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オレステイア

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

オレステイア』(まれ: Ὀρέστεια, えい: Oresteia)は、古代こだいギリシア悲劇ひげき作家さっかアイスキュロスいた、トロイア戦争せんそうにおけるギリシアがわそう大将たいしょうアガメムノーン一族いちぞくについての悲劇ひげき作品さくひんさんさく

概要がいよう[編集へんしゅう]

この呼称こしょう作中さくちゅう登場とうじょうするアガメムノーンの息子むすこオレステースにちなむ。

古代こだいギリシア悲劇ひげき競作きょうさく形式けいしきで、1にちのうちにおな入賞にゅうしょうしゃによる悲劇ひげき3ほん悲喜劇ひきげきサテュロスげき)1ほんけい4ほんあわせて上演じょうえんされたが、当初とうしょはその悲劇ひげき3ほん連作れんさくさんさく形式けいしきをとっていた。そのさんさく唯一ゆいいつ完全かんぜんかたちのこされたのが、この『オレステイア』とばれるみっつの戯曲ぎきょくであり、

みっつの悲劇ひげきから構成こうせいされる。これにサテュロスげきプローテウス』をくわえたけい4さくが、紀元前きげんぜん458ねんアテナイディオニューソスさいにて上演じょうえんされた[1]

なお、少々しょうしょう解釈かいしゃくちがうところはあるが、このオレステイアさんさく前日ぜんじつたんとして、トロイア戦争せんそう出陣しゅつじんまえ王女おうじょイーピゲネイアがかみ生贄いけにえにされるまでをえがいたエウリピデースによる悲劇ひげきアウリスのイーピゲネイア』、後日ごじつたんとして、きていたイーピゲネイアとオレステースのあねおとうと再会さいかいえがいたおなじくエウリピデースの[2]タウリケーのイーピゲネイア』がある。

内容ないよう[編集へんしゅう]

アガメムノーン[編集へんしゅう]

ミュケーナイのアガメムノーンのみや屋上おくじょうにてトロイア戦争せんそうにおける勝利しょうりつたえるのろしを長年ながねんっている物見ものみおとこのうんざりした独白どくはくなか[3]、のろしががるところから物語ものがたりはじまる。土地とち長老ちょうろうからなるコーラスたい物語ものがたりのここまでの経緯けいい説明せつめいしたうたうたったのち、イーリオス(トロイア)を陥落かんらくさせたギリシアぐんそう大将たいしょうアガメムノーンが、10ねんぶりにミュケーナイに凱旋がいせん帰国きこくする。コーラスたいがギリシアがわ勝利しょうり寿ことほうたうたなか、アガメムノーンのクリュタイムネーストラーヘレネーあね)が出迎でむかえ、二人ふたり宮内くないはいるが、捕虜ほりょとしてれられてきたトロイアの王女おうじょカッサンドラーは、このみやには復讐ふくしゅう女神めがみ(エリーニュス)がとりついており、アガメムノーンにはおおきな不幸ふこうこると予言よげんする。やがてカッサンドラーがみずからの運命うんめいれるとしんめ、宮内くないむと、アガメムノーンの悲鳴ひめい宮内くないよりこえてくる。宮門きゅうもんひらかれると、刃物はものったクリュタイムネーストラーの足元あしもとにアガメムノーンとカッサンドラーがまみれでたおれている光景こうけいひろがる[4]。トロイア戦争せんそう出征しゅっせいするさい、アガメムノーンはむすめイーピゲネイア女神めがみへの生贄いけにえとしてささげた。これをうらんだクリュタイムネーストラーは、おなじくアガメムノーンにうらみをいているアイギストスふかなかになり、共謀きょうぼうしておっとアガメムノーン、そして捕虜ほりょたるその愛人あいじんカッサンドラーを殺害さつがいしたのだった。コーラスたいとその愛人あいじん非難ひなんし、けんかまえて対峙たいじするが、クリュタイムネーストラーはむすめかたきをとったことは正義せいぎもとづくものであり、今後こんごはアイギストスと自分じぶんがこのくにのすべての支配しはいしゃであるのだと宣言せんげんする。

供養くようするおんなたち[編集へんしゅう]

アガメムノーンの墓前ぼぜんに、アガメムノーンの息子むすこオレステースが、親友しんゆう従兄弟いとこのピュラデスをともない、成人せいじんしたあかしったかみぼうささげるところからはじまる。そこにオレステースのあねエーレクトラー(イーピゲネイアのいもうと)がみやつかえるおんなたちからなるコーラスたいともなって登場とうじょう。オレステースたちがかくれているあいだに、コーラスたいがアガメムノーンの悲劇ひげきなげうたうたったあと、エーレクトラーがはは使用人しようにん同様どうよう冷遇れいぐうされていること、ははへの復讐ふくしゅう、そしておとうとのオレステースの帰国きこくねがっていることをかたる。エーレクトラーが墓前ぼぜんささげられているかみぼうづくと、オレステースが姿すがたあらわし、素性すじょうかす。オレステースは幼少ようしょうちち殺害さつがいされるまえにミュケーナイから里子さとごされていたので、エーレクトラーはすぐにしんじないが、やがてかみしつふくとでおとうとであることを確信かくしんする[5]。オレステースはアポローンかみみちびかれちちかたきをとるためにかえってたとげ、あねからかたき相手あいてり、ちち墓前ぼぜんで、ははクリュタイムネーストラーと情夫じょうふのアイギストスへの復讐ふくしゅうちかう。

旅人たびびとふんしたオレステースはみやたずね、オレステースがすでんだことをクリュタイムネーストラーにつた[6]なげかなしむクリュタイムネーストラーにかんまねれられる。オレステースはまずアイギストスを殺害さつがいする。旅人たびびと正体しょうたいがオレステースとったクリュタイムネーストラーは、かつてそそいだあいや、おっとわかれてらすつま孤独こどくなどをうった命乞いのちごいをするが、オレステースはははめ、これも殺害さつがいする。

オレステースはアポローンのめいじたとおちち敵討かたきうちという正義せいぎたしたことを(観客かんきゃくに)うったえるが、突然とつぜんおそろしい怪物かいぶつたち(復讐ふくしゅう女神めがみたち(エリーニュス))が自分じぶんおそってくるといいだし、パニック状態じょうたいとなる。コーラスたいはオレステースに、デルポイのアポロンの信託しんたくしょやくとしにけとい、オレステースは復讐ふくしゅう女神めがみたちからげるかのように退場たいじょうする。

いつくしみの女神めがみたち[編集へんしゅう]

デルポイ巫女ふじょ神殿しんでんまえで、放浪ほうろうすえアポローンにすがってここにたオレステースのねむっている姿すがた恐怖きょうふにかられるところからはなしはじまる。巫女ふじょげるように退場たいじょうすると、神殿しんでんとびらひらき、オレステースが復讐ふくしゅう女神めがみたちからなるコーラスたいかこまれて一緒いっしょねむっている光景こうけいあらわれる。アテーナイ(アテネ)にって女神めがみアテーナー裁判さいばんけよというアポローンの指示しじにより、ヘルメースがオレステースをそのからすが、オレステースがいなくなると、クリュタイムネーストラーのれいあらわれ、復讐ふくしゅう女神めがみたちをこしてオレステースをわせようとする。アポローンは復讐ふくしゅう女神めがみたちをなだめるが彼女かのじょたちはまったくききいれず、オレステースを再度さいどいかけす。

復讐ふくしゅう女神めがみたちはアテーナイのアクロポリスにある女神めがみアテーナーの神殿しんでんでオレステースをつかまえてとりかこむと、復讐ふくしゅううたうたいながらおどくるう。

やがてアテーナーがあらわれ、オレステースを弁護べんごするアポローンと、オレステースを母親ははおやごろしとして告発こくはつする復讐ふくしゅう女神めがみたちのあいだでの裁判さいばんはじまる。陪審ばいしんいん判決はんけつは、[7]有罪ゆうざい無罪むざい半々はんはんにわかれるが、裁判さいばんちょうのアテーナーがオレステースを支持しじしたため、7たい6でオレステースは無罪むざい放免ほうめんとなる。わかかみ々がよりふるかみ々である自分じぶんたちをないがしろにしたと復讐ふくしゅう女神めがみたち(エリーニュス)は激昂げっこうするが、なだめられてアテーナイのいつくしみの女神めがみたち(エウメニデス)となるよう説得せっとくされると、このもうれる。こうして、にくしみと復讐ふくしゅう連鎖れんさはついにられ、アテーナーが守護しゅごするアテーナイの民主みんしゅ政治せいじにより、ギリシア世界せかい調和ちょうわ安定あんていがもたらされる。それは母権ぼけんせい父権ふけんせいあいだ闘争とうそうとして解釈かいしゃくし、アポローンとアテーナーによって代表だいひょうされる父権ふけんてき精神せいしんほう最終さいしゅうてき勝利しょうりおさめる[8]。あるいは、母権ぼけんせいから父権ふけんせいへの発展はってん反映はんえいするともわれている[9]

日本語にほんごやく[編集へんしゅう]

この戯曲ぎきょくもとづく作品さくひん翻案ほんあん[編集へんしゅう]

音楽おんがく[編集へんしゅう]

セルゲイ・タネーエフ
同名どうめいオペラ
ユーリー・アレクサンドロヴィチ・ファリク  (Yuri Falik
同名どうめいのバレエ音楽おんがく
ダリウス・ミヨー
ポール・クローデルによるさんさくげき付随ふずい音楽おんがく(オペラとも)『アガメムノン』作品さくひん14、『コエフォール』作品さくひん24、『ウメニード(エウメニデス)』作品さくひん41
エルンスト・クルシェネク
オペラ『オレストの生涯しょうがい
ヤニス・クセナキス
同名どうめい合唱がっしょうきょく
フラーヴィオ・テスティ英語えいごばん
オペラ『オレステのいかり』
ハリソン・バートウィッスル
声楽せいがくきょく『プロローグ』(『アガメムノーン』による)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
オペラ・セリアイドメネオ』(エーレクトラーを主要しゅよう人物じんぶつとする)
リヒャルト・シュトラウス
楽劇がくげきエレクトラ

戯曲ぎきょく[編集へんしゅう]

ユージン・オニール
戯曲ぎきょく喪服もふく似合にあうエレクトラ』

舞踏ぶとう・バレエ[編集へんしゅう]

マーサ・グレアム
舞踏ぶとうげき『クライタムニーストラ』。

小説しょうせつ[編集へんしゅう]

ジョナサン・リテル
小説しょうせついつくしみの女神めがみたち』。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 全集ぜんしゅう1』 岩波いわなみ p.269
  2. ^ このオレステイアさんさくもそうだが、ギリシア悲劇ひげきかならずしも悲劇ひげきてき結末けつまつばかりではない。
  3. ^ この物見ものみおとこ舞台ぶたい背後はいごのスケネとばれる楽屋がくやけん舞台ぶたい背景はいけいとなる建築けんちくぶつうえがって演技えんぎをする。意表いひょうをついたオープニングである。
  4. ^ ひらかれたもんから台車だいしゃった移動いどうしきしょう舞台ぶたいてくる演出えんしゅつだったと推定すいていされている。
  5. ^ この部分ぶぶんはのちエウリピデースが説得せっとくりょくけると批判ひはんしている。
  6. ^ この役割やくわりはピュラデスというせつもある。
  7. ^ 当時とうじのアテーネーでは直接ちょくせつ民主みんしゅせいおこなわれており、アテーナイ市民しみん12めい陪審ばいしんいんとして判決はんけつ左右さゆうした。
  8. ^ 思想しそうだい1-7岩波書店いわなみしょてん、2007ねん、p.97,101
  9. ^ 宇都宮大学うつのみやだいがく教育きょういく学部がくぶ宇都宮大学うつのみやだいがく教育きょういく学部がくぶ紀要きようだい33-34、1983ねん、p.01