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アテーナー

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アテーナー
θしーたηいーたνにゅー
たたかい、知恵ちえ女神めがみ, 都市とし守護しゅご女神めがみ
ペイディアス制作せいさくしたアテーナー・パルテノスぞうローマ時代じだいのコピー。アテネ国立こくりつ考古学こうこがく博物館はくぶつかん所蔵しょぞう
信仰しんこう中心地ちゅうしんち アテーナイ
住処すみか オリュムポス
武器ぶき アイギス
シンボル フクロウ, オリーブ
おや ゼウス, メーティス
兄弟きょうだい アポローン, アルテミス, アレース, ヘーパイストス, ヘルメース, ディオニューソス, エイレイテュイア, ヘーベー
ローマ神話しんわ ミネルウァ
祝祭しゅくさい パンアテーナイアさい, アレーポリアさい, スキーポリアさい
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アテーナー古代こだいギリシアθしーたηいーたνにゅー, Athēnāイオーニア方言ほうげんἈθήνη, Athēnē アテーネードーリス方言ほうげんἈθάνα, Athana アターナー叙事詩じょじしたいἈθηναίη, Athēnaiē アテーナイエー)は、知恵ちえ芸術げいじゅつ工芸こうげい戦略せんりゃくつかさどギリシア神話しんわ女神めがみで、オリュンポスじゅうかみいちはしらアルテミスヘスティアーおなじく処女しょじょしんである。

女神めがみ崇拝すうはい中心ちゅうしんアテーナイであるが、起源きげんてきには、ギリシア民族みんぞくペロポネーソス半島はんとう南下なんかして勢力せいりょく伸張しんちょうさせる以前いぜんより、多数たすう存在そんざいした城塞じょうさい都市とし守護しゅご女神めがみであったとかんがえられている。ギリシアの固有こゆう女神めがみだが、ヘレーネス(古代こだいギリシアじん)たちは、このかみをギリシアの征服せいふくとも自分じぶんたちのかみんだのである。

日本語にほんごではおもちょう母音ぼいん省略しょうりゃくしてアテナアテネ表記ひょうきされる場合ばあいおおい。

概説がいせつ

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都市とし守護神しゅごじん

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アテーナイテトラドラクマには、表面ひょうめんひだり)にはアテーナーの頭部とうぶが、裏面りめんみぎ)にはアテーナイのポリスを象徴しょうちょうするフクロウオリーブしょうえだ三日月みかづき刻印こくいんされていた。

アテーナーは、ふるくからギリシアのにあった城塞じょうさい都市としにあって、「都市とし守護しゅご女神めがみ」として崇拝すうはいされてた。この崇拝すうはい伝統でんとうは、ミーノーア文明ぶんめいまでさかのぼる。その神殿しんでん都市とし象徴しょうちょうする小高こだかおかたとえばアテーナイであれば、アクロポリスきずかれており、女神めがみ都市とし守護しゅごしゃとする崇拝すうはいは、ギリシア全土ぜんどおよんでおり、アテーナイ、ミュケーナイコリントステーバイなどの有力ゆうりょく都市としでも、その中心ちゅうしんとなる丘上おかうえには、女神めがみ神殿しんでんがあった。アテーナイはおおくのポリスにおいて、「ポリウーコス(都市とし守護しゅごしゃ)」の称号しょうごうばれていた。

このようにアテーナーは、都市とし守護しゅごしゃであり、アテーナーのたたかいは、都市とし自治じち平和へいわまもるためのたたかいで、ただ生臭なまぐさ暴力ぼうりょく優越ゆうえつする軍神ぐんしんアレースたたかいとはことなるものである。

女神めがみは、アテーナイのアクロポリスパルテノーン処女しょじょみや、Parthenon)の神殿しんでんち、フクロウを自己じこせいなる動物どうぶつとしてっていた。ホメーロス女神めがみを、グラウコーピス・アテーネー(glaukopis Athene)とぶが、この定型ていけい修飾しゅうしょく称号しょうごうの「グラウコーピス」は、「かがやひとみったもの」「灰色はいいろあおひとみったもの」というのが本来ほんらい意味いみかんがえられるが、これを、ふくろう(グラウクス)と関連付かんれんづけ、「ふくろうの貌をったもの」というような解釈かいしゃくおこなわれていた。女神めがみはまた、知恵ちえあらわへびや、平和へいわしるしとしてオリーブをその象徴しょうちょうとしていた[1]

さんだい王権おうけんとアテーナーの誕生たんじょう

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ヘーシオドスが『かみみつる』にしるすところでは、アテーナーはゼウス頭頂とうちょうより武装ぶそうしてよろいまつわった姿すがた出現しゅつげんしたとされる。

ギリシア神話しんわかみ々の系譜けいふにおいては、オリエントかみ々の系譜けいふ同様どうように、さん世代せだいにわたるかみ々の「王権おうけん」の移譲いじょう強奪ごうだつがあった。ギリシア神話しんわでは、てんかみウーラノスだいいち王権おうけんち、原初げんしょ大地だいち大神だいじんガイアとのあいだ多数たすう息子むすこむすめをなした。これがティーターン一族いちぞくである。ウーラノスの末子まっしクロノスであり、クロノスはははガイアに教唆きょうさされて、絶対ぜったい権力けんりょくるったちちウーラノスを不意打ふいうちで攻撃こうげきし、ウーラノスの男性だんせいとした。こうしてクロノスがかみ々の王権おうけんだい支配しはいしゃとなる。しかしクロノスはガイアとウーラノスの予言よげんによって、かれもまた自分じぶんによって支配しはいけんうばわれるだろうとされたため、まれてくる子供こどもたちんだが、ゼウスだけはクレーテーとうのがれ、やがて成長せいちょうしたゼウスは兄弟きょうだい姉妹しまいたち復活ふっかつさせ、クロノスの王権おうけん簒奪さんだつする。

このようにしてゼウスを主権しゅけんしゃとするオリュンポス王権おうけん誕生たんじょうしたが、ゼウスもまたガイアとウーラノスによる予言よげんけた。それは、最初さいしょ配偶はいぐうしゃである女神めがみメーティスとのあいだまれる子供こどもは、最初さいしょに、はは智慧ちえ勇気ゆうきむすめまれ、つぎには傲慢ごうまん息子むすこまれるだろう。そしてゼウスの王権おうけん再度さいどかれらによって簒奪さんだつされるだろうというものである。そのメーティスがもると、ゼウスは妊娠にんしんしたままのメーティスを素早すばやみ、禍根かこんとうとした。

『アテーナーの誕生たんじょう』 (ルネ=アントワーヌ・ウアスさく、1688ねんよりまえヴェルサイユ宮殿きゅうでん所蔵しょぞう)

アポロドーロスが『ギリシア神話しんわ』でべるところでは、胎児たいじは、ゼウスの身体しんたいなかつづ成長せいちょうし、ゼウスははげしい頭痛ずつうかんじるようになったため、プロメーテウスに(また一説いっせつでは、ヘーパイストスに)おのラブリュス)でみずからの頭部とうぶらせると、ちゅうからてきたのが、甲冑かっちゅうまつわった成人せいじんした姿すがたのアテーナーであった[2]。アテーナーがまれると同時どうじに、宇宙うちゅうおおきくよろめき、大地だいち大海たいかい轟音ごうおんはっしながらうごき、太陽たいよう軌道きどうじょう停止ていしした[3]。こうして、形式けいしきじょう、アテーナーをんだのはメーティスではなくゼウス本人ほんにんだということになったので、ゼウスによるオリュンポスの支配しはいらぎないものとなった。ゼウスの子供こどもたちのなかで、アテーナーはゼウスのもっとりのむすめであり、アテーナーにたいする偏愛へんあいにより、かみ々は嫉妬しっとした[4]

女神めがみ誕生たんじょうかんする異説いせつ

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ロバート・グレイヴズが『ギリシア神話しんわ』でしるすところでは、アテーナーはヘレーネスがギリシアに到来とうらいする以前いぜんから、母権ぼけんせい社会しゃかいペラスゴイじん英語えいごばんによって崇拝すうはいされていた、人面じんめんへびかおものいしえる大地だいち女神めがみメテュスであったとする(ただしグレイヴズの主張しゅちょう学術がくじゅつてきうらづけはない)。ペラスゴイじん伝承でんしょうでは、女神めがみリビュアーのトリートーニスのほとりに誕生たんじょうしたとされる。土地とちさんはしらニュムペー女神めがみ養育よういくした。

女神めがみ山羊やぎかわ衣類いるいまといリビュアーで成長せいちょうした。少女しょうじょころ友達ともだちであるパラスとやりだてって闘技とうぎあそんでいたところ、間違まちがってパラスをころしてしまった。それをかなしんだ女神めがみは、自分じぶんまえに「パラス」をき、パラス・アテーナーと名乗なのることにしたという[5]成長せいちょうした女神めがみクレーテーとうおとずれ、そしてギリシア本土ほんどのアテーナイへとやってた。

ほかにも、くもなかかくれていたアテーナーをゼウスがくもあたまをぶつけることによって誕生たんじょうさせたともいわれる。

女神めがみ祭儀さいぎ神殿しんでん

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『アテーナーとムーサたち』 (ジャック・ステラさく、1640-1645ねんごろルーヴル美術館びじゅつかん所蔵しょぞう)
パリスの審判しんぱんルーベンス (1636ねん国立こくりつ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう)

アテーナーの祭儀さいぎでもっとも著名ちょめいなものは、その崇拝すうはい中心ちゅうしんであるアテーナイで7がつおこなわれるパンアテーナイアさいである。これはアテーナーの誕生たんじょう(ヘカトンバイオーンのつきの28にち)をいわまつりで、アッティケー都市とし連合れんごう成立せいりつ記念きねんしていわわれた。馬術ばじゅつ詩歌しか音楽おんがく文芸ぶんげいなどの競技きょうぎもよおされた。このまつりは4ねんいち大祭たいさいおこなわれ、パンアテーナイアさいはとくにこの大祭たいさいすことがある。このときはパルテノーン神殿しんでんにあるアテーナーの神像しんぞうころもえられ、乙女おとめたちがあたらしくったころもせた。アテーナイのアクロポリスのパルテノーン神殿しんでんメトープには、このころもはこ行列ぎょうれつ模様もようられている。

女神めがみ神殿しんでんはアクロポリスのいただきにあるパルテノーン神殿しんでん著名ちょめいで、またおなじくアクロポリスに、女神めがみは「エレクテウスの宮居みやい」をそなえていたとされる。エレクテウスは人名じんめいであるが、これはおそらく、古代こだいアテーナイの伝説でんせつおうであるエリクトニオス別名べつめいかんがえられる。アテーナイの支配しはいけんをめぐって、かつて海神わたつみポセイドーンとアテーナーがあらそったことがあり、初代しょだいアテーナイおうケクロプス女神めがみ支持しじしたことで、アテーナー女神めがみ勝利しょうりた。

女神めがみ象徴しょうちょう

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ふくろうオリーブ女神めがみせいなる象徴しょうちょうとしてコインテトラドラクマなどにきざまれるが、ゆうつばさ女神めがみニーケー(Nike、勝利しょうり、ローマ神話しんわではウィクトーリア(Victoria)とばれる)も、彼女かのじょ化身けしんであるとして登場とうじょうすることがある。せん女神めがみとしてのアテーナーはちちしんゼウスと同様どうように、アイギス山羊やぎかわだて)をち、そのだてにはゴルゴーン頭部とうぶけられている。おもうしろにならんだ100にん歩兵ほへいかくすほどおおきい前立まえだてのいたかぶとこうむり、やりとアイギスをったわか威厳いげんのある乙女おとめ姿すがたあらわされる。一説いっせつにはふくろうのようにおおきな灰色はいいろ凛々りりしい姿すがたわれ、みずからのせいとりふくろうとの関連かんれんせいしめしている。

ローマ神話しんわでの対応たいおう

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ローマ神話しんわでは、はるかふるくから、エトルスキーけい知恵ちえ工芸こうげいつかさど女神めがみミネルウァがアテーナーに対応たいおうする女神めがみとして崇拝すうはいされていた。ミネルウァの神殿しんでんもやはり都市とし中心ちゅうしんおかうえにあるのが普通ふつうで、都市とし守護しゅごしゃであった。ロマンスではミネルウァは、ミネルヴァという発音はつおんになる。ラテン語らてんご:Minerva、英語えいごみはミナーヴァ。ミネルウァのせいとりは、やはりふくろうである。

別名べつめい

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アテーナーはさまざまな別名べつめいつ。イオーニア方言ほうげんけいホメーロスは、アテーネーび、あるいは方言ほうげんがたでアターナーともばれる。またアテーナイアーともばれる(こののイオーニア方言ほうげんがたは、アテーナイエーである)。アテーナイアーをつづめてアテーナーぶのだともされる。

それ以外いがいに、パルラス・アテーネーかたちでホメーロスがうたうように、パラス(Pallas)という別名べつめいがある。トリート・ゲネイア(トリートまれのもの)、トリートーニスなどの別名べつめいつ。これらの名前なまえなん意味いみかは色々いろいろ解釈かいしゃくがあるが明確めいかくにはからない。ただ、海神わたつみトリートーンや、アムピトリーテーなどとおな語幹ごかんからつくられている可能かのうせいたかく、「みず水辺みずべ」に関係かんけいする名前なまえだと解釈かいしゃくされている。

物語ものがたり

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パラスとパラディオン

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アポロドーロスによれば、アテーナーはトリートーンのむすめパラス一緒いっしょそだてられた。二人ふたり親友しんゆうとなり、せんわざはげんでいたが、喧嘩けんかとなった。パラスがいちげき女神めがみあたえようとしたさい、ゼウスは危惧きぐして、そらよりアイギスした。パラスはおどろき、直後ちょくごのアテーナーの攻撃こうげき彼女かのじょいのちうばった。女神めがみ親友しんゆうかなしみ、パラスにせてパラディオンばれる木像もくぞうつくった[6](パラディオンとは、イーリオス建設けんせつしたイーロスが、「しるししめしてほしい」とゼウスにいのると、てんからって木像もくぞうである[6])。 なお、フランスのトランプでは、パラスの名前なまえでスペードのクイーンのモデルとされていて、一般いっぱんてきなカード(インターナショナル・フェイス)では、クイーンのなか唯一ゆいいつ武器ぶき所持しょじしている。

ギガントマキアー

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紀元前きげんぜん480から470ねんせいアッティカ赤絵あかえしきキュリクスえがかれたアテーナーおよヘーラクレース

ティーターンぞくタルタロス幽閉ゆうへいしたゼウスにたいして、ガイアはいかり、おおくのギガースいたるしてゼウスをおどかし、せんをけしかけた。これがギガントマキアーである。このとき、アテーナーはギガースたちのなかもっと強力きょうりょくエンケラドスたたかい、シケリアとうげつけて、これを圧殺あっさつした。また、トラーキアにあっては不死ふしであったアルキュオネウス英語えいごばんヘーラクレースとともにきずりし、打殺うちころしたとされる。また、アテーナーはギガースの一人ひとりパッラースをころしてそのかわたてつくったためパラス・アテーナーと名乗なのるようになったともいわれる[7]

エリクトニオス

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アテーナーにはエリクトニオス出生しゅっしょうにまつわる伝承でんしょうつたえられる。アポロドーロスの伝承でんしょうでは、アテーナーが武器ぶきつくるためにヘーパイストスおとずれたさい欲情よくじょうしたヘーパイストスにおそわれた。アテーナーはしたがいついたヘーパイストスはアテーナーのあし精液せいえきいた。アテーナーはいか精液せいえきもう羊毛ようもう[8])でぬぐうとてた。この精液せいえきちたからエリクトニオスがまれた[9]。アテーナーはエリクトニオスをかくそだて、のちにはこめアテーナイおうケクロプスのむすめパンドロソスへとあづけた。このときはこけることをきんじたが、パンドロソスの姉妹しまい好奇心こうきしんばこけ、赤子あかごいている大蛇おろちてしまう。彼女かのじょたちは大蛇おろちによってほろぼされたとも、アテーナーのいかりによってくるいアクロポリスから墜死ついししたともつたえられる[9]。そのエリクトニオスはアテーナーによってエレクテイオンそだてられ、のちにアテーナイおうとなった[9]

ヒュギーヌス伝承でんしょうでは、ポセイドーンによってそそのかされたヘーパイストスがアテーナーをつまにしようと寝室しんしつへとしのんだが、アテーナーは武器ぶきをもって抵抗ていこう純潔じゅんけつまもった。このときヘーパイストスは精液せいえき大地だいちへとらし、そこから下半身かはんしんへびかたちをしたエリクトニオスがまれた[10]。アテーナーはこのそだてようとちいさなかごれ、ケクロプスの3にんむすめたちにたくした。むすめたちがかごけたときカラスがその秘密ひみつらしたために、むすめたちはアテーナーによってくるうみへと身投みなげした[10]

トロイア戦争せんそう

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ジョン・フラックスマンえがいた『イーリアス』挿絵さしえ(1795ねん)。ホーラーたちにみちびかれ、ヘーラーとアテーナーが戦車せんしゃってオリュムポスからトロイア戦争せんそう戦場せんじょうへとかう様子ようすえがいている。

神話しんわではトロイア戦争せんそうのきっかけは黄金おうごん林檎りんごめぐるアテーナー、ヘーラーアプロディーテー対立たいりつにあるとつたえられる[11]黄金おうごん林檎りんご行先ゆくさきトロイア王子おうじパリスゆだねられ、アプロディーテーはパリスに「もっとうつくしいおんなあたえる」と約束やくそくをすることで黄金おうごん林檎りんごれた(パリスの審判しんぱん)。しかしながら、この「もっとうつくしいおんな」がスパルタおうメネラーオスヘレネーであったことからトロイア戦争せんそうこされた[11]。トロイアがわにはアプロディーテーが、ギリシアがわにはパリスをにくむアテーナーとヘーラーがついた[11]

アテーナーは戦場せんじょうでギリシアぜいアキレウスディオメーデースらのはたらきをたすけている。『イーリアスだい5かんではアテーナーはヘーラーとともに戦車せんしゃって戦場せんじょうおもむき、ギリシアぐんけようとする。トロイアがわ激昂げっこうしたアレース阻止そしするため、ハーデースかぶと姿すがたかくしたアテーナーはみずか戦車せんしゃ御者ぎょしゃとなりディオメーデースをせアレースへめかかった。ディオメーデースがやりげるとアテーナーがそのやりみちびいた。やりはアレースの下腹かふくへとさり、アレースはおおきなさけごえをあげてそらへとった[12][13]。『イーリアス』だい21かんでは、アテーナーはかみ同士どうしたたかいのなかでアレースにたいして、標識ひょうしきとしていてあったくろ大岩おおいわげて、アレースのあたまげつけ、昏倒こんとうさせた。さらにアテーナーがはなしたすきにアプロディーテーがアレースをけようとするが、ヘーラーの指示しじのもと、アテーナーはアプロディーテーのむねこぶしたたきつけ、アプロディーテーをアレースとともに大地だいちとした[14]。トロイアの王子おうじ防衛ぼうえいせんそう大将たいしょうであったヘクトールがアキレウスにめられたさいアポローンはヘクトールがれるようつからずのからだえたが、アテーナーはヘクトールのおとうとデーイポボス姿すがたでヘクトールのよこへとあらわれ、加勢かせいがあるようにみせかけげるのをめさせた。このためにヘクトールはアキレウスによってられた[11]

また、られる「トロイアの木馬もくば」について、ギリシアぐんは「アテーナーのいかりをしずめるためにつくられたささものである」としトロイアぐんうばわせている[11]巨大きょだい木馬もくばをトロイアの城内じょうないはこんだことに反対はんたいした神官しんかんラーオコオーンは、おこったアテーナーによって両目りょうめつぶされた。ラーオコオーンはいたみにくるしみながらも木馬もくばはらえと主張しゅちょうげなかったために、アテーナーはテネドスから2ひき大蛇おろちせてラーオコオーンとその2人ふたり息子むすこおそわせ、息子むすこたちをかみころさせた。その、2ひき大蛇おろちはアテーナー神殿しんでんのぼ姿すがたした[16][17]

トロイア陥落かんらく、トロイアの王女おうじょカッサンドラーはアテーナー神殿しんでんへとした。カッサンドラーはアテーナーの神体しんたいにすがりたすけをねがうもしょうアイアースとらえられ凌辱りょうじょくされた。アテーナーはこれに激怒げきどし、しょうアイアースへと神罰しんばつくだした[18]

その

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『アレースとアテーナーの戦争せんそう』(ジャック=ルイ・ダヴィッドさく、1771ねんリヨン美術館びじゅつかん所蔵しょぞう
  • 英雄えいゆうたちにたいしては好意こういてきで、ペルセウスのメドゥーサ退治たいじさいには表面ひょうめんかがみのようにみがかれたたてあたえ、ヘーラクレースのステュムパーロスのとり退治たいじさいにはヘーパイストスのつくった青銅せいどう鳴子なるこあたえ、ベレロポーンペーガソス調教ちょうきょうできる黄金おうごんのくつわをあたえたり、オデュッセウス助言じょげんをしてつまわせたりしている。
  • アテーナーは神話しんわなかでは非常ひじょうつよく、プライドのたかいちめんせており、涜聖てき人物じんぶつたいして容赦ようしゃなくばちあたえている。たとえばアレースには「勝手かってままにっている」と指摘してきされており、自分じぶんったメドゥーサアラクネー、アテーナーの裸体らたい目撃もくげきしたテイレシアースらがばっせられている。さらにイーリオス陥落かんらくさい、アテーナーの神殿しんでんカッサンドラーしょうアイアース凌辱りょうじょくされると、アテーナーは激怒げきどしてしょうアイアースに報復ほうふくしている。
  • 知恵ちえそなえたアテーナーは自分じぶん容貌ようぼううつくしさに敏感びんかんであり、アテーナーときそったメドゥーサを容赦ようしゃなく処罰しょばつし、パリスの審判しんぱんヘーラーアプロディーテーきそった。また、アテーナーはかみ々の宴会えんかい自分じぶん発明はつめいしたアウロス本管ほんかんふえ)をくとほおふくれ、かおみにくくなるということでヘーラーとアプロディーテーにわらわれた。演奏えんそうしている自分じぶんかお湖面こめんうつしてたアテーナーはわらわれる理由りゆうり、そのアウロスにのろいをけててた。
  • アテーナーが水浴すいよくをしているときカリクロー息子むすこであるテイレシアースはアテーナーの全裸ぜんら姿すがたてしまった。アテーナーはテイレシアースをばっし、盲目もうもくにしたが、カリクローに盲目もうもく治癒ちゆわれたため、アテーナーはわりに未来みらい予言よげんする能力のうりょくさづけた[19][20]
  • アテーナーはヘーラーともなかく、ヘーラーの命令めいれいしたがうこともある。アテーナーはヘーラーを支援しえんしてアルゴナウタイ庇護ひごして冒険ぼうけんたすけた。また、パリスの審判しんぱんちトロイア殲滅せんめつのぞ二人ふたりは、ギリシアがわ助力じょりょくした。ヘーラーの豪華ごうかとげりのローブもアテーナーによってられたものである[21][22]。ヘーラーがこしたゼウスにたいする反乱はんらんにも参加さんかした。また、ゼウスの立場たちばわせて行動こうどうすることもあり、ゼウスとアテーナーの策略さくりゃくでヘーラーの母乳ぼにゅうんだヘーラクレース(赤子あかごころ)は不死ふしからだ驚異きょういてき怪力かいりきれている。
  • アテーナーはギリシアのほかかみ々がそうであるように傲慢ごうまんでみずからをおとしめる存在そんざいには容赦ようしゃない報復ほうふくおこなうが、一方いっぽうでゼウスの嫡男ちゃくなんであるおなせんかみのアレースがなまぐさいたたかいの残忍ざんにんさを象徴しょうちょうするかみであるのにたいし、アテーナーは理知的りちてき気高けだか戦士せんしとして登場とうじょうする。うみかみポセイドーンとのあらそいでは、ポセイドーンがうまつくりだし人間にんげんあたえたのにたいし、アテーナーはオリーブのつく人間にんげんあた勝利しょうりするなど思慮しりょふかめんせる。アテーナーの信仰しんこうでは学者がくしゃ啓示けいじを、裁判官さいばんかん明晰めいせきもとめ、軍人ぐんじん戦術せんじゅつみがこうとアテーナーにいのりをささげたとわれる[23]

ギャラリー

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西洋せいよう絵画かいが

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彫刻ちょうこく

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紀元前きげんぜん1世紀せいきの「アンティオコス英語えいごばん」と署名しょめいされた大理石だいりせき複製ふくせいひん紀元前きげんぜん5世紀せいきアクロポリスっていたペイディアスアテナ・プロマコスのぞうとはことなる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 岡田おかだあつし聖書せいしょ神話しんわ象徴しょうちょう図鑑ずかん』より。
  2. ^ アポロドーロスギリシア神話しんわいちかんIII 6。
  3. ^ ホメーロス『アテナ賛歌さんか』。
  4. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話しんわ』69ぺーじ
  5. ^ R・グレイヴズ『ギリシア神話しんわ』69ぺーじ
  6. ^ a b アポロドーロス『ギリシア神話しんわさんかんXII 3。
  7. ^ マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話しんわ事典じてん』。
  8. ^ Apollodorus, Library, book 3, chapter 14, section 6
  9. ^ a b c アポロドーロス『ギリシア神話しんわさんかん
  10. ^ a b ヒュギーヌス『ギリシャ神話しんわしゅう』166
  11. ^ a b c d e トマス・ブルフィンチ しる大久保おおくぼひろし やく完訳かんやく ギリシア・ローマ神話しんわ 角川かどかわ文庫ぶんこ、2012ねん 27-28しょう
  12. ^ ホメーロス『イーリアス』5かん
  13. ^ 松田まつだおさむ『トロイア戦争せんそうぜん講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2008ねん 「58 奮戦ふんせんするディオメーデース」(Kindleばん:1620-1647/3807)
  14. ^ 『イーリアス』21かん400ぎょう‐433ぎょう
  15. ^ 小野塚おのづか友吉ゆうきち やく『アエネイス』グーテンベルク21、2014ねん。「Kindleばん:635-1066/5368」 
  16. ^ ウェルギリウス『アエネーイス』II。[15]
  17. ^ 松田まつだおさむ『トロイア戦争せんそうぜん講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2008ねん 「123 ラーオコオーンの悲劇ひげき」(Kindleばん:3194-3221/3807)
  18. ^ 松田まつだおさむ『トロイア戦争せんそうぜん講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2008ねん 「131 カサンドレー凌辱りょうじょくさる」(Kindleばん:3425-3439/3807)
  19. ^ アポロドーロス『ギリシア神話しんわさんかんVI 7。
  20. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話しんわ』72ぺーじ
  21. ^ ホメーロス『イーリアス』14かん178-180ぎょう
  22. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話しんわ』62,74ぺーじ
  23. ^ バーナード・エヴスリン『ギリシア神話しんわしょう事典じてん』19ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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