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獣医学 - Wikipedia

獣医じゅういがく

医学いがく診断しんだんがくおよび治療ちりょう原理げんりをペット、家畜かちく野生やせい動物どうぶつおよびエキゾチックアニマルに応用おうようするための学問がくもん

獣医じゅういがく(じゅういがく、英語えいご: veterinary medicine)は、ペット産業さんぎょう動物どうぶつ家畜かちく)、野生やせい動物どうぶつひとし生物せいぶつ原理げんり病気びょうき診断しんだん治療ちりょうや、ひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょうなどを医学いがくてき視点してん研究けんきゅうするための学問がくもんす。微生物びせいぶつがくとあわせてしょく安全あんぜん応用おうようできる学問がくもんでもある。

ネコ診療しんりょうにあたるしし医師いし

獣医じゅういがく家畜かちく生産せいさん実践じっせんぐん単位たんいでの健康けんこう管理かんり疾患しっかんのモニタリングなどを研究けんきゅうし、保護ほごするために不可欠ふかけつ分野ぶんやである。科学かがくてき知識ちしき取得しゅとく応用おうよう必要ひつようとなり、家畜かちく野生やせい動物どうぶつ両方りょうほう疾患しっかん防御ぼうぎょおよ食品しょくひん衛生えいせい環境かんきょう衛生えいせいつうじた人間にんげん健康けんこう維持いじ増進ぞうしん目的もくてきとした技術ぎじゅつ使用しようする。

獣医じゅういがく歴史れきし

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ひがしマ帝国まていこく時代じだいにて執筆しっぴつされたうま医学いがくしょヒッピアトリカ英語えいごばん』から、下痢げり治療ちりょう
 
紀元前きげんぜん3世紀せいきのインドでかれた獣医じゅういがくしょShalihotra英語えいごばん』の写本しゃほんから、うま手術しゅじゅつについて。ほかにゾウやうま治療ちりょう病気びょうき予防よぼうなどについて記述きじゅつされている。

しん石器せっき時代じだいうし遺骨いこつから穿ほじあたまあとられることから、この時代じだいには獣医じゅういがくかんするかんがえがあったことが推察すいさつできる[1]

紀元前きげんぜん2,000ねんごろのシュメール文化ぶんかにおける世界せかい最初さいしょしし医師いしかんする記述きじゅつのこされる[2]

エジプトだい12王朝おうちょう時代じだい紀元前きげんぜん1991 - 紀元前きげんぜん1782ねんごろ)にかれた医学いがくしょカフーン・パピルス英語えいごばんにも動物どうぶつへの治療ちりょうかんする記述きじゅつ確認かくにんされる。

中国ちゅうごくでは、しん石器せっき時代じだいおおせ韶文集落しゅうらく遺跡いせききょう遺跡いせき英語えいごばんなどに家畜かちくようしがらみともくそあつめた場所ばしょ発見はっけんされ、衛生えいせい配慮はいりょおこなわれた様子ようすられる。そのほかにも、甲骨文字こうこつもじひと動物どうぶつ両方りょうほう使つかわれる病名びょうめい寄生虫きせいちゅう歯痛しつうなどがられるほか、ぶた去勢きょせいしめがある[3][4]。また、兵馬へいばにあるうまぞう騸馬去勢きょせい)であるという指摘してきもある[5]

教育きょういくおこな学校がっこうてられたのは、1762ねん1がつ1にち創設そうせつされたフランスの国立こくりつリヨン獣医じゅうい学校がっこう(2010ねん合併がっぺいによりVetAgro Sup英語えいごばん名称めいしょう変更へんこう)が最初さいしょである。フランスおうルイ15せい馬術ばじゅつ教師きょうしクロード・ブルジェラ英語えいごばんによって国家こっか会議かいぎ創設そうせつされた大学だいがくで、大蔵おおくら大臣だいじんけん官房かんぼう長官ちょうかんアンリ・ベルタンフランス語ふらんすごばんによるルイ15せいへの説得せっとくで1764ねん6がつ3にち王立おうりつ学校がっこうとなった[6]

日本にっぽんにおいては、神話しんわだい国主こくしゅいのち因幡いなば白兎しろうさぎかわ治療ちりょうしたはなしがあり、『日本書紀にほんしょき』にてだい国主こくしゅスクナビコナ畜産ちくさん病気びょうき治療ちりょうおこなった[7]だい33だい推古天皇すいこてんのう時代じだいに、聖徳太子しょうとくたいしたちばないのしし弼が高句麗こうくりからわたってきためぐみから療馬のほうまなんだ[7]

このように獣医じゅういがく人間にんげん動物どうぶつむすきとおな程度ていどなが歴史れきしつが、20世紀せいきには、ほとんどの動物どうぶつたねたいして診断しんだん治療ちりょう技術ぎじゅつ利用りようできるようになったことで、とく急激きゅうげき進歩しんぽせている。インスリン注射ちゅうしゃ歯根しこんかん充填じゅうてん人工じんこう股関節こかんせつ置換ちかん白内障はくないしょう治療ちりょう心臓しんぞうペースメーカー設置せっちなどの人間にんげんみの歯科しかてき外科げかてき医療いりょうけることもある。

獣医じゅういがく専門せんもん近年きんねんとくすすんでいる。べいじゅう医学いがく協会きょうかい(American Veterinary Medical Association;AVMA)では、外科げかがく内科ないかがく心臓しんぞうびょうまなぶ皮膚ひふまなぶ神経しんけいがく腫瘍しゅようがく放射線ほうしゃせんまなぶ行動こうどうがく麻酔ますいまなぶ救急きゅうきゅう医療いりょうなど20の専門せんもん認定にんていしている。

現在げんざい日本にっぽん獣医じゅういがく教育きょういく家畜かちく解剖かいぼうがく家畜かちく生理学せいりがく家畜かちく生理せいり化学かがく家畜かちく薬理やくりがく家畜かちく微生物びせいぶつがく家畜かちく衛生えいせいがく獣医じゅうい疫学えきがく獣医じゅうい公衆こうしゅう衛生えいせいがく家畜かちく病理びょうりがく家畜かちく臨床りんしょう繁殖はんしょくがく家畜かちく内科ないかがく家畜かちく外科げかがく家畜かちく伝染でんせんびょうまなぶ家畜かちく寄生虫きせいちゅうまなぶ獣医じゅうい放射線ほうしゃせんがくなどの専門せんもん科目かもくふくむ。

しかし日本にっぽんにおける獣医じゅういがく教育きょういく黎明れいめいにおいてはいぬねこといったしょう動物どうぶつかんする学問がくもん発展はってん副次的ふくじてきなものでしかなく、のう商務省しょうむしょう獣疫じゅうえき研究けんきゅうしつ時重ときしげはつくまらのみは明治維新めいじいしん以降いこうにおける食生活しょくせいかつ欧米おうべい対応たいおうした家畜かちく生産せいさんせい向上こうじょうおよ軍馬ぐんば生産せいさん疾病しっぺい予防よぼう目的もくてきとしていた。

獣医じゅういがく貢献こうけん分野ぶんや

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しし医師いし家畜かちく健康けんこう維持いじつうじて、食糧しょくりょう供給きょうきゅうにおけるしつりょうおよび安全あんぜんめん一部いちぶたずさわっている[8]

れいとして、家畜かちく健康けんこう維持いじ繁殖はんしょくなどにかかわる産業さんぎょう動物どうぶつ臨床りんしょうじゅう医師いし[8]畜場ちくじょうほう屠畜場とちくじょう配属はいぞくめられている衛生えいせい管理かんり責任せきにんしゃ[9]またほふ検査けんさいんしし医師いしおこな[10][11]空港くうこう感染かんせんしょうなどが侵入しんにゅうしないよう検疫けんえきおこなっている家畜かちく防疫ぼうえきかん[12]養殖ようしょくぎょ健康けんこう管理かんりなどをおこな水産すいさんじゅう医師いし[13]、アメリカぐんすべての食品しょくひん衛生えいせい管理かんり動物どうぶつ世話せわおこなアメリカ陸軍りくぐんじゅう医師いしたい英語えいごばんなどがある。

また、獣医じゅうい学者がくしゃ生物せいぶつがく化学かがく農学のうがく薬学やくがく研究けんきゅうなどにもかかわる場合ばあいがある。

おおくのくにで、ウマ獣医じゅういがく特殊とくしゅ分野ぶんやとされている。臨床りんしょう活動かつどうおも運動うんどう疝痛せんつう家畜かちくとしてわれるウマの主要しゅよう死亡しぼう原因げんいん)をふく消化しょうか整形せいけい外科げか呼吸こきゅう感染かんせんしょう問題もんだいへの対処たいしょ中心ちゅうしんとなる。

動物どうぶつ医療いりょう(zoologic medicine)は、動物どうぶつえんおよび野生やせい動物どうぶつ健康けんこう管理かんりふくみ、野生やせい動物どうぶつ保護ほごなどもおこなう。

研究けんきゅう医療いりょう分野ぶんや
人間にんげんにも感染かんせんする病気びょうき畜産ちくさん動物どうぶつ養殖ようしょくぎょ、ミツバチなどの産業さんぎょう動物どうぶつなどの疾病しっぺい研究けんきゅうおこなうが、野生やせい動物どうぶつなどの研究けんきゅうおこなわれる。

獣医じゅういがく教育きょういく免許めんきょ

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大学だいがくしし医学部いがくぶ獣医じゅういがく研究けんきゅうなどで教育きょういくおこなう。しし医師いし国家こっか試験しけんによって日本にっぽんしし医師いしはたらくことができるようになる。また日本にっぽん以外いがいはたら場合ばあいは、北米ほくべいじゅう医師いし試験しけん(ECFVG)[14]欧州おうしゅうじゅう医学いがく教育きょういく認証にんしょう(EAEVE認証にんしょう)などの試験しけん免許めんきょ必要ひつようである[15]

日本にっぽん
6世紀せいきわりごろに伝来でんらいした、めぐみから聖徳太子しょうとくたいしたちばないのしし弼へおしえられた療馬のほう太子たいしりゅう療馬じゅつ)。
9世紀せいき遣唐使けんとうしとしてわたったすずりさん左近さこ将監しょうげんたいらなかこくだいのべといううまからおそわった方法ほうほうなかこくりゅう)。なかこくりゅうから18だい人心じんしんうみ入道にゅうどうせいちか藤原ふじわらまさしこん)によって桑島くわしまりゅうはじめられる[16][4]
これらの療馬じゅつは、世襲せしゅうせい徒弟とていせい秘密裏ひみつりつたえられた。書籍しょせきは、うましょうま医書いしょなどがのこるが、西洋せいよう獣医じゅういがくつたわるまで秘伝ひでんとされていたものもある[17][18]

臨床りんしょうじゅう医学いがく

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人間にんげん医療いりょう同様どうように、獣医じゅういがく実践じっせん本来ほんらい必要ひつようとなるのは、患畜のもとめにおうじた多様たよう専門せんもん分野ぶんやしし医師いし集団しゅうだんである。しし医師いし専門せんもんすす欧米おうべいとはことなり、日本にっぽんでは1人ひとりしし医師いし複数ふくすうの(にはすべての)診療しんりょう担当たんとうすることはめずらしくなく、専門せんもんてきとまでいたらないのが現状げんじょうである。技術ぎじゅつてき補助ほじょ担当たんとうするしし医師いし以外いがいのスタッフを動物どうぶつ病院びょういんおおい。

日本にっぽんしし医師いし資格しかくるには、大学だいがくしし医師いし養成ようせいする学部がくぶ学科がっか課程かていにて6年間ねんかん専門せんもん科目かもくまなび、しし医師いし国家こっか試験しけん合格ごうかくしなければならない。

出典しゅってん

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  1. ^ Ramirez Rozzi, Fernando; Froment, Alain (2018-04-19). “Earliest Animal Cranial Surgery: from Cow to Man in the Neolithic” (英語えいご). Scientific Reports 8 (1): 5536. doi:10.1038/s41598-018-23914-1. ISSN 2045-2322. PMC 5908843. PMID 29674628. https://www.nature.com/articles/s41598-018-23914-1. 
  2. ^ 中山なかやま裕之ひろゆき、「獣医じゅうい史学しがく東京大学とうきょうだいがく じゅう医学いがく専攻せんこう獣医じゅうい病理びょうりがく研究けんきゅうしつ
  3. ^ 中国ちゅうごく兽医”. agri-history.ihns.ac.cn. 2023ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  4. ^ a b まなべ, 小佐々こさざ (2011ねん6がつ). “日本にっぽん在来ざいらい西洋せいよう--しし医療いりょう進展しんてんにちおうじゅう医学いがく交流こうりゅう”. 日本にっぽんじゅう医師いしかい雑誌ざっし = Journal of the Japan Veterinary Medical Association. pp. 419–426. 2023ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  5. ^ 菊地きくち, 大樹たいきはた実像じつぞう」、[出版しゅっぱんしゃ不明ふめい]、2021ねん6がつ20日はつかdoi:10.15083/0002000777 
  6. ^ 早崎はやさき 峯夫みねおフランスの獣医じゅうい大学だいがく大学だいがく制度せいど」『日本にっぽんじゅう医師いしかい雑誌ざっしだい39かんだい8ごう、1986ねん、535–538ぺーじdoi:10.12935/jvma1951.39.535ISSN 0446-6454 
  7. ^ a b 白井しらい恒三郎つねさぶろう日本にっぽんじゅう医学いがく麻布まふじゅう医科いか大学だいがく獣医じゅういがく博士はかせ おつだい8ごう〉、1967ねんNAID 500000414578http://id.nii.ac.jp/1112/00003337/ 
  8. ^ a b 家畜かちく健康けんこうささえる しし医師いし仕事しごとろう:農林水産省のうりんすいさんしょう”. www.maff.go.jp. 2023ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  9. ^ 畜場ちくじょうほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
  10. ^ 畜場ちくじょうほう施行しこうれい - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
  11. ^ 食肉しょくにく検査けんさ-とちく検査けんさとは”. www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp. 2023ねん2がつ2にち閲覧えつらん
  12. ^ 病気びょうきからまもるために【家畜かちく防疫ぼうえきかん】:農林水産省のうりんすいさんしょう”. www.maff.go.jp. 2023ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  13. ^ 養殖ようしょくぎょう発展はってんささえる 水産すいさんじゅう医師いし活動かつどう農林水産省のうりんすいさんしょう”. www.maff.go.jp. 2023ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  14. ^ 日本にっぽん獣医じゅうい学会がっかい Q&A アメリカのしし医師いし試験しけん受験じゅけんするには”. www.jsvetsci.jp. 2023ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  15. ^ EAEVEとは|VetNorth Japan 北海道大学ほっかいどうだいがく帯広畜産大学おびひろちくさんだいがく 共同きょうどうじゅう医学いがく課程かてい”. www.vetmed.hokudai.ac.jp. 2023ねん2がつ1にち閲覧えつらん
  16. ^ 日本にっぽんじゅう医学いがく発展はってん年表ねんぴょう
  17. ^ 長尾ながおたけしなな (1985ねん). “本邦ほんぽうじゅう医学いがく伝承でんしょう伝播でんぱ”. 科学かがく研究けんきゅう. pp. 27. 2023ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  18. ^ うま医術いじゅつ秘伝ひでんしょ”. www.iiif.ku-orcas.kansai-u.ac.jp. 2023ねん2がつ4にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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