裁縫さいほう

着物きものを縫ぬう座すわる女性じょせい、歌川うたがわ国芳くによし 貞操ていそう千せん代だいの鑑かん 智さとし、19世紀せいき初頭しょとう。異ことなる文化ぶんかにより、生地きじの裁断さいだん方法ほうほうからステッチの種類しゅるいに至いたるまで、多様たような縫製ほうせい技術ぎじゅつが発展はってんしてきました。

裁縫さいほう（さいほう）は、布ぬのなどを裁たち（裁断さいだん）、縫ぬう（縫合ほうごう）こと。手芸しゅげいのうち針はりと糸いとなどを使つかって布ぬのを縫ぬい衣服いふくなどを制作せいさくする行為こうい（広義こうぎの家事かじ）。縫ぬいもの、針仕事はりしごとともいう。マジックペンの使用しようや布ぬのを縛しばることも裁縫さいほうの一部いちぶとして知しられている。

作業さぎょう者しゃは、針子はりこ、お針子はりこ、江戸えど時代じだいには針はり妙みょう（しんみょう）と呼よばれた。

概要がいよう

「裁縫さいほう」は糸いとや布ぬのを用もちいた手仕事てしごとのことをいう。飯塚いいづか信雄のぶおは「裁縫さいほう」と「手芸しゅげい」の違ちがいについて、裁縫さいほう（針仕事はりしごと）は純粋じゅんすいに機能きのう性せいを求もとめるのに対たいし、手芸しゅげいは機能きのう性せいとともに装飾そうしょく性せいを求もとめる点てんで異ことなるとしているが、一方いっぽうで手芸しゅげいの場合ばあいは必かならずしも針仕事はりしごとに限かぎられないという違ちがいもある。なお、日本語にほんごの「手芸しゅげい」と「裁縫さいほう」の関係かんけいについては、1895年ねん（明治めいじ28年ねん）高等こうとう女学校じょがっこう規程きていで裁縫さいほうが実生活じっせいかつの観点かんてんから必須ひっす科目かもく、手芸しゅげいが「勤勉きんべんヲ好こうムノ習慣しゅうかんヲ養やしなえフ」観点かんてんから随意ずいい科目かもくに編入へんにゅうされ、目的もくてきの異ことなる科目かもくとして成立せいりつした経緯けいいがある。

裁縫さいほうは、簡単かんたんなものでは取とれてしまったボタンを取とり付つけ直なおしたり、またはほつれてしまった部分ぶぶんを直なおすことであるが、手芸しゅげいとして高度こうど化かすると布ぬのから衣服いふくを作つくり上あげたり、ぬいぐるみなどの玩具おもちゃに至いたるまで布製ぬのせいの物品ぶっぴんを作つくることも対象たいしょうとなる。

衣服いふくを制作せいさくする行為こういを仕立したててともいい、日本にっぽんにおいては、和裁わさい（和服わふくを作つくること）と洋裁ようさい（洋服ようふくを作つくること）とがある。

歴史れきし

多おおくの文化ぶんかで、石器せっき時代じだいには縫物ぬいものをしていた形跡けいせきが見みられた。骨ほねやシカの角かく、木材もくざいから針はりが作つくられ、動物どうぶつの健けん・消化しょうか器きカットグット・植物しょくぶつのツタなどが紐ひもとして縫物ぬいものが行おこなわれていた。

機械きかい化か以前いぜんは衣服いふくは貴重きちょう品ひんであり、針仕事はりしごとは衣服いふくを長持ながもちさせる重要じゅうような仕事しごとであった。長ながい間あいだ、女性じょせいの仕事しごとであり、日本にっぽんでもヨーロッパでも針箱はりばこ・裁縫さいほう道具どうぐが嫁入よめいり道具どうぐであった。

技術ぎじゅつ

裁縫さいほうの技術ぎじゅつは一朝一夕いっちょういっせきに身みに付つくものではなく、技能ぎのうの学習がくしゅうと訓練くんれんが必要ひつようである。このため義務ぎむ教育きょういくなどでは家庭かてい科かの範疇はんちゅうでこういった作業さぎょうに関かんする教育きょういくが行おこなわれるほか、専門せんもん学校がっこうなどではこれを専せん門もんに教おしえるところや、被服ひふく科かなどの特別とくべつなカリキュラムも存在そんざいする。大学だいがくなどでは、被服ひふく学がくあるいは被服ひふく構成こうせい学がくの一部いちぶとして教授きょうじゅされる場合ばあいがある。また布ふはく縫製ほうせい技能ぎのう士しのような技能ぎのう試験しけんによる資格しかくも存在そんざいする。

手縫てぬい

裁縫さいほう（針仕事はりしごと）には、糸いと、布ぬの、針はりなどを用もちいる。こういった裁縫さいほう道具どうぐなどを収おさめる箱はこのことを裁縫さいほう箱ばこという。簡単かんたんな「ソーイングキット」（最低限さいていげんの道具どうぐをセットにした裁縫さいほうセット）も販売はんばいされている。

基本きほん的てきな縫製ほうせい手法しゅほうを基礎きそ縫ぬいという。

• 縫ぬい方かた
  • 本ほん縫ぬい（ぐし縫ぬい） - 布ぬのを縫ぬい合あわせるときなどに用もちいる一般いっぱん的てきな方法ほうほう
  • 本ほん返かえし縫ぬい
  • 半はん返かえし縫ぬい - 一いち針はり進すすんだ半分はんぶんの長ながさを返かえりながら縫ぬい進すすむ方法ほうほう
  • かがり縫ぬい
  • まつり縫ぬい
• 糸いとの処理しょり
  • 玉たま結むすび - 親指おやゆびと人差ひとさし指ゆびで糸いと端はしを持もって、人差ひとさし指ゆびで輪わを作つくりながら指先ゆびさきから外はずして糸いと玉だまを作つくる方法ほうほう
  • 玉たまどめ - 縫ぬい終おわりの縫ぬい目めに縫ぬい針ばりを直角ちょっかくに当あてて糸いとを巻まき付つけて引ひき抜ぬき糸いと玉だまを作つくってとめる方法ほうほう

技術ぎじゅつ

• 刺とげ繡
• キルト
• パッチワーク

機械きかい化か

ミシンなど裁縫さいほうを支援しえんする機械きかいも発達はったつしており、こと先進せんしん国こくで利用りようされているミシンの中なかには20世紀せいき末まつ頃ごろよりコンピュータを内蔵ないぞうした多た機能きのう化か・高性能こうせいのう化かした機器ききも登場とうじょうしている。これらミシンは家庭かていから縫製ほうせい工場こうじょうまで、様々さまざまな製品せいひんが様々さまざまな用途ようとに用もちいられ、様々さまざまな縫製ほうせい品ひんを作つくり出だしている。

現在げんざいは自動じどう化かが進行しんこうしており、自動じどう検けん反はんシステム、自動じどう裁断さいだんシステム、自動じどう袖付そでつけミシン、自動じどうボタン付づけミシン、自動じどう縫製ほうせいシステムなどが使つかわれるようになって、裁縫さいほうは労働ろうどう集約しゅうやく的てきでは無なくなってきている。

大だい規模きぼな縫製ほうせい工場こうじょうではロボット化かにより裁縫さいほうに人間にんげんが関かかわらないこともある。

裁縫さいほうと技能ぎのう資格しかく

• 布ふはく縫製ほうせい技能ぎのう士し
• 紳士しんし服ふく製造せいぞう技能ぎのう士し
• 婦人ふじん子供こども服ふく製造せいぞう技能ぎのう士し
• 和裁わさい技能ぎのう士し
• 帆布ほぬの製品せいひん製造せいぞう技能ぎのう士し

趣味しゅみ

趣味しゅみとして積極せっきょく的てきに裁縫さいほうを好このむ者ものもいる。世界せかい各地かくちで余暇よか的てき・趣味しゅみ的てき仕事しごととみられていたものが、アート、フェアトレード商品しょうひん、エスニック雑貨ざっかなどとして美術びじゅつ市場いちばや商品しょうひん市場いちばの領域りょういきにも進出しんしゅつするなど、従来じゅうらいの手芸しゅげいの概念がいねんでは捉とらえきれない展開てんかいがみられる。

施設しせつ

オランダでは、女性じょせい囚人しゅうじん用ようの刑務所けいむしょをスピンハウスと呼よび、更生こうせいのため強制きょうせい労働ろうどうを行おこなう裁縫さいほう場じょうが設もうけられた。アムステルダム女性じょせい懲治場じょう（Spinhuis）が有名ゆうめい。

関連かんれん項目こうもく

• 和裁わさい - 日本にっぽんの伝統でんとう的てきな裁縫さいほう。
• 洋裁ようさい - 和裁わさいの対義語たいぎご。
• 編あみ物もの - 趣味しゅみとしての裁縫さいほう（縫ぬいもの）としばしば並列へいれつされる。
• 刺繍ししゅう - 布ぬのと糸いとで意匠いしょうを凝こらす装飾そうしょく技法ぎほう。
• 手袋てぶくろ - 各種かくしゅ縫製ほうせい手法しゅほうが記述きじゅつされている。
• 自衛じえい官かん - 階級かいきゅう章しょうや部隊ぶたいごとのワッペンを制服せいふくに縫ぬい付つける作業さぎょうが多おおいため、入隊にゅうたい時じに裁縫さいほう道具どうぐを携行けいこうすることが求もとめられる。
• ドレスメイカー
• オナガサイホウチョウ - クモの糸いとで葉はを袋ふくろ状じょうに縫ぬい合あわて土台どだいを作つくりその中なかに巣すを架かけることからこの名なが付ついた。
• もったいない - 再さい使用しよう

  かつて布ぬの製品せいひんが貴重きちょうだった時代じだいには、着古きふるした衣服いふくから更さらに衣類いるいを作つくり、それでも古ふるくなったらおしめや雑巾ぞうきん・手拭てぬぐいなどに作つくり替かえ、徹底的てっていてきに再さい利用りようして資源しげんを無駄むだなく利用りようしていた。日本にっぽんでも21世紀せいきに入はいり、循環じゅんかん型がた社会しゃかいなどでこういった家庭かてい内ないで可能かのうな資源しげん循環じゅんかんも見直みなおされている。