ズヴェズダ( Zvezda; ロシア語: Звезда; 「星」を意味する)は、国際宇宙ステーション (ISS) を構成するモジュールの一つである。ズヴェズダ・サービス・モジュールとも呼ばれる。ズヴェズダは3番目に打ち上げられたモジュールで、2人の乗員の居住空間や生命維持装置などの機能があり、ISS のロシア部分の構造的・機能的な中心となっている。
ズヴェズダを建造したのはRKKエネルギアで、ピアースを除いて現時点では唯一のロシア資金で建造されたモジュールである(ザーリャはロシアの建造だが、アメリカが資金提供し所有している)。ズヴェズダは2000年7月12日にプロトンロケットで打ち上げられ、7月26日にザーリャモジュールとドッキングした。打ち上げに使われたロケットには、初の宇宙広告 (Space advertising) の一つであるファーストフードチェーン・ピザハットのロゴが描かれていて、同社はこの広告に100万ドルを支払った。
起源
ズヴェズダの基本的な構造枠組み( DOS-8 として知られている)は、当初は宇宙ステーションミール2の中核部として1980年代中ごろに建造された。これは、宇宙ステーションミールの中核モジュール(DOS-7)とズヴェズダが同じレイアウトであることを意味している。事実ズヴェズダは、工場では当分の間「ミール2」と呼ばれていた。ゆえにこのデザイン系統は、初代の宇宙ステーションサリュートにまで遡ることができる。立体骨組は1985年2月に完成し、内部の主な機器は1986年10月までに設置された。
構造
ズヴェズダは、乗員が作業し居住する円筒形の「作業区画 (Work Compartment) 」、ドッキング・ポートが1つある円筒形の「移送チャンバ (Transfer Chamber) 」、移送チャンバの周りにある非与圧の「組立区画 (Assembly Compartment) 」、ドッキング・ポートが3つある球形の「移送区画 (Transfer Compartment) 」からなる。
移送区画はザーリャモジュールに接続し、残りのドッキング・ポートには科学電力プラットフォーム (SPP) とユニバーサル・ドッキング・モジュール (UDM) が接続されることになっていた。現在は、下のポートにはロシアのドッキング室ピアースが接続され、もう一方には何も接続されていない。エアロックとして使うこともできるが、もしハッチが故障するとステーションの他への移動が不可能となるため、これまでにエアロックとして使われたことはない。
組立区画には、スラスタやアンテナや推進剤タンクなどの外部設備が装備されている。
移送チャンバには、ソユーズ宇宙船やプログレス補給船に使われる自動ドッキング装置がある。
ズヴェズダには、2人の宇宙飛行士用の寝室、NASA から提供されたトレーニング用のトレッドミル(ランニングマシーン)とエアロバイク、トイレなどの衛生施設や冷凍冷蔵庫付きの調理室がある。誘導や航法用に使われるロシアのコンピュータも搭載されている。合計で14個の窓があり、前方の移送区画に直径9インチの窓が3つ、作業区画に16インチの窓が1つ、各乗員室に1つずつ、などである。また、廃水や空気中の水蒸気を凝縮して得られた水を電気分解して水素と酸素を生成するエレクトロンシステムも搭載されている。水素は船外に投棄され、酸素は呼吸に使われる。緊急時には、廃水や凝縮された水を飲むこともできるが、通常は地球から運んできた真水を飲んでいる。16基の小型スラスタと、2基の推進用大型スラスタ、8基のバッテリーも装備されている。
エレクトロンシステムはメンテナンス作業が重要で何度か故障したこともあり、故障が長時間に及んだ時には固体燃料酸素発生装置 (Solid Fuel Oxygen Generation) キャニスター(一般には「酸素発生キャンドル」と呼ばれ、ミールの火災原因にもなった)を使わねばならなくなった。船内の空気から二酸化炭素を除去するヴォズドゥフ (Vozdukh) システムも含まれている。ズヴェズダは著しい騒音が問題となっており、船内では乗員が耳栓をしているのがよく見られる。
ISS への接続
2000年7月26日に、ザーリャの後部へズヴェズダがドッキングし、 ISS で3番目の構成要素となった(ザーリャへはアメリカのユニティモジュールが接続済みであった)。7月中には、ザーリャのコンピュータからズヴェズダのコンピュータへ ISS の指揮機能が引き渡された[1]。
2000年9月11日に、スペースシャトル STS-106 の2人の乗員により、ズヴェズダとザーリャの最終的な接続が完了した。エド・ルーとユーリ・マレンチェンコの両飛行士が6時間14分の船外活動 (EVA) を行ない、電力線を4本、ビデオケーブルとデータケーブルを4本、光ファイバーテレメトリーケーブルを1本、ズヴェズダとザーリャ間で合計9本のケーブルを接続した[2]。翌日の9月12日午前12時20分 CDTには、STS-106乗組員が初めてズヴェズダの内部に入った[3]。
ズヴェズダにより、初期段階の居住空間、生命維持装置、通信システム、電力供給、データ処理システム、飛行管制システム、推進システムが提供された。これらの居住空間やシステムは、将来の ISS 構成要素で補完されるか置き換えられることになっている。
ズヴェズダの2基のメインエンジンを使ってステーションの高度を上げることができ、2007年4月25日に実施された。2000年にズヴェズダが到着して以来、このエンジンを噴射したのはこれが初めてであった[4]。
打ち上げ時のリスク
ロシアの財政問題により、ズヴェズダはバックアップも保険も無しで打ち上げられた。そのリスクのため、打ち上げが大幅に遅れたり打ち上げに失敗した場合に備えて、NASA は暫定制御モジュール (ICM) を建造した。しかしサービス・モジュール無しでは、乗員が恒久的に ISS へ滞在できるようになるためには、さらにもう何回かの飛行が必要となる。
仕様
- 全長 : 13.1m
- 最大径 : 4.15m
- 質量 : 19,050kg
- 太陽電池パネルの全幅 : 29.72m
- 電力系統 : 太陽電池
出典
外部リンク