アストロノータス

アストロノータス
	アストロノータス Astronotus ocellatus
分類ぶんるい
学名がくめい
	Astronotus ocellatus; (Agassiz, 1831)
英名えいめい
	Oscar

アストロノータス（Astronotus）は、スズキ目めシクリッド科かに分類ぶんるいされる南みなみアメリカ原産げんさんの魚さかなの一いち属ぞくであり、また特とくにその一種いっしゅAstronotus ocellatusの通称つうしょうとして使つかわれる呼よび名なである。

いわゆるアメリカン・シクリッドの一種いっしゅで、その改良かいりょう品種ひんしゅ等とうが観賞かんしょう魚ぎょとして世界せかい的てきに人気にんきを誇ほこる^[1]^[2]^[3]。

アストロノータス属ぞくは A. crassipinnis と A. ocellatus の2種類しゅるいが知しられるが、世界せかい的てきにも観賞かんしょう魚ぎょとしてよく知しられている種たねは後者こうしゃである。日本にっぽんの観賞かんしょう魚ぎょ業界ぎょうかいでは「アストロノータス」（アストロノートゥス）あるいは英名えいめいでオスカー（Oscar）と呼よべば本ほん種しゅを指さすのが普通ふつうであるが、稀まれにA. crassipinnisも「オスカー」、「アストロノータス」として輸入ゆにゅうされることがある^[4]ため、この項目こうもくで扱あつかうことにする。

分類ぶんるい

本ほん種しゅははじめマツダイ科かのLobotes ocellatusとして1831年ねんにルイ・アガシーによって記載きさいされたが、その後ごの研究けんきゅうによってシクリッド科かのアストロノータス属ぞくに分類ぶんるいし直なおされた^[5]^[6]。

形態けいたい

成魚せいぎょは最大さいだいで全長ぜんちょう45センチメートル、重おもさ1.6キログラムに達たっする^[7]。

体高たいこうは高たかくやや寸すんの詰つまった体型たいけいである。各かく鰭ひれは大おおきい。背鰭せびれ、尾鰭おびれ、尻しり鰭ひれは分割ぶんかつしてはいるが互たがいにほとんど隙間すきまなく隣接りんせつして発達はったつし、後方こうほうに向むかって大おおきな扇型おうぎがたを形成けいせいする。これらの特徴とくちょうは高速こうそく長距離ちょうきょりの遊泳ゆうえいには適てきさないが、水中すいちゅうで複雑ふくざつ頻繁ひんぱんに姿勢しせいを変かえることを可能かのうにしている。

眼めはやや大おおきく、また他たのスズキ目め中層ちゅうそう魚ぎょと比くらべ眼球がんきゅうが眼窩がんか外がいに突出とっしゅつしている。

野生やせいで捕獲ほかくされた個体こたいは、普通ふつう暗くらい体からだ色しょくをしている^[2]。尾おびれや背せびれのつけ根ねには鮮あざやかな橙色だいだいいろで縁えん取とられた黒くろい目玉めだま模様もようがあり、これは目めを狙ねらって襲おそってくる水鳥みずとりや、生息せいそく域いきの重かさなるピラニアなどの天敵てんてきを欺あざむき、頭部とうぶを守まもるための適応てきおうと考かんがえられる^[5]^[8]。なお、この目玉めだま状じょうの模様もよう（英語えいごではocelli）が種たね小名しょうみょうの由来ゆらいである^[9]。また本ほん種たねは縄張なわばりを主張しゅちょうしたり、同種どうしゅの他た個体こたいを威嚇いかくしたりするために自みずからの体からだ色しょくを変かえることが出来できる^[10]。若わか魚さかなは成魚せいぎょと違ちがった体からだ色しょくをしており、白色はくしょくやオレンジ色しょくの縞しま模様もようと、頭部とうぶの斑点はんてんが特徴とくちょうである^[5]。

分布ぶんぷ

本ほん種しゅはペルー、エクアドル、コロンビア、ブラジル、フランス領りょうギアナに生息せいそくしている^[7]^[11]。原産地げんさんちでは普通ふつう流ながれの緩ゆるい川かわに棲すみ、沈しずんだ枝えだの間あいだなどに隠かくれているのが観察かんさつされる^[2]。中国ちゅうごく^[12]やオーストラリア北部ほくぶ^[13]、そしてアメリカのフロリダ州しゅう^[14]では、観賞かんしょう用ように輸入ゆにゅうした本ほん種しゅが野生やせい化かした事例じれいも報告ほうこくされているが、12.9℃以下いかの水温すいおんでは生いきられないため、生息せいそくできる範囲はんいは限かぎられる^[15]。

性せいと繁殖はんしょく

本ほん種しゅは一般いっぱん的てきに性的せいてき二に型がたを示しめさないと言いわれる^[2]が、雄ゆうは雌めすより早はやく成長せいちょうすることや、いくつかの野生やせい種しゅの系統けいとうでは背せびれに黒くろい斑点はんてんがあるのが雄ゆうだけであることなどが報告ほうこくされている^[3]^[5]。生後せいご約やく1年ねんで性的せいてき成熟せいじゅくに達たっし、9年ねんから10年ねんにわたって繁殖はんしょくし続つづける。繁殖はんしょくの時期じきや頻度ひんどは、雨あめの量りょうによって変化へんかすることが示唆しさされている^[16]。水槽すいそう内ないにおける繁殖はんしょくの事例じれい等とうから、両親りょうしんが卵たまごと稚魚ちぎょの世話せわをする基質きしつ産卵さんらん魚ぎょ（岩いわや木きに卵たまごを産うみつける魚さかな）であることは分わかっているが、野生やせい下かでどれくらいの期間きかんペアが維持いじされるのかは分わかっていない^[9]^[3] 。ペアはテリトリーを作つくって他た魚さかなを追おいやり、水平すいへい、もしくは垂直すいちょくな面めんを探さがしてクリーニングし、1,000個こから3,000個この卵たまごを産うみつける^[3] 。

食しょく性せい

飼育しいく下かでは大型おおがた肉食にくしょく魚ぎょ用ようの人工じんこう飼料しりょうやザリガニ、ミールワームなどの昆虫こんちゅうといった餌えさを与あたえる。生いき餌えを与あたえることによって成長せいちょうが早はやくなることがあるが、寄生虫きせいちゅうの危険きけんもある^[17]。野生やせい下かでよく捕食ほしょくする魚さかなはBunocephalus属ぞく、 Rineloricaria属ぞく、そしてOchmacanthus属ぞくなどのナマズである^[8]。捕食ほしょくの際さいには獲物えものを吸すい込こむようにして捕とらえる^[18]。また、体からだ色しょくを変かえ横よこたわって死しんだふりをして獲物えものを待まち伏ぶせる行動こうどうが報告ほうこくされている^[19]^[20]。本ほん種しゅの食しょく性せいの特徴とくちょうとして、ビタミンCがよく不足ふそくすることが挙あげられ、そのことによる障害しょうがいもよく見みられる^[21]。

人間にんげんとの関係かんけい

冒頭ぼうとうで述のべたように、本ほん種しゅは世界せかい各地かくちで観賞かんしょう魚ぎょとしての人気にんきを誇ほこっているが、原産地げんさんちでは頻繁ひんぱんに食用しょくようにされる^[11]^[22]。

本ほん種しゅは観賞かんしょう魚ぎょとして販売はんばいするために多おおくの改良かいりょう品種ひんしゅが作つくられている。赤あかの斑点はんてんが多おおいタイガー・オスカーや、その斑点はんてんが体側たいそく全体ぜんたいにまで広ひろがったレッド・オスカー、そしてアルビノや白しろ変へん個体こたいを固定こていしたものなどが特とくに人気にんきである^[9]^[23]。それぞれの品種ひんしゅの中なかでも、体からだの側面そくめんの赤あかい斑点はんてん模様もようは各かく個体こたいで変異へんいが大おおきく、イギリスではアラビア語ごで「アッラー」（神かみ）という意味いみの文字もじに似にた模様もようをもつ個体こたいが話題わだいになったこともある^[24]。オスカーの繁殖はんしょくに初はじめて成功せいこうしたのは40年ねんほど前まえ、アメリカのフロリダにおいてであるが、初はじめて商業しょうぎょう目的もくてきでのオスカーの繁殖はんしょくに成功せいこうしたのはタイであった^[4]^[3]。現在げんざいもタイなどの東南とうなんアジアでの養殖ようしょくが盛さかんであり、世界中せかいじゅうに安定あんていして安価あんかな個体こたいが供給きょうきゅうされているが、原産地げんさんちからの輸入ゆにゅう個体こたいも季き節ぶしごとに輸入ゆにゅうされる^[4]^[9]。現地げんちからの輸入ゆにゅう個体こたいは「ワイルド・オスカー」と呼よばれ、サイズの大おおきさや産地さんちの地域ちいきや川かわ等とうによって変異へんいする体からだ色しょくが人気にんきを呼よんでおり、マニアの間あいだでは有名ゆうめいな産地さんちの個体こたいなどには特別とくべつな呼称こしょうが使つかわれることもある^[4]。

近きん縁えん種しゅ

Astronotus crassipinnis (Heckel, 1840): 全長ぜんちょうは25cmほどで、A. ocellatus よりも小型こがたである。アマゾン流域りゅういきを中心ちゅうしんとした南みなみアメリカ北部ほくぶに分布ぶんぷする^[25]。

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