アムガ

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アムガ（Amuγがんまa、モンゴル語ご: Амуга、中国ちゅうごく語ご: 阿木あぎ哥、? - 泰たい定じょう元年がんねん6月6日にち（1324年ねん6月27日にち））は、クビライの孫まごのダルマバラの庶子しょしで、モンゴル帝国ていこくの皇族こうぞく。『元もと史し』などの漢文かんぶん史料しりょうでは阿木あぎ哥、『集しゅう史し』などのペルシア語ご史料しりょうではاموگهĀmūgeと記しるされる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

アムガの母ははの郭かく氏しは元来がんらいはクビライ・カアンの女おんな侍さむらいであったが、クビライは孫まごのダルマバラが成長せいちょうするとこれを下賜かしし、結果けっかとしてダルマバラと郭かく氏しとの間あいだにアムガが生うまれることとなった。この後のちダルマバラは正せい后きさきとしてコンギラト出身しゅっしんのダギを娶めとり、彼女かのじょとの間あいだに嫡子ちゃくしのカイシャン（後ごのクルク・カアン）とアユルバルワダ（後ごのブヤント・カアン）を持もったため、アムガは庶長子ちょうしとして扱あつかわれるようになった[1]。

クビライ・カアンが亡なくなりオルジェイトゥ・カアン（成なり宗むねテムル）が即位そくいすると中央ちゅうおうアジアのカイドゥが好機こうきと見みて大元おおもとウルスに大だい攻勢こうせいをかけた。この戦役せんえきにアムガも司令しれい官かんとして参加さんかし、大徳だいとく6年ねん（1302年ねん）11月には善ぜん射しゃ軍ぐんを率ひきいて河西かさい地方ちほうの寧やすし夏なつへと向むかった[2]。これは、河西かさい方面ほうめんの脅威きょういがやや和やわらいだために本来ほんらいこの戦線せんせんを担当たんとうする安西あんざい王おうアナンダ率ひきいる大だい部隊ぶたいをアルタイ地方ちほうの主戦しゅせん場じょうに投入とうにゅうし、アナンダ軍ぐんが抜ぬけた河西かさい方面ほうめんの備そなえとしてアムガが派遣はけんされたものと見みられる[3]。この功績こうせきからか、大徳だいとく10年ねん（1306年ねん）8月がつには鈔三さん千せん錠じょうを賜たまわっている[4]。

皇太子こうたいしデイシュが早世そうせいしたことによってオルジェイトゥ・カアンが嗣子ししを残のこさずに亡なくなると、オルジェイトゥ・カアンの甥おいに当あたるダルマバラの遺児いじたちが後継こうけい者しゃとして浮上ふじょうした。しかし皇后こうごうブルガン・ハトゥンはダギとその息子むすこ達たちを嫌きらい、アナンダを帝位ていいに即つけようと画策かくさくしたが、コンギラト派は官僚かんりょうの工作こうさくによってアユルバルワダがクーデターを起おこし、カイシャンがモンゴリアで諸王しょおうの支持しじを得えて南下なんかし帝位ていいに即そくいたため、以後いごダルマバラの家系かけいが重視じゅうしされるようになった。至大しだい4年ねん（1311年ねん）、帝位ていいに即そくいたカイシャンが早世そうせいし、新あらたにアユルバルワダが即位そくいするとアムガは朝廷ちょうていに参内さんだいした。この時ときアユルバルワダは省しょう臣しんに「朕ちんとアムガは異母いぼ兄弟きょうだいであるのに、朕ちんが[アムガを]助たすけなければ彼かれは誰だれを頼たよればよいというのだ」と言いって特別とくべつに鈔二に万まん錠じょうをアムガに賜たまわった[5]。皇すめらぎ慶けい元年がんねん（1312年ねん）には慶けい元もと路みち定てい海うみ県けん六ろく万まん五ご千せん戸こを賜たまわり[6]、その後ごも定期ていき的てきにアユルバルワダより下賜かしを受うけている[7][8][9][10]。

延のべ祐ゆう4年ねん（1317年ねん）閏うるう正月しょうがつ、罪つみに巻まき込こまれて耽ふけ羅ら（済州さいしゅう島とう）へ流ながされ、更さらに高こう麗うららの大だい青島ちんたおに移うつされた[11]。延のべ祐ゆう5年ねん（1318年ねん）6月がつ、術じゅつ士しの趙ちょう子玉こだまが魏ぎ王おう府ふの司馬しばにアムガの名前なまえが図ず讖に応おうじると誘さそい、兵器へいきを集あつめて挙兵きょへいすることを画策かくさくした。趙ちょう子玉こだまらは高こう麗うららにいるアムガを連つれて来くるために航海こうかいを試こころみたが、山東さんとうの利り津つ県けんで発覚はっかくされたことにより反乱はんらんを謀議ぼうぎした一いち党とうは誅されている[12]。

至いたり治ち3年ねん（1323年ねん）、英えい宗むねシデバラが暗殺あんさつされた時とき、ダルマバラの子孫しそんとしてはカイシャンの息子むすこ（コシラとトク・テムル）、アムガが残のこっていたが、コンギラト出身しゅっしんのダギの下したで権勢けんせいを得えていた旧臣きゅうしんは非ひコンギラトの妃ひから生うまれたカイシャンの遺児いじやアムガを戴いただくことはできず、結果けっかとしてやや遠縁とおえんだがコンギラト出身しゅっしんの母ははを持もつ晋すすむ王おうイェスン・テムルが即位そくいした。同年どうねん10月がつ、アムガは高麗こうらいから召喚しょうかんされた[13]。

泰たい定元さだもと年ねん（1324年ねん）正月しょうがつ、封地ほうちの大同だいどうへ戻もどったが[14]、程ほどなくして同年どうねん6月がつに亡なくなった[15]。アムガの娘むすめは、高麗こうらい第だい27代だい王おう忠ちゅう粛王に降嫁こうかした金きむ童わらわと慶けい華はな公主こうしゅであり、孫娘まごむすめは高麗こうらい第だい31代だい王おう恭きょう愍王の妃ひ、魯国公主こうしゅ。

家系かけい[編集へんしゅう]

『元もと史し』宗室そうしつ世よ系けい表ひょうでは以下いかのような系図けいずを伝つたえる：

  • 魏ぎ王おうアムガ（Amuγがんまa,阿木あぎ哥）
    • トク・ブカ大王だいおう（Toq-buqa,脱だつ不ふ花はな）
    • マンジ大王だいおう（Manzi,蛮子）
    • 西にし靖やすし王おうアルク（Aruq,阿おもね魯）
    • 魏ぎ王おうボロト・テムル（Bolot-temür,孛羅帖じょう木き児じ）
    • タングタイ王おう（Tanγがんまutai,唐から兀台）
    • ダルマシュリ王おう（Darmaširi,答こたえ児じ蛮失里さと）
    • ボロト大王だいおう（Bolot,孛羅）

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 『元もと史し』巻まき116后妃こうひ伝でん2昭あきら献けんじ元もと聖せい皇后こうごう伝でん,「裕ひろし宗そう居きょ燕つばめ邸てい及潮河かわ、順じゅん宗むね倶在侍さむらい、稍やや長なが、世よ祖そ賜たまもの女おんな侍さむらい郭かく氏し、後こう乃納後ご為ため妃ひ、生なま武たけ宗及そうきゅう仁じん宗むね」
  2. ^ 『元もと史し』巻まき20成なり宗むね本紀ほんぎ3,「[大徳だいとく六ろく年ねん十じゅう一いち月がつ]戊つちのえ午うま、籍せき河西かさい寧やすし夏なつ善よし射しゃ軍ぐん隷親王おう阿木あぎ哥、甘あま州しゅう軍ぐん隷諸王おう出いずる伯はく」
  3. ^ 杉山すぎやま2004,317-318頁ぺーじ
  4. ^ 『元もと史し』巻まき21成なり宗むね本紀ほんぎ4,「[大徳だいとく十じゅう年ねん八はち月がつ]辛からし亥い、賜たまもの王おう侄阿木き哥鈔三さん千せん錠じょう」
  5. ^ 『元もと史し』巻まき24仁じん宗むね本紀ほんぎ1,「[至大しだい四よん年ねん六ろく月がつ]己おのれ巳み、衛まもる王おう阿木あぎ哥入見み、帝みかど諭さとし省しょう臣しん曰：『朕ちん与あずか阿木あぎ哥同父ちち而異母はは、朕ちん不ふ撫育ぶいく、彼かれ将はた誰だれ頼よりゆき？』其賜鈔二に万まん錠じょう、他た勿援例れい」
  6. ^ 『元もと史し』巻まき24仁じん宗むね本紀ほんぎ1,「[皇すめらぎ慶けい元年がんねん正月しょうがつ]戊つちのえ午うま……改あらため封ふう済ずみ王おう朶列納おさめ為ため呉くれ王おう、賜たまもの衛まもる王おう阿木あぎ哥慶元もと路みち定てい海うみ県けん六ろく万まん五ご千せん戸こ、加か崇たかし福ぶく使し也里牙きば秦しん国こく公おおやけ」
  7. ^ 『元もと史し』巻まき24仁じん宗むね本紀ほんぎ1,「[皇すめらぎ慶けい二に年ねん五ご月がつ]庚かのえ子こ……勅みことのり衛まもる王おう阿木あぎ哥歳賜たまもの外がい、給きゅう鈔万まん錠じょう」
  8. ^ 『元もと史し』巻まき25仁じん宗むね本紀ほんぎ2,「[延のべ祐ゆう元年がんねん秋あき七なな月がつ]庚午こうご……賜たまもの衛まもる王おう阿木あぎ哥等鈔七なな千せん錠じょう」
  9. ^ 『元もと史し』巻まき25仁じん宗むね本紀ほんぎ2,「[延のべ祐ゆう二に年ねん秋あき七なな月がつ]癸みずのと酉とり、賜たまもの衛まもる王おう阿木あぎ哥鈔万まん錠じょう」
  10. ^ 『元もと史し』巻まき25仁じん宗むね本紀ほんぎ2,「[延のべ祐ゆう三さん年ねん夏なつ四よん月がつ]壬みずのえ午うま、諭さとし中書ちゅうしょ省しょう、歳とし給きゅう衛まもる王おう阿木あぎ哥鈔万まん錠じょう」
  11. ^ 『高麗こうらい史し』巻まき34, 忠ちゅう肅王世よ家か1「[四よん年ねん閏うるう正月しょうがつ]壬みずのえ申さる、元もと流りゅう魏ぎ王おう阿木あぎ哥于耽羅ら、尋ひろ移うつり大だい靑島ちんたお」
  12. ^ 『元もと史し』巻まき26仁じん宗むね本紀ほんぎ3,「[延のべ祐ゆう五ご年ねん六ろく月がつ]乙おつ巳み、術じゅつ者しゃ趙ちょう子玉こだま等とう七なな人にん伏ふく誅。時どき魏ぎ王おう阿木あぎ哥以罪ざい貶高麗うらら、子玉こだま言げん於王府ふ司馬しば曹脫不ふ台たい等とう曰：「阿木あぎ哥名應おう圖ず讖」。於是潛せん謀はかりごと備兵器き、衣ころも甲かぶと、旗鼓きこ，航海こうかい往高麗うらら取と阿木あぎ哥至大だい都と、俟時而發。行くだり次じ利とぎ津つ縣けん、事こと覺さとし、誅之」
  13. ^ 『高麗こうらい史し』巻まき35忠ちゅう肅王世よ家か2,「[十じゅう年ねん十じゅう月がつ]戊つちのえ辰たつ、帝みかど召還しょうかん魏ぎ王おう阿木あぎ哥」
  14. ^ 『元もと史し』巻まき29泰やすし定てい帝みかど本紀ほんぎ1,「[泰たい定元さだもと年春としはる正月しょうがつ]己おのれ酉とり、命いのち諸王しょおう遠どお徙者悉還其部。召親王おう図ず帖じょう睦むつみ爾なんじ於瓊州しゅう、阿木あぎ哥於大同だいどう」
  15. ^ 『元もと史し』巻まき29泰やすし定てい帝みかど本紀ほんぎ1,「[泰たい定元さだもと年ねん六ろく月がつ]庚申こうしん……諸王しょおう阿木あぎ哥薨、賻鈔千せん錠じょう」

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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