統一とういつ場じょう理論りろん

統一とういつ場じょう理論りろん（とういつばりろん）とは場ばの理論りろんにおいて種々しゅじゅの相互そうご作用さよう力りょくを一いち種類しゅるいに統一とういつする理論りろんである。自然しぜん界かいの四よっつの力ちからを全すべて統一とういつすることが到達とうたつ点てんである。この全すべての力ちからを統一とういつした理論りろんのことを万物ばんぶつの理論りろんと呼よぶ。現在げんざい、万物ばんぶつの理論りろんの候補こうほは、超ちょう弦つる理論りろんのみであると考かんがえられている。

概要がいよう

場ばの理論りろんは種々しゅじゅの場ば同士どうしの結合けつごうの理論りろんと言いっても過言かごんではない。場ばの理論りろんでは場ば（粒子りゅうし）は半径はんけいを持もたない無限むげんに小ちいさいものとされ、そのような描像では衝突しょうとつをはじめとするあらゆる物理ぶつり現象げんしょうは場ば同士どうしが相互そうご作用さよう力りょくで引ひき合あうことなくして起おこり得えない。統一とういつ場じょう理論りろんとは場ばの理論りろんにおいて、模型もけいが持もつ結合けつごうの理論りろんを一ひとつに統一とういつするための理論りろんであり、狭義きょうぎにはゲージ理論りろんによって記述きじゅつされる相互そうご作用さようを統一とういつする理論りろんである。

歴史れきしと背景はいけい

一見いっけん異ことなる物理ぶつり現象げんしょうや法則ほうそくであってもその実み、よりシンプルな理論りろんの一部いちぶである、という事実じじつは物理ぶつり学がくの歴史れきしが示しめしており、「よりシンプルな理論りろんでより多おおくを説明せつめいする」という目的もくてきは理論りろん物理ぶつり学がくの一ひとつの至上しじょう命令めいれいである。古ふるくはジェームズ・クラーク・マクスウェルによる電気でんき力りょくと磁気じき力りょくを電磁気でんじき力りょくとして統一とういつである。電流でんりゅうや時間じかん変動へんどうする電場でんじょうは磁場じばを生しょうじ、時間じかん変動へんどうする磁場じばは電場でんじょうを生しょうじる。互たがいに相互そうご関係かんけいにあり、これら2つを電磁気でんじき力りょくとして統一とういつされた。

場ばの理論りろんの相互そうご作用さよう力りょくの統一とういつの試こころみは、最初さいしょ期きとしてはアルベルト・アインシュタインやテオドール・カルツァ、オスカル・クラインによる一般いっぱん相対性理論そうたいせいりろんと量子りょうし電磁気でんじき学がくの統一とういつの試こころみであるが、これは場ばの理論りろんが確立かくりつしていない時代じだいの試こころみであり、量子りょうし電磁気でんじき学がくは物理ぶつり学者がくしゃであったリチャード・ファインマンらによって繰くり込こみが発見はっけんされて以降いこうようやく確立かくりつした理論りろんである。くりこみ可能かのう性せいの議論ぎろんによれば量子りょうし重力じゅうりょく場じょうの理論りろんは理論りろん内ないに無限むげんの発散はっさんを含ふくんでおり、量子りょうし重力じゅうりょく場じょう理論りろんそのものが破綻はたんをきたしていたため重力じゅうりょくを含ふくむ統一とういつ理論りろんの研究けんきゅうは長ながく影かげを潜ひそめることになる。

スティーヴン・ワインバーグ、アブドゥッサラームは電磁気でんじき力りょく（電磁でんじ力りょくとも呼よぶ）と弱よわい力ちからを電でん弱じゃく統一とういつ理論りろんとして統一とういつした。この意味いみは、「電荷でんかをもつ素粒子そりゅうしは必かならず弱じゃく超ちょう電荷でんかもあわせもつ」理論りろん形式けいしきになっているということで、つまり普通ふつうの電荷でんかの定義ていぎに弱じゃく超ちょう電荷でんか演算えんざん子この第だい3成分せいぶんが含ふくまれている。このような電でん弱じゃくの不可分ふかぶんな関係かんけいは実験じっけん事実じじつに基もとづくが、数学すうがく的てきには非ひ可か換かわな2×2行列ぎょうれつであらわされる。これにより実験じっけん的てきには全まったく異質いしつな相互そうご作用さよう力りょくであった電磁気でんじき力りょくとフェルミ相互そうご作用さようは、実じつは2種類しゅるいのゲージ対称たいしょう性せいが破やぶれた結果けっか生しょうじていることが判明はんめいした。これを電でん弱じゃく統一とういつ理論りろんという。電でん弱じゃく統一とういつ理論りろんは相互そうご作用さよう力りょくを統一とういつする理論りろんではない（この意味いみで統一とういつ場じょう理論りろんではない）が、純粋じゅんすいなゲージ理論りろんである量子りょうし電磁気でんじき学がくと質量しつりょう次元じげんを持もつ相互そうご作用さようであるフェルミ相互そうご作用さようを、ゲージ理論りろんのみで説明せつめいしている。

現在げんざい、現実げんじつに存在そんざいする粒子りゅうし描像を説明せつめいすることが出来できる標準ひょうじゅん模型もけいは上記じょうきの二に種類しゅるいのゲージ理論りろん、アーベル群ぐん対称たいしょう性せいで記述きじゅつされる超ちょう電荷でんか相互そうご作用さようと特殊とくしゅユニタリ群ぐん対称たいしょう性せいで記述きじゅつされる弱よわい相互そうご作用さよう、加くわえてSU(3)対称たいしょう性せいで記述きじゅつされる量子りょうし色しょく力学りきがくをゲージ理論りろんとして含ふくんでいる。これらのゲージ群ぐんをより大おおきなゲージ群ぐんの部分ぶぶん群ぐんと仮定かていし、ゲージ結合けつごう定数ていすうを統一とういつしようとする理論りろんが大だい統一とういつ理論りろん(Ground Unified Theory : GUT)である。くりこみ群ぐんの観点かんてんによるとゲージ結合けつごう定数ていすうは物理ぶつり現象げんしょうそのものの典型てんけい的てきなスケールに依存いぞんしており、例たとえば異ことなるエネルギーの衝突しょうとつ実験じっけんにおいては同おなじ粒子りゅうし同士どうしの衝突しょうとつであっても結合けつごう定数ていすうは異ことなる値ねを取とることになる。ゲージ結合けつごう定数ていすうとエネルギースケールの関係かんけいは標準ひょうじゅん模型もけいにおいてはほぼ完全かんぜんに解析かいせきすることが可能かのうであり、 $10^{16}$ GeV程度ていどの領域りょういきでほぼ等ひとしい値ねとなる。大だい統一とういつ理論りろんはこのような典型てんけい的てきなスケール以上いじょうにおいて、例たとえばU(1)、SU(2)、SU(3)の三みっつの対称たいしょう性せいがSU(5)などの大おおきな対称たいしょう性せいに統一とういつされ、結合けつごう定数ていすうが一ひとつになる、と考かんがえている。また、超ちょう対称たいしょう性せいによって拡張かくちょうされた超ちょう対称たいしょう大だい統一とういつ理論りろんではゲージ理論りろんでは $10^{16}$ ～ $10^{17}$ GeV程度ていどでゲージ結合けつごうの値ねが極きわめて等ひとしい値ねとなるが、陽子ようし崩壊ほうかいなどの大だい統一とういつ演算えんざん子この抑制よくせいが通常つうじょうの理論りろんより弱よわくなるため、非常ひじょうに厳きびしい制限せいげんがついている。

標準ひょうじゅん模型もけいのゲージ相互そうご作用さように加くわえ、重力じゅうりょくをも含ふくめた統一とういつ理論りろんの構築こうちくには、上記じょうきのように量子りょうし重力じゅうりょく場じょうの理論りろんが含ふくむ無限むげんの発散はっさんを取とり払はらう必要ひつようがある。場ばの理論りろんを離はなれ（あるいは非ひ局所きょくしょ場じょうの理論りろんとして）、弦つる理論りろんを考かんがえると重力じゅうりょくを含ふくむ4つの相互そうご作用さようが統一とういつ出来できる可能かのう性せいが示唆しさされている。弦つる理論りろんは理論りろんにベクトルと二に次じのテンソルが自然しぜんに現あらわれ、これらをゲージ場じょうおよび重力じゅうりょく場じょうと見みなすことで4つの相互そうご作用さよう力りょくを弦つるの理論りろんに統一とういつすることが出来できる可能かのう性せいがあり、盛さかんに研究けんきゅうされている。弦つる理論りろんにおいても重力じゅうりょく理論りろんはくりこみ不可能ふかのうであり、量子りょうし重力じゅうりょく理論りろんとしての候補こうほにはなり得えないが、超ちょう対称たいしょう性せいを用もちいて拡張かくちょうされた超ちょう弦つる理論りろんは、この問題もんだいも解決かいけつしており、S行列ぎょうれつのユニタリ性せいなどから26次元じげんの理論りろんであれば矛盾むじゅん無なく構築こうちく可能かのうであることが示しめされている。

参考さんこう文献ぶんけん

二に間瀬ませ敏史としふみ『図解ずかい雑学ざつがく素粒子そりゅうし』、ナツメ社しゃ
戸塚とつか洋二ようじ『素粒子そりゅうし物理ぶつり』、岩波書店いわなみしょてん
九きゅう後ご汰一郎ろう『ゲージ場じょうの量子りょうし論ろん1、2』、培風館ばいふうかん
藤川ふじかわ和男かずお『ゲージ場じょうの理論りろん』、岩波書店いわなみしょてん
S. Weinberg著ちょ、青山あおやま秀明ひであき、有末ありすえ宏明ひろあき共ども訳やく『場ばの量子りょうし論ろん1-4』、吉岡よしおか書店しょてん

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