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ウスカラシオツガイ

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ウスカラシオツガイ
分類ぶんるい
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 軟体動物なんたいどうぶつもん Mollusca
つな : 二枚貝にまいがいつな Bivalvia
つな : つな Heterodonta
: マルスダレガイ Veneridae
: イワホリガイ Petricolinae
ぞく : イワホリガイぞく Petricola
たね : ウツカラシオツガイ Petricola sp.
学名がくめい
Petricola sp.
和名わみょう
ウスカラシオツガイ

ウスカラシオツガイうすからしおかい)、学名がくめい Petricola sp.マルスダレガイ(もしくはイワホリガイ)に分類ぶんるいされる二枚貝にまいがいの1しゅ。1980年代ねんだい以降いこう日本にっぽんられるようになった原産地げんさんち不明ふめい外来がいらいしゅで、潮間しおまたいイガイマガキなどの群集ぐんしゅうちゅう生息せいそくする。たね小名しょうみょうしょうであるが、ときPetricola sp. cf. lithophaga表記ひょうきされ、地中海ちちゅうかい大西おおにしひろし分布ぶんぷする P. lithophaga との関連かんれん示唆しさされたり、南米なんべいP. olssoniちか記載きさいしゅであるとわれたりする。ぞくめいPetricolaラテン語らてんごで「いわもの(petra:いわ+ colo:む)」ので、ぞく和名わみょう同様どうようたね和名わみょう日本にっぽん在来ざいらいしゅであるシオツガイからうすいことから。最後さいごに「ガイ」をけずにウスカラシオツとばれることもある。

分布ぶんぷ

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形態けいたい

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最大さいだいからちょう30mm、からだか15mm程度ていどになるが、普通ふつうからちょう20mm程度ていど前後ぜんごなが楕円だえんがたで、からいただき前方ぜんぽう1/3付近ふきんにあり、前方ぜんぽうみじかく、後方こうほうながい。からちょう5mm程度ていどまではととのったちょう楕円だえんがただが、10mm前後ぜんこうからは成長せいちょうとともにから不規則ふきそくいがむことがおおく、輪郭りんかくはよりまるくなったり、より細長ほそながくなったり、あるいは全体ぜんたいなみきょくしたりする[2]からうすしつ軽量けいりょうで、大人おとなちかられればゆびしつぶせる程度ていどよわい。からひょうには全体ぜんたいに50ほん前後ぜんこう放射ほうしゃじょうがあるが、これらは前方ぜんぽうあらつよ後方こうほうではほそよわくなることがおおい。後方こうほうながびるほう)は内外ないがいめんともにしばしば褐色かっしょく彩色さいしきされ、前半ぜんはん白色はくしょくとのなかあいだいきでは褐色かっしょくにぼやけた色彩しきさいになることがおおい。

蝶番ちょうつがいにあるはややちいさく、ひだりからに3しゅみぎからに2しゅがあり、前後ぜんごがわはない。套線ふか湾入わんにゅうする。

生態せいたい

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港湾こうわん周辺しゅうへん潮間しおまたいられ、岸壁がんぺきやブイなどに形成けいせいされたイガイ外来がいらいしゅムラサキイガイコウロエンカワヒバリガイミドリイガイなど)やマガキといった付着ふちゃくせい貝類かいるい群集ぐんしゅうない[3][1]、あるいはホトトギスのマットじょう群集ぐんしゅうないなどにみずからのほそあしいと着生ちゃくせいし、周囲しゅうい貝類かいるいやそれらのあしいとなどのあいだ生活せいかつする。またさかなもうなどにも着生ちゃくせいすることもある[4]通常つうじょうはいくらか淡水たんすい影響えいきょうのある場所ばしょられるが、大雨おおあめ大量たいりょう雨水あまみず生息せいそくいきながんださい塩分えんぶん濃度のうど低下ていかして大量たいりょうしたれいられている[3]

移入いにゅうれき

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日本にっぽんにおける最古さいこ記録きろく1983ねん11月10にち和歌山わかやま和歌浦わかうらおき採取さいしゅされたものだとされている[1]。その1985ねんには貝塚かいづかから阪南はんなんにかけての大阪おおさかわん沿岸えんがんでも発見はっけんされて「シオツガイに未定みていしゅ」として報告ほうこくされ[5]以降いこう大阪おおさかわんから和歌山わかやまけんにかけての沿岸えんがんいき頻繁ひんぱんつかるようになった。1987ねんになると東京とうきょうわん京浜けいひん運河うんがでも発見はっけんされ[3]、やがてどうわんひろ範囲はんい普通ふつうられるようになり、2001ねんには相模さがみわん江ノ島えのしまでもつかった[6]三河湾みかわわん伊勢湾いせわんなどでも1997ねん発見はっけんされて以降いこう定着ていちゃくし、2008ねんには九州きゅうしゅう博多湾はかたわん福岡ふくおか箱崎はこざき漁港ぎょこうでもつかり、日本にっぽん各地かくち分布ぶんぷ拡大かくだいしつつあるとかんがえられている[4]

なお和歌浦わかうら記録きろくは、過去かこ採取さいしゅされた標本ひょうほん検証けんしょうによって2010ねん最古さいこ記録きろく更新こうしんするかたちで報告ほうこくされたもので、それまでは1985ねん大阪おおさかわん記録きろく最古さいこのものとしてあつかわれてきた[1]

分類ぶんるい

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ほんたねふくむイワホリガイるいは、伝統でんとうてき独立どくりつのイワホリガイとしてあつかわれてきたが、分子ぶんし系統けいとう解析かいせきなどからはマルスダレガイうち包含ほうがんされるとされ[7]、その結果けっかマルスダレガイのイワホリガイとしてあつかわれる場合ばあい[8]従来じゅうらいどおり独立どくりつのイワホリガイとしてあつかわれる場合ばあいがあり[9]資料しりょうによって一定いっていしない。
ぞく
ほんしゅ一貫いっかんしてイワホリガイぞく Petricola分類ぶんるいされているが、ぞくまで細分さいぶんする立場たちばからはぞく Rupellaria Fleuriau de Bellevue, 1802に分類ぶんるいされ Petricola (Rupellaria) sp. と表記ひょうきされることがある[9]。ただしぞく分類ぶんるい基準きじゅんにはやや不明瞭ふめいりょうなところがあり、このぞくみとめずイワホリガイぞく異名いみょうなす立場たちばもある[10]
たね
たね小名しょうみょうしょうであるため、学名がくめい一般いっぱんPetricolla sp. ("イワホリガイぞく一種いっしゅ"の)と表記ひょうきされるが、日本にっぽんではときに Petricola sp. cf. lithophaga表記ひょうきされて地中海ちちゅうかいから大西おおにしひろしにかけて分布ぶんぷする Petricola lithophaga (A. J. Retzius, 1788)に関連付かんれんづけられることがある[6][11]。ただし P. lithophagaからだい部分ぶぶん白色はくしょくでウスカラシオツガイのような褐色かっしょく発達はったつせず、普通ふつういわカキるいから穿孔せんこうしてそのなかはまるように生活せいかつし、よりふか場所ばしょまで生息せいそくするなど、形態けいたい生態せいたいともに一致いっちしないてんもある。また、ウスカラシオツガイは南米なんべい太平洋たいへいようがん生息せいそくする Petricola olssoni F. R. Bernard, 1983きんえんで、それに記載きさいしゅ名前なまえけられていないたね新種しんしゅ)であるとの見方みかたをする研究けんきゅうしゃもいるが[9]、この見解けんかいにはほんしゅ外来がいらいしゅであるとの記述きじゅつまったくないことから、ウスカラシオツガイを日本にっぽん在来ざいらいしゅであると誤認ごにんし、系統的けいとうてきには南米なんべいolssoniちかいものの地理ちりてきとおへだたっているために別種べっしゅとみなしている可能かのうせいもある。したがってもっとているのは olssoni であるとの見解けんかいと、ほんしゅ日本にっぽんにおいては外来がいらいしゅであるとする見解けんかいは、ウスカラシオツガイが南米なんべい原産げんさんolssoni である可能かのうせい示唆しさする。
関連かんれんしゅ
ウスカラシオツガイに関連付かんれんづけられることがあるしゅからちょうは30mmほど。からうすしつ白色はくしょくおおく、周囲しゅうい環境かんきょうによって変形へんけいしやすい。英名えいめいをBoring Petricola ともい、しばしばかたいわやカキのからなどにも穿孔せんこうする穿孔せんこうせいつよしゅで、そのてんでは日本にっぽんにおけるウスカラシオツガイの生態せいたいとはややことなる。黒海こっかい地中海ちちゅうかい、アフリカ西岸せいがんなどに分布ぶんぷし、潮間しおまたいから100mまで生息せいそくする[12]
Huber (2010)[9]がウスカラシオツガイにもっとちかいとするたねからちょう最大さいだい30mmほど、からうすしつからひょうには50-60ほん放射ほうしゃ彫刻ちょうこくがある。ペルー北端ほくたんトゥンベスけん からチリ北部ほくぶアントファガスタにかけての南米なんべい太平洋たいへいようがん分布ぶんぷし、潮間しおまたいから水深すいしん3mまでのいししたなどに着生ちゃくせいする。P. perviana Olsson, 1961は異名いみょう[13]
Petricola olssoniもっときんえんとされるたねからちょう40mm前後ぜんこうになりやや大型おおがたで、後方こうほう伸長しんちょうしてからがたもより横長よこながになる傾向けいこうがある。北米ほくべい西岸せいがんのカリフォルニアからメキシコ北部ほくぶ分布ぶんぷし、潮間しおまたいから水深すいしん64mまでの様々さまざま基質きしつ着生ちゃくせいする(Coan, 1997: 311-312)[13]
日本にっぽん在来ざいらいしゅからちょう35mm前後ぜんこう横長よこながちょう楕円だえんがた丸味まるみびた長方形ちょうほうけい灰白色かいはくしょく後方こうほうとく内面ないめん褐色かっしょく彩色さいしきされることがおおい。からひょう全面ぜんめんこまかい放射ほうしゃじょうがあり、ウスカラシオツガイよりもからあつ頑丈がんじょう本州ほんしゅう以南いなん内湾ないわんいき分布ぶんぷし、潮間しおまたいから浅海せんかいどろがんなどに穿孔せんこうしてそのなかむ。

ひととの関係かんけい

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これまでのところおおきな利害りがい関係かんけいられていないが、汚損おそん生物せいぶつとしての有害ゆうがいせいや、在来ざいらいしゅとのあいだ生活せいかつ空間くうかん食物しょくもつ資源しげん争奪そうだつ競争きょうそうによる生態せいたいけいへの悪影響あくえいきょう養殖ようしょくマガキに大量たいりょう着生ちゃくせいした場合ばあい被害ひがいしょうじる可能かのうせいなどが指摘してきされている[1]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e 岩崎いわさき敬二けいじ池辺いけべ進一しんいち (2010). “外来がいらい二枚貝にまいがいウスカラシオツガイの日本にっぽんでのはつ発見はっけんねん分布ぶんぷ拡大かくだい,および九州きゅうしゅうでのはつ記録きろくについて”. ちりぼたん (日本にっぽん貝類かいるい学会がっかい) 41 (1): 18-25. 
  2. ^ 東京とうきょうとうしょ農林のうりん水産すいさん総合そうごうセンター(2012) 内湾ないわん調査ちょうさ平成へいせい24ねん11がつ 羽田はたおき採集さいしゅうされた外来がいらいしゅのウスカラシオツガイ[1]
  3. ^ a b c 青野あおの良平りょうへい倉持くらもち卓司たくし (2008). “京浜けいひん運河うんがにおける移入いにゅう軟体動物なんたいどうぶつ出現しゅつげん時期じき生態せいたい”. 南紀なんき生物せいぶつ 51 (1): 27-30. 
  4. ^ a b 木村きむら妙子たえこ (2009). うみ外来がいらい貝類かいるい現状げんじょう研究けんきゅうのススメ in  『うみ外来がいらい生物せいぶつ. 東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい. pp. 154 (p.34-48). ISBN 978-4-486-01825-4 
  5. ^ 児島こじまかく西川にしかわたけし (1995). “海底かいてい隆起りゅうきにより出現しゅつげんしたわんおくさかいおき)の貝類かいるい遺骸いがい”. かいなかま(阪神はんしん貝類かいるい談話だんわかい会報かいほう 29 (1): 4-14. 
  6. ^ a b 岩崎いわさき敬二けいじ木村きむら妙子たえこ (2004). “日本にっぽんにおける海産かいさん生物せいぶつ人為じんいてき移入いにゅう分散ぶんさん日本にっぽんベントス学会がっかい自然しぜん環境かんきょう保全ほぜん委員いいんかいによるアンケート調査ちょうさ結果けっかから”. 日本にっぽんベントス学会がっかい 59: 22-43. 
  7. ^ Mikkelsen, P. M.; et al. (2006), “Phylogeny of Veneroidea (Mollusca: Bivalvia) based on morphology and molecules”, Zoological Journal of the Linnean Society 148 (3): 439–521 
  8. ^ Bouchet, P.; Gofas, S. (2013). Petricola Lamarck, 1801. Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=138332 on 2013-11-24
  9. ^ a b c d Huber, Marcus (2010). Compendium of Bivalves. ConchBooks. pp. 901, 1 CD-ROM (p.431-432, 750). ISBN 9783939796282 
  10. ^ Sartori, A.; Gofas, S.; Rosenberg, G.; Huber, M. (2013). Rupellaria Fleuriau de Bellevue, 1802. Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=511235 on 2013-11-24
  11. ^ 環境省かんきょうしょう(2006)くに定着ていちゃくしている外来がいらい生物せいぶつのリスト (暫定ざんていばん) 2006.8.10 (特定とくてい外来がいらい生物せいぶつとう専門せんもん会合かいごうだいかい議事ぎじ次第しだい 資料しりょう3-2)[2]
  12. ^ Poppe, G.T. & Goto, Y. (2000). European seashells: 2. (Scaphopoda, Bivalva, Cephalopoda). 2nd print. 221 pp. ConchBooks: Hackenheim, Germany. ISBN 3-925919-10-4.
  13. ^ a b Coan, Eugene V. (1997). “Recent Species of the Genus Petricola in the Eastern Pacific (Bivalvia: Veneroidea)”. The Veliger 40 (4): 298-340 (319-321, pl. fig.37-39, 66). http://biodiversitylibrary.org/page/42479445.