異邦いほうの騎士きし

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『異邦いほうの騎士きし』（いほうのきし）は、1988年ねんに発表はっぴょうされた島田しまだ荘司しょうじの推理すいり小説しょうせつ。代表だいひょう作さくである『占星術せんせいじゅつ殺人さつじん事件じけん』『斜ななめ屋敷やしきの犯罪はんざい』に続つづく御手洗みたらい潔きよしシリーズの長編ちょうへん第だい3作さくである。

解説かいせつ

本ほん作品さくひんは作者さくしゃ最初さいしょの執筆しっぴつ作品さくひんで、第だい一いち稿こうの執筆しっぴつを1979年ねん1月がつ26日にちに開始かいししているが、出版しゅっぱんされたのは1988年ねんである。出版しゅっぱんを遅おくらせた最大さいだいの理由りゆうは、デビュー1作さく目めとしてはパンチが足たりないと思おもったためで、次回じかい作さく、もしくは第だい3作さくくらいが適当てきとうと考かんがえたことにある。2番目ばんめの理由りゆうは、タイトルが決きまらなかったためで、やむなく『良子りょうこの思おもい出で』と仮題かだいをつけて机つくえの引ひき出だしに放ほうり込こんで、そのまま存在そんざい自体じたいを忘わすれてしまったことにある。作品さくひん中ちゅうで良子りょうこがいたことになっている高円寺こうえんじのアパートと、主人公しゅじんこうを連つれて行いく元もと住吉すみよしのアパートには、どちらも執筆しっぴつ当時とうじに親友しんゆうが住すんでいた。

「このミステリーがすごい! 」1988年ねん5位いに選出せんしゅつ、1989年ねん「第だい42回かい日本にっぽん推理すいり作家さっか協会きょうかい賞しょう」候補こうほにノミネート。『週刊文春しゅうかんぶんしゅん』が推理すいり作家さっかや推理すいり小説しょうせつの愛好あいこう者しゃら約やく500名めいのアンケートにより選出せんしゅつした「東西とうざいミステリーベスト100」の国内こくない編へんで、本ほん作品さくひんは2012年版ねんばんで56位いに選出せんしゅつされている。

あらすじ

目覚めざめるとベンチの上うえだった。そして、「俺おれ」は自分じぶんが記憶きおくを失うしなっていることに気きが付つく。日付ひづけは昭和しょうわ53年ねん3月18日にちで、そこが高円寺こうえんじであることは分わかったが、それ以上いじょうは何なにも分わからなかった。すると、若わかい愛あいらしい娘むすめがサングラスをかけた若わかい男おとこと言いい争あらそいをして平手打ひらてうちされるシーンに出でくわす。娘むすめは俺おれの胸むねに飛とび込こみ、サングラスの男おとこは去さって行いった。娘むすめは石川いしかわ良子りょうこと名乗なのり、サングラスの男おとこは彼女かのじょのヒモだと言いう。彼女かのじょはヒモから逃のがれるため、明日あした引ひっ越こしたいと言いい、俺おれにトラックの運転うんてんを頼たのむ。運転うんてん免許めんきょ証しょうはなかったが、お互たがい大丈夫だいじょうぶと決きめ込こんで引ひき受うけた。翌朝よくあさ、東横線とうよこせんの元もと住吉すみよし駅えき近ちかくのアパートに住すまいを決きめ、そこで2人ふたりで暮くらし始はじめる。名前なまえのない俺おれは石川いしかわ敬介けいすけと名乗なのり菊名きくなの工場こうじょうで勤つとめ始はじめ、平穏へいおんで幸福こうふくな毎日まいにちが続つづく。

5月25日にち、何なんとなく自分じぶんがテンビン座ざだという確信かくしんもあって専門せんもん家かと話はなしてみれば何なにか分わかるかも知しれないと思おもいつき、綱島つなしま駅えきで降おりて「御手洗みたらい潔きよし占うらない星ほし学がく教室きょうしつ」を訪たずねる。そこで御手洗みたらしがかけたチック・コリアのレコードを聴きいたとたん、自分じぶんはこんなのが好すきだったことを思おもい出だした。こうして、いつでも来きてくれという御手洗みたらしと友人ゆうじんになる。帰宅きたくした俺おれは印鑑いんかんの入はいった引ひき出だしの中なかに自分じぶんの運転うんてん免許めんきょ証しょうを見みつける。免許めんきょ証しょうに記載きさいされていた名前なまえは益子ましこ秀司しゅうじ、住所じゅうしょは荒川あらかわ区く西尾にしお久ひさだった。良子りょうこに聞きくと、俺おれの上着うわぎにあったものを隠かくしたもので、しばらくはその住所じゅうしょを訪たずねないで欲ほしいと言いう。良子りょうこはその住所じゅうしょに俺おれの妻子さいしがいて俺おれがそこへ戻もどることを恐おそれていると考かんがえ、元もとの住所じゅうしょを訪たずねないことを約束やくそくする。

しかし、7月がつ30日にち、良子りょうこが店みせを休やすんで故郷こきょうの松島まつしまに帰かえっている間あいだに元もとの住所じゅうしょのアパートを訪たずねた俺おれだが、そこに1月がつから住すんでいると言いう中年ちゅうねん女性じょせいが、前まえの住人じゅうにんの益子ましこは妻つまが子供こどもを殺ころして首くびを吊つって自殺じさつした後のち、出でて行いったのだと言いう。そして、彼女かのじょから手渡てわたされた引ひっ越こし先さきのメモには、自分じぶんの筆跡ひっせきで墨田すみだ区く九きゅう広ひろの住所じゅうしょが記しるされていた。そうして訪おとずれた九きゅう広ひろの家いえで俺おれは、自分じぶんの筆跡ひっせきで1ページ目めに「千賀子ちかこ、菜々ななへ」と記しるされたノートと、ノートに挟はさまれた千賀子ちかこの日記にっきを見みつける。

千賀子ちかこの日記にっきには、仕組しくまれた追突ついとつ事故じこで借金しゃっきんを抱かかえ、サラ金さらきん会社かいしゃの社長しゃちょうの井原いはらとヤクザまがいの山内やまうちによって身体しんたいを弄もてあそばれ、何なん度ども失神しっしんするまで首吊くびつりをさせられたことが記しるされていた。そして俺おれのノートには、さんざんおもちゃにされて首くびを吊つらされて死しんだ妻つまと、心中しんちゅうの自殺じさつに見みせかけるために殺ころされた娘むすめの復讐ふくしゅうのために山内さんないを殺ころし、さらに3月がつ16日にち、翌日よくじつの夜よるに井原いはらの殺害さつがいを決行けっこうすることが記しるされて終おわっていた。そこから推測すいそくされるのは、俺おれは3月がつ17日にちに井原いはらを殺ころそうとして返かえり討うちに遭あい、記憶きおくを失うしなうほどの暴行ぼうこうを受うけ、あるいは薬物やくぶつの投与とうよを受うけて記憶きおくを失うしない、その結果けっか、3月18日にちの朝あさ、高円寺こうえんじで目覚めざめたのだろうということだった。井原いはらが俺おれを殺ころさなかったのは、税金ぜいきんの申告しんこく日びである5月がつ31日にちから2ヵ月かげつ間あいだはこれまでの悪事あくじが露見ろけんしないよう警察けいさつ沙汰ざたに注意ちゅういする必要ひつようがあったのだろうと考かんがえた。

そして、2ヵ月かげつが過すぎた今日きょう、7月がつ31日にち、俺おれは殺ころされた妻つまと娘むすめのためではなく良子りょうことの生活せいかつを守まもるために、殺ころされる前まえに井原いはらを殺ころそうと決意けついする。

登場とうじょう人物じんぶつ

「俺おれ」

記憶きおくを失うしなっているため「石川いしかわ敬介けいすけ」を名乗なのる。自分じぶんがテンビン座ざだという確信かくしんはある。ジャズが好すき。本名ほんみょうは益子ましこ秀司しゅうじらしい。

石川いしかわ良子りょうこ

若わかい愛あいらしい娘むすめ。ヒモに貢みつぐため水商売みずしょうばいで働はたらいていた。「俺おれ」と一緒いっしょに元もと住吉すみよしで暮くらすようになってからはケーキ屋やで働はたらいている。松島まつしま出身しゅっしん。

サングラスの男おとこ

良子りょうこのヒモ。

御手洗みたらい潔きよし

占星術せんせいじゅつ師し。

千賀子ちかこ

益子ましこ秀司しゅうじの妻つま。育そだちが良よく気位きぐらいが高たかい。電子でんしオルガン2級きゅうの免状めんじょうを持もっている。

菜々なな

秀司しゅうじと千賀子ちかこの娘むすめ。

井原いはら源一郎げんいちろう

サラ金さらきん会社かいしゃ「フレンドローン」の代表だいひょう取締役とりしまりやく。

山内やまうち恒太郎つねたろう

井原いはらの相棒あいぼう。元もとヤクザ。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 記憶きおく喪失そうしつ
• 浪漫ろうまんの騎士きし…題名だいめいの由来ゆらいにもなっている。

外部がいぶリンク

• 1988年ねん（初版しょはん） - 講談社こうだんしゃBOOK倶楽部くらぶ
• 1990年版ねんばん - 講談社こうだんしゃBOOK倶楽部くらぶ
• 1991年版ねんばん - 講談社こうだんしゃBOOK倶楽部くらぶ
• 1998年版ねんばん（改訂かいてい完全かんぜん版ばん） - 講談社こうだんしゃBOOK倶楽部くらぶ