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農業政策 - Wikipedia

農業のうぎょう政策せいさく

農業のうぎょうかんした政策せいさく

農業のうぎょう政策せいさく(のうぎょうせいさく、えい: agriculture policy)とは、農業のうぎょうかんした行政ぎょうせい政策せいさくのこと。農政のうせい(のうせい)ともばれる。

かつての中国ちゅうごく日本にっぽんでは、すすむのう(かんのう)とばれていた。これは儒教じゅきょうてき農本主義のうほんしゅぎもとづくものであった。近代きんだいてき経済けいざい政策せいさく社会しゃかい政策せいさくとしての農業のうぎょう政策せいさく日本にっぽん登場とうじょうするのは大正たいしょう時代じだいころわれている。

目的もくてき

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農業のうぎょう政策せいさく目的もくてきとして、食糧しょくりょう供給きょうきゅう安定あんてい食糧しょくりょう増産ぞうさん食糧しょくりょう価格かかく維持いじてい価格かかくこう価格かかく)、農家のうか保護ほご食料しょくりょう自給じきゅうりつ向上こうじょうなどがげられる。

どのような目的もくてきもっと重視じゅうしされるかはくに時代じだいにもよるが、一般いっぱんてき経済けいざい発展はってんおうじて以下いかのように変化へんかするとわれている。

てい所得しょとくこく

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経済けいざいいま発展はってんしていない所得しょとくひく社会しゃかいでは、機械きかいなどもすすんでおらず農業のうぎょう生産せいさんせいひく一方いっぽう人口じんこう増加ぞうかりつたかく、十分じゅうぶんりょう食糧しょくりょう生産せいさんむずかしい傾向けいこうにある。くわえて輸出ゆしゅつできるものがすくないため外貨がいか獲得かくとくできず、国外こくがいからの食糧しょくりょう輸入ゆにゅうむずかしいため食糧しょくりょう供給きょうきゅうおおきな不安ふあんがある。また国民こくみんまずしいためエンゲル係数けいすうなどもたかく、生活せいかつにおいて食費しょくひおおきな割合わりあいめており、食糧しょくりょう不足ふそく食糧しょくりょう価格かかく高騰こうとう発生はっせいするとただちに生活せいかつ困窮こんきゅうし、暴動ぼうどう政治せいじ不安ふあんになる危険きけんおおきい。たとえば日本にっぽんにおいても、かつては幾度いくどべい騒動そうどう発生はっせいしている。

くわえて、このような国家こっか工業こうぎょう目指めざすことがおおく、企業きぎょうのほか政府せいふ政治せいじなども賃金ちんぎんひくさを武器ぶき労働ろうどう集約しゅうやくがた産業さんぎょう発達はったつさせようとするため、農業のうぎょうよりも工業こうぎょうほう資金しきん資源しげんおお配分はいぶんされ、かつ労働ろうどうしゃ生活せいかつひくおさえることでてい賃金ちんぎん維持いじしようとする。

このような国家こっかでは、政府せいふ主要しゅよう農産物のうさんぶつ強制きょうせいてきげて都市としなどの労働ろうどうしゃやす販売はんばいし、食糧しょくりょう価格かかくひく維持いじする政策せいさくや、農業のうぎょう部門ぶもんおお課税かぜいしてそのぜい工業こうぎょう部門ぶもん補助ほじょきんなどとして投入とうにゅうする政策せいさく採用さいようされることとなる。

こう所得しょとくこく

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経済けいざい十分じゅうぶん発達はったつして所得しょとくたかくなると、農業のうぎょう技術ぎじゅつたかまり生産せいさんせい向上こうじょうする一方いっぽう人口じんこう増加ぞうかりつ低下ていかし、工業こうぎょう製品せいひん輸出ゆしゅつして外貨がいかることも出来できるようになるためおおくの食糧しょくりょう輸入ゆにゅうすることも可能かのうとなる。このような社会しゃかいでは食糧しょくりょう供給きょうきゅうりょうには不安ふあんく、また国民こくみんゆたかになっており生活せいかつにおいて食費しょくひとく農産物のうさんぶつそれ自体じたいゆたかな社会しゃかいでは食費しょくひなかでも流通りゅうつう加工かこう、そのサービスのめる割合わりあいたかくなる。たとえば多種たしゅ多様たようしなそろえや便利べんり冷凍れいとう食品しょくひん外食がいしょく産業さんぎょうなど。)がめる割合わりあいひくく、農産物のうさんぶつ価格かかくがったところで以前いぜんほど生活せいかつ全体ぜんたいには影響えいきょうあたえない。また、工業こうぎょう労働ろうどう集約しゅうやくてきなものから資本しほん集約しゅうやくてき知識ちしき集約しゅうやくてきなものとなっており、企業きぎょうからしてもてい賃金ちんぎん労働ろうどうしゃ以前いぜんほどもとめられない。

くわえて、農業のうぎょうおおきく土地とち気候きこう条件じょうけん制約せいやくされており、また先進せんしんこくから技術ぎじゅつ導入どうにゅうするにしても地域ちいき見合みあった改良かいりょう取捨選択しゅしゃせんたく必要ひつようとなるため、どうしても工業こうぎょう比較ひかくすると技術ぎじゅつ革新かくしん生産せいさんせい向上こうじょう速度そくどおそ傾向けいこうにある。たとえば、あたらしい自動車じどうしゃ製造せいぞう技術ぎじゅつ高性能こうせいのう工作こうさく機械きかいがアメリカで開発かいはつされた場合ばあい、それらは日本にっぽんにおいても利用りよう可能かのうであるとかんがえられるが、新種しんしゅ小麦こむぎ栽培さいばい技術ぎじゅつ農薬のうやく散布さんぷよう航空機こうくうき開発かいはつされたところで、それらが日本にっぽんにおいても栽培さいばい利用りよう可能かのうかどうかはからない。そのため都市とし工業こうぎょうとう従事じゅうじする労働ろうどうしゃ農村のうそん労働ろうどうしゃあいだ次第しだい経済けいざい格差かくさ発生はっせいしてき、農村のうそん相対そうたいてき貧困ひんこん問題もんだいとなりやすい。

以上いじょうのような理由りゆうにより、工業こうぎょう部門ぶもんなどからの抵抗ていこうすくなく、環境かんきょうへの配慮はいりょもあって、工業こうぎょう部門ぶもんよりも農業のうぎょう部門ぶもん農家のうか保護ほご指向しこうされることとなる。

このような国家こっかでは、農産物のうさんぶつげや輸入ゆにゅう制限せいげん生産せいさんりょう調整ちょうせい減反げんたん政策せいさくなど)をおこなうことで食糧しょくりょう価格かかくたか維持いじする政策せいさくや、農地のうち固定こてい資産しさんぜいなどのぜい負担ふたん低減ていげんしたり農業のうぎょう部門ぶもん税収ぜいしゅう補助ほじょきんなどとして農業のうぎょう部門ぶもん投入とうにゅうする政策せいさくがとられることとなる。

なかでも関税かんぜい輸入ゆにゅう数量すうりょう制限せいげんによる国内こくない農産物のうさんぶつ価格かかく高値たかね維持いじは、国際こくさい価格かかくよりも高価こうか食品しょくひんわざるをないというかたち保護ほごであり消費しょうひしゃ犠牲ぎせいにして農家のうか保護ほごはかるものであるとえるが、財政ざいせい支出ししゅつによる補助ほじょきん交付こうふなどよりもその負担ふたん国民こくみんなどからがたいためれられやすく、ほとんどの先進せんしんこくではこのような措置そちがとられている。

日本にっぽん農業のうぎょう政策せいさく

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江戸えど時代じだいには、納税のうぜいしゃである農民のうみん確保かくほのため農地のうち売買ばいばい幕府ばくふによって禁止きんしされたが、質流しちながれなどのかたち零細れいさい農民のうみん没落ぼつらく富裕ふゆう農民のうみん農地のうち集積しゅうせき進行しんこうした。

大正たいしょう時代じだいには、農林水産省のうりんすいさんしょう当時とうじ実情じつじょうであった寄生きせい地主じぬしせい進行しんこう農民のうみん離村りそん都市とし労働ろうどうしゃめるために「小農しょうのう主義しゅぎ」「自作農じさくのう主義しゅぎ」をかかげて、農産物のうさんぶつ価格かかく安定あんていさくとして米穀べいこくほう1921ねん)・米穀べいこく統制とうせいほう1933ねん)・食糧しょくりょう管理かんりほう1942ねん)などを制定せいていした。これは戦時せんじ体制たいせいけた食糧しょくりょう生産せいさん確保かくほめんからも重視じゅうしされていた。さら最終さいしゅうてきには農地のうち改革かいかくによって寄生きせい地主じぬしせい解体かいたいすることも視野しやれていた。だが、実際じっさいには当時とうじ帝国ていこく議会ぎかい地主じぬしそう議員ぎいん多数たすうめていたために構想こうそうのみにまり、だい2世界せかい大戦たいせん敗戦はいせんによる占領せんりょう実現じつげんされることとなった。農地のうち改革かいかく農業のうぎょう協同きょうどう組合くみあい結成けっせいによって農村のうそん民主みんしゅ生産せいさんせい向上こうじょうへのみちひらかれることとなり、さら1961ねんには農業のうぎょう基本きほんほう制定せいていされたが、べいあまりによる生産せいさん調整ちょうせい外国がいこくからの輸入ゆにゅう自由じゆう圧力あつりょく高度こうど経済けいざい成長せいちょうによるしょう工業こうぎょうとの所得しょとく格差かくさ増大ぞうだいによる人口じんこう都市とし流出りゅうしゅつ後継こうけいしゃ不足ふそくなどのおおくの問題もんだいかかえるにいたった。そこで平成へいせい時代じだいはいると農政のうせい転換てんかんはかられて、1999ねんには食料しょくりょう農業のうぎょう農村のうそん基本きほんほう制定せいていされることになった。

学者がくしゃ見解けんかい

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中野なかの剛志たけし農業のうぎょう農家のうかたん食糧しょくりょう供給きょうきゅうし、消費しょうひしゃがそれをってはらたすだけの存在そんざいではないとしている。農業のうぎょう環境かんきょう保護ほご田園でんえん景観けいかんふくめて、自然しぜん環境かんきょう地域ちいきせい密接みっせつかかわっており、そこにはおかねでは交換こうかんできない価値かちがあり、それを全部ぜんぶ無視むししておかね取引とりひきすると、いままで地域ちいき大事だいじにしてきたナショナル・キャピタル(国民こくみんなか蓄積ちくせきされている有形ゆうけい無形むけい資本しほん)がこわれてしまうとしている[1]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 中野なかの剛志たけし柴山しばやまかつらふとし 『グローバル恐慌きょうこう真相しんそう』 187ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 速水はやみたすく次郎じろう神門ごうど善久ぜんく農業のうぎょう経済けいざいろん 新版しんぱん岩波書店いわなみしょてん 2002ねん ISBN 4-00-001812-4

外部がいぶリンク

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