高精細度ビデオ

高こう精細せいさい度どビデオ（こうせいさいどビデオ、high definition video, HD）とは、かつて広ひろく普及ふきゅうしていたアナログテレビ放送ほうそうと比較ひかくして、高たかい解像度かいぞうどの映像えいぞうである。海外かいがいにおいてはHDTV、HDと表記ひょうきされることが多おおいが、日本にっぽんにおいてはハイビジョンと呼よばれる。主おもな規格きかくには以下いかのものがある。

• 720p
• 1080i
• 1080p

このうち、720pと1080i/pは解像度かいぞうどが大おおきく異ことなり、ハイビジョン対応たいおうであっても1080i/pの映像えいぞうは表示ひょうじできないか、ダウンコンバートして表示ひょうじされる機器ききが存在そんざいするため注意ちゅういが必要ひつようである。1080i/pは、フルHD、フルハイビジョン、2Kなどと呼よばれ区別くべつされる。

HDに対たいして、より低ひくい解像度かいぞうど（アナログテレビ放送ほうそうと同どう程度ていど）の映像えいぞうをSD、より高たかい解像度かいぞうどの映像えいぞう（4Kや8K）をUHDという。

名称めいしょう

マイクロソフトは日本にっぽんでゲーム機きを宣伝せんでんする際さいに、ハイデフィニション（high definition）の略称りゃくしょうとしてハイデフという表現ひょうげんを用もちい、HD画質がしつを紹介しょうかいした。一般いっぱん的てきにフルスペックハイビジョンは1080iを指さす。開発かいはつ初期しょきにおいてはNHKは高こう品位ひんいテレビという名称めいしょうで開発かいはつしており、ソニーはHDVSという名称めいしょうで放送ほうそう機器ききを製造せいぞう販売はんばいしていた。

歴史れきし

高こう精細せいさい度どビデオの仕様しようは1980年代ねんだいに、日本にっぽんで1125ライン・30フレーム毎秒まいびょう（FPS）テレビ規格きかくが開発かいはつされたことに始はじまる。日本にっぽんはこの標準ひょうじゅんを1981年ねんアルジェでのテレビ技術ぎじゅつ者しゃ国際こくさい会議かいぎで発表はっぴょうし、 日本にっぽんのNHKは1983年ねんのスイス会議かいぎでアナログハイビジョン方式ほうしきを発表はっぴょうした。NHKの方式ほうしきは1990年代ねんだい前半ぜんはんにSMPTE（映画えいがテレビ技術ぎじゅつ者しゃ協会きょうかい）標準ひょうじゅん240Mとして標準ひょうじゅん化かされた。

歴史れきし的てきには、高こう精細せいさい度どビデオという用語ようごは1930年代ねんだい後半こうはんに15～220ラインの解像度かいぞうど範囲はんいであった機械きかい的てき走査そうさ方式ほうしきの初期しょき実験じっけんを改善かいぜんするために開発かいはつされたテレビ標準ひょうじゅんに使つかわれていた。英国えいこくのジョン・ロジー・ベアードがこれら機械きかい的てき走査そうさ方式ほうしきの主おもな提唱ていしょう者しゃであったが、フィロ・ファーンズワース、ウラジミール・ツヴォルキン、やアイザック・ショウエンバーグ主導しゅどうでアラン・ブルームラインを擁ようするEMIチーム等とうより電子でんし的てき方式ほうしきに置おき換かえられた。

1936年ねん英国えいこくにおいてアレキサンドラ・パレスから最初さいしょにテレビ放送ほうそう—BBCテレビ—が開始かいしされ、初期しょきはベアード・テレビジョンによる240ライン・24フレーム毎秒まいびょう（fps）の機械きかい走査そうさ方式ほうしきであったが、マルコーニEMIの405ライン・50フィールド毎秒まいびょうインターレース方式ほうしき（2フィールドで1フレーム構成こうせいする）に替かわった。ベアード方式ほうしきは1936年ねん末まつには撤退てったいした。これが世界せかいで初はじめて計画けいかくされた「高こう精細せいさい度ど」テレビであり、この用語ようごは当初とうしょは240ライン以上いじょうの解像度かいぞうどを持もつ方式ほうしきを示しめしていたと認識にんしきされる。マルコーニEMI仕様しようは欧州おうしゅうにてCCIRシステムAとして採用さいようされた。

米国べいこくでは、1940年ねんにNTSC（国家こっかテレビシステム委員いいん会かい）が525ライン・30fpsを標準ひょうじゅん化かし、1941年ねん6月1日にちに放送ほうそう開始かいしされた。NTSC標準ひょうじゅんは1950年ねんに非ひ互換ごかんの441ラインカラー標準ひょうじゅんを含ふくめたが、1953年ねんに互換ごかんの525ライン・29.97fpsカラー標準ひょうじゅん採用さいように置おき換かえられて現在げんざいに至いたる。

米国べいこくのNTSC方式ほうしきとは別べつに、西にしドイツでPAL（位相いそう反転はんてん走査そうさ線せん）が開発かいはつされ、世界せかい各国かっこくに広ひろまった。フランスでもSECAMが開発かいはつされ、フランスとその植民しょくみん地ち、ベルギー、ソ連それん周辺しゅうへんなどに採用さいようされた。

1980年ねん以降いこうの高こう精細せいさい度どビデオ標準ひょうじゅんは、1987年ねんに米国べいこく放送ほうそう局きょくの要請ようせいでFCC（連邦れんぽう通信つうしん委員いいん会かい）による高度こうどテレビ方式ほうしき研究けんきゅうにて開発かいはつされた。ATSC（高度こうどテレビシステム委員いいん会かい）によりFCCは最大さいだい30fpsフレームレートの1080ラインビデオ（技術ぎじゅつ的てきには1125ライン・30fpsのNHKアナログ方式ほうしきを元もととした後継こうけい）と最大さいだい60fpsのフレームレート・プログレッシブ（順次じゅんじ走査そうさ）の720ラインビデオ方式ほうしきを採用さいようした。FCCは1996年ねんにATSC送信そうしん標準ひょうじゅん（HD、SDビデオ標準ひょうじゅんの双方そうほうを含ふくむ）を正式せいしきに採用さいようし、1998年ねん10月がつ28日にちに初はじめて放送ほうそうされた。

世界中せかいじゅうでアナログ方式ほうしきのPAL、NTSC、SECAMが60年ねん以上いじょう送信そうしんされてきた。しかしながら、HD形式けいしきを含ふくむデジタル放送ほうそう方式ほうしきの台頭たいとうにより、アナログ送信そうしんは今後こんご終了しゅうりょうを迎むかえ、NTSC、PAL、SECAMは過去かこのもの、楽観らっかん的てきに見みてでも併存へいそんとなる。その後ごも設置せっち済ずみのアナログビデオ機器きき（テレビ局てれびきょくと家庭かていのテレビ）が膨大ぼうだいであるため、視聴しちょう用ように存続そんぞくする。高こう精細せいさい度どテレビへの切きり替かえには多額たがくの費用ひようを要ようし、特とくに低てい所得しょとく層そうの多おおい地域ちいきでは富裕ふゆう層そうが先行せんこうする。

日本にっぽんでは、2006年ねん12月1日にちに関東かんとう広域こういき圏けんの放送大学ほうそうだいがく学園がくえん、岡山おかやま県けん・香川かがわ県けんの全局ぜんきょく、福岡ふくおか県けんの九州朝日放送きゅうしゅうあさひほうそう、佐賀さが県けん、長崎ながさき県けん、熊本くまもと県けん、大分おおいた県けん、宮崎みやざき県けん、鹿児島かごしま県けんの全局ぜんきょく、沖縄おきなわ県けんの民放みんぽう全局ぜんきょくが地上ちじょうデジタル放送ほうそうを開始かいしし、全すべての都道府県とどうふけん庁ちょう所在地しょざいちで地上ちじょうデジタル放送ほうそうの受信じゅしんが可能かのうとなったことにより、翌よく2007年ねん以降いこう、急速きゅうそくにHD画質がしつのデジタル放送ほうそうが普及ふきゅうした。

形式けいしき考察こうさつ

放送ほうそうに最適さいてきな形式けいしきは録画ろくがに使用しようされるメディア形式けいしきと収録しゅうろく内容ないようの特性とくせいに依存いぞんする。フィールドおよびフレームレートは収録しゅうろく元もとと一致いっちさせるべきであり、解像度かいぞうども同様どうようである。一方いっぽう、高こう解像度かいぞうどは仕様しよう可能かのうの帯域たいいき以上いじょうを必要ひつようとしている。デジタルHDTVでは非ひ可逆かぎゃく圧縮あっしゅくが使用しようされ、画質がしつの低下ていかを伴ともなう。

映画館えいがかん向むけフィルムは高こう精細せいさい解像度かいぞうどであり24フレーム毎秒まいびょうで撮影さつえいされる。使用しよう可能かのうな帯域たいいき、解像度かいぞうど、および画像がぞうの動うごきにより、ビデオ変換へんかんに最適さいてきな形式けいしきは720p24または1080p24のいずれかとなる。PALを使用しようする国くにのテレビでは、フィルムを4%高速こうそくにして秒びょう間あいだ25フレームに変換へんかんしなければならない。NTSC標準ひょうじゅん（60フィールド毎秒まいびょう）の国くにでは、3:2プルダウンとよばれる技術ぎじゅつが使用しようされる。フィルムの1フレームがビデオの3フィールド（1/20秒びょう）に対応たいおうし、次つぎのフレームがビデオの2フィールド（1/30秒びょう）に対応たいおうし、これが繰くり返かえされることで、フィルムの2フレームを正確せいかくに1/12秒びょうに収録しゅうろくできる。（テレシネ参照さんしょう）（注ちゅう: この動作どうさは、フィルムが24.00フレーム毎秒まいびょうの撮影さつえいである一方いっぽう、NTSCデジタルビデオの24pは秒びょう間あいだ23.976フレームであるため複雑ふくざつである。これはNTSCビデオは、モノクロNTSCビデオとの1000/1001の相違そういで（60.00ではなく）59.97フィールド毎秒まいびょうであることによる。したがって、フィルムからNTSCビデオへのテレシネでは画像がぞうと音声おんせいを0.1%遅おくらせる必要ひつようがある。）

過去かこ（高こう精細せいさい度どテレビ以前いぜん）のBETACAM SPなどのビデオテープへの収録しゅうろくは480i60または576i50であった。これらは高こう解像度かいぞうど形式けいしき（720i）へアップコンバートされるが、インターレース（飛とび越こし走査そうさ）から一般いっぱんの720p形式けいしきの変換へんかんは画像がぞうの歪ゆがみを伴ともなうため、変換へんかん後ごの出力しゅつりょくをフィルター処理しょりして実じつ解像度かいぞうどを低下ていかさせる必要ひつようがある。

映画えいが以外いがいでの高こう精細せいさい度どテレビのビデオ収録しゅうろくは720pまたは1080i形式けいしきである。放送ほうそう形式けいしきはテレビ放送ほうそう局きょくに依存いぞんするが、形式けいしき選択せんたくには様々さまざまな要因よういんがある。一般いっぱんに、720pはプログレッシブ方式ほうしきであるため、インターレース方式ほうしきであるため速はやい動画どうがの画像がぞう品質ひんしつに劣おとる1080iに対たいして、速はやい動作どうさに適てきしている。また、コンピュータのモニターがプログレッシブ方式ほうしきであり、グラフィックカードのほとんどがリアルタイムのインターレース除去じょきょの最適さいてき化か処理しょりを行おこなうため、720pはHDビデオのインターネット配信はいしんに適てきしている。720pビデオはまた1080iや1080pよりもストレージやデコードの要求ようきゅうが低ひくい。720pは、250米あめりかドル以下いかで販売はんばいされる一般いっぱん的てきなSXVGA（1280×1024）液晶えきしょうディスプレイをフル解像度かいぞうどで表示ひょうじできる。

北米ほくべいでは、FOX、ABC、およびESPN（ABCとESPNはディズニー傘下さんか）は720p番組ばんぐみを放送ほうそうしている。PBS、NBC、Universal-HD（以上いじょうゼネラル・エレクトリック傘下さんか）、 CBS、UPN、Showtime、INHD、HDNet、およびタイム・ワーナー傘下さんかのHBO-HD、the WBおよびTNTは1080i番組ばんぐみを放送ほうそうしている。

一般いっぱん的てきな高こう解像度かいぞうどビデオモード

Video mode	Frame size in pixels (W×H)	Pixels per image1	Scanning type	Frame rate (Hz)
720p (also known as HD Ready)	1,280×720	921,600	プログレッシブ	23.976, 24, 25, 29.97, 30, 50, 59.94, 60, 72
1080i (also known as Full HD)	1,920×1,080	2,073,600	インターレース	25 (50 fields/s), 29.97 (59.94 fields/s), 30 (60 fields/s)
1080p (also known as Full HD)	1,920×1,080	2,073,600	プログレッシブ	24 (23.976), 25, 30 (29.97), 50, 60 (59.94)
1440p (also known as Quad HD)	2,560×1,440	3,686,400	プログレッシブ	24 (23.976), 25, 30 (29.97), 50, 60 (59.94)

超ちょう高こう精細せいさいビデオモード

Video mode	Frame size in pixels (W×H)	Pixels per image1	Scanning type	Frame rate (Hz)
2000	2,048×1,536	3,145,728	プログレッシブ	24, 60
2160p (also known as 4K UHD)	3,840×2,160	8,294,400	プログレッシブ	60, 120
2540p	4,520×2,540	11,480,800	プログレッシブ	24, 30
4000p	4,096×3,072	12,582,912	プログレッシブ	24, 30, 60
4320p (also known as 8K UHD)	7,680×4,320	33,177,600	プログレッシブ	60, 120

ノート: 画像がぞうはフレーム、またはインターレーススキャンの場合ばあいは2つのフィールド（EVENとODD）のいずれかである。

あまり一般いっぱん的てきではないが、2560×1080p（1080p ウルトラワイド）など、ウルトラワイド解像度かいぞうどもある。 その他た、WQHD(2560×1440p)画質がしつも存在そんざいする。

ゲーム機きにおけるHD

次つぎのゲーム機きがハード性能せいのう上じょう対応たいおうしているが、1080i、720p、1080pのうち、どの解像度かいぞうどに対応たいおうするかはゲームソフトにより異ことなる。

• Xbox 360/PlayStation 3
• Wii U/PlayStation 4/Xbox One
• Nintendo Switch/PlayStation 5/Xbox Series X/S

映画えいが制作せいさくでのHD

詳細しょうさいは「デジタルシネマ」を参照さんしょう

映画えいがでのコンピュータ生成せいせい・代替だいたいの画像がぞう増加ぞうか、および画像がぞう編集へんしゅう処理しょりのデジタル化かに伴ともない、デジタルビデオカメラ最さい上位じょうい機きによるHD形式けいしきを使用しようして映画えいが撮影さつえいを行おこなう監督かんとくも現あらわれた。HDビデオはSDビデオに比くらべて非常ひじょうに高こう品質ひんしつであり、匹敵ひってきするフィルム感度かんどの信号しんごう対たい雑音ざつおん比ひ（SN比ひ）に改善かいぜんされているが、フィルムはHDビデオ形式けいしきより精細せいさいに画像がぞうを解かい像ぞうできる。また、フィルムには最さい上位じょういのHDカメラよりも広ひろいダイナミックレンジ（ある画面がめんの最さい暗部あんぶと最さい明あかり部ぶのを解かい像ぞう可能かのうな能力のうりょく）を持もつものがある。HD使用しようの主おもな説明せつめい意見いけんとしては、フィルムストックの費用ひようの抑制よくせいと特殊とくしゅ効果こうか編集へんしゅうシステムへの転送てんそうを容易よういにすることである。これまでHDを幅広はばひろく使用しようした監督かんとくは：ジョージ・ルーカス、マイケル・マン、ロバート・ロドリゲスである。

スタートレック:エンタープライズやスターゲイトなど、SFを主題しゅだいとしたテレビ番組ばんぐみの多おおくはデジタルカメラを使つかい始はじめている。 HDデジタルビデオの撮影さつえいを行おこなった主おもな映画えいがは次つぎの通とおり：

• スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃こうげき
• スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐ふくしゅう
• スパイキッズ2 失うしなわれた夢ゆめの島しま
• スパイキッズ3-D:ゲームオーバー
• レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
• シン・シティ
• コラテラル
• マイアミ・バイス

スマートフォンにおけるHD

720p、1080pディスプレイのスマートフォン。

• 高こう解像度かいぞうどスマートフォンディスプレイの比較ひかく

関連かんれん項目こうもく

• 標準ひょうじゅん画質がしつ映像えいぞう
• 16:9のアスペクト比ひ
• ISDB
• スーパーハイビジョン