(Translated by https://www.hiragana.jp/)
船長 - Wikipedia

船長せんちょう

船舶せんぱく指揮しきしゃであるとともに船主せんしゅ代理人だいりにんとして法定ほうてい権限けんげんゆうするもの

船長せんちょう(せんちょう。英語えいごでは Captain[1][注釈ちゅうしゃく 1])とは、船舶せんぱく乗員じょういんなかで、当該とうがい船舶せんぱく最高さいこう責任せきにんしゃ、かつ船主せんしゅ代理人だいりにんとして、法定ほうてい権限けんげんゆうするもの[2]

船長せんちょう肩章けんしょういちれい

軍艦ぐんかん自衛じえいかん)のちょうは、艦長かんちょう(かんちょう。英語えいごでは Captain[注釈ちゅうしゃく 2]Commanding Officer略称りゃくしょう:CO〉、Skipper[3])という[注釈ちゅうしゃく 3]

概説がいせつ

編集へんしゅう
 
しらせ (2だい)艦橋かんきょうにある艦長かんちょうせき同艦どうかん艦長かんちょうは1つとめるので、あかいカバーがけられている (ちょうが2までの艦艇かんてい座席ざせきのカバーのひだり半分はんぶんあおのツートーン)。

船長せんちょう船舶せんぱく運航うんこう指揮しきしゃという航行こうこう組織そしきじょう地位ちい海上かいじょう企業きぎょう主体しゅたい代理人だいりにんという企業きぎょう取引とりひき組織そしきじょう地位ちいめんせいゆうする[2]

船長せんちょう着用ちゃくようする、商船しょうせん士官しかん[4]職員しょくいん、Officer[5])としての船長せんちょう地位ちい階級かいきゅうかつ職位しょくい)をしめ階級かいきゅうあきらは「金筋きんすじ4ほん」である[6][7]一方いっぽう艦長かんちょう着用ちゃくようする階級かいきゅうあきらは、あくまで海軍かいぐん士官しかんとしての階級かいきゅうしめすものであるため、艦長かんちょう階級かいきゅうによりことなる(れい海軍かいぐん大佐たいさ金筋きんすじ4ほん海軍かいぐん中佐ちゅうさ金筋きんすじ3ほん、など)。

船長せんちょうせき通常つうじょうブリッジ右寄みぎよりにある[8]が、航空こうくう母艦ぼかんではアイランド(ブリッジとう構造こうぞうぶつ)を右舷うげんせた設計せっけいとなっているため、飛行ひこう甲板かんぱん見渡みわたせる左側ひだりがわせている。一目いちもくかるようにせきいろえているふねもある。

日本にっぽん法令ほうれいじょう船長せんちょう

編集へんしゅう

船長せんちょう選任せんにん解任かいにん

編集へんしゅう

船長せんちょう海上かいじょう企業きぎょう主体しゅたい船主せんしゅもしくは船舶せんぱく賃借ちんしゃくじん)によって選任せんにんされる[9]船舶せんぱく共有きょうゆう場合ばあい船舶せんぱく管理人かんりにん選任せんにんおこなう(きゅう商法しょうほう700じょう改正かいせい698じょう[9]船長せんちょうには航行こうこう区域くいき船舶せんぱくおおきさにしたがって船舶せんぱく職員しょくいんおよ小型こがた船舶せんぱく操縦そうじゅうしゃほうさだめるゆう資格しかくしゃのうちから選任せんにんしなければならない[9]

船長せんちょうがやむをない事由じゆうによりみずか船舶せんぱく指揮しきすることができないときは法令ほうれい別段べつだんさだめがある場合ばあいのぞいて他人たにん選任せんにんして自己じこ職務しょくむおこなわせることができ(きゅう商法しょうほう707じょう改正かいせい709じょう前段ぜんだん)、これをだい船長せんちょうという[9]。この場合ばあいにおいては船長せんちょうはその選任せんにんにつき船舶せんぱく所有しょゆうしゃたいして責任せきにんう(きゅう商法しょうほう707じょう改正かいせい709じょう後段こうだん)。

また、船長せんちょう死亡しぼうしたとき、船舶せんぱくったとき、またはこれを指揮しきすることができない場合ばあいにおいて他人たにん選任せんにんしないときは、運航うんこう従事じゅうじする海員かいいんは、その職掌しょくしょう順位じゅんいしたがって船長せんちょう職務しょくむおこなう(船舶せんぱくほう20じょう)。これを代行だいこう船長せんちょうというが、代行だいこう船長せんちょう厳密げんみつ意味いみでの船長せんちょうではない[9]

船長せんちょう雇用こよう契約けいやく終了しゅうりょう事由じゆうによりその地位ちいうしなうほか、船舶せんぱく所有しょゆうしゃなんでも船長せんちょう解任かいにんすることができる(きゅう商法しょうほう721じょう1こう本文ほんぶん改正かいせい715じょう1こう[9]。ただし、正当せいとう理由りゆうなく解任かいにんしたときは船長せんちょう船舶せんぱく所有しょゆうしゃたい解任かいにんによってしょうじた損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうすることができる(きゅう商法しょうほう721じょう1こう但書ただしがき改正かいせい715じょう2こう)。

船長せんちょう権限けんげん

編集へんしゅう

私法しほうじょう権限けんげん

編集へんしゅう
  • 船長せんちょう代理だいりけん
    • 船長せんちょうには船主せんしゅからの代理だいりけん授与じゅよ契約けいやくもとづく代理だいりけんみとめられている[10]船長せんちょう代理だいりけんくわえた制限せいげん善意ぜんい第三者だいさんしゃ対抗たいこうすることができない(きゅう商法しょうほう714じょう改正かいせい708じょう2こう)。
      • 船籍せんせき港外こうがいにおいては船長せんちょうは、船舶せんぱくについて抵当ていとうけん設定せっていすることや、借財しゃくざいをすることをのぞいて、航海こうかいのために必要ひつよう一切いっさい裁判さいばんじょうまたは裁判さいばんがい行為こういをなす権限けんげんゆうする (きゅう商法しょうほう713じょう1こう改正かいせい708じょう1こう)。
  • 積荷つみに供用きょうよう

公法こうほうじょう権限けんげん

編集へんしゅう
  • 船舶せんぱく指揮しきけん
    • 船長せんちょう船舶せんぱく運行うんこう責任せきにんしゃとして船舶せんぱく指揮しきけんゆうする[11]船舶せんぱく指揮しきけん船主せんしゅから授権されたものではなく船舶せんぱく共同きょうどうたい安全あんぜん確保かくほのために法律ほうりつによってくにから授権された権限けんげんである[11]
    • 船舶せんぱく指揮しきけん内容ないよう以下いか参照さんしょう
  • 指揮しき命令めいれいけん
    • 船長せんちょう指揮しき命令めいれいけんゆうし、海員かいいん指揮しき監督かんとくし、かつ、船内せんないにあるものたいして自己じこ職務しょくむおこなうのに必要ひつよう命令めいれいをすることができる(船員せんいんほうだい7じょう)。
  • 懲戒ちょうかいけん
    • 船長せんちょうは、海員かいいん船員せんいんほう21じょう事項じこうまもらないときは、これを懲戒ちょうかいすることができる(船員せんいんほう22じょう-24じょう)。
  • 危険きけんたいする処置しょち
    • 船長せんちょうは、海員かいいん凶器きょうき爆発ばくはつまた発火はっかしやすいもの劇薬げきやくその危険きけんぶつ所持しょじするときは、そのものにつき保管ほかん放棄ほうきその処置しょちをすることができる(船員せんいんほう25じょう)。
    • 船長せんちょうは、船内せんないにあるもの生命せいめいしくは身体しんたいまた船舶せんぱく危害きがいおよぼすような行為こういをしようとする海員かいいんたいし、その危害きがいけるのに必要ひつよう処置しょちをすることができる(船員せんいんほう26じょう)。
    • 船長せんちょうは、必要ひつようがあるとみとめるときは、旅客りょかくその船内せんないにあるものたいしても、ぜんじょう規定きていする処置しょちをすることができる(船員せんいんほう27じょう)。
  • 強制きょうせい下船げせん
    • 船長せんちょうは、やといにゅう契約けいやく終了しゅうりょう届出とどけでをしたのち当該とうがい届出とどけでかか海員かいいん船舶せんぱくらないときは、その海員かいいん強制きょうせいして船舶せんぱくかららせることができる(船員せんいんほう28じょう)。
  • 行政ぎょうせいちょうたいする援助えんじょ請求せいきゅう
    • 船長せんちょうは、海員かいいんその船内せんないにあるもの行為こうい人命じんめいまた船舶せんぱく危害きがいおよぼしその船内せんない秩序ちつじょいちじるしくみだす場合ばあいにおいて、必要ひつようがあるとみとめるときは、行政ぎょうせいちょう援助えんじょ請求せいきゅうすることができる(船員せんいんほう29じょう)。
  • 水葬すいそう
    • 船長せんちょうは、船舶せんぱく航行こうこうちゅう船内せんないにあるもの死亡しぼうしたときは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、これを水葬すいそうすることができる(船員せんいんほう15じょう)。
  • 司法しほう警察けいさつけん

船長せんちょう義務ぎむ

編集へんしゅう
  • ぜんかん注意ちゅうい義務ぎむ
    • きゅう商法しょうほうでは、船長せんちょうぜんかん注意ちゅうい義務ぎむい、船長せんちょうはその職務しょくむおこなうにつき注意ちゅういだるたらなかったことを証明しょうめいしなければ船舶せんぱく所有しょゆうしゃ傭船ようせんしゃおくじんその利害りがい関係かんけいじんたいして損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんまぬかれることができないとされ(きゅう商法しょうほう705じょう1こう)、また、船長せんちょう船舶せんぱく所有しょゆうしゃ指図さしずしたがったときであっても船舶せんぱく所有しょゆうしゃ以外いがいものたいしては前項ぜんこうさだめた責任せきにんまぬかれることができないとされていたが(きゅう商法しょうほう705じょう2こう)、この規定きてい改正かいせい商法しょうほうでは削除さくじょされた。ただし、当該とうがい規定きてい削除さくじょされても、傭船ようせんしゃおくひとは、運送うんそうじんたい契約けいやくじょう債務さいむ不履行ふりこう責任せきにん追及ついきゅうできる(商法しょうほう575じょう)。 
  • 商法しょうほうじょう書類しょるい備置義務ぎむ
    • 船長せんちょうぞく目録もくろくおよ運送うんそう契約けいやくかんする書類しょるいふねちゅうそなくことをようする(きゅう商法しょうほう709じょう1こう改正かいせい710じょう)。
  • はつこうまえ検査けんさ
    • 船長せんちょうは、はつこうまえつぎかかげる事項じこう検査けんさしなければならない。ただし、当該とうがいはつこうぜん12時間じかん以内いないに1.にかかげる事項じこうのうち操舵そうだ設備せつびかか事項じこうについてはつこうまえ検査けんさをしたときならびに当該とうがいはつこうぜん24時間じかん以内いないに1.(操舵そうだ設備せつびかか事項じこうのぞく。)、4.および5.にかかげる事項じこうについてはつこうまえ検査けんさをしたときは、当該とうがい事項じこうについては、検査けんさおこなわないことができる(船員せんいんほう8じょうどう施行しこう規則きそく2じょうの2)。
  1. 船体せんたい機関きかんおよ排水はいすい設備せつび操舵そうだ設備せつび係船けいせん設備せつびあげいかり設備せつび救命きゅうめい設備せつび無線むせん設備せつびその設備せつび整備せいびされていること。
  2. 積載せきさいぶつせきけが船舶せんぱく安定あんていせいをそこなう状況じょうきょうにないこと。
  3. 喫水きっすい状況じょうきょうから判断はんだんして船舶せんぱく安全あんぜんせいたもたれていること。
  4. 燃料ねんりょう食料しょくりょう清水しみず医薬品いやくひん船用せんようひんその航海こうかい必要ひつよう物品ぶっぴんまれていること。
  5. 水路すいろその航海こうかい必要ひつよう整備せいびされていること。
  6. 気象きしょう通報つうほう水路すいろ通報つうほうその航海こうかい必要ひつよう情報じょうほう収集しゅうしゅうされており、それらの情報じょうほうから判断はんだんして航海こうかい支障ししょうがないこと。
  7. 航海こうかい必要ひつよう員数いんずう乗組のりくみいんんでおり、かつ、それらの乗組のりくみいん健康けんこう状態じょうたい良好りょうこうであること。
  8. ぜん各号かくごうかかげるもののほか、航海こうかい支障ししょうなく成就じょうじゅするため必要ひつよう準備じゅんびととのっていること。
  • 航海こうかい成就じょうじゅ
    • 船長せんちょうは、航海こうかい準備じゅんびおわったときは、遅滞ちたいなくはつこうし、かつ、必要ひつようがある場合ばあいのぞいて、予定よてい航路こうろ変更へんこうしないで到達とうたつみなとまで航行こうこうしなければならない(船員せんいんほう9じょう)。
  • 甲板かんぱんじょう指揮しき
    • 船長せんちょうは、船舶せんぱくみなと出入でいりするとき、船舶せんぱくせま水路すいろ通過つうかするときその船舶せんぱく危険きけんのおそれがあるときは、甲板かんぱんにあってみずか船舶せんぱく指揮しきしなければならない(船員せんいんほう10じょう)。
  • ざいふね義務ぎむ
    • 船長せんちょうは、やむをない場合ばあいのぞいて、自己じこわって船舶せんぱく指揮しきすべきものにその職務しょくむ委任いにんしたのちでなければ、荷物にもつ船積ふなづみおよ旅客りょかく乗込のりこめときから荷物にもつ陸揚りくあげおよ旅客りょかく上陸じょうりくときまで、自己じこ指揮しきする船舶せんぱくってはならない(船員せんいんほう11じょう)。
  • 航海こうかい当直とうちょく実施じっし
    • 以下いか船舶せんぱく以外いがい船舶せんぱく船長せんちょうは、航海こうかい当直とうちょく編成へんせいおよ航海こうかい当直とうちょく担当たんとうするものがとるべき措置そちについて国土こくど交通こうつう大臣だいじん告示こくじさだめる基準きじゅんしたがって、適切てきせつ航海こうかい当直とうちょく実施じっしするための措置そちをとらなければならない(船員せんいんほう施行しこう規則きそく3じょうの5)。
      • 平水へいすい区域くいき航行こうこう区域くいきとする船舶せんぱく
      • もっぱ平水へいすい区域くいきまた船員せんいんほうだいいちじょうだいこうだいさんごう漁船ぎょせん範囲はんいさだめる政令せいれい昭和しょうわさんじゅうはちねん政令せいれいだいじゅうよんごう別表べっぴょう海面かいめんにおいて従業じゅうぎょうする漁船ぎょせん
  • 巡視じゅんし制度せいど
    • 旅客船りょかくせん平水へいすい区域くいき航行こうこう区域くいきとするものにあっては、国土こくど交通こうつう大臣だいじん指定していする航路こうろ就航しゅうこうするものにかぎる。)の船長せんちょうは、船舶せんぱく火災かさい予防よぼうのための巡視じゅんし制度せいどもうけなければならない(船員せんいんほう施行しこう規則きそく3じょうの6)。
  • 旅客りょかくたいする避難ひなん要領ようりょうとう周知しゅうち
    • 船長せんちょうは、避難ひなん要領ようりょうならびに救命胴衣きゅうめいどうい格納かくのう場所ばしょおよ着用ちゃくよう方法ほうほうについて、旅客りょかくやすい場所ばしょ掲示けいじするほか、旅客りょかくたいして周知しゅうち徹底てっていはかるため必要ひつよう措置そちこうじなければならない(船員せんいんほう施行しこう規則きそく3じょうの10)。
  • 船舶せんぱく危険きけんがある場合ばあいにおける処置しょち
    • 船長せんちょうは、自己じこ指揮しきする船舶せんぱく急迫きゅうはくした危険きけんがあるときは、人命じんめい救助きゅうじょならびに船舶せんぱくおよ積荷つみに救助きゅうじょ必要ひつよう手段しゅだんくさなければならない(船員せんいんほう12じょう)。
    • なお、きゅう船員せんいんほうだい12じょうでは「船長せんちょう船舶せんぱく急迫きゅうはくした危険きけんがあるとき、人命じんめい船舶せんぱくおよび積荷つみに救助きゅうじょ必要ひつよう手段しゅだんをつくし、かつ、旅客りょかく海員かいいん、その船内せんないにあるものをらせたのちでなければ、自己じこ指揮しきする船舶せんぱくってはならない。」(船長せんちょうさい後退こうたいせん)とあり、違反いはんした場合ばあいは5ねん以下いか懲役ちょうえきという罰則ばっそく規定きていされていた。
    • 1970ねん船員せんいんほう改正かいせいがされて、げん船員せんいんほうだい11じょうだい12じょうえられ、自己じこ指揮しきする船舶せんぱく急迫きゅうはくした危険きけんには必要ひつよう手段しゅだんくす一方いっぽうで、やむをない場合ばあいにはおのれ指揮しきする船舶せんぱくることを可能かのうとする規定きていとなった。
  • 船舶せんぱく衝突しょうとつした場合ばあいにおける処置しょち
    • 船長せんちょうは、船舶せんぱく衝突しょうとつしたときは、かたみ人命じんめいおよ船舶せんぱく救助きゅうじょ必要ひつよう手段しゅだんつくし、船舶せんぱく名称めいしょう所有しょゆうしゃ船籍せんせきこうはつこうこうおよ到達とうたつこうげなければならない。ただし、自己じこ指揮しきする船舶せんぱく急迫きゅうはくした危険きけんがあるときは、このかぎりでない(船員せんいんほう13じょう)。
  • 遭難そうなん船舶せんぱくとう救助きゅうじょ
    • 船長せんちょうは、船舶せんぱくまた航空機こうくうき遭難そうなんったときは、人命じんめい救助きゅうじょ必要ひつよう手段しゅだんつくさなければならない。ただし、自己じこ指揮しきする船舶せんぱく急迫きゅうはくした危険きけんがある場合ばあいおよ以下いか場合ばあいは、このかぎりでない(船員せんいんほう14じょうどう施行しこう規則きそく3じょう)。
      • 遭難そうなんしゃ所在しょざい到着とうちゃくしたほか船舶せんぱくから救助きゅうじょ必要ひつようのないむね通報つうほうがあったとき。
      • 遭難そうなん船舶せんぱく船長せんちょうまた遭難そうなん航空機こうくうき機長きちょうが、遭難そうなん信号しんごう応答おうとうした船舶せんぱくちゅう適当てきとうみとめる船舶せんぱく救助きゅうじょもとめた場合ばあいにおいて、当該とうがい救助きゅうじょもとめられた船舶せんぱくのすべてが救助きゅうじょおもむいていることをったとき。
      • やむをない事由じゆう救助きゅうじょおもむくことができないとき、また特殊とくしゅ事情じじょうによつて救助きゅうじょおもむくことが適当てきとうでないかしくは必要ひつようでないとみとめられるとき(この場合ばあいにおいては、そのむね附近ふきんにある船舶せんぱく通報つうほうし、かつ、船舶せんぱく救助きゅうじょおもむいていることがあきらかでないときは、遭難そうなん船舶せんぱく位置いちその救助きゅうじょのために必要ひつよう事項じこう海上かいじょう保安ほあん機関きかんまた救難きゅうなん機関きかん日本にっぽん近海きんかいにあっては、海上保安庁かいじょうほあんちょう)に通報つうほうしなければならない)。
  • 異常いじょう気象きしょうとう
    • 国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめる船舶せんぱく船長せんちょうは、暴風雨ぼうふうう流氷りゅうひょうその異常いじょう気象きしょう海象せいうちしくは地象ちしょうまた漂流ひょうりゅうぶつしくは沈没ちんぼつぶつであって、船舶せんぱく航行こうこう危険きけんおよぼすおそれのあるものに遭遇そうぐうしたときは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、そのむね附近ふきんにある船舶せんぱくおよ海上かいじょう保安ほあん機関きかんその関係かんけい機関きかん通報つうほうしなければならない(船員せんいんほう14じょうの2)。
  • 非常ひじょう配置はいちひょう作成さくせいおよみさおねり
    • 国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめる船舶せんぱく船長せんちょうは、非常ひじょう場合ばあいにおける海員かいいん作業さぎょうかんし、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、非常ひじょう配置はいちひょうさだめ、これを船員せんいんしつその適当てきとう場所ばしょ掲示けいじしておかなければならない。国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめる船舶せんぱく船長せんちょうは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、海員かいいんおよ旅客りょかくについて、防火ぼうかみさおねり救命きゅうめいていみさおねりその非常ひじょう場合ばあいのために必要ひつようみさおねり実施じっししなければならない(船員せんいんほう14じょうの3)。
  • 航海こうかい安全あんぜん確保かくほ
    • そのほか、航海こうかい当直とうちょく実施じっし船舶せんぱく火災かさい予防よぼう水密すいみつ保持ほじその航海こうかい安全あんぜんかん船長せんちょう遵守じゅんしゅすべき事項じこうは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいでこれをさだめる(船員せんいんほう14じょうの4)。
  • 遺留いりゅうひん処置しょち
    • 船長せんちょうは、船内せんないにあるもの死亡しぼうし、また行方ゆくえ不明ふめいとなったときは、法令ほうれい特別とくべつじょうがある場合ばあいのぞいて、船内せんないにある遺留いりゅうひんについて、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、保管ほかんその必要ひつよう処置しょちをしなければならない(船員せんいんほう16じょう)。
  • 在外ざいがい国民こくみん送還そうかん
    • 船長せんちょうは、外国がいこく駐在ちゅうざいする日本にっぽん領事りょうじかんが、法令ほうれいさだめるところにより、日本にっぽん国民こくみん送還そうかんめいじたときは、正当せいとう事由じゆうがなければ、これをこばむことができない(船員せんいんほう17じょう)。
  • 船員せんいんほうじょう書類しょるい備置義務ぎむ
    • 船長せんちょうは、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめる場合ばあいのぞいて、以下いか書類しょるい船内せんないそなかなければならない(船員せんいんほう18じょう)。
      • 船舶せんぱく国籍こくせき証書しょうしょまた国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめる証書しょうしょ
      • 海員かいいん名簿めいぼ
      • 航海こうかい日誌にっし
      • 旅客りょかく名簿めいぼ
      • 積荷つみにかんする書類しょるい
  • 航行こうこうかんする報告ほうこく
    • 船長せんちょうは、以下いか各号かくごういち該当がいとうする場合ばあいには、国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるところにより、国土こくど交通こうつう大臣だいじんにそのむね報告ほうこくしなければならない(船員せんいんほう19じょう)。
      • 船舶せんぱく衝突しょうとつじょうあげ沈没ちんぼつ滅失めっしつ火災かさい機関きかん損傷そんしょうその海難かいなん発生はっせいしたとき。
      • 人命じんめいまた船舶せんぱく救助きゅうじょ従事じゅうじしたとき。
      • 無線むせん電信でんしんによってったときをのぞいて、航行こうこうちゅう船舶せんぱく遭難そうなんったとき。
      • 船内せんないにあるもの死亡しぼうし、また行方ゆくえ不明ふめいとなったとき。
      • 予定よてい航路こうろ変更へんこうしたとき。
      • 船舶せんぱく抑留よくりゅうされ、また捕獲ほかくされたときその船舶せんぱくかんいちじるしい事故じこがあったとき。
  • 航海こうかいちゅう出生しゅっしょうおよ死亡しぼう届出とどけで
    • 航海こうかいちゅう出生しゅっしょうがあったときは、船長せんちょうは、24時間じかん以内いないに、だい49じょうだい2こうかかげる事項じこう出生しゅっしょう届出とどけで事項じこう)を航海こうかい日誌にっし記載きさいして、署名しょめいし、しるしをおさなければならない(戸籍こせきほうだい55じょう)。
    • だい55じょう航海こうかいちゅう出生しゅっしょう)の規定きていは、死亡しぼう届出とどけでにこれを準用じゅんようする(戸籍こせきほう93じょう)。

艦長かんちょう

編集へんしゅう
大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん

大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐんにおける「艦長かんちょう」とは、軍艦ぐんかん外務がいむれい艦艇かんていないにおいてさだめられた狭義きょうぎ軍艦ぐんかん指揮しきかんで(階級かいきゅう大佐たいさもしくは中佐ちゅうさ)、これらのかんくびには菊花きっか紋章もんしょうがつけられていた。軍艦ぐんかんふくまれていない駆逐くちくかん潜水せんすいかんなどの指揮しきかんは「ちょう」とばれ(階級かいきゅう中佐ちゅうさもしくは少佐しょうさ)、駆逐くちくかんなが潜水艦せんすいかんながうのが正式せいしき呼称こしょうであった。後者こうしゃ場合ばあい艦長かんちょう同列どうれつ指揮しきかん駆逐くちくたい司令しれい潜水せんすいたい司令しれいとなった。

海上かいじょう自衛隊じえいたい

海上かいじょう自衛隊じえいたいにおける艦長かんちょうについて解説かいせつすると、自衛じえいかん乗員じょういん服務ふくむ規則きそく[12]においては、「艦長かんちょうは、1かん首脳しゅのうである。艦長かんちょうは、法令ほうれいとうさだめるところにより、上級じょうきゅう指揮しきかんいのちしたがい、副長ふくちょう以下いか乗員じょういん指揮しき統率とうそつし、かんつとむ全般ぜんぱん統括とうかつし、忠実ちゅうじつにその職責しょくせきまっとうしなければならない。」(自衛じえいかん乗員じょういん服務ふくむ規則きそくだい3じょう)とうたわれている。

また、自衛じえいかん遭難そうなんとう沈没ちんぼつするさい艦長かんちょうさき退すさかんすることがゆるされず、「艦長かんちょうは、遭難そうなんした自艦じかん救護きゅうごするための方策ほうさくまったきた場合ばあいは、乗員じょういん生命せいめい救助きゅうじょし、かつ、重要じゅうよう書類しょるい物品ぶっぴんとう保護ほごして最後さいご退すさかんするものとする。」(自衛じえいかん乗員じょういん服務ふくむ規則きそくだい34じょうだい1こう)とされる。

海上かいじょう自衛隊じえいたいでは艦長かんちょうすわせき明確めいかくにするため、いろきのカバーをけている[13]潜水せんすいかんでは操舵そうだしゅ機器きき操作そうさいん以外いがい椅子いすがあるのは艦長かんちょうのみ[14])。

最後さいご離船りせんさい後退こうたいせん義務ぎむ

編集へんしゅう

船長せんちょうさい後退こうたいせんは、海事かいじにおける伝統でんとうひとつで、船長せんちょう自分じぶんふねとそのふねっているすべてのひとたいして最終さいしゅうてき責任せきにんち、緊急きんきゅうには船上せんじょうひとすべたすけてから最後さいご退すさふねするか、さもなくば覚悟かくごするというものであった。これは19世紀せいき、ヴィクトリアあさ時代じだい騎士きしどう精神せいしん反映はんえいしたもので、自分じぶんよりよわしゃたちをたすけることを優先ゆうせんするモラルは人々ひとびとから称賛しょうさんされた。

だが称賛しょうさんされ船長せんちょうのモラルとされた結果けっか極端きょくたん事例じれい発生はっせいし、1980ねんLNGせん関門海峡かんもんかいきょう投錨とうびょう座礁ざしょうしたさいアメリカじん船長せんちょうがピストル自殺じさつしたれい[15]1997ねん福井ふくいけんおきナホトカごう重油じゅうゆ流出りゅうしゅつ事故じこ発生はっせいしたさいロシアじん船長せんちょう救出きゅうしゅつ拒否きょひして後日ごじつ遺体いたいとなって発見はっけんされたれい[16]きた。

日本にっぽんでは、前述ぜんじゅつのように船員せんいんほうだい12じょう船長せんちょう最後さいご離船りせんが、どうほう123じょう罰則ばっそく規定きていさだめられており法的ほうてき義務ぎむとして定着ていちゃくしていた。しかし1969ねんから1970ねんにかけてぼりばあまる事故じこ波方なみかた商船しょうせんの「波島なみしままる事故じこかりふぉるにあまる事故じこつづけに3けん遭難そうなん事故じこ発生はっせいするなかで、それぞれのふね船長せんちょう離船りせん拒否きょひして殉職じゅんしょくするれいられたため、日本にっぽん船長せんちょう協会きょうかいは「あやまった社会しゃかい通念つうねんむ」として船長せんちょう責任せきにんかるくするよう主張しゅちょうおこなった。この結果けっか[いつ?]ほう改正かいせいおこなわれ、船長せんちょう最後さいご離船りせんさい後退こうたいせん法的ほうてき義務ぎむではなくなった[17]

一方いっぽうでは、2012ねんコスタ・コンコルディアの座礁ざしょう事故じこように、おんなあそびにうつつをかして飲酒いんしゅもしていた船長せんちょう自分じぶんだけ避難ひなんするような事件じけんもある[18]。この事件じけんにより欧米おうべいさい後退こうたいせんかんする議論ぎろんき、処遇しょぐう見直みなおすべきとのはなしにもなった。また、2014ねんセウォルごう沈没ちんぼつ事故じこでは、船長せんちょう救助きゅうじょ現場げんばでの指揮しき監督かんとく放棄ほうきして避難ひなんし、おおくの高校生こうこうせいいのちうしなわれた[19]

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく

編集へんしゅう
  1. ^ 日本語にほんごでは「船長せんちょう」「艦長かんちょう」を区別くべつするが、英語えいごではいずれも Captain である。
  2. ^ イギリス海軍かいぐんにおける歴史れきしてき経緯けいいにより(詳細しょうさいは「うみじょう#うみじょう階級かいきゅう位置付いちづ」を参照さんしょう)、英語えいごCaptain は「艦長かんちょう海軍かいぐん士官しかん職務しょくむ)」と「海軍かいぐん大佐たいさ海軍かいぐん士官しかん階級かいきゅう)」の両方りょうほうすため、混同こんどうしょうる。
  3. ^ 水雷すいらいてい掃海そうかいていなど「**てい」のちょうていちょう(ていちょう)という。

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ 「captain (2)」『ジーニアス英和えいわ辞典じてん』(だい3はん大修館書店たいしゅうかんしょてん 
  2. ^ a b 田村たむら諄之輔 、平出ひらでけいどう現代げんだいほう講義こうぎ 保険ほけんほううみ商法しょうほうていだい2はんあおりん書院しょいん、1996ねん、162ぺーじ 
  3. ^ 在日ざいにちまい海軍かいぐん司令しれいのツイート(2010ねん11月4にちづけ
  4. ^ 新着しんちゃく資料しりょう紹介しょうかいコーナー だい21かい神戸大学こうべだいがく海事かいじ博物館はくぶつかん”. みなとの博物館はくぶつかんネットワーク・フォーラム (2016ねん3がつ1にち). 2023ねん7がつ5にち閲覧えつらん
  5. ^ 船乗ふなのりの仕事しごと”. うみ仕事しごとドットコム. 国土こくど交通省こうつうしょう 海事かいじきょく うみわざ振興しんこう 海事かいじ振興しんこう企画きかくしつ. 2023ねん7がつ5にち閲覧えつらん
  6. ^ 船乗ふなのりの仕事しごと一覧いちらん船長せんちょう”. うみ仕事しごとドットコム. 国土こくど交通省こうつうしょう 海事かいじきょく うみわざ振興しんこう 海事かいじ振興しんこう企画きかくしつ. 2023ねん7がつ5にち閲覧えつらん
  7. ^ 肩章けんしょうのはなし”. 中国地方ちゅうごくちほう海運かいうん組合くみあい連合れんごうかい (2020ねん4がつ9にち). 2023ねん7がつ5にち閲覧えつらん
  8. ^ 艦長かんちょう機長きちょうせきみぎひだり
  9. ^ a b c d e f 田村たむら諄之輔 、平出ひらでけいどう現代げんだいほう講義こうぎ 保険ほけんほううみ商法しょうほうていだい2はんあおりん書院しょいん、1996ねん、163ぺーじ 
  10. ^ 田村たむら諄之輔 、平出ひらでけいどう現代げんだいほう講義こうぎ 保険ほけんほううみ商法しょうほうていだい2はんあおりん書院しょいん、1996ねん、164ぺーじ 
  11. ^ a b 田村たむら諄之輔 、平出ひらでけいどう現代げんだいほう講義こうぎ 保険ほけんほううみ商法しょうほうていだい2はんあおりん書院しょいん、1996ねん、165ぺーじ 
  12. ^ 自衛じえいかん乗員じょういん服務ふくむ規則きそくについて(通達つうたつ
  13. ^ 艦長かんちょう機長きちょうせきみぎひだり
  14. ^ 想像そうぞうよりせまくなかった! 海上かいじょう自衛隊じえいたい「おやしお」がた潜水せんすいかん「まきしお」の内部ないぶモーターファン
  15. ^ IFSMA便たよりNO.21しゃ日本にっぽん船長せんちょう協会きょうかい事務じむきょく(2017ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  16. ^ ナホトカごう海難かいなん流出りゅうしゅつ事故じこ概要がいよう今後こんご課題かだい” (PDF). 海上保安庁かいじょうほあんちょう (1997ねん). 2020ねん11月11にち閲覧えつらん
  17. ^ 船長せんちょうなすな さい後退こうたいせん義務ぎむ条項じょうこう不当ふとう 船員せんいんほう改正かいせいうごく」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ40ねん(1970ねん)3がつ6にち朝刊ちょうかん、12はん、15めん
  18. ^ イタリア客船きゃくせん座礁ざしょう事故じこもと船長せんちょう禁錮きんこ16ねん判決はんけつ”. CNN (2015ねん2がつ12にち). 2020ねん11月11にち閲覧えつらん
  19. ^ セウォルごう船長せんちょう殺人さつじんざい無期むき懲役ちょうえき確定かくてい 韓国かんこく最高裁さいこうさい判決はんけつ”. 朝日新聞あさひしんぶん (2015ねん11月12にち). 2020ねん11月11にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう