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病原性 - Wikipedia

病原びょうげんせい(びょうげんせい, pathogenicity)とは、真正しんしょう細菌さいきんウイルスなどの病原びょうげんたいが、生物せいぶつ感染かんせんして宿主しゅくしゅ感染かんせんしょうこす性質せいしつ能力のうりょくのこと。

過去かこに、医学いがく微生物びせいぶつがくでは「病原びょうげんせいがある」あるいは「病原びょうげんせいがない」という用法ようほうもちいられるてき概念がいねんで、「病原びょうげんせいたかい」「病原びょうげんせいひくい」という用法ようほうあやまりとされていた(この場合ばあいビルレンスもちいる)。しかし現代げんだいでは、一般いっぱん社会しゃかいのみならず微生物びせいぶつがく専門せんもん分野ぶんやにおいても「こう病原びょうげんせい」などの表現ひょうげんもちいられることがあり、ビルレンスとの使つかけは曖昧あいまいになりつつある。

生態せいたいがく文脈ぶんみゃくにおいては、病原びょうげんせいは、寄生きせいしゃ病原びょうげんたい)の影響えいきょうによる宿主しゅくしゅ適応てきおう減少げんしょう意味いみしている。


感染かんせんせい病原びょうげんせい・ビルレンス

編集へんしゅう

微生物びせいぶつ宿主しゅくしゅ感染かんせんして病気びょうきこすかどうかは、その微生物びせいぶつ宿主しゅくしゅわせによってまる。微生物びせいぶつがわちから決定けっていする要素ようそとしては、感染かんせんした微生物びせいぶつかずという量的りょうてき因子いんしくわえて、その宿主しゅくしゅたいする

  • 感染かんせんせい有無うむ
  • 病原びょうげんせい有無うむ
  • ビルレンスの強弱きょうじゃく高低こうてい

という質的しつてき因子いんしげられる。


感染かんせんせい(かんせんせい)とはその微生物びせいぶつがその宿主しゅくしゅ体内たいない安定あんていして増殖ぞうしょくできるかどうかを意味いみする。たとえば、植物しょくぶつウイルスバクテリオファージなど動物どうぶつ以外いがい宿主しゅくしゅ感染かんせんするウイルスは、動物どうぶつ細胞さいぼう侵入しんにゅう増殖ぞうしょくすることが出来できない。このため、これらは動物どうぶつたいしては感染かんせんせいである。感染かんせんせい微生物びせいぶつでは、そもそも宿主しゅくしゅ病原びょうげんたい関係かんけい成立せいりつしないため、これらは同時どうじ病原びょうげんせいでもある。感染かんせんせいたかい(つよい)ことをこう感染かんせんせいひくい(よわい)ことをてい感染かんせんせいぶ。


病原びょうげんせいとは、感染かんせんせいのある微生物びせいぶつ宿主しゅくしゅ感染かんせんしたときに病気びょうきこすかどうかを意味いみする。感染かんせんせいけるのは、感染かんせんしても「発症はっしょう」しないことがあるため。病原びょうげんせいのある微生物びせいぶつは、その宿主しゅくしゅにとって病原びょうげんたいとなりうる。たとえば、いわゆる乳酸菌にゅうさんきんはヒトの消化しょうかかん感染かんせん定着ていちゃく)するが、これによってヒトが病気びょうきになることはない病原びょうげんせい細菌さいきんである。これにたいしてサルモネラおおくはヒトにたいする病原びょうげんせいがあり消化しょうかかん感染かんせんすると食中毒しょくちゅうどくなどの感染かんせんしょう原因げんいんになる。また、ある微生物びせいぶつ病原びょうげんせいであるかどうかは感染かんせんする宿主しゅくしゅによってわり、サルモネラはニワトリたいしては病原びょうげんせいであることがおおいが、鶏卵けいらん鶏肉とりにくかいして消化しょうかかん感染かんせんしたヒトにたいしては病原びょうげんせいしめす。病原びょうげんせいたかい(つよい)ことをこう病原びょうげんせいひくい(よわい)ことをてい病原びょうげんせいぶ。

ビルレンスvirulenceどくりょく(どくりょく)、毒性どくせい(どくせい))は、その病原びょうげんたい感染かんせんしたときどのくらい感染かんせんしょうこしやすいか、また発病はつびょうしたときにどのくらい重症じゅうしょうしやすいか、というちからつよさをしめ連続れんぞくてき概念がいねんである。たとえば、食中毒しょくちゅうどく原因げんいんであるサルモネラチフスきんは、どちらも生物せいぶつがくじょうおなSalmonella entericaというたね分類ぶんるいされるが、ビルレンスのちがいによって後者こうしゃちょうチフスなどのきわめておもあつ疾患しっかんこす。ビルレンスは強弱きょうじゃく、または高低こうていあらわされ、ビルレンスのたかい(つよい)病原びょうげんたいのことをつよ毒性どくせいひくい(よわい)病原びょうげんたい弱毒じゃくどくせいぶ。

最終さいしゅうてき発病はつびょうするかどうかは、これらの微生物びせいぶつがわ質的しつてき量的りょうてき因子いんしくわえ、免疫めんえきなどの宿主しゅくしゅがわ生体せいたい防御ぼうぎょ機構きこう因子いんしとのバランスによる。

病原びょうげんせいたいするかんがかた変遷へんせん

編集へんしゅう

ロベルト・コッホによる炭疽たんそきん発見はっけんコッホの原則げんそく提唱ていしょう以降いこうすうおおくの病原びょうげん細菌さいきん分離ぶんりされた。これによって生物せいぶつがく微生物びせいぶつがく)と医学いがく感染かんせんしょうがく)との接点せってん明確めいかくとなり、感染かんせんしょう治療ちりょうおおきな進歩しんぽげた。しかしながら、この微生物びせいぶつがく黎明れいめいにおいては、その当時とうじとく重大じゅうだい疾患しっかんとして認知にんちされていたじゅうあつし感染かんせんしょうから病原びょうげんたい分離ぶんりすることが優先ゆうせんされており、このため当時とうじつかった病原びょうげんたいおおくは、健常けんじょうしゃ少数しょうすう感染かんせんしても発病はつびょうしうる、きわめてビルレンスのたかいものであった。このことが、微生物びせいぶつを「病原びょうげんせいのもの」と「病原びょうげんせいのもの」に分類ぶんるいするかんがえの下地したじとなった。

しかしながら、その研究けんきゅう進展しんてんによって、日和見ひよりみ感染かんせん代表だいひょうされるように、これまでヒトに病原びょうげんせいがないとされていた微生物びせいぶつによっても、免疫めんえきりょく低下ていかしたヒトでは病気びょうきこりうるということがられるようになり、発病はつびょうするかかはたん微生物びせいぶつ病原びょうげんせいにのみ依存いぞんするのではなく、宿主しゅくしゅがわとのちからのバランスによってまるというかんがえがひろまるようになった。このため病原びょうげんせい有無うむだけでなく、ビルレンスの高低こうてい疾患しっかんとの関係かんけいから重視じゅうしされている。

病原びょうげんせい進化しんか

編集へんしゅう

宿主しゅくしゅ寄生きせいしゃ生態せいたいかんする概念がいねんとして、病原びょうげんせい最適さいてきというかんがかたがある。

まず病原びょうげんせい定義ていぎひとつは、寄生きせいしゃにより宿主しゅくしゅ適応てきおう減少げんしょうすることである。寄生きせいしゃ自身じしん適応てきおうは、宿主しゅくしゅ感染かんせんして増殖ぞうしょくし、子孫しそんのこすことに成功せいこうするかどうかによって決定けっていされる。病原びょうげんせい時間じかん経過けいかとともに緩和かんわされ、寄生きせい関係かんけい共生きょうせいへと進化しんかしていくという仮説かせつに、一時いちじ研究けんきゅうしゃあいだでは意見いけん一致いっちしていた。

しかし、この見解けんかい疑問ぎもんされるようになってきた。なぜなら抑制よくせいされすぎた病原びょうげんたいはよりおおくの宿主しゅくしゅ資源しげんみずからの繁殖はんしょく転用てんようするより攻撃こうげきてき病原びょうげんたいかぶとの競争きょうそうけてしまうためである。宿主しゅくしゅは、ある意味いみ寄生きせいしゃ資源しげんであり、生息せいそくであることから、このよりたか病原びょうげんせい影響えいきょうけることになる。これはよりはや宿主しゅくしゅ誘発ゆうはつし、べつ宿主しゅくしゅ遭遇そうぐうするかくりつ低下ていかさせることによって、寄生虫きせいちゅう適応てきおうらすよう作用さようする可能かのうせいがある。(すなわち、病原びょうげんせいげるために宿主しゅくしゅはやころしすぎてしまう)このモデルでは病原びょうげんせいトレードオフ存在そんざいし、寄生きせいしゃに「自己じこ制限せいげん」するように圧力あつりょくあたえる自然しぜんちから想定そうていされる。

上記じょうきのように寄生きせいしゃ適応てきおうもっとたかいところに病原びょうげんせい均衡きんこうてん存在そんざいするというかんがかた病原びょうげんせい最適さいてきという。 病原びょうげんせいじくじょうでよりたか病原びょうげんせいまたはひく病原びょうげんせい獲得かくとくかって移動いどうすると、寄生きせいしゃ適応てきおう低下ていかし、その結果けっか自然しぜん選択せんたくがはらたくことになる。


また、感染かんせんせいについても進化しんか圧力あつりょくがかかる仮説かせつがある。 あたらしい宿主しゅくしゅへの感染かんせん繁殖はんしょくりつ増加ぞうかさせる形質けいしつ病原びょうげんたい集団しゅうだんないひろがりやすいことはかんがえやすい。通常つうじょう宿主しゅくしゅ集団しゅうだんよりも病原びょうげんたい集団しゅうだんほうがよりたか突然変異とつぜんへんいりつち、病原びょうげんたい急速きゅうそく生成せいせい速度そくどによる膨大ぼうだい個体こたいすう増加ぞうかができることが、これらの形質けいしつ可能かのうとさせる。ほんのすう世代せだい最適さいてき突然変異とつぜんへんいたい頻度ひんど増加ぞうかすることで、宿主しゅくしゅおおくのがいをもたらす。 病原びょうげんたい病原びょうげんせい感染かんせんせい宿主しゅくしゅころしすぎてしまいみずからの伝染でんせんさまたげてしまう場合ばあい病原びょうげんせい感染かんせんせい抑圧よくあつ進化しんかあつがはたらくとこうえらえるが、たとえば、難民なんみんキャンプ避難ひなんしょのような混雑こんざつした状況じょうきょうではあたらしい宿主しゅくしゅへの感染かんせん機会きかいうしなわれず、病原びょうげんせい感染かんせんせい維持いじつづけられる。

その病原びょうげんせい偶然ぐうぜん進化しんかしたという仮説かせつかんがえられる。 一般いっぱんてき病原びょうげんせい宿主しゅくしゅ寄生きせいしゃきょう進化しんかによるものではなく、独立どくりつした進化しんか産物さんぶつとしてたんなる偶然ぐうぜんによって病原びょうげんせい獲得かくとくした可能かのうせいがある。

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