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キューポラ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

キューポラcupola furnace)は、コークス燃焼ねんしょうねつ利用りようしててつかし鋳物いものの溶湯(ようとう:溶解ようかいされ液体えきたいじょうになったてつ)をるためのシャフトがた溶解ようかい分類ぶんるいされる溶解ようかい訳語やくご溶銑ようせん文献ぶんけんおよび専門せんもんしょなどでキュポラ短縮たんしゅくされ表記ひょうきされることもある[1]

構造こうぞう

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キューポラの構造こうぞうは、ボイラーこう鈑などをすうメートル-すうじゅうメートルのながさに末広すえひろがりの円筒えんとうがた加工かこうした構造こうぞうぶつたてがた設置せっちし、内側うちがわにはたいねつ煉瓦れんが耐火たいかモルタル(パッチングモルタルなどのキューポラよう耐火たいかぶつ)がられている。

そのに、円筒えんとうがたなかあいだまでが末広すえひろがりがた形状けいじょうで、その下部かぶぎゃくしぼった形状けいじょう高炉こうろちか形状けいじょう)の「ホワイティングがたキューポラ」、日本人にっぽんじん開発かいはつした「さかがわしき熱風ねっぷう水冷すいれいキューポラ」もあったが、現在げんざいすう現存げんそんするのみである。

キューポラ各部かくぶ役割やくわり名称めいしょうとして、円筒えんとうがた上部じょうぶから溶解ようかい材料ざいりょうを「そこびらきバケット」や「スキップしきホイスト」などで挿入そうにゅうする「材料ざいりょう投入とうにゅうこう」、コークスなどの燃焼ねんしょう発生はっせいしたガス(おもCOガス)を吸引きゅういんする「ガスダクト」、挿入そうにゅうされた材料ざいりょう予熱よねつする「予熱よねつたい」、材料ざいりょうをコークスの燃焼ねんしょうねつ溶解ようかいする「溶解ようかいたい」、還元かんげん作用さようおこなわれる「還元かんげんたい」、けたてつ一時いちじてきないまる「まりたい」、けたてつてくるあな出湯いでゆこう」、さい下部かぶで溶湯がれないように耐火たいかぶつ施工しこうしてある「ゆか」、溶解ようかいない残滓ざんしぶつ耐火たいかぶつ排出はいしゅつするための「そことびら(もしくはマンホール)」という構成こうせいである。

なお、古来こらいからある日本にっぽん独自どくじの「こしきこしき)」は燃料ねんりょう石炭せきたん木炭もくたん使用しようしたもので原理げんりおなじである[1]

キューポラは、時間じかんあたり溶解ようかいりょうおおきさをあらわすのが通例つうれいであり、小型こがたもの毎時まいじ1-3トンから大型おおがたのものは毎時まいじ80-120トンのものまで使用しようされている。日本にっぽんでは5-30トンクラスが主流しゅりゅうである。

分類ぶんるい

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キューポラ形態けいたい分類ぶんるいとして、ない全面ぜんめん耐火たいかぶつ施工しこうする「ライニングキューポラ」とまりたいゆかのみ耐火たいかぶつ施工しこうする「ノーライニングキューポラ」がある。

つぎに、ないに溶湯をつね一定いっていりょうめておく「ウエットボトム方式ほうしき」と、ないにはめずに排出はいしゅつからだ前部ぜんぶ設置せっちされたサイフォンにめる「ドライボトム方式ほうしき」がある。

また、溶湯と一緒いっしょにキューポラのスラグ(溶融ようゆうされたコークスとう残滓ざんしぶつ)をないから排出はいしゅつし、キューポラ前部ぜんぶけられたスラグセパレーターにて分離ぶんりする「フロントスラッギング方式ほうしき」と、溶湯とスラグを別々べつべつあなから排出はいしゅつする「リアスラッギング方式ほうしき」という分類ぶんるいとなる。

使用しようほう

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溶解ようかい方法ほうほうとしては、溶解ようかいたいまでげられたコークス「はつめコークス」(ベッドコークスともばれる)に、溶解ようかいたい下部かぶけられた「はねこう(はぐち)」といわれる部分ぶぶんから送風そうふう空気くうきおくりコークスを燃焼ねんしょうさせ材料ざいりょう溶解ようかいする。そのとき燃焼ねんしょう温度おんどは1,600℃にもたっする。また、空気くうきじゅん酸素さんそかず%溶解ようかい効率こうりつげる方法ほうほうもある。

操業そうぎょう条件じょうけんとしてもっと重要じゅうようなのは、送風そうふう加減かげんである。送風そうふう過剰かじょうになると、固体こたい地金じがね表面ひょうめんあつ酸化さんか皮膜ひまくができ、材質ざいしつ劣化れっか原因げんいんになり、また、ベッドコークスの燃焼ねんしょう消耗しょうもうはやまり、めコークスの追従ついしょう補充ほじゅうわなくなる。ぎゃく送風そうふう過少かしょう場合ばあいも、コークスの不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうによって発熱はつねつりょう不足ふそくすることになる。ゆえに、どちらも結果けっかとして出湯いでゆ温度おんどひくくなりすぎて品質ひんしつ劣化れっかする。適正てきせい送風そうふうりょうは、だん面積めんせき1m2あたり100-110m3/びょうとされている。また、送風そうふうされる空気くうき温度おんど湿度しつど鋳鉄ちゅうてつ品質ひんしつおおきな影響えいきょうあたえる。

1970ねん以前いぜん大気たいきをそのままない送風そうふうした「冷風れいふう操業そうぎょう」がおもであったが、燃焼ねんしょう効率こうりつ安定あんていせず出湯いでゆ温度おんどひくいことと(酸化さんか溶解ようかいとなる)、大気たいきちゅう水分すいぶんりょう増減ぞうげん起因きいんする品質ひんしつ不良ふりょう(ガス欠陥けっかん、ザク欠陥けっかんなど)がおおきな問題もんだいとなっていた。これを改善かいぜんするためはいガスちゅうのCOガスをキューポラに併設へいせつされた燃焼ねんしょうしつで700-1,000℃に燃焼ねんしょうさせ、その高温こうおんのガス熱量ねつりょう利用りようない送風そうふうする大気たいきねつ交換こうかんで300-700℃まで加熱かねつ送風そうふうする「熱風ねっぷう操業そうぎょう」がおこなわれ、この方法ほうほう現在げんざい主流しゅりゅうとなっている。

熱風ねっぷう操業そうぎょう品質ひんしつ改善かいぜんするばかりでなく、燃焼ねんしょう効率こうりつ改善かいぜんによるコークス使用しようりょう低減ていげんにもつながる。

特徴とくちょう

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キューポラのメリットとして、大量たいりょうの溶湯を連続れんぞく溶解ようかいできる、コークスで溶解ようかいするので溶解ようかいコストが電炉でんろくらべてひくい、亜鉛あえんなど不純物ふじゅんぶつ精錬せいれんする作用さようがあるので、電炉でんろ使用しようできない材料ざいりょう使用しようすることができる、炭素たんそぶんがコークスから補給ほきゅう(吸炭)されるので、電炉でんろのように溶解ようかいによる損失そんしつ追加ついかする必要ひつようい、というてんがあげられる。

デメリットとして、目的もくてき成分せいぶんるためのみさお方法ほうほう非常ひじょうむずかしく熟練じゅくれんようする、ねつ交換こうかん集塵機しゅうじんきなど設備せつび大型おおがた投資とうし費用ひようおおきい(こしき単純たんじゅん構造こうぞうのため安価あんかである)、粉塵ふんじんCO2ガスの発生はっせいりょうおお環境かんきょうおおきな影響えいきょうあたえてしまう、コークス由来ゆらい硫化りゅうかぶつ発生はっせいする、上記じょうきのメリットである吸炭が過剰かじょうとなって品質ひんしつ低下ていかこりうる、ということがある。

また、コークスの60%以上いじょう中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅうたよっているので、中国ちゅうごく国内こくない需給じゅきゅう動向どうこうによって価格かかく変動へんどうはげしくなっており、将来しょうらいてきにコークスの確保かくほ懸念けねんされるというてんがあげられる。

現在げんざいでは、地球ちきゅう温暖おんだん温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつなどの環境かんきょう問題もんだいとくCO2発生はっせいりょうおおさを問題もんだいされるため、ちゅう周波しゅうは誘導ゆうどう電気でんき)にってわられつつあり、昭和しょうわ50年代ねんだいごろまでは300しゃ以上いじょう設置せっちされていたとされるキューポラも、現在げんざいではきょうなどの影響えいきょうもあるがすうじゅうしゃのみである。しかしながら、溶湯を大量たいりょう必要ひつようとする自動車じどうしゃ部品ぶひん建設けんせつ機械きかい船舶せんぱく部品ぶひん鋳物いもの工場こうじょうでは現在げんざいでも主流しゅりゅうであり、CO2発生はっせいりょう対策たいさくとして排出はいしゅつされた熱量ねつりょう回収かいしゅう有効ゆうこう利用りようする施策しさくすすめている鋳物いもの会社かいしゃおおい。

各地かくちのキューポラ

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埼玉さいたまけん川口かわぐちのキューポラ

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キューポラのあるまち』(1962ねん

キューポラの、屋根やねからたその姿すがた鋳物いもの工場こうじょうのシンボルてき存在そんざいで、鋳物いもの産業さんぎょうさかんだった1980年代ねんだいごろまでの埼玉さいたまけん川口かわぐちにはキューポラがおおられ、小説しょうせつキューポラのあるまち』の舞台ぶたいとなっている。どう作品さくひんは1962ねん吉永よしなが小百合さゆり主演しゅえん映画えいがされた[2]

実際じっさい屋外おくがいえているのはキューポラに付属ふぞくする排煙はいえんとうである。キューポラ本体ほんたい屋根やねからしているとほのお燃焼ねんしょうしたこまかいコークスがり、周辺しゅうへん延焼えんしょう原因げんいんになる。キューポラ以前いぜんこしき全盛ぜんせい時代じだいでは、工場こうじょうぐん屋根やねからコークスのほのおのぼ風景ふうけい川口かわぐちのあちこちで見受みうけられた。これにちなんでか、川口かわぐちオートレースじょうでは例年れいねん「GI日刊にっかんスポーツキューポラはい争奪そうだつせん」がおこなわれている。ただし、1970年代ねんだいから1990年代ねんだいごろの川口かわぐちにおいては、かつて鋳物いもの工場こうじょうであった場所ばしょ次々つぎつぎマンションへと変貌へんぼうしていき、21世紀せいき川口かわぐちにおいて鋳物いもの工場こうじょうはごくわずかしか残存ざんそんしていない。

しかし、川口かわぐち川口かわぐちえき東口ひがしぐち川口かわぐち市立しりつ中央ちゅうおう図書館としょかんメディアセブンなどの公共こうきょう施設しせつ、ならびにマルエツ無印むじるし良品りょうひんなどの民間みんかん商店しょうてん入居にゅうきょしているキュポ・ラという建物たてもの建築けんちくすることにより、過去かこのキューポラをしのんでいる。また、キューポラをモチーフとしたマスコットキャラクター、きゅぽらん存在そんざいする。

川口かわぐちオートレースじょうのイメージきょくぶっちぎりの青春せいしゅん』・『ぶっちぎりの青春せいしゅん☆now』(うたささきいさお)でもうたわれている。

富山とやまけん高岡たかおかのキューポラ

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詳細しょうさい金屋かなやまちこうきゅう南部なんぶ鋳造ちゅうぞうしょのキューポラと煙突えんとつ」を参照さんしょう

高岡たかおか銅器どうき有名ゆうめい富山とやまけん高岡たかおか鋳物いもの製造せいぞう発祥はっしょう金屋かなやまち一角いっかくには、きゅう南部なんぶ鋳造ちゅうぞうしょのキューポラと角形かくがた煙突えんとつのこされている(現在げんざいはパチンコてん駐車ちゅうしゃじょうない)。明治めいじはい金屋かなやまちではいくつかの近代きんだいてき西洋せいようしき溶鉱炉ようこうろキューポラが建造けんぞうされた。そのほとんどのキューポラは役目やくめこわされていったが、きゅう南部なんぶ鋳造ちゅうぞうしょのキューポラは1924ねん大正たいしょう13ねん)に建造けんぞうされ、2000ねん平成へいせい12ねん)2がつまで使用しようされた唯一ゆいいつ現存げんそんするもので、2001ねん平成へいせい13ねん)10がつ12にちにはくに登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざい登録とうろくされている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 菅野かんのとしたけし. “世界せかい文化ぶんか遺産いさん韮山にらやま反射はんしゃの10だいミステリーを”. 2020ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  2. ^ 都道府県とどうふけん教科書きょうかしょ 編集へんしゅう へん埼玉さいたま教科書きょうかしょ』JTBパブリッシング、2021ねん11月30にち、62ぺーじISBN 9784533147111 

外部がいぶリンク

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