アルカイカム・エスペラントム

アルカイカム・エスペラントム
Arcaicam Esperantom
創案そうあん者しゃ	Manuel Halvelik
創案そうあん時期じき	1969年ねん
設定せっていと使用しよう	—
話者わしゃ数すう	不明ふめい（非常ひじょうに少数しょうすう）
目的もくてきによる分類ぶんるい	人工じんこう言語げんご 国際こくさい補助ほじょ語ご エスペラント語ご アルカイカム・エスペラントム
表記ひょうき体系たいけい	ラテン文字もじ
公的こうてき地位ちい
公用こうよう語ご	なし
統制とうせい機関きかん	統制とうせいなし
言語げんごコード
ISO 639-3	—

アルカイカム・エスペラントム(Arcaicam Esperantom)は、マヌエル・ハルヴェリク（Manuel Halvelik, 本名ほんみょう: Kamiel Vanhulle, 1925年ねん4月がつ14日にち - ）が人工じんこう言語げんごであるエスペラントをもとに、あたかも「エスペラントの古語こご」に見みえるように創つくったエスペラントの派生はせい言語げんごの一ひとつである。言語げんごの名前なまえは、アルカイカム・エスペラントムで「古風こふうエスペラント」を意味いみする。ハルヴェリクはこの言語げんごに関かんする著作ちょさく『Arcaicam Esperantom』を1969年ねんに出版しゅっぱんし、この架空かくう言語げんごを世よに問とうた。

概要がいよう

エスペラントは1967年とし時点じてんでは、創つくられてから80年ねんという短みじかい歴史れきしゆえに、エスペラント作家さっかたちは古風こふうな文ぶんを書かく手段しゅだんをあまり持もっておらず、使つかわれなくなった古ふるい表現ひょうげん方法ほうほうや、プラ-エスペラントを使つかっていた。しかし、それに飽あき足たらぬハルヴェリクは、あたかも現在げんざいのエスペラントの古語こごのように見みえる言語げんごを創つくることにし、実際じっさいに1969年ねんに発表はっぴょうした。ヨーロッパ系けい言語げんごでは言語げんご形態けいたいの変化へんかの過程かていで格かくが無なくなり、前置詞ぜんちしが使つかわれる傾向けいこうがあるので、ハルヴェリクは逆ぎゃくに前置詞ぜんちしの使用しよう頻度ひんどを少すくなくし、格かく変化へんかを追加ついかして古語こごに見みえるようにした。また、エスペラントには無ない動詞どうしの人称にんしょう変化へんかも持もち込こんだ。一ひとつの動詞どうしに於おいて、一人称いちにんしょう、二人称ににんしょう、三人称さんにんしょうそれぞれに単数たんすう形がたと複数ふくすう形がたがあるので、全すべてで6通とおりの人称にんしょう変化へんかがある。

与格よかくと属ぞく格かくの格かく変化へんかが追加ついかされているので（エスペラントの格かく変化へんかは主格しゅかくと対格たいかくの二ふたつのみ）、ラテン語らてんごのような文章ぶんしょうを直訳ちょくやくするのが容易よういになっている。

エスペラントからアルカイカム・エスペラントムへの翻訳ほんやく

エスペラントの文ぶんをアルカイカム・エスペラントムに翻訳ほんやくするには、エスペラントにおける綴つづり字じや品詞ひんし語尾ごびなどを、以下いかのように置おき換かえる。

この言語げんごの名前なまえである、Arcaicam Esperantom もまた、Arkaika Esperanto（古風こふうなエスペラント）を以下いかの法則ほうそくに従したがって変換へんかんしたものである。また、ウィキペディア（エスペラントでは Vikipedio）を同様どうように変換へんかんすると、Wiquipediomとなる。

なお、この節ふしでは原則げんそくとして、エスペラントでの表記ひょうきを斜体しゃたいとし、アルカイカム・エスペラントムでの表記ひょうきを太字ふとじとする。

文字もじ表記ひょうき

エスペラントの綴つづり字じのうち、置おき換かえられるべきものは、以下いかの通とおりである（凡例はんれい：Esperanto → Arcaicam Esperantom /音素おんそ/）。その他たはそのままである。

• aŭ → aù /aw/
• c → tz /ts/
• ĉ → ch /tš/
• dz → zz /dz/
• eŭ → eù /ew/
• f → ph /f/
• g → g（+「e」「i」「œ」以外いがい）/g/
• g → gu（+ e / i / œ）/g/
• ĝ → gh /dž/
• ĥ → qh /x/
• j → y /j/
• ĵ → zh /ž/
• k → c（+「e」「i」「œ」以外いがい）/k/
• k → qu（+ e / i / œ）/k/
• ks → x /ks/
• kv → cù /kw/
• （対応たいおう関係かんけい無なし）→ œ (oe) /ø/
• ŝ → sh /š/
• ŭ → ù /w/
• v → w /v/

人称にんしょう代名詞だいめいし

代名詞だいめいしの表ひょうを示しめす。

代名詞だいめいし

エスペラントの代名詞だいめいし	アルカイカム・エスペラントム
	主格しゅかく …は・…が	属ぞく格かく …の	対格たいかく …を	与格よかく …に	形容詞けいようし …のもの
私わたし (mi)	mihi	mihes	mihin	mihid	miham
君きみ (ci)	tu	tues	tuin	tuid	tuam
彼かれ (li)	lùi	lùies	lùin	lùid	lùiam
彼女かのじょ (ŝi)	eshi	eshies	eshim	eshid	eshiam
それ (ĝi)	eghi	eghies	eghin	eghid	eghiam
私わたしたち (ni)	nos	noses	nosin	nosid	nosam
あなたがた (vi)	wos	woses	wosin	wosid	wosam
彼かれら・彼女かのじょら (ili)	ilùi	ilùies	ilùin	ilùid	ilùiam
自分じぶん (si) (再帰さいき代名詞だいめいし)	sihi	sihes	sihin	sihid	siham

1. 活用かつようされた動詞どうしが十分じゅうぶん明確めいかくに誰だれであるかを示しめすのであれば、代名詞だいめいしを無視むしすることは良よい文体ぶんたいである。
   • 例れい：ni ne scias kion ni faros → ned stziaims cuyon pharoims. 和訳わやく「（私わたしたちは）これから何なにをするのかは知しらない。」
     • 上記じょうきは、nos ned stziaims cuyon nos pharoims. （「私わたしたちはこれから何なにをするのかは知しらない。」）の代かわりである。
2. 一般いっぱん人称にんしょう oni（人々ひとびと）はよく接頭せっとう辞じのように現あらわれる。
   • oni ne premu tro forte → onpremu ned tro phortœ(oe). 和訳わやく「あまりに強つよい強制きょうせいはしてはならない。」
   • malpermesite estas al oni → adoni malpermesitam estat. 和訳わやく「人々ひとびとには、禁きんじられている。」
3. 性的せいてき中立ちゅうりつである人ひとを表あらわす新あらたな代名詞だいめいし egui が導入どうにゅうされている。
   • radiantam Anghelom, egui lùid dirit … 和訳わやく「光ひかり輝かがやく天使てんし、egui（その天使てんし）は彼かれに告つげた、…と。」

動詞どうし

不ふ定形ていけいは -i を -ir に置おき換かえるが、語幹ごかんの最後さいごの文字もじが e または i の時ときは -ar に置おき換かえる。エスペラントの esti（～である）は estir となり、krii（叫さけぶ）は criar となる。 エスペラントには人称にんしょう変化へんかが無ないが、インド・ヨーロッパ語族ごぞくの言語げんごには人称にんしょう変化へんかがあることが多おおいことから、アルカイカム・エスペラントムにも人称にんしょう変化へんかがある。これにより、主語しゅごを省略しょうりゃくできる。

lernir（学まなぶ）を例れいとして人称にんしょう変化へんかを示しめす。

形かたち	現在げんざい形かたち		未来みらい形がた
数かず	単数たんすう	複数ふくすう	単数たんすう	複数ふくすう
1人ひとり称しょう	-ams (lernams)	-aims (lernaims)	-oms (lernoms)	-oims (lernoims)
2人ふたり称しょう	-as (lernas)	-ais (lernais)	-os (lernos)	-ois (lernois)
3人称にんしょう	-at (lernat)	-ait (lernait)	-ot (lernot)	-oit (lernoit)
形かたち	過去かこ形かたち		仮定かてい形がた
数かず	単数たんすう	複数ふくすう	単数たんすう	複数ふくすう
1人ひとり称しょう	-ims (lernims)	-iims (lerniims)	-ums (lernums)	-uims (lernuims)
2人ふたり称しょう	-is (lernis)	-iis (lerniis)	-us (lernus)	-uis (lernuis)
3人称にんしょう	-it (lernit)	-iit (lerniis)	-ut (lernut)	-uit (lernuit)
形かたち	命令めいれい形がた
数かず	単数たんすう	複数ふくすう
—	-u (lernu)	-uy (lernuy)

品詞ひんし語尾ごび

名詞めいし

名詞めいし語尾ごびを持もつ語かたりは、大文字おおもじから始はじまる。

• -o → -om（名詞めいし。ただし緩衝かんしょう母音ぼいんの役割やくわりを果はたす時ときには「-m」は不要ふよう。）
  • -oj → oy（名詞めいしの複数ふくすう）
• -on はそのまま（名詞めいしの対格たいかく）
  • -ojn → -oyn（名詞めいしの対格たいかく・複数ふくすう）
• 与格よかくは前置詞ぜんちし al の代かわりに格かく語尾ごび -od をつける（例れい: al domo → Domod）。
  • 複数ふくすう形がたの場合ばあいは -oydをつける（例れい: al domoj → Domoyd）。
• 属ぞく格かくは前置詞ぜんちし de の代かわりに格かく語尾ごび -esをつける （例れい: de domo → Domes）
  • 複数ふくすう形がたの場合ばあいは -eysをつける（例れい: de domoj → Domeys）。

形容詞けいようし

• -a → -am（形容詞けいようし。ただし緩衝かんしょう母音ぼいんの役割やくわりを果はたす時ときには「-m」は不要ふよう。）
  • -aj → -ay（形容詞けいようしの複数ふくすう）
• -an はそのまま（形容詞けいようしの対格たいかく）
  • -ajn → -ayn（形容詞けいようしの対格たいかく・複数ふくすう）
• 与格よかく語尾ごび (-od) の付ついた名詞めいしの前まえでは格かく語尾ごび -ad をつける（例れい: al granda domo → grandad Domod）。
  • 複数ふくすう形がたの場合ばあいは -aydをつける（例れい: al grandaj domoj → grandayd Domoyd）。
• 属ぞく格かく語尾ごび (-es) の付ついた名詞めいしの前まえでは、名詞めいしと同様どうように格かく語尾ごび -es をつける（例れい: de mia malfeliĉa bofrato → mihes powres Bophrates）。
  • 複数ふくすう形がたの場合ばあいは -eysをつける（例れい: de miaj malfeliĉaj bofratoj → miheys powreys Bophrateys）。

副詞ふくし

• -e → -œ（名詞めいし、形容詞けいようし、前置詞ぜんちし等ひとしの、他たの品詞ひんしから派生はせいした「派生はせい」副詞ふくし）
  • -aŭ → -ez （baldaŭ など -aŭ で終おわる副詞ふくし）

相関そうかん詞し

	疑問ぎもん・関係かんけい (ki-) cuy-	指示しじ (ti-) ity-	全ぜん称しょう (ĉi-) chey-	任意にんい (i-) hey-	否定ひてい (neni-) nemy-	他たの (ali-) altri-
物事ものごと (-o) -om	cuyom	ityom	cheyom	heyom	nemyom	altriom
個別こべつ -u	cuyu	ityu	cheyu	heyu	nemyu	altriu
種類しゅるい (-a) -am	cuyam	ityam	cheyam	heyam	nemyam	(altrispetzam)
所属しょぞく -es	cuyes	ityes	cheyes	heyes	nemyes	altries
場所ばしょ (-e) -œ	cuyœ	ityœ	cheyœ	heyœ	nemyœ	(altriloquœ)
理由りゆう -al	cuyal	ityal	cheyal	heyal	nemyal	altrial
方法ほうほう -el	cuyel	ityel	cheyel	heyel	nemyel	altriel
時間じかん (-am) -ahem	cuyahem	ityahem	cheyahem	heyahem	nemyahem	altriahem
数量すうりょう (-om) -ohem	cuyohem	ityohem	cheyohem	heyohem	nemyohem	altriohem

※近称きんしょうを表あらわす ĉi は is- に変化へんかする（例れい：ĉi tiu → isityu）。

冠詞かんし

不ふ定冠詞ていかんしは unn である。

定冠詞ていかんしはつけない。必要ひつように応おうじて、指示しじ代名詞だいめいし ityu で置おき換かえることができる。

数詞すうし

アルカイカム・エスペラントムにおける数詞すうしは、主おもに右向みぎむき矢印やじるしの右側みぎがわにあるものの通とおりである。

• 1: unu → unn
• 2: du → dux
• 3: tri → trid
• 4: kvar → cùar
• 5: kvin → cùin
• 6: ses
• 7: sep
• 8: ok → oc
• 9: naŭ → naù
• 10: dek → dec
• 100: cent → tzent
• 1,000: mil → mill
• 100万まん: miliono → milyon

その他た

以下いかに該当がいとうするエスペラントの綴つづりは、右向みぎむき矢印やじるしの右側みぎがわのように置換ちかんされる。

• -aĉ → -acch
• -ad → -ir / -ar
• ajn → -die
• al → ad / adi
• antaŭloke → antez
• antaŭtempe → prezz
• aŭ → aù / aùdie
• ĉe → chez
• ĉu → chu / chudes
• ĉu jes ? → werœ ?
• ĉu ne ? → phalsœ ?
• da → del¹
• dank'al → grez / dancu
• de → del²
• des → desto
• do → des, -die
• dum → dum / dumquœ
• -ebl → -ibil
• -ec → -esc
• eĉ → eche
• ek-de → ab / abu
• eks- → ex¹
• ekster → extrum
• el → ex²
• en → in
• end → emd
• fraŭlo → Scùirom
• fraŭlino → Damselom
• ge- → gue-
• -ig → -ig / -igu
• -iĝ → -izz
• -in → -inn
• -ind → -imd
• iri → irrir
• ja → yad
• jam → yamen
• je → iyed
• jen → yemen
• yes → ayest
• ju → yud
• ĵus → zhused
• kaj → ed
• ĝis → ghisquez
• k.t.p. → etc.
• kun → cum
• kvankam → cùanquez
• laŭ → selez
• malantaŭ → postez
• ne → ned / nedœ
• nepre → neprez
• -oĉj → -occh
• plej → pluy
• pli → plid
• plu → plud
• po → pod
• post → post / postez
• preter → predor
• pri → prid
• pro → pru
• sen → sonz
• senjoro → Sinyorom
• Sinjoro → Mesirom
• Sinjorino → Damom
• sub → subez
• supre → suprez
• sur → subrez
• t.e. → ite.
• tre → trez

例れい

• Tempo fuĝas. → Tempom phughat.（時ときは逃にげ去さる）オウィディウス
• Amo ĉion venkas. → Amom cheyon wencat.（愛あいはすべてに勝まさる）ウェルギリウス
• Tiel pasas la Gloro de la Mondo. → Ityel pasat Mondes Glorom.（かくして世よの栄光えいこうは移うつりゆく）トマス・ア・ケンピス
• Mi venis, vidis kaj venkis. → Wenims, widims, wenquims.（来きた、見みた、勝かった）ガイウス・ユリウス・カエサル

翻訳ほんやく例れい

ここでは「主おもの祈いのり」を参考さんこう例れいに挙あげる。

Patrom nosam, cuyu estas in Chielom,
Estu sanctiguitam Tuam Nomom.
Wenu Tuam Regnom,
Plenumizzu Tuam Wolom,
Cuyel in Chielom, ityel anquez sobrez Terom.
Nosid donu hodiez Panon nosan cheyutagan,
Ed nosid pardonu nosayn Pecoyn,
Cuyel anquez nos ityuyd cuyuy contrez nos pecait pardonaims.
Ed nosin ned conducu in Tentod,
Sed nosin liberigu ex Mawom.
Amen.

エスペラントの原文げんぶんについては「eo:Patro Nia」を参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

出典しゅってん

• “Arkaika Esperanto, la Verda Pralingvo” (PDF). 2021年ねん7月がつ7日にち閲覧えつらん。