自由じゆう都市としダンツィヒ

自由じゆう都市としダンツィヒ

Freie Stadt Danzig (ドイツ語ご) Wolne Miasto Gdańsk (ポーランド語ご)

1920年ねん - 1939年ねん


（国旗こっき）	（国くに章あきら）

自由じゆう都市としダンツィヒの位置いち（1930年ねん）

公用こうよう語ご

ドイツ語ご
ポーランド語ご

宗教しゅうきょう

65% ルター派は
32% カトリック（1938年ねん）

首都しゅと

ダンツィヒ

国際こくさい連盟れんめい高等こうとう弁務べんむ官かん

1919年ねん - 1920年ねん	レジナルド・タワー（ドイツ語ご版ばん）（初代しょだい）
1937年ねん - 1939年ねん	カール・ヤーコプ・ブルクハルト（最後さいご）

面積めんせき

1928年ねん^[1]	1,952km²

人口じんこう

1919年ねん	357,000人にん
1923年ねん^[2]^:11	366,730人にん
1933年ねん	407,517人にん

変遷へんせん

ヴェルサイユ条約じょうやく発効はっこう	1920年ねん1月がつ20日はつか
成立せいりつ	1920年ねん11月15日にち
ポーランド侵攻しんこう	1939年ねん9月がつ1日にち
ドイツに併合へいごう	1939年ねん9月がつ2日にち

通貨つうか

パピエルマルク
（1920年ねん - 1923年ねん）

ダンツィヒ・グルデン（英語えいご版ばん）
（1923年ねん - 1939年ねん）

自由じゆう都市としダンツィヒ（じゆうとしダンツィヒ、ドイツ語ご: Freie Stadt Danzig、ポーランド語ご: Wolne Miasto Gdańsk）は、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ごのヴェルサイユ条約じょうやくによってドイツより切きり離はなされてから第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん初期しょきにドイツ軍ぐんによって占領せんりょうされるまでに現在げんざいのグダニスク（ドイツ名めいダンツィヒ）に存在そんざいした都市とし国家こっかである。ダンツィヒ自由じゆう都市としやダンツィヒ自由じゆう市しとも表記ひょうきされる。

ダンツィヒとその周辺しゅうへんは元来がんらいはスラヴ民族みんぞくが住すんでいた土地とちだったが、当時とうじの主おもな居住きょじゅう者しゃは、ドイツ民族みんぞくであった。

概要がいよう

ダンツィヒの20ダンツィヒ・グルデン紙幣しへい

戦せん間あいだ期きにおけるダンツィヒの自由じゆう都市とし化かは、ヴェルサイユ条約じょうやくによって成立せいりつした。ヴェルサイユ条約じょうやく100条じょうから108条じょうはダンツィヒ関連かんれん条項じょうこうであり、103条じょうはダンツィヒの国際こくさい連盟れんめいによる保護ほごと独自どくじ憲法けんぽうの制定せいていが定さだめられた。

ヴェルサイユ条約じょうやく自体じたいは1920年ねん1月がつ20日はつかに発効はっこうしたが、正式せいしきに「自由じゆう都市としダンツィヒ」の成立せいりつが宣言せんげんされたのは、1920年ねん11月15日にちのことであった^[3]。

1920年ねんから1925年ねんの間あいだには、ダンツィヒはポーランド系けいとロシア系けいユダヤ人じんが北米ほくべいに移民いみんする中心ちゅうしんの場所ばしょとなり、60,000人にんがアメリカとカナダへ亡命ぼうめいした。

領土りょうど

自由じゆう都市としダンツィヒは、ダンツィヒ（グダニスク）の都市とし部分ぶぶんとツォポト（ソポト）、ティーゲンホーフ (Tiegenhof)、ノイタイヒ (Neuteich) 等とうの252の村むらと63の村落そんらくを含ふくんでおり、東ひがしプロイセンに挟はさまれた地域ちいきであった。全ぜん面積めんせきは1966平方へいほうkmであり、領土りょうどはナポレオン時代じだいの約やく2倍ばいの大おおきさである。

人口じんこう

人口じんこうは増加ぞうかし、1919年ねんの357,000人にんから1929年ねんの408,000人にんとなり、95%はドイツ人じんであり^[4]、少数しょうすう民族みんぞくとしてカシューブ人じんとポーランド人じんが存在そんざいしていた。

ヴェルサイユ条約じょうやくは、ダンツィヒとそれを囲かこんでいる村むらをドイツから切きり離はなしたが、新あたらしく形成けいせいされた州しゅうは、在住ざいじゅう者しゃに基もとづく公民こうみん権けんを持もつ必要ひつようがあった。ドイツ住民じゅうみんは自由じゆう都市としの形成けいせいによりドイツの国籍こくせきを失うしなったが、州しゅうの成立せいりつの最初さいしょの2年間ねんかんはドイツ国籍こくせきを再さい取得しゅとくする権利けんりを与あたえられた。しかしそうした場合ばあい、ダンツィヒの外そとのドイツの領域りょういきに住すむ必要ひつようがあった。

言語げんごごとの人口じんこう 1923年ねん 11月1日にち
言語げんご	総数そうすう	ドイツ語ご	ドイツ語ごとポーランド語ご	ポーランド語ごカシューブ語ごマズルク語ご	ロシア語ごウクライナ語ご	ヘブライ語ごユダヤ語ご	分類ぶんるい不能ふのう
ダンツィヒ	335,921	327,827	1,108	6,788	99	22	77
ダンツィヒ以外いがい	30,809	20,666	521	5,239	2,529	580	1,274
総数そうすう	366,730	348,493	1,629	12,027	2,628	602	1,351
比率ひりつ	100.00%	95.03%	0.44%	3.28%	0.72%	0.16%	0.37%

ポーランド人じんの権利けんり

1925年ねん 1月がつ5日にちのポーランド郵便ゆうびん局きょくの開設かいせつ

自由じゆう都市としという言葉ことばは、ポーランドから見みて国外こくがいにあることを示しめしており、ポーランドと関税かんぜい同盟どうめいを結むすんでいた。ポーランドへ接続せつぞくされている自由じゆう都市としの鉄道てつどう線せんはポーランドにより管理かんりされていた。同様どうように、町まちの港みなとであるヴェステルプラッテ（Westerplatte、以前いぜんの都市としの海岸かいがん地域ちいき）には分離ぶんりされた軍ぐんの事務所じむしょがあり、ポーランドに与あたえられていた。同様どうように町まちには2つの郵便ゆうびん局きょくが存在そんざいした。1つは都市としの郵便ゆうびん局きょくで、もう1つはポーランドのであった。

政治せいじ

最初さいしょの自由じゆう都市とし市長しちょうは1919年ねん2月がつ2日にちから市長しちょうであったハインリヒ・ザーム（ドイツ語ご版ばん）であった。1920年ねん1月がつ24日にちには駐屯ちゅうとんしていたドイツ軍ぐんが退去たいきょし、1月がつ31日にちからは連合れんごう国軍こくぐんが駐屯ちゅうとんを開始かいしした。2月13日にちからは国際こくさい連盟れんめい暫定ざんてい高等こうとう弁務べんむ官かんレジナルド・タワー（英語えいご版ばん）が行動こうどうを開始かいしし、3月5日にちにはザームを議長ぎちょうとする参事院さんじいんを設置せっちした。5月6日にちからは憲法けんぽう制定せいていのための議会ぎかい選挙せんきょが行おこなわれ、ドイツ国家こっか国民党こくみんとう、独立どくりつ社会しゃかい民主党みんしゅとう、ドイツ社会しゃかい民主党みんしゅとう、中央ちゅうおう党とう、自由じゆう経済けいざい連合れんごう、ドイツ民主党みんしゅとう、ポーランド党とうなどが議席ぎせきを獲得かくとくした。この制憲せいけん議会ぎかいは憲法けんぽう制定せいていとヴェルサイユ条約じょうやく104条じょうに基もとづくポーランド協定きょうていの作成さくせいのみに権限けんげんが限定げんていされ、8月がつ11日にちに最終さいしゅう案あんを可決かけつした。憲法けんぽうはその後ご国際こくさい連盟れんめいの修正しゅうせいを経へて、1922年ねん5月がつ11日にちに高等こうとう弁務べんむ官かんの承認しょうにんにより発効はっこうした^[5]。

ダンツィヒ港こうはポーランドによる利用りようが認みとめられていたが、ポーランド・ソビエト戦争せんそうの際さい、ポーランドの軍需ぐんじゅ物資ぶっし積つみ込こみを港湾こうわん労働ろうどう者しゃがボイコットする事件じけんが起おきた。ポーランドはダンツィヒにかわって近隣きんりんの漁港ぎょこうグディニャを整備せいびし、新あらたな港湾こうわん都市としとして建設けんせつを開始かいしし、様々さまざまな優遇ゆうぐう措置そちを与あたえた。このためグディニャとダンツィヒの競合きょうごう関係かんけいが生うまれ、ザームはこの問題もんだいを国際こくさい連盟れんめいに提訴ていそしている^[6]。1930年ねん、ザームがベルリン市長しちょうとなり、後任こうにんには参事院さんじいんの副ふく議長ぎちょうであったエルンスト・ツィーム（英語えいご版ばん）が就任しゅうにんした。

1933年ねん5月、ナチスは自由じゆう都市としの選挙せんきょで勝利しょうりした。しかし、彼かれらは57%を選挙せんきょで得えただけで、ダンツィヒ自由じゆう都市としの組織そしきを変更へんこうするのに必要ひつような2/3（国際こくさい連盟れんめいによって要求ようきゅうされた）には不足ふそくしていた。政府せいふは反はんユダヤ、反はんカトリックの法ほうを導入どうにゅうした。後者こうしゃは主おもに、わずかなポーランド人じんとカシューブ語ごを話はなす住民じゅうみんに対たいして厳きびしいものであった。都市としはポーランド内ないのドイツ人じんの未成年みせいねんを、自衛じえい団だん (Selbstschutz) の指揮しきの中核ちゅうかくとなった、ドイツ青年せいねん党とう (Jungdeutsche Partei) やドイツ連合れんごう (Deutsche Vereinigung) のような組織そしきに採用さいようすることにより、訓練くんれん拠点きょてんを提供ていきょうした。チームも市長しちょうの座ざから追おわれ、ナチ党員とういんのヘルマン・ラウシュニング（英語えいご版ばん）が市長しちょうとなった。1934年ねんにはダンツィヒにおける大だい管区かんく指導しどう者しゃ代理だいりであったアルトゥール・グライザーが新しん市長しちょうとなり、強制きょうせい的てき同一どういつ化かがさらに進すすめられた。

歴代れきだい高等こうとう弁務べんむ官かん

代数だいすう	名前なまえ	在任ざいにん期間きかん	所属しょぞく国こく
1	レジナルド・タワー（英語えいご版ばん）	1919–1920	イギリス
2	エドワード・ストラット（英語えいご版ばん）	1920	イギリス
3	ベルナルド・アトリコ（イタリア語ご版ばん）	1920	イタリア王国おうこく
4	リチャード・ハッキング（英語えいご版ばん）	1921–1923	イギリス
5	メルヴィン・マクドネル（ドイツ語ご版ばん）	1923–1925	イギリス
6	ヨースト・アドリアーン・ヴァン・ハメル（オランダ語ご版ばん）	1925–1929	オランダ
7	マンフレディ・グラヴィナ（イタリア語ご版ばん）	1929–1932	イタリア王国おうこく
8	ヘルメル・ロスティング（デンマーク語ご版ばん）	1932–1934	デンマーク
9	ショーン・レスター	1934–1936	アイルランド
10	カール・ヤーコプ・ブルクハルト	1937–1939	スイス

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんと戦後せんご

1939年ねん9月1日にち、それまでポーランドへの友好ゆうこう訪問ほうもんと称しょうしてグダニスク湾わんに停泊ていはくしていたドイツ戦艦せんかんシュレスヴィヒ・ホルシュタインが何なんの布告ふこくもなくダンツィヒのポーランド軍ぐん駐屯ちゅうとん地ちに激はげしい艦かん砲ほう射撃しゃげきを開始かいし、このドイツによるポーランド侵攻しんこうによって第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの火ひぶたが切きられた。ナチス政府せいふは、ポーランドへの侵攻しんこうの数日すうじつ後ご、1939年ねん 9月2日にちにドイツへの再さい編入へんにゅうの投票とうひょうを行おこなった。

ユダヤ系けい住民じゅうみんはホロコーストの対象たいしょうとなり強制きょうせい収容しゅうよう所しょへと送おくられ多おおくが殺ころされた。

都市としの90%は第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの終おわりには廃墟はいきょとなった。連合れんごう国こくはヤルタ会談かいだんにおいて、戦後せんごのダンツィヒがポーランドの一部いちぶになるという合意ごういを行おこなっており、この方針ほうしんはポツダム協定きょうていによって確認かくにんされている。1945年ねん1月がつ30日にちに1000人にんの兵士へいしと1万まん人にんの避難ひなん民みんが乗のっていた船ふねヴィルヘルム・グストロフ号ごうがソ連それんの潜水せんすい艦かんにより撃沈げきちんされている。1945年ねん 3月30日にち、都市としは赤軍せきぐんにより解放かいほうされた。

戦前せんぜんにいた人口じんこうの約やく90%は死亡しぼうしたか、1945年ねんまでに逃にげ出だしたと考かんがえられている。1950年ねんまでに、約やく28万まん5千せん人にんに上のぼる自由じゆう都市としの以前いぜんの住民じゅうみんが、連合れんごう国こく支配しはい下かのドイツに移住いじゅうしている。なお、1947年ねんには自由じゆう都市としダンツィヒ亡命ぼうめい政府せいふ（英語えいご版ばん）がベルリンで結成けっせいされているが、東ひがし西にしいずれのドイツ政府せいふからも正式せいしきに承認しょうにんされず、活動かつどうは低調ていちょうである。

脚注きゃくちゅう

^ Wagner, Richard (1929) (ドイツ語ご). Die Freie Stadt Danzig. Taschenbuch des Grenz- und Auslanddeutschtums (2., Auflage / ed.). Berlin: Deutscher Schutzbund Verlag. p. 3
^ Mason, John Brown (1946). The Danzig Dilemma, A Study in Peacemaking by Compromise. Stanford University Press. ISBN 978-0-8047-2444-9 2011年ねん4月がつ26日にち閲覧えつらん。
^ 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 74.
^ Mason, John Brown (1946). The Danzig Dilemma, A Study in Peacemaking by Compromise. Stanford University Press. ISBN 978-0-8047-2444-9. Retrieved 2011-04-26.
^ 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 74–75.
^ 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 77.

参考さんこう文献ぶんけん

川手かわて圭一けいいち「第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ご「自由じゆう市しダンツィヒ」のポーランド人じんマイノリティをめぐる政治せいじ的てき・社会しゃかい的てき位相いそう」『東京学芸大学とうきょうがくげいだいがく紀要きよう. 人文じんぶん社会しゃかい科学かがく系けい. II』第だい60巻かん、東京学芸大学とうきょうがくげいだいがく、2009年ねん、73-83頁ぺーじ、NAID 110007030898。

外部がいぶリンク

[Wagner1929-1] Wagner, Richard (1929) (ドイツ語ご). Die Freie Stadt Danzig. Taschenbuch des Grenz- und Auslanddeutschtums (2., Auflage / ed.). Berlin: Deutscher Schutzbund Verlag. p. 3

[Mason_1946-2] Mason, John Brown (1946). The Danzig Dilemma, A Study in Peacemaking by Compromise. Stanford University Press. ISBN 978-0-8047-2444-9 2011年ねん4月がつ26日にち閲覧えつらん。

[FOOTNOTE川手圭一200974-3] 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 74.

[4] Mason, John Brown (1946). The Danzig Dilemma, A Study in Peacemaking by Compromise. Stanford University Press. ISBN 978-0-8047-2444-9. Retrieved 2011-04-26.

[FOOTNOTE川手圭一200974–75-5] 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 74–75.

[FOOTNOTE川手圭一200977-6] 川手かわて圭一けいいち 2009, pp. 77.

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