はっせいしても「有償ゆうしょう運送うんそう」とは見みなさない解釈かいしゃくが行おこなわれており、旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょうにあたらず道路どうろ運送うんそう法ほうに伴ともなう規制きせいが生しょうじないとしている。

また、宿泊しゅくはく施設しせつや介護かいご施設しせつの利用りよう者しゃを対象たいしょうとした、駅えきや空港くうこう、或あるいは観光かんこう地ちへの送迎そうげいについても、「運送うんそうサービスの提供ていきょうに対たいする反対はんたい給付きゅうふ」が生しょうじなければ道路どうろ運送うんそう法ほうに基もとづく許可きょかは不要ふようとしている^[2]。「無料むりょう送迎そうげいバス」はこの範疇はんちゅうに含ふくまれる輸送ゆそう行為こういであると言いえ、仮かりに施設しせつ側がわが運行うんこうにかかる実費じっぴ相当そうとう額がくのみを求もとめた場合ばあいでもこれが「運送うんそうサービスの提供ていきょうに対たいする反対はんたい給付きゅうふ」とはならないため、広義こうぎの「無料むりょう送迎そうげいバス」と解釈かいしゃくすることが出来できる。

（道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょかを要ようしない）無料むりょう送迎そうげいバスに用もちいられる車種しゃしゅは多種たしゅ多様たようであるが、施設しせつ自みずからが運行うんこうを行おこなう場合ばあいはマイクロバスが用もちいられることが多おおい。小規模しょうきぼな旅館りょかんなどの場合ばあい、ミニバンやワンボックスカーなどの普通ふつう乗用車じょうようしゃを「送迎そうげいバス」と称しょうして利用りようすることもある。旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょうではないため、使用しようされる自動車じどうしゃは自家用じかよう自動車じどうしゃ（自家用じかようバス、白しろナンバー）となっており、運転うんてん者しゃの運転うんてん免許めんきょ証しょうも第だい一種いっしゅ運転うんてん免許めんきょで運行うんこう可能かのうとなっている。

なお、この「道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょかを要ようしない輸送ゆそう」の態様たいようについては、これまで国土こくど交通省こうつうしょうから複数ふくすうの通知つうちが出だされていたが、2024年ねん3月がつ1日にちに国土こくど交通省こうつうしょう物流ぶつりゅう・自動車じどうしゃ局きょくが「道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょか又または登録とうろくを要ようしない運送うんそうに関かんするガイドライン」を作成さくせいして取扱とりあつかいを一本いっぽん化かしている^[3]。

道路どうろ運送うんそう法ほうの許可きょかに基もとづくもの

これらは、旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょうにより運行うんこうされるものの、乗客じょうきゃくが本来ほんらい支払しはらうべき「運送うんそうサービスの提供ていきょうに対たいする反対はんたい給付きゅうふ」（運賃うんちん等とう）を需要じゅよう家か（運送うんそうを希望きぼうする施設しせつ等とう）が肩代かたがわりすることにより、乗客じょうきゃくが無料むりょうで利用りようできるようにとなっているものである。

特定とくていバス・貸切かしきりバス

詳細しょうさいは「特定とくていバス」および「貸切かしきりバス」を参照さんしょう

運行うんこうを要ようする主体しゅたい（商業しょうぎょう施設しせつ等とう）がバス事業じぎょう者しゃと輸送ゆそう契約けいやくを結むすび、特定とくていバス（特定とくてい旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょう）あるいは貸切かしきりバスとして、専用せんようの無料むりょう送迎そうげいバスを運行うんこうする事例じれいも多おおくみられる。この場合ばあいは旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょうとなるため、使用しようする車両しゃりょうは事業じぎょう用よう自動車じどうしゃ（緑みどりナンバー）となり、運行うんこうには国土こくど交通省こうつうしょう（地方ちほう運輸うんゆ局きょく）の許可きょかが必要ひつようになるとともに、運転うんてんにも第だい二に種しゅ運転うんてん免許めんきょが必要ひつようとなる。

乗合のりあいバスによる無料むりょう送迎そうげい

一般いっぱんの乗合のりあいバス（路線ろせんバス）では、特定とくてい施設しせつの最寄もよりバス停ばすていで乗降じょうこうする場合ばあいに限かぎり運賃うんちんを収受しゅうじゅしないという方法ほうほうで、無料むりょう送迎そうげいバスとしての機能きのうを果はたす事例じれいもある。

都営とえいバス品しな93系統けいとう（目黒めぐろ駅えき - 品川しながわ駅えき - 大井おおい競馬けいば場じょう）では、通常つうじょうは運賃うんちん先払さきばらい方式ほうしきであるが、大井おおい競馬けいば場じょうでの競馬けいば開催かいさい日びおよび場外じょうがい発売はつばい日びの特定とくてい時間じかんに、大井おおい競馬けいば場じょうバス停ばすていから乗車じょうしゃする場合ばあいに限かぎり先払さきばらいの運賃うんちんを支払しはらわずに乗車じょうしゃできる。先払さきばらい方式ほうしきにつき往路おうろでは無料むりょうにはならない。

他ほかにも2010年ねん（平成へいせい22年ねん）9月がつまで、大阪おおさか府ふ堺さかい市内しない - 堺さかい浜はまシーサイドステージを運行うんこうする南海なんかいバスの路線ろせんバスが、平日へいじつ朝あさを除のぞき堺さかい浜はまシーサイドステージバス停ばすていで乗降じょうこうする場合ばあいに往復おうふくとも運賃うんちんが無料むりょうとなっていた。同年どうねん10月がつ以降いこうは施設しせつ利用りよう者しゃに復路ふくろのバス利用りよう券けんを配布はいふする^[4]という方式ほうしきに変更へんこうされた。

バス利用りよう券けんを配布はいふする形態けいたいは京都きょうと京阪けいはんバスも行おこなっており、京都きょうと府ふ城陽じょうよう市しのスーパー銭湯せんとう「一休いっきゅう」利用りよう者しゃが、新しん田辺たなべ駅えきと宇治田原うじたわら町まちを結むすぶ62系統けいとう（派生はせい系統けいとう含ふくむ）の「一休いっきゅう温泉おんせん前まえ」停留所ていりゅうじょを乗降じょうこうする場合ばあいを対象たいしょうとしている^[5]。利用りよう券けんは「一休いっきゅう」のウェブサイトから印刷いんさつして持参じさんする^[5]。

その他たの乗合のりあいバスによる無料むりょう送迎そうげいの事例じれいとして以下いかのようなものがある。

大久保おおくぼ駅えきと京都きょうと岡本おかもと記念きねん病院びょういんを結むすぶ直通ちょくつう20系統けいとう（京都きょうと京阪けいはんバス）は車内しゃないと病院びょういんに備そなえ置おきの直通ちょくつう専用せんようバス利用りよう券けんを使用しようする^[6]。
大阪おおさか府ふ富田林とんだばやし市しのPL病院びょういんでは、病院びょういん玄関げんかん前まえに発着はっちゃくする富田林とんだばやし駅えきからの近鉄きんてつバス、金剛こんごう駅えきからの南海なんかいバス（金きむ剛つよし東ひがし団地だんち経由けいゆ）の一般いっぱん路線ろせんで運賃うんちん無料むりょうとする取とり扱あつかいを行おこなっている。玄関げんかん前まえで降車こうしゃする際さいに運賃うんちんを徴収ちょうしゅうせず、病院びょういん玄関げんかん前まえから乗車じょうしゃする場合ばあいは無料むりょう乗車じょうしゃ証しょうをもらい、降車こうしゃ時じに乗車じょうしゃ証しょうをバスの回収かいしゅう箱ばこに入いれる^[7]。
兵庫ひょうご県けん尼崎あまがさき市しの尼崎あまがさきドライブスクールでは、近隣きんりんで路線ろせんバスを運行うんこうする阪神はんしんバスと提携ていけいし、一部いちぶの無料むりょう送迎そうげいバスを同社どうしゃの路線ろせんバスで置おき換かえている（教習きょうしゅう生せいには同校どうこう負担ふたんで阪神はんしんバスのフリー乗車じょうしゃ券けんを発行はっこう、単発たんぱつでの来校らいこう時じには乗車じょうしゃ証明しょうめい書しょで返金へんきん）^[8]。