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くノいち

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

くノいち(くのいち)は、おんな隠語いんご[1][2]。1960年代ねんだい以降いこう創作そうさくぶつにおいてはおんな忍者にんじゃ言葉ことばとしてひろまっている。

山田やまだかぜ太郎たろう時代じだい小説しょうせつしのぶ法帖ほうじょうシリーズ』をはじめとして[3]、くノいち小説しょうせつテレビドラマ映画えいが漫画まんがなど多数たすう創作そうさくぶつ登場とうじょうするが、三重大学みえだいがく山田やまだ雄司ゆうじ吉丸よしまる雄哉ゆうやらによる近年きんねん研究けんきゅうによれば、男性だんせいおなじように偵察ていさつ破壊はかい活動かつどうおこなった女性じょせい忍者にんじゃ存在そんざいについては史料しりょう記録きろくがない[1][2]

吉丸よしまる調査ちょうさによれば、創作そうさくぶつにおいてくノいちじょ忍者にんじゃ意味いみもちいられるようになったのは山田やまだかぜ太郎たろうの『にん法帖ほうじょうシリーズ』の影響えいきょうおおきい[3]

江戸えどにおける「くノいち」のかたり

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語源ごげん

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く ノ いち

くノいちおんなすのは、「おんな」という漢字かんじじゅんで1かくずつに分解ぶんかいすると「く」「ノ」「いち」となるためであるとおもわれる[1]

江戸えどにおける意味いみ

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江戸えどには「くノいち」は「おんな」を隠語いんごとして使つかわれており、おんな忍者にんじゃ意味いみはまったくなかった[4]

用例ようれい

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江戸えどには「くノいち」の用例ようれいすくない。これは当時とうじおんな」というは「くノいち」に分解ぶんかいできる楷書かいしょたいではなく、くずしくさ書体しょたいかれることがおおかったからかもしれない[1]

ふる用例ようれい

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くノいちふる用例ようれいとして以下いか

香炉こうろほうくノいちこめすだれ(みす)のひま — 俳諧はいかい点者てんじゃとおぶね(1653~)の自薦じせん句集くしゅうとおふねせんつけ』(のべたから8年刊ねんかん)

がある[1]。これは『枕草子まくらのそうし』299だんまえたもので、「くノいち」は清少納言せいしょうなごん[1]

くノいちじゅつ

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忍法にんぽうしょの『万川ばんせんしゅううみまきはちには「くノいちじゅつ」がっている[1][5]。これはおとこでは潜入せんにゅうしにくい場合ばあいわりにおんな潜入せんにゅうさせるというものである[6][7]

また「くノいちじゅつ」のつぎっている「隠蓑かくれみのじゅつ」は「くノいち」がひつせるという口実こうじつ奥方おくがたべることにより、じゅうそこひつ使つかってひと潜入せんにゅうさせるじゅつである[6]

どちらも「おんな使つかったじゅつ」という趣旨しゅしである[6]。これをおんなしのびとみなすか[8]おんなしのびは存在そんざいしないとみなすか[6]論者ろんしゃによってかれる。

その俗説ぞくせつ

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作家さっか戸部とべしん十郎じゅうろうは、実際じっさい語源ごげん陰陽いんようどうにおけるぼうじゅつす「きゅういちみち」が本義ほんぎであり、「きゅう」のがたまたま、平仮名ひらがなの「く」のおな発音はつおんのうえ、「いち」とごうすれば、ともに「おんな」となることから「くノいち」というふうになったとする「きゅういちみちせつ」を主張しゅちょうしている[9]

近代きんだい創作そうさくぶつにおける用例ようれい意味いみ

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初期しょき用例ようれい

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初期しょき用例ようれいとしては下記かきのものがあるが、いずれも「おんな忍者にんじゃ」という意味いみではない。

初期しょきにん法帖ほうじょうシリーズ

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冒頭ぼうとうべたように、創作そうさくぶつにおいてくノいちじょ忍者にんじゃ意味いみもちいられるようになったのは山田やまだかぜ太郎たろうの『しのぶ法帖ほうじょうシリーズ』の影響えいきょうおおきい[3]

しかし『にん法帖ほうじょうシリーズ』のだい1作品さくひん(1964ねんの『ざらしにん法帖ほうじょう』まで)ではおんな忍者にんじゃを「くノいち」とはんでいない[11]題名だいめいに「くノいち」のかたりがある『くノいちにん法帖ほうじょう』(1960ねん ~ 1961ねん)においてもおんな忍者にんじゃは「くノいち」ではなく「おんな忍者にんじゃ」とんでおり、「くノいち」のかたりおんな隠語いんごとしてもちいている[11]

「くノいちおんな忍者にんじゃ」の普及ふきゅう

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1964ねんの『忍法にんぽう八犬伝はっけんでん』には

はちにんおんな忍者にんじゃ、いわゆる服部はっとりくノいちしゅうもまじっていた。 — 山田やまだかぜ太郎たろう忍法にんぽう八犬伝はっけんでん

という記述きじゅつがあり、くノいちじょ忍者にんじゃ意味いみ使つかわれている[12]同年どうねん10がつには『くノいちにん法帖ほうじょう』の映画えいがばん公開こうかいされており[12]題名だいめいから「くノいち」=「おんな忍者にんじゃ」と解釈かいしゃくしたひともいた可能かのうせいがある[12]

らい也忍法帖ほうじょう』(1965ねん)、『しのびのもの』、『たおせにん法帖ほうじょう』、『くノ一死いっしににゆく』(1967ねん)といった山田やまだかぜ太郎たろう作品さくひんでは「くノいち」は「おんな忍者にんじゃ」の意味いみ普通ふつう名詞めいしとしてもちいられているので、このあたりで「くノいち」=「おんな忍者にんじゃ」が普及ふきゅうしたものとおもわれる[12]

くノいち登場とうじょうする作品さくひん

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小説しょうせつ
映画えいが
テレビドラマ
アニメ
漫画まんが
コンピュータゲーム
アダルトゲーム
テレビCM

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g 吉丸よしまる 2017, p. 168.
  2. ^ a b 山田やまだ 2016, 序章じょしょう忍者にんじゃとはなにか」.
  3. ^ a b c 吉丸よしまる 2017, p. 184.
  4. ^ 吉丸よしまる 2017, p. 169.
  5. ^ くノいち(くのいち)/ 時代じだいげき用語ようご指南しなん 2009
  6. ^ a b c d 吉丸よしまる 2017, p. 170.
  7. ^ 藤田ふじた 1942, p. 83.
  8. ^ 山田やまだ 2016, だいさんしょう2せつ「くノいちじゅつ」.
  9. ^ 戸部とべ 2001, p. 20.
  10. ^ a b 吉丸よしまる 2017, p. 180.
  11. ^ a b 吉丸よしまる 2017, p. 185.
  12. ^ a b c d 吉丸よしまる 2017, p. 186.

文献ぶんけん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 吉丸よしまる雄哉ゆうや三重大学みえだいがく人文学部じんぶんがくぶじゅん教授きょうじゅちょ「くのいちとはなにか」、吉丸よしまる雄哉ゆうや山田やまだ雄司ゆうじ へん忍者にんじゃ誕生たんじょうつとむまこと出版しゅっぱん、2017ねん4がつISBN 978-4-585-22151-7 
  • 山田やまだ雄司ゆうじ三重大学みえだいがく人文学部じんぶんがくぶ教授きょうじゅ)『忍者にんじゃ歴史れきし(kindleばん)』角川かどかわ学芸がくげい出版しゅっぱん、2016ねん4がつ26にち ASIN B01EQQNWSK
  • 戸部とべしん十郎じゅうろう忍者にんじゃ忍術にんじゅつ中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ中公ちゅうこう文庫ぶんこ〉、2001ねん5がつISBN 4122038251 
  • 藤田ふじた西湖さいこ忍術にんじゅつからスパイせん東水ひがしみずしゃ、1942ねんhttps://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1125955 
  • くノいち(くのいち)/ 時代じだいげき用語ようご指南しなん(2009ねん5がつ18にち”. 山本やまもと博文ひろぶみ (解説かいせつ) / 情報じょうほう知識ちしき&オピニオン imidas - イミダス. 2021ねん11月2にち閲覧えつらん

その文献ぶんけん

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  • 宗方むなかたしょう戦国せんごく ある巫女ふじょ信濃しなの毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ開発かいはつきょく出版しゅっぱん 2002ねん ISBN 978-4783810766
  • 藤林ふじばやし保義やすよし萬川ばんせんしゅううみ 原書げんしょ復刻ふっこくばんまことしゅうどう原著げんちょのべたから4ねん(1676ねん))
  • 勝田かつたなにもとめときやしなえ忍術にんじゅつ伝書でんしょ せいにん』(現代げんだいやく解説かいせつふじいち水子みずこ 正武まさたけ中島なかじまあつし原著げんちょ のべたから9ねん(1681ねん))

関連かんれん項目こうもく

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