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しょくせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

しょくせい(しょくせい、えい: feeding behaviours、food habit)とは、基本きほんてきには、動物どうぶつべる食物しょくもつ種類しゅるい分類ぶんるい)や、捕食ほしょく摂食せっしょく方法ほうほう などについての性質せいしつ

厳密げんみつ分類ぶんるいすると、食物しょくもつ種類しゅるい区別くべつするしょくせいえい: food habit)と、摂食せっしょく方法ほうほうしょく習性しゅうせいえい: feeding habit)があるが、これらはしばしば混同こんどうされ「しょくせい」としてひとくくりにされる[1]ほん記事きじでは両者りょうしゃあつかう。

概説がいせつ

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動物どうぶつ食物しょくもつべるが、その食物しょくもつ種類しゅるいなにべているか。つまりどんな種類しゅるいカテゴリ食物しょくもつべているか)、捕食ほしょくのしかた、かた、またその消化しょうかして栄養素えいようそとしてとりこむしくみも、動物どうぶつ種類しゅるいによってことなり、非常ひじょう多様たようである。しかも「なにをたべるか?」に注目ちゅうもくするだけでも、どういちしゅでも地域ちいきぶし食物しょくもつ種類しゅるいことなる場合ばあいがあり、また幼体ようたい成体せいたいではことなっていることがおおく、複雑ふくざつである。

大雑把おおざっぱ分類ぶんるい

しょくせいなかでも、食物しょくもつ種類しゅるいかんして、大雑把おおざっぱ分類ぶんるい代表だいひょうてきなものとしては、動物どうぶつしょくせい) carnivorous、植物しょくぶつしょくせい) herbivorous、雑食ざっしょくせい) omnivorousの3分類ぶんるいげることができよう。(なおこの3分類ぶんるいではうまく実態じったいしめしていないケースがある、として、そこに腐食ふしょくせい saprophagousをくわえて4分類ぶんるいとすることもある。)

なお、アルファベット表記ひょうき学術がくじゅつ用語ようごでは語末ごまつがvorousとなっているが、ラテン語らてんご動詞どうし vorāre (ウォラーレ。「う、むさぼる」の)を語源ごげんとしており、-voreというかたち変化へんかさせて接尾せつびとして使つかうと動物どうぶつしょくせい食餌しょくじせい)の種類しゅるいしょくせいによる分類ぶんるい)をしめ名詞めいしとなり、 vorousというかたち変化へんかさせ接尾せつびとして使用しようすると同様どうよう意味いみ形容詞けいようしとなる。
なお、うえ分類ぶんるい用語ようごとしての「雑食ざっしょく」は、あくまで「動物どうぶつせい食物しょくもつも、植物しょくぶつせい食物しょくもつも、両方りょうほうともべる」という意味いみであり、「種々しゅじゅ雑多ざった食物しょくもつべる」という意味いみではない。

うえ大雑把おおざっぱな3分類ぶんるいは、生物せいぶつがく以外いがいの、日常にちじょうてき世界せかいでは、ほぼ同義どうぎのつもりで肉食にくしょくせい草食そうしょくせい雑食ざっしょくせいとも表現ひょうげんされ、一般いっぱん常識じょうしき用語ようごとしても使つかわれている[注釈ちゅうしゃく 1]。 ただし肉食にくしょくせい草食そうしょくせい雑食ざっしょくせいぶのは、ヒト(哺乳類ほにゅうるい陸棲りくせい生物せいぶつりの視点してんからた、いわばかたよった用語ようごであり、動物どうぶつには陸棲りくせいのものも水棲すいせいのものもいるので、動物どうぶつ全体ぜんたい網羅もうらてき考察こうさつする場合ばあいには適切てきせつ用語ようごではない。海中かいちゅう動物どうぶつなかには微小びしょうプランクトンしょく重要じゅうようであるたねもおり、動物どうぶつせいプランクトンを「にく」とぶことにも植物しょくぶつせいプランクトンを「くさ」とぶことにも無理むりがあるからである。

生物せいぶつがくてきにより適切てきせつで、より網羅もうらてき分類ぶんるい#しょくせいによる動物どうぶつこまかな分類ぶんるい解説かいせつする。) 

細分さいぶんるい

うえげた動物どうぶつしょく植物しょくぶつしょく雑食ざっしょくという3分類ぶんるいは、それぞれさらにこまかく分類ぶんるいできる。

動物どうぶつしょくせい)は、鳥獣ちょうじゅうしょくせいししとりべる)、さかなしょくせい昆虫こんちゅうしょくせいしょくむしせい)、かいしょくせいなどに細分さいぶんるいできる。

植物しょくぶつしょくせい)は、種子しゅししょくせい果実かじつしょくせいしょくせい樹液じゅえきしょくせいはなみつしょくせいなどに細分さいぶんるいできる。


しょくせいによる動物どうぶつこまかな分類ぶんるい

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したひょうで、しょくせい食餌しょくじせい)のちがいによる動物どうぶつ分類ぶんるいと、それに対応たいおうする摂食せっしょく食物しょくもつしめす。


ひだりからじゅんに、和名わみょう不明ふめいなものあり)、英語えいごめい対応たいおうする摂食せっしょく食物しょくもつ備考びこう(※)である。

しょくせい 英語えいご 食物しょくもつ 補足ほそく
ものによる分類ぶんるい狭義きょうぎしょくせい[1]
動物どうぶつしょく動物どうぶつ広義こうぎ肉食にくしょく動物どうぶつ carnivore 動物どうぶつ全般ぜんぱん
  狭義きょうぎの)肉食にくしょく動物どうぶつ carnivore 四肢しし動物どうぶつ 鳥獣ちょうじゅうしょく動物どうぶつ[1]flesh eater[2]
さかなしょく動物どうぶつ piscivore 魚類ぎょるい
むししょく動物どうぶつ insectivore 昆虫こんちゅうなど
molluscivore 軟体動物なんたいどうぶつ かいしょくせい[1]
しょく動物どうぶつ sanguinivore 血液けつえき
spongivore 海綿動物かいめんどうぶつ
ophiophagy ヘビ
lepidophagy さかなうろこ(うろこ) うろこしょくぎょ[3]
植物しょくぶつしょく動物どうぶつ広義こうぎ草食そうしょく動物どうぶつ herbivore 植物しょくぶつ全般ぜんぱん
  もっと狭義きょうぎの)草食そうしょく動物どうぶつ graminivore イネなどの草本そうほん
しょく動物どうぶつ folivore
xylophagy 木本もくほん シロアリひとしによるい。ざいしょくせい[1]
はな粉食ふんしょく動物どうぶつ palynivore 花粉かふん
みつしょく動物どうぶつ nectarivore みつ
樹液じゅえきしょく動物どうぶつ mucivore 樹液じゅえきくきえき
果実かじつしょく動物どうぶつはてしょく動物どうぶつ frugivore 果実かじつ
穀物こくもつしょく動物どうぶつ穀食こくしょく動物どうぶつ granivore 種子しゅし穀物こくもつ
しょく動物どうぶつ algivore 藻類そうるい
雑食ざっしょく動物どうぶつ omnivore 動物どうぶつ植物しょくぶつ
しょく動物どうぶつ limnivore どろ
デトリタスしょく動物どうぶつ detritivore デトリタス
きんしょく動物どうぶつ mycovore きん
細菌さいきんしょくせい生物せいぶつ bacterivore 真正しんしょう細菌さいきん
腐食ふしょく動物どうぶつ saprophagy 死体したい排出はいしゅつぶつなど しょくくそなど。
  腐肉ふにくしょく動物どうぶつかばね肉食にくしょく動物どうぶつ scavenger 腐肉ふにくみずかころしていない動物どうぶつ 肉食にくしょく一部いちぶ
かたによる分類ぶんるいしょく習性しゅうせい[1]
捕食ほしょく動物どうぶつ predator みずかころした動物どうぶつ 肉食にくしょく一部いちぶ
濾過ろか摂食せっしょく動物どうぶつ filter feeder プランクトンデトリタス
選択せんたくてきしょくがた飼料しりょうしょくがた、グレーザー、グレイザー) grazer 低質ていしつ植物しょくぶつ牧草ぼくそうなど) 草食そうしょく一部いちぶ[4]
選択せんたくしょくがた英語えいごばん濃厚のうこうしょく選択せんたくがた、ブラウザー) browser こうしつ植物しょくぶつ若草わかくさはななど) 草食そうしょく一部いちぶ。グレイザーとブラウザーのなかあいだがたもある[4]

調査ちょうさ研究けんきゅう

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しょくせい調査ちょうさにはかなりの手間てまがかかるので、あきらかにされている動物どうぶつはほとんどく、しょくせい実態じったいあきらかになっている動物どうぶつ少数しょうすうである。

野生やせい動物どうぶつしょくせい調査ちょうさ方法ほうほうはいくかあるが、消化しょうかかん内容ないようぶつ試料しりょう調査ちょうさする方法ほうほうもっと一般いっぱんてき手法しゅほうである。消化しょうかかん内容ないようぶつ調しらべる方法ほうほう肉食にくしょく動物どうぶつ雑食ざっしょく動物どうぶつのどちらも調しらべることができるからである。近年きんねん注目ちゅうもくされているのは、くそ内容ないようぶつの「えさ生物せいぶつ由来ゆらいDNA」を特定とくていして解析かいせきすることでえさ生物せいぶつ推定すいていする方法ほうほうである。えさのDNAよりもべるがわ動物どうぶつ(ホスト)のDNAのほうがおお発見はっけんされるので、ホストとえさのDNAを区別くべつする必要ひつようがあり、また消化しょうかされることでDNAが断片だんぺんするのでむずかしかったが、それらの課題かだい解決かいけつして実用じつよういたった。

調査ちょうさほう歴史れきし概要がいよう

もっと素朴そぼく方法ほうほうで、もっとふるくからある方法ほうほうは、くそて(またくそをほぐすなどして)そこにふくまれるもの目視もくし形態けいたい観察かんさつしてえさ推定すいていするという方法ほうほうであった。つぎ段階だんかい方法ほうほうとしては、動物どうぶつ解剖かいぼうをし、内容ないようぶつ形態けいたい観察かんさつをして、つまり研究けんきゅうしゃ直接ちょくせつ目視もくし観察かんさつすることで推定すいていする方法ほうほうがとられた。

ただしこれらの方法ほうほうは、えさ消化しょうかされてしまうとかたちくなり、形態けいたい観察かんさつ不可能ふかのうになるという問題もんだいてんがあった。くそくらべると、内容ないようぶつはまだ消化しょうかすすんでいないので形態けいたい観察かんさつ可能かのう場合ばあいおおいので、内容ないようぶつ調査ちょうさがよく採用さいようされるようになった。ただし保護ほご動物どうぶつ希少きしょうしており、保護ほごするべき、ころしてはいけない、と国際こくさい機関きかんなどで指定していされている動物どうぶつ)は研究けんきゅうしゃころすわけにはいかず解剖かいぼうができないので、内容ないようぶつ調査ちょうさ原則げんそくおこなえずしょくせい調査ちょうさがなかなかすすまなかった。

しょくせい傾向けいこう

85%の節足動物せっそくどうぶつ、6%の軟体動物なんたいどうぶつ、5%の脊椎動物せきついどうぶつふく比例ひれいてきにサンプリングされた1087分類ぶんるいぐんについてえば、63%が肉食にくしょく、32%が草食そうしょく、3%が雑食ざっしょくであり、肉食にくしょくせい分類ぶんるいぐんおお[6]

最初さいしょ細胞さいぼう動物どうぶつしょくせい

うえ研究けんきゅう筆頭ひっとう著者ちょしゃ進化しんか生物せいぶつがく研究けんきゅうしゃのJohn Wiens(アリゾナ大学だいがく)とその同僚どうりょうからるチームは「最初さいしょ細胞さいぼう動物どうぶつ肉食にくしょくせいであった」とし、肉食にくしょくせいから草食そうしょくへの進化しんかは、ちょうないくさ発酵はっこうさせるちょうない細菌さいきんくさむらこうちょう発酵はっこう)、うしのように4つのをもつなどの特殊とくしゅ内臓ないぞう進化しんか反芻はんすうしょくくそなどが必要ひつようであり、進化しんかのハードルがたかいことを示唆しさしているとしてる[7]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく
  1. ^ この肉食にくしょくせい草食そうしょくせい雑食ざっしょくせいという分類ぶんるいは、世界せかいかく地域ちいき中学生ちゅうがくせい理科りかのレベル(日本にっぽんではちゅう1)でおしえられる用語ようごであり、「中学生ちゅうがくせいですらっている用語ようご」なので、大人おとなにとってはほぼ「常識じょうしき用語ようご」としているので、一般いっぱん人々ひとびと日常にちじょう用語ようごとしても使つかわれる。
出典しゅってん
  1. ^ a b c d e f うらほん昌紀まさきしょくせい」『改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんhttps://kotobank.jp/word/%E9%A3%9F%E6%80%A7コトバンクより2024ねん1がつ3にち閲覧えつらん 
  2. ^ うらほん昌紀まさき肉食にくしょく動物どうぶつ」『改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんhttps://kotobank.jp/word/%E8%82%89%E9%A3%9F%E5%8B%95%E7%89%A9コトバンクより2024ねん1がつ3にち閲覧えつらん 
  3. ^ 落合おちあいあきらあまおか邦夫くにおうろこしょくぎょ」『日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』https://kotobank.jp/word/%E9%B1%97%E9%A3%9F%E9%AD%9Aコトバンクより2024ねん1がつ3にち閲覧えつらん 
  4. ^ a b 板橋いたばし久雄ひさお石橋いしばしあきら飼料しりょうがく(31)―V. 産業さんぎょう動物どうぶつ VI. 反芻はんすう動物どうぶつ(1)」『畜産ちくさん研究けんきゅうだい60かんだい10ごうやしなえ賢堂かしこどう、2006ねん、1100-1108ぺーじ 
  5. ^ 大東だいとう, はじめ (1998). “チンパンジーの薬用やくよう植物しょくぶつ利用りようかんする化学かがくてき生態せいたいがくてき解析かいせき. 質量しつりょう分析ぶんせき(Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan) 46 (3): 173–177. doi:10.5702/massspec.46.173. ISSN 1340-8097. http://www.jstage.jst.go.jp/article/massspec/46/3/46_3_173/_article/-char/ja/. 
  6. ^ Román-Palacios, Cristian; Scholl, Joshua P.; Wiens, John J. (2019-08-01). “Evolution of diet across the animal tree of life” (英語えいご). Evolution Letters 3 (4): 339–347. doi:10.1002/evl3.127. ISSN 2056-3744. PMC 6675143. PMID 31388444. https://academic.oup.com/evlett/article/3/4/339/6697498. 
  7. ^ The world's first animal was probably a carnivore サイト:サイエンス

関連かんれん事項じこう

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外部がいぶリンク

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